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異世界転生編
1.異世界に転生するよ
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――気が付けば、そこは辺り一面、白い光が支配する空間だった。
(……?)
とは言うものの、周りの風景をちゃんと目で見ているという感じではない。朝目が覚めた時に眩しい光を見て、妙に視界がぼんやりとしているような……そんな感じともまた違う。そもそも視界自体が曖昧な印象すら受ける。
視界にばかり気を取られて気付かなかったが、この空間内では音もしていなかった。それこそ耳が痛くなるようなともいうべきほどのものだったが、それも耳で聞いても聞こえないとはっきり言えるようなものではない。
言うなれば五感が丸ごとひとつに統合された――何というか、全身がそういうものだと感じ取っているような、そんな感覚。
(何だここ)
そもそも俺は何でこんなところにいるんだろう。確か俺は地方に出張に行って、その帰りの深夜バスで少しでも睡眠時間を確保しようと――
確保しようと、したところで記憶が途切れている。何か身体もふわふわしてるし、もしかしてリクライニングも倒さず寝てしまってたか? そんなに疲れてたか……って、まあ疲れてたんだろうな――
「水元統吾さん」
(あ、はい)
突然呼ばれて思わず返事を……いや、「あ、はい」じゃない。
というか普通に返事しようとしたけど声が出ない。心で思ったことがそのまま音量強めになったみたいな感じだ。
「あ、そのままでいいですよ。私にはあなたの声が聞こえています。あなたが考えたことが私にだけ聞こえるよう音声化されますので」
ほう、なるほどそりゃ便利……って、それじゃまさかさっきまでの独白……
「はい、全て聞こえていました。先程の返事より小さい声でぼそぼそと」
ぎゃああああ!! それじゃまるで独り言の絶えない危ないおっさんじゃねえか!!
「申し訳ありません、でもお気になさらず。こうした念話が強制される空間ではよくあることですし、今まで音声による会話しかしたことがない方はなおのことですから」
そう言っていただけると助かります、ではこのままお話しするということで……ところでおたくはどちらさま? 声の感じからすると女性のように感じますが。
「私はこの世界を管理する、人間の方々に倣うならば神様と呼ばれる存在です。性別は固定していませんので、女性にも男性にもなりますが――こういう形で人間の前に出るときは異性になるパターンが多いです」
かみさま、神様ですか。
「まあ信じられないのも無理はありませんけどね。人間の方々は皆さんそうでしたし、遭遇したことのない存在を警戒するのは生物としては自然ですし」
……で、その神様はこの水元統吾めに一体どういったご用向きで?
「そう露骨に警戒されてもアレですけど……水元統吾さん、あなたにお伝えしなければならないことがあります。悪い話と良い話があるのですが、どちらからお聞きになりたいですか?」
何かよくあるセリフというか嫌な予感しかしないんですが……取り敢えず悪い方からでお願いします。
「分かりました。では単刀直入に申し上げますが、水元統吾さん、あなたは日本時間23時に高速バスの事故に巻き込まれて死亡いたしました。即死だったがゆえに苦しまずに済んだのがせめてもの救い、というレベルでした」
……え、マジですか? これ夢じゃないの? 今も俺はバスの座席で眠ってますーとかそういう話じゃないの?
「はい、残念ながら……一寸先は闇とは人間の方々もよく口にしていましたが、それにしてもこれはおいたわしいことです」
……マジか。まあ言われてみれば今のところ俺に自殺願望はなかった辺り考えると、こんなこと聞かされる夢を見るとも考えづらいし……
全身の感覚とかを鑑みても、うん、本当のような気がしてきた。
ってことはもう俺は日本に帰れないのか……ってちょっと待てよ?
あの、さっき良い話もあるって言ってましたよね? これが悪い話で……
「あ、はい。その通りです。ただもし未練やら吐き出すことなどあるならもうちょっとお付き合いいたしますよ? そういったのを溜めておくと魂によくありませんので」
あ、結構です。考えてみればというか考えなくても特別に趣味もなかったですし……友人もいなかったですし。ずっと仕事ばかりの毎日だったので吐き出すとなるとそれ関連になっちゃいますけどそれってもう関係ないですよね?
「え、ええ、まあ確かにそうですね……」
だから、いま思いつく未練というのも実のところないんです。それよりさっき言ってた良い話っていうのを聞かせてほしいんですけど?
「……分かりました。それでは良い話の方を。
水元統吾さん、ご愁傷様でした。そしておめでとうございます! あなたは日本人特権により特別転生の対象となります!」
良い話ってどんなレベルかと思ったらとんでもないパワーワードが飛び出した!?
(……?)
とは言うものの、周りの風景をちゃんと目で見ているという感じではない。朝目が覚めた時に眩しい光を見て、妙に視界がぼんやりとしているような……そんな感じともまた違う。そもそも視界自体が曖昧な印象すら受ける。
視界にばかり気を取られて気付かなかったが、この空間内では音もしていなかった。それこそ耳が痛くなるようなともいうべきほどのものだったが、それも耳で聞いても聞こえないとはっきり言えるようなものではない。
言うなれば五感が丸ごとひとつに統合された――何というか、全身がそういうものだと感じ取っているような、そんな感覚。
(何だここ)
そもそも俺は何でこんなところにいるんだろう。確か俺は地方に出張に行って、その帰りの深夜バスで少しでも睡眠時間を確保しようと――
確保しようと、したところで記憶が途切れている。何か身体もふわふわしてるし、もしかしてリクライニングも倒さず寝てしまってたか? そんなに疲れてたか……って、まあ疲れてたんだろうな――
「水元統吾さん」
(あ、はい)
突然呼ばれて思わず返事を……いや、「あ、はい」じゃない。
というか普通に返事しようとしたけど声が出ない。心で思ったことがそのまま音量強めになったみたいな感じだ。
「あ、そのままでいいですよ。私にはあなたの声が聞こえています。あなたが考えたことが私にだけ聞こえるよう音声化されますので」
ほう、なるほどそりゃ便利……って、それじゃまさかさっきまでの独白……
「はい、全て聞こえていました。先程の返事より小さい声でぼそぼそと」
ぎゃああああ!! それじゃまるで独り言の絶えない危ないおっさんじゃねえか!!
「申し訳ありません、でもお気になさらず。こうした念話が強制される空間ではよくあることですし、今まで音声による会話しかしたことがない方はなおのことですから」
そう言っていただけると助かります、ではこのままお話しするということで……ところでおたくはどちらさま? 声の感じからすると女性のように感じますが。
「私はこの世界を管理する、人間の方々に倣うならば神様と呼ばれる存在です。性別は固定していませんので、女性にも男性にもなりますが――こういう形で人間の前に出るときは異性になるパターンが多いです」
かみさま、神様ですか。
「まあ信じられないのも無理はありませんけどね。人間の方々は皆さんそうでしたし、遭遇したことのない存在を警戒するのは生物としては自然ですし」
……で、その神様はこの水元統吾めに一体どういったご用向きで?
「そう露骨に警戒されてもアレですけど……水元統吾さん、あなたにお伝えしなければならないことがあります。悪い話と良い話があるのですが、どちらからお聞きになりたいですか?」
何かよくあるセリフというか嫌な予感しかしないんですが……取り敢えず悪い方からでお願いします。
「分かりました。では単刀直入に申し上げますが、水元統吾さん、あなたは日本時間23時に高速バスの事故に巻き込まれて死亡いたしました。即死だったがゆえに苦しまずに済んだのがせめてもの救い、というレベルでした」
……え、マジですか? これ夢じゃないの? 今も俺はバスの座席で眠ってますーとかそういう話じゃないの?
「はい、残念ながら……一寸先は闇とは人間の方々もよく口にしていましたが、それにしてもこれはおいたわしいことです」
……マジか。まあ言われてみれば今のところ俺に自殺願望はなかった辺り考えると、こんなこと聞かされる夢を見るとも考えづらいし……
全身の感覚とかを鑑みても、うん、本当のような気がしてきた。
ってことはもう俺は日本に帰れないのか……ってちょっと待てよ?
あの、さっき良い話もあるって言ってましたよね? これが悪い話で……
「あ、はい。その通りです。ただもし未練やら吐き出すことなどあるならもうちょっとお付き合いいたしますよ? そういったのを溜めておくと魂によくありませんので」
あ、結構です。考えてみればというか考えなくても特別に趣味もなかったですし……友人もいなかったですし。ずっと仕事ばかりの毎日だったので吐き出すとなるとそれ関連になっちゃいますけどそれってもう関係ないですよね?
「え、ええ、まあ確かにそうですね……」
だから、いま思いつく未練というのも実のところないんです。それよりさっき言ってた良い話っていうのを聞かせてほしいんですけど?
「……分かりました。それでは良い話の方を。
水元統吾さん、ご愁傷様でした。そしておめでとうございます! あなたは日本人特権により特別転生の対象となります!」
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