転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

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放浪準備編

28.魔動車の設計をするよ

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 お互いに、というより主にエリナさんが思うところを吐き出して、俺の考えを納得してもらったところで放浪準備を再開。……なんだけど。

「そう言えば、今まで材料の話ばかりしてましたけどどんな魔動車を作ろうと思ってるんですか?」
「んー、杉山村に行ったときも言ったと思うけど、基本的にはキャンピングカーのイメージで……」
「キャンピングカーでもどれくらいの規模のものを作ろうと思ってるかによって準備するものが違ってくると思うんですけど」

 全くであります。正直エリナさんに言われなくてもその辺りの話は当然分かってるんだけど、いまいちイメージが持てないからどうしようかって思ってたんだよね……俺自身は少し大きめの、日本人がイメージする一般的な白いキャンピングカーみたいなのでいいと思うんだけど……
 でも住むのは俺だけじゃないんだよな。それに住環境をどのくらい充実させればいいかも考えなくちゃならないし。

「まあ、キャンピングカーと言ってもほとんどをそこで過ごすことになるわけだからある程度の規模で作っておく必要はあると思うけど……エリナさんは暮らすうえで何か外せないものってある?」
「サウナ! サウナは絶対つけてください!」

 ですよね、即答だよね。とはいえキャンピングカーにサウナなんかつけたら大変な事になると思うんだけどその辺は……ちゃんと分かってるんだよね?

「というか、キャンピングカーというより移動する一軒家みたいな感じにしちゃってもいいと思うんですけど」
「ちょっと待って、どんだけの規模の作ろうとしてんの」
「大型バス位の幅で高さは4メートルほど、長さは10メートルで想定してましたけど」
「結構大きいな! ……まあ、この世界交通法規は前世より緩いけど、それにしたってあまり大きすぎても運転が難しくなるよ?」
「それは……確かにそうかもしれませんけど」

 とは言え確かにサウナがあれば俺も嬉しい。……折り畳み式でうまく車体後部に接続できるようにするか。フィンランド発のサウナテントなんてものがあったみたいな話も、前世で聞いたことがあることだし。

「車体の大きさは幅2.2メートル、長さ7メートル、高さは大体3メートルくらいのキャブコンタイプがいいだろう。中にセットするのはベッドとダイニングとキッチンとトイレと……」
「あの、それなんですが……その構造、前に私も本で見たことがあるんですが、日本のワンルームマンションみたいに出来ませんか?」
「ワンルームマンションみたいに?」
「はい、朝から夕方まではテーブルを広げて、夜にはテーブルを折りたたんで布団を敷いて……きっとその方がいろいろスペースを有効利用出来ると思うんです」
「……なるほど、確かにそうかもしれない」

 まあ実際キャンピングカーなんか使ったことないからわからないんだけど、確かに最初から色々固定でセッティングされているよりはそっちの方がいいかもしれない。居住空間を広々と使える気もするし……



「まあ居住空間の話はともかく、基本的な構造に関してももっと確認しないといけないよね……」

 ある程度案を出し合ったところで、総合職ギルド上のレストランに行って夕食をとる。その席で今更感満載のことを言ってみると、エリナさんが何やら不思議そうな顔をしてそれに答えた。

「基本的構造も何も、今のだってほとんど前世であった自動車と変わらないんじゃないんですか? 用途そのものだって自動車と変わらないんだし」
「いや、街中で走ってるのを見る限り重心のかけ方が微妙に違う。多分車輪の問題が大きいんだろうけど」

 この街には路面電車にトロリーバス、そして自家用車……はあまり見えないけど資材運搬用に使っているであろう魔動車は結構ある。けど、鉄の車輪の路面電車を除いて基本的に構造が馬車か何かの延長線上みたいな感じなんだ。
 まあ前世では馬車だってタイヤを使っているけど、この世界の車輪は基本的に木の車輪の接地面を鉄で補強しているタイプのもので、車体への、および車輪への衝撃のかかり方がタイヤ付きのそれとおそらく違う。
 だからタイヤを作ろうとしている俺たちはそのことも考えて作らなければいけないんだけど……そこまでは流石にエリナさんもわからないか。

「その辺りも含めて杉山村の人に聞いてみるのがよさそうかな。あそこの中にも自動車を専門にしていた人たちがいるかもしれないし。もしいなかったら、自分で何とかしてみるけど」
「何とか出来るんですか?」
「流石に専門の人には負けるだろうけど、そうじゃなきゃそもそも魔動車を作ろうなんて思わないよ」
「それは……そうかもしれませんけど」

 伊達に転生特典でエキスパート級のあらゆる生産魔法なんてもらってるわけじゃない。もしかしたら自分が気付いていないだけで専門の人と同レベルの知識と能力を既に持っているのかもしれないけど、それに期待しすぎるのもよくない。そもそも俺がエキスパート級に修めているのは魔法であって、スキルはまだちゃんと把握しきれていないんだから。
 これを機にその辺りのこともちゃんと確認しておく必要がありそうだ。……登録審査の様子を見るに、スキルについてもそれなりに修めている可能性が高いけど。

「……でも、そうなるとこの場ではやっぱり基本的構造より居住空間の話をした方が私はいいと思います」
「何で?」
「何でも何も、私はその構造については手助け出来そうにないですし……それに……」
「それに?」
「……ですから」

 ……よく聞こえない。もともとの性格がそんな感じだったのか、最近結構堂々とした態度をとっているエリナさんとは思えない態度だ。何がそんなに言いにくいんだろう。

「だから、アレですってば! 新婚さんが新居をどうしようかいろいろ相談したり頭悩ませたりするじゃないですか! あ、この状況何かそれに似てるなーって思ったら恥ずかしさもさることながら何だか楽しくなっちゃってしょうがなかったんですから!
 しょうがないじゃないですか、そんなの! ここにこれを置きたい、アレはあそこに付けたい、そんな風に考えてたら段々……って、何でトーゴさん笑ってるんです?」
「え? ああ、笑ってたか。ごめんごめん。……何かちょっと嬉しくなっちゃってさ、エリナさんがそんな風に言ってくれるの」

 そりゃそうだ、俺の方こそなんでそんな簡単なことに気が付かなかったんだろう。よくよく考えてみれば居住空間の相談なんてエリナさんの言う通り新居の相談そのものだ。
 そもそも俺が作ろうとしているのはキャンピングカーの体をなしてはいるが自分の理想の住居そのものじゃないか。それをたまたま移動出来るように作るというだけの話だ。だったら魔動車の基本的な構造と居住空間はどっちが先だの後だのじゃなくて並行して考えるべきことなんだ。
 ……しかしそれにしても……

「まずいな」
「え? 何がですか?」
「エリナさんがそんな風に言うもんだから、俺まで何か恥ずかしくなってきたぞ」
「え、ちょっと、私のせいじゃありませんよ! そもそも一目惚れなんて言ってくれたのはトーゴさんの方じゃないですか! まさか今更アレは出まかせでしたーなんて言うつもりじゃ」
「いやそれは紛れもない事実だからいいんだけど!? 改めて面と向かって言われたらとんでもなくとんでもないことをやってる気がしてならなくなってだな!?」
「トーゴさん、落ち着いてください。言葉が変になってます」

 ……ちなみに後で総合職ギルドの人に聞いた話だけど、俺たちのこのやり取りは物凄く生暖かい目で周りから見られていた、らしい。そりゃどう見ても付き合ってる男女の痴話喧嘩だもんな……



---
 お代はラヴで結構です。カーッペッ(酷
 でもエリナさんめっちゃ可愛いので許す(親バカ

 次回更新は11/29の予定です!
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