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25話:王の君臨
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荒れ果てた土地、永遠に夜の続く空の下に聳え立つ城も城下町もチラチラと火を揺らしながらすっかり無くなってしまったみたいだ。
「ローレンス!!」
ポッカリと丸く陥没したそこには、ぐったりと倒れた老人とローレンス。俺は血の気が引くのを感じながら走り寄った。人形のように転がったローレンスを抱き寄せるが動かない。瞼は固く閉じられ、頬や手は冷たかった。
「ああ、残念、見逃してしまったみたい」
「あっ…、ぁあ、そんな、うそだ、、」
ゆさゆさと揺するも反応はない、呼吸も感じられない。ドッドッドと心臓が嫌な音を立てる。呼吸が段々浅くなって、頭の中に靄がかかった。
いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。
「起きろ!! ローレンス!! ローレンス!!」
「ゼン」
後方から声がした、聞き慣れた声が。
振り向けば、そこには、またローレンスが居る。
「ろ、ローレンス?」
「ゼン、オレとソレの見分けがつかないか」
そう言われ、ハッと腕の中の男を覗く。その男は、髪色や顔立ちこそローレンスと瓜二つであるが、よく見ると髪の長さや服装が違う。どうやら焦って見間違えてしまったようだ。俺は、ほっと胸を撫で下ろし肩の力が抜けていくのを感じた。
「ゼン…、オレは、ここに居るぞ」
ローレンスの声が震えているように聞こえて、また振り返る。すると、ローレンスはヨタヨタとおぼつかない足取りで俺の方まで近づいてくる。だから俺も腕の中の男を放って転がし、立ち上がった。こちらに手を伸ばしながら、赤子のように立ち上がり歩き向かってくるのを不思議に思いながら、俺は腕を広げた。
「ぜん、ぜんっ…」
それほど遠くはない。
けれどそれほど近くもない。
その距離は実にもどかしく、1キロ先に感じた。
やっと、俺の元へ辿り着いたローレンスは俺にしがみつくみたいに抱きついた。
それからズルズルと足下まで下がってきて、両手で膝や腿をぎゅうぎゅうとする。
「ローレンス…? 怪我は、ないか…?」
ローレンスの体温に安堵して、サラサラとした美しい銀髪を梳く。
怪我はないかと聞くと、ローレンスは俺の足にグリグリと頭を押し付けながら首を振った。
一体、どうしてしまったのだろう。
ローレンスは、グスングスンと鼻をすすりながらメソメソ泣いて、泣き止まないではないか。
さながら幼い子ども。膝がじんわりと涙で温まってくる。
俺は、その小さくも思える身体を抱き上げた。
幼児を抱っこするみたいに首に腕を回させる。
ローレンスは、それに素直に従って、子猿みたいに俺の胸に抱きついた。
ちょっと、笑える。おまけに可愛い。
ローレンスの愛らしさに悶えていると、突然フォルディがカクンと跪いた。
「嗚呼、魔王陛下! 今日此処で王位に君臨されるとは!!」
「気持ち悪いからやめて」
「その瞳!! 本当にルジャンドル様にそっくりだよぉっ!」
「魔王様!!」
「魔王陛下!」
「魔王様ぁっ!」
「魔王様!!」
「魔王女王陛下!!」
ワラワラと何処からともなく魔族が湧いてくる。
魔族は皆、ミールに向かって跪いたり、頭を地につけたりしている。
「全ての魔物たちよ! 今此処に新たな魔王様が君臨なされた! 悦べ! そして平伏すが良い!」
「ローレンス!!」
ポッカリと丸く陥没したそこには、ぐったりと倒れた老人とローレンス。俺は血の気が引くのを感じながら走り寄った。人形のように転がったローレンスを抱き寄せるが動かない。瞼は固く閉じられ、頬や手は冷たかった。
「ああ、残念、見逃してしまったみたい」
「あっ…、ぁあ、そんな、うそだ、、」
ゆさゆさと揺するも反応はない、呼吸も感じられない。ドッドッドと心臓が嫌な音を立てる。呼吸が段々浅くなって、頭の中に靄がかかった。
いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。
「起きろ!! ローレンス!! ローレンス!!」
「ゼン」
後方から声がした、聞き慣れた声が。
振り向けば、そこには、またローレンスが居る。
「ろ、ローレンス?」
「ゼン、オレとソレの見分けがつかないか」
そう言われ、ハッと腕の中の男を覗く。その男は、髪色や顔立ちこそローレンスと瓜二つであるが、よく見ると髪の長さや服装が違う。どうやら焦って見間違えてしまったようだ。俺は、ほっと胸を撫で下ろし肩の力が抜けていくのを感じた。
「ゼン…、オレは、ここに居るぞ」
ローレンスの声が震えているように聞こえて、また振り返る。すると、ローレンスはヨタヨタとおぼつかない足取りで俺の方まで近づいてくる。だから俺も腕の中の男を放って転がし、立ち上がった。こちらに手を伸ばしながら、赤子のように立ち上がり歩き向かってくるのを不思議に思いながら、俺は腕を広げた。
「ぜん、ぜんっ…」
それほど遠くはない。
けれどそれほど近くもない。
その距離は実にもどかしく、1キロ先に感じた。
やっと、俺の元へ辿り着いたローレンスは俺にしがみつくみたいに抱きついた。
それからズルズルと足下まで下がってきて、両手で膝や腿をぎゅうぎゅうとする。
「ローレンス…? 怪我は、ないか…?」
ローレンスの体温に安堵して、サラサラとした美しい銀髪を梳く。
怪我はないかと聞くと、ローレンスは俺の足にグリグリと頭を押し付けながら首を振った。
一体、どうしてしまったのだろう。
ローレンスは、グスングスンと鼻をすすりながらメソメソ泣いて、泣き止まないではないか。
さながら幼い子ども。膝がじんわりと涙で温まってくる。
俺は、その小さくも思える身体を抱き上げた。
幼児を抱っこするみたいに首に腕を回させる。
ローレンスは、それに素直に従って、子猿みたいに俺の胸に抱きついた。
ちょっと、笑える。おまけに可愛い。
ローレンスの愛らしさに悶えていると、突然フォルディがカクンと跪いた。
「嗚呼、魔王陛下! 今日此処で王位に君臨されるとは!!」
「気持ち悪いからやめて」
「その瞳!! 本当にルジャンドル様にそっくりだよぉっ!」
「魔王様!!」
「魔王陛下!」
「魔王様ぁっ!」
「魔王様!!」
「魔王女王陛下!!」
ワラワラと何処からともなく魔族が湧いてくる。
魔族は皆、ミールに向かって跪いたり、頭を地につけたりしている。
「全ての魔物たちよ! 今此処に新たな魔王様が君臨なされた! 悦べ! そして平伏すが良い!」
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