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26話:生きたいだけ
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俺は、その日、幼児化したローレンスを抱っこしたまま家に帰った。
服に付いた土や泥を払い、湯浴み場まで連れて行く。お湯を頭からザバーっと雑に掛け、髪を洗ってやる。あの日、もう随分前のことを思い出す。ローレンスを薄汚い奴隷商から買い上げたばかりの日、熱を出したローレンスを奴隷だと言うのにベッドまで返上して甲斐甲斐しく看病してやった。傷に薬を塗り水浴びをさせて、まるで子育て。その時ばかりは俺だけの美しい魔物だった。
湯船に浸からせている間に着替えやタオルを用意して、汚れた服を石鹸を溶いた水に浸けた。そんなことをしているうちにローレンスが湯浴みから上がったようで、びちゃびちゃのまま出てきた。喋りもせず、ぼんやりと立ち尽くすローレンスが、なんだか本当に子どもみたいでかわいく思えた。
「ローレンス、風邪ひくぞ」
動く気のない青年を前に俺は呆れたような顔をして、髪を拭いてやる。
でも、無意識に頬が緩んだ。
「怪我もなさそうだし、安心した。転がってたオッサン?とお前にそっくりな男、どっちもローレンスが倒したのか?」
そう問えば、ローレンスは小さく首を横に振った。
「えっ、まさかミールちゃん一人で?」
そう聞くと、今度はウンウンと首を縦に振る。
怖ぇ~~~~~、俺、ミールちゃんに嫌われて無くて良かったぁっ。
そういえば、女王様とか何とか言われてた。
ミールちゃん凄いなぁ。
ギルドの仕事は、辞めてしまうのだろうか。
とにかく、新たな魔王の誕生に魔族達は悦んでいた。
おまけにディー先生なんて…
『はぁっ、はぁ、はぁ……っ‼ 僕とルジャンドル様の子が魔王になるなんてぇっ…‼ 興奮で勃起が止まらないよっ!! 今すぐっ、今すぐっルジャンドル様の墓石に射精したいぃいっ!! あっ♡どうしよう、果ててしまいそうですっ。貴方の所に行く前に果ててしまいそうですっ♡でるぅっでるぅっ♡♡♡』
股間を押さえながら、興奮した様子で頬を赤らめるディー先生の姿を思い出し、背筋に悪寒が走った。
あの人、マジでヤバイ魔族じゃん。
「ん?なんだ?」
思い出しながら髪を拭いていると、ローレンスに腕を掴まれた。
「ゼンが…、オレとの奴隷契約を破棄した時、、怖かった」
腹にくっつくみたいに抱きつきながらローレンスが言う。
「『お前なんか、もう必要ない』と捨てられた気がしたのだ…。奴隷契約を破棄する理由など、それ以外何もない」
「そういうんじゃないぞっ」
「分かってる…、オレ自身そうではなかったと思いたい。」
「本当だ! ローレンスを自由にしてやるべきだと思ったんだ!ローレンスとの関係は、ローレンスが俺の奴隷だからこそ成り立っていると思うと不安だった。奴隷というだけで心まで俺のものにすることはできないだろう。ローレンスの魔力が強くなってしまったら、ローレンスは俺から離れてしまうじゃないかって、きっとローレンスには俺なんて必要ないんだって……。ずっと、虚しかった。」
だって俺、いつの間にかお前のことすげぇ好きになってたんだぜ。
感情が高ぶってだんだんと涙が溢れてくる。
「それでも、それでもお前が愛しかったから!! 俺なんかのこと抱かせて、、汚してしまったような気がして、、、そんな風にローレンスを利用したくなかった! 本当は奴隷と主なんて関係、ずっと嫌だったんだ。俺はただ、ローレンスと一緒に生きたいだけだった!」
ただ、ローレンスと家族になれたら良かった。
額を手で覆って、涙に震える身体をローレンスに抱き締められる。
そうして、首をスルスルと撫でられた。
「うん…、オレにも分かる。」
眩い光とカシャンといった解錠する音が聞こえて、顔をあげる。
「オレもゼンと生きたいだけだ」
首が軽くなったのを感じて洗面台の鏡を見た。
先程まであった俺の首に巻かれた奴隷紋が消えている。
「なぁ、ゼン。オレをまたお前の奴隷にしてくれないか?」
俺の手を取り指と指を絡ませて、ローレンスは上目遣いに首をこてんと傾げた。
服に付いた土や泥を払い、湯浴み場まで連れて行く。お湯を頭からザバーっと雑に掛け、髪を洗ってやる。あの日、もう随分前のことを思い出す。ローレンスを薄汚い奴隷商から買い上げたばかりの日、熱を出したローレンスを奴隷だと言うのにベッドまで返上して甲斐甲斐しく看病してやった。傷に薬を塗り水浴びをさせて、まるで子育て。その時ばかりは俺だけの美しい魔物だった。
湯船に浸からせている間に着替えやタオルを用意して、汚れた服を石鹸を溶いた水に浸けた。そんなことをしているうちにローレンスが湯浴みから上がったようで、びちゃびちゃのまま出てきた。喋りもせず、ぼんやりと立ち尽くすローレンスが、なんだか本当に子どもみたいでかわいく思えた。
「ローレンス、風邪ひくぞ」
動く気のない青年を前に俺は呆れたような顔をして、髪を拭いてやる。
でも、無意識に頬が緩んだ。
「怪我もなさそうだし、安心した。転がってたオッサン?とお前にそっくりな男、どっちもローレンスが倒したのか?」
そう問えば、ローレンスは小さく首を横に振った。
「えっ、まさかミールちゃん一人で?」
そう聞くと、今度はウンウンと首を縦に振る。
怖ぇ~~~~~、俺、ミールちゃんに嫌われて無くて良かったぁっ。
そういえば、女王様とか何とか言われてた。
ミールちゃん凄いなぁ。
ギルドの仕事は、辞めてしまうのだろうか。
とにかく、新たな魔王の誕生に魔族達は悦んでいた。
おまけにディー先生なんて…
『はぁっ、はぁ、はぁ……っ‼ 僕とルジャンドル様の子が魔王になるなんてぇっ…‼ 興奮で勃起が止まらないよっ!! 今すぐっ、今すぐっルジャンドル様の墓石に射精したいぃいっ!! あっ♡どうしよう、果ててしまいそうですっ。貴方の所に行く前に果ててしまいそうですっ♡でるぅっでるぅっ♡♡♡』
股間を押さえながら、興奮した様子で頬を赤らめるディー先生の姿を思い出し、背筋に悪寒が走った。
あの人、マジでヤバイ魔族じゃん。
「ん?なんだ?」
思い出しながら髪を拭いていると、ローレンスに腕を掴まれた。
「ゼンが…、オレとの奴隷契約を破棄した時、、怖かった」
腹にくっつくみたいに抱きつきながらローレンスが言う。
「『お前なんか、もう必要ない』と捨てられた気がしたのだ…。奴隷契約を破棄する理由など、それ以外何もない」
「そういうんじゃないぞっ」
「分かってる…、オレ自身そうではなかったと思いたい。」
「本当だ! ローレンスを自由にしてやるべきだと思ったんだ!ローレンスとの関係は、ローレンスが俺の奴隷だからこそ成り立っていると思うと不安だった。奴隷というだけで心まで俺のものにすることはできないだろう。ローレンスの魔力が強くなってしまったら、ローレンスは俺から離れてしまうじゃないかって、きっとローレンスには俺なんて必要ないんだって……。ずっと、虚しかった。」
だって俺、いつの間にかお前のことすげぇ好きになってたんだぜ。
感情が高ぶってだんだんと涙が溢れてくる。
「それでも、それでもお前が愛しかったから!! 俺なんかのこと抱かせて、、汚してしまったような気がして、、、そんな風にローレンスを利用したくなかった! 本当は奴隷と主なんて関係、ずっと嫌だったんだ。俺はただ、ローレンスと一緒に生きたいだけだった!」
ただ、ローレンスと家族になれたら良かった。
額を手で覆って、涙に震える身体をローレンスに抱き締められる。
そうして、首をスルスルと撫でられた。
「うん…、オレにも分かる。」
眩い光とカシャンといった解錠する音が聞こえて、顔をあげる。
「オレもゼンと生きたいだけだ」
首が軽くなったのを感じて洗面台の鏡を見た。
先程まであった俺の首に巻かれた奴隷紋が消えている。
「なぁ、ゼン。オレをまたお前の奴隷にしてくれないか?」
俺の手を取り指と指を絡ませて、ローレンスは上目遣いに首をこてんと傾げた。
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