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放浪開始・ブドパス編
36.温泉に入るよ
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そんなわけで取り敢えずは温泉に入ることにしたのである。服飾ギルドでタオルとバスタオルを、製薬ギルドで石鹸をそれぞれ買って3人で街を歩く。この街では特別大きな温泉施設が市内中心部だけでも4つはあるらしく、歩いていればいずれどこかには当たるだろう……なんてとんでもなくアバウトな行動をとっていた。
「それにしても製薬ギルドで石鹸が売ってるとは思わなかったな……基礎材料ギルドで扱ってても違和感なさそうだったけど。あそこ錬金術っぽいし」
「石鹸は専ら衛生面で使うわけだから、製薬ギルドが一番適当なんだと思いますけど。それよりタオルのごわごわ感は凄いですね……」
「材質がアレなのかな? そこも調べて、自分で作れれば作ってみよう」
織物というより編み物の領域だろうけど、俺の生産能力をもってすればそこまで難しいものではなさそうなんだよな……というかその手のものが作れればシャツやパンツも作る事が出来そうだな、そっちも自作してみるか。
「おふたりはお風呂お好きなんですか? って、ミズモトさんの方はお好きでなければお風呂って単語に食い気味になりませんよね」
「……だって。俺にとってはもうアレだ、人生の必需品ですかね。最近ちゃんと湯船に浸かれなかったので楽しみですよ。エリナさんは?」
「私はどちらかというとサウナの方が好みですけどね、浸かるのはプールで。あ、サウナってレニさん分かりますか? 蒸気を使った蒸し風呂なんですけど」
「ですって」
「蒸気を使った蒸し風呂? ……もしかしてタルマの事かな。あ、タルマってのは高地マジェリア語表現で、こっちの方ではフンマーっていうらしいですけど」
「だって。……それにしてもマしか合ってない。本当に全然単語が違うんですね」
もっともそれを言ってしまえばサウナだって元はと言えばフィンランド語だし、どこの言葉とも共通項がないからエリナさんにとっては今更にすぎるけど……なんて考えてエリナさんの方を向くと、気のせいか少しだけ難しそうな顔をしている。
「エリナさん、どうかしたの?」
「え? いいえ、何でもないですよ? ただお風呂楽しみだなって、それとジェルマ語が通じればいいなあって」
ああまあ、言われてみれば確かに。
でもその辺りは多分大丈夫なんじゃなかろうか。看板にもジェルマ語が併記されていたように、マジェリアの人たちもそれなりにジェルマ語が喋れるわけだし。ましてやここは首都ブドパスだ、前世の英語に相当する言葉が通じないとも思えない。
「まあ通じなかったら通じなかったで雰囲気で大丈夫でしょ、男女の入り口間違えるとかじゃなければ」
「それ間違えるか実は混浴でしたってフラグなんじゃ」
「はははそんな事あるわけないじゃないですかー」
……まあ実際そんなことあるわけもなく。入口でエリナさんたちと別れた俺はひとりで都内の公衆浴場を堪能していた。
イメージ通りというか何というか全体的に石造りで、洗い場は浴槽から十分離れていて清潔感がある。臭いからすると泉質は硫黄泉で、源泉かどうかは分からないもののかけ流しにしてある。
「それにしてもサウナもあるとは……と、このロープは桶に繋がってるのか? ああ、なるほど。引っ張ったら桶の中の水が落ちてくる仕組みなのか……」
これはエリナさんが喜びそうな装置だなー、フィンランドにもこんなのあったみたいな事言ってた気がしたし。サウナも……スチームか。ここは流石に真水を使うんだな。俺だって硫黄泉使って死にたくはない。
「そう言えば向こうは向こうでちゃんとやってるかな」
この温泉の受付自体はロビーにあったんだけど、何か細かい受付が脱衣所の中にあったからそこで何かしらのトラブルになってないか心配だ。……まあエリナさんはジェルマ語を喋れるし、レニさんだってお風呂のことくらいはジェスチャーか何かでうまくやってるだろう。
もしくはレニさんの喋ってる言葉が何かと互換性があったりするとか……そこまでは流石に期待出来ないかな。
さてと、何にせよ久々の湯船を堪能するぞー!
「わーすごーい! フィンランドとはちょっと違うけどサウナもちゃんとある!」
トーゴさんと入口で別れて、脱衣所の受付で館内着と入浴着を貸してもらって浴場に入ったら、思った以上に温泉してた。卵の腐ったような臭いは硫黄泉かな? 前世ではほとんど嗅いだことのない臭いだけど、確か火山の多いアイスランドだとこの泉質がデフォルトだって聞いたことがあった気がする。
で、ちゃんと私の慣れ親しんだサウナもあってもうここ最高。流石に温泉のお湯を使うわけにもいかず真水で、それも時間を区切って自動で注水してくれるハイテク、室内温度も私の知ってるサウナよりかなり高いけどもう完璧。
洗い場は浴槽やサウナから離れてて清潔を保ってるし、さりげなく男女別らしいプールまであるのがもう至れり尽くせりー。
……なんだけど、ひとつ問題が。
「……?」
「そ、それにしても……何で入浴着こんなデザインなの!? これじゃ真っ裸より恥ずかしいよ……!」
何せ前は胸元から太ももくらいまで覆ってるものの、後ろは首、胸、腰とひもで止めてあるだけでお尻ですら全然隠れてない。これじゃまるで裸エプロンそのものだ。いくらこのまま温泉やサウナに入ることを想定していると言っても、もうちょっとやりようがあったんじゃないかな!?
これじゃお湯や汗で濡れたら、下が、み、みえ……
あ、そう言えばトーゴさんも同じように入浴着着てるのかな。っていう事は男性だから多分覆ってるのは腰から太ももくらいまでのはずだからだからつまりダメダメダメダメダメダメ!!!! 今この事について考えちゃダメダメダメダメ!!!
「ミューサ エリナ? オ リュ リート?」
「え? ああ、何でもナイデスヨ、あ、あはは……」
相変わらず言ってることはパッと聞き分からないけど、何となく言ってる事はわかる。で、内容についてももしかしたら……なんて思うところはあるけど、取り敢えず体冷えちゃうし先にサウナ入ろうそうしよう。
「レニさん、体洗い終わった? いろいろお話したいし、サウナ入ろう?」
「……!」
レニさんの息をのむ音を背中に受けて、私はサウナのドアを開ける。ああ、やっぱり結構温度高いなあ。湿度も高いけど。でもこれくらいの方がもしかしたら後で冷水をかぶっても風邪ひかなくて済むかもね……
まずはサウナで温まって冷水シャワーでさっぱりしてからプールかなー。湯船はそれからでもいいや。取り敢えずは空いてるところに並んで座って、と……
「ふー、やっぱりサウナ気持ちいー……さてと、レニさん? 私の言葉、少し分かる?」
「……少し、分かる。やっぱり、少し喋れる?」
「いえ、貴女たちの……ええと、高地マジェリア語? は、喋れないわ」
トーゴさんと違って私にはそんな器用な真似は出来ない。あの人ならそういうスキルだって謙遜するだろうけど、そんなのを転生の時に選ぶ余裕がある時点で凄いと思う。とにかく、この娘の言っていることを私は全部理解することなんか出来ないし、この娘の言葉を喋ることも出来ない。
では私は何をしているのかというと……それこそ普通にしゃべっているだけだ。
ただしジェルマ語ではなく英語で。
甲高い声に気をとられて全く言葉が通じない、どうしよう、と思いかけてたけど、よくよく聞いてみると発音の感じが母音をしっかり発音するフランス語って感じで、言葉そのものはどうにも英語に似通っているように感じたのだ。
で、ダメもとで英語で喋ってみるとこの通り。トーゴさんはレニさんの言葉を片っ端から翻訳しちゃうから気付かなかったんだろうなー。後で教えておいてあげよ。
それにしても全く前世の言葉と互換性がないはずこの世界の言葉に何でこんな共通点があるのかはちょっと気になるところだけど、そこら辺は後でもいいか。
「あの、エリナ、さん。あなたの言葉、アルブランエルフ語」
「アルブランエルフ?」
後でもいいかって思った矢先にそんな単語出してこられたらどう考えても気になっちゃうでしょうが!
---
温泉回です。
何か微妙に伏線っぽい内容もあったけど取り敢えずエッッッッッッッッッッ
そして温泉にはしゃぐエリナさん可愛い(
次回更新は12/23の予定です!
「それにしても製薬ギルドで石鹸が売ってるとは思わなかったな……基礎材料ギルドで扱ってても違和感なさそうだったけど。あそこ錬金術っぽいし」
「石鹸は専ら衛生面で使うわけだから、製薬ギルドが一番適当なんだと思いますけど。それよりタオルのごわごわ感は凄いですね……」
「材質がアレなのかな? そこも調べて、自分で作れれば作ってみよう」
織物というより編み物の領域だろうけど、俺の生産能力をもってすればそこまで難しいものではなさそうなんだよな……というかその手のものが作れればシャツやパンツも作る事が出来そうだな、そっちも自作してみるか。
「おふたりはお風呂お好きなんですか? って、ミズモトさんの方はお好きでなければお風呂って単語に食い気味になりませんよね」
「……だって。俺にとってはもうアレだ、人生の必需品ですかね。最近ちゃんと湯船に浸かれなかったので楽しみですよ。エリナさんは?」
「私はどちらかというとサウナの方が好みですけどね、浸かるのはプールで。あ、サウナってレニさん分かりますか? 蒸気を使った蒸し風呂なんですけど」
「ですって」
「蒸気を使った蒸し風呂? ……もしかしてタルマの事かな。あ、タルマってのは高地マジェリア語表現で、こっちの方ではフンマーっていうらしいですけど」
「だって。……それにしてもマしか合ってない。本当に全然単語が違うんですね」
もっともそれを言ってしまえばサウナだって元はと言えばフィンランド語だし、どこの言葉とも共通項がないからエリナさんにとっては今更にすぎるけど……なんて考えてエリナさんの方を向くと、気のせいか少しだけ難しそうな顔をしている。
「エリナさん、どうかしたの?」
「え? いいえ、何でもないですよ? ただお風呂楽しみだなって、それとジェルマ語が通じればいいなあって」
ああまあ、言われてみれば確かに。
でもその辺りは多分大丈夫なんじゃなかろうか。看板にもジェルマ語が併記されていたように、マジェリアの人たちもそれなりにジェルマ語が喋れるわけだし。ましてやここは首都ブドパスだ、前世の英語に相当する言葉が通じないとも思えない。
「まあ通じなかったら通じなかったで雰囲気で大丈夫でしょ、男女の入り口間違えるとかじゃなければ」
「それ間違えるか実は混浴でしたってフラグなんじゃ」
「はははそんな事あるわけないじゃないですかー」
……まあ実際そんなことあるわけもなく。入口でエリナさんたちと別れた俺はひとりで都内の公衆浴場を堪能していた。
イメージ通りというか何というか全体的に石造りで、洗い場は浴槽から十分離れていて清潔感がある。臭いからすると泉質は硫黄泉で、源泉かどうかは分からないもののかけ流しにしてある。
「それにしてもサウナもあるとは……と、このロープは桶に繋がってるのか? ああ、なるほど。引っ張ったら桶の中の水が落ちてくる仕組みなのか……」
これはエリナさんが喜びそうな装置だなー、フィンランドにもこんなのあったみたいな事言ってた気がしたし。サウナも……スチームか。ここは流石に真水を使うんだな。俺だって硫黄泉使って死にたくはない。
「そう言えば向こうは向こうでちゃんとやってるかな」
この温泉の受付自体はロビーにあったんだけど、何か細かい受付が脱衣所の中にあったからそこで何かしらのトラブルになってないか心配だ。……まあエリナさんはジェルマ語を喋れるし、レニさんだってお風呂のことくらいはジェスチャーか何かでうまくやってるだろう。
もしくはレニさんの喋ってる言葉が何かと互換性があったりするとか……そこまでは流石に期待出来ないかな。
さてと、何にせよ久々の湯船を堪能するぞー!
「わーすごーい! フィンランドとはちょっと違うけどサウナもちゃんとある!」
トーゴさんと入口で別れて、脱衣所の受付で館内着と入浴着を貸してもらって浴場に入ったら、思った以上に温泉してた。卵の腐ったような臭いは硫黄泉かな? 前世ではほとんど嗅いだことのない臭いだけど、確か火山の多いアイスランドだとこの泉質がデフォルトだって聞いたことがあった気がする。
で、ちゃんと私の慣れ親しんだサウナもあってもうここ最高。流石に温泉のお湯を使うわけにもいかず真水で、それも時間を区切って自動で注水してくれるハイテク、室内温度も私の知ってるサウナよりかなり高いけどもう完璧。
洗い場は浴槽やサウナから離れてて清潔を保ってるし、さりげなく男女別らしいプールまであるのがもう至れり尽くせりー。
……なんだけど、ひとつ問題が。
「……?」
「そ、それにしても……何で入浴着こんなデザインなの!? これじゃ真っ裸より恥ずかしいよ……!」
何せ前は胸元から太ももくらいまで覆ってるものの、後ろは首、胸、腰とひもで止めてあるだけでお尻ですら全然隠れてない。これじゃまるで裸エプロンそのものだ。いくらこのまま温泉やサウナに入ることを想定していると言っても、もうちょっとやりようがあったんじゃないかな!?
これじゃお湯や汗で濡れたら、下が、み、みえ……
あ、そう言えばトーゴさんも同じように入浴着着てるのかな。っていう事は男性だから多分覆ってるのは腰から太ももくらいまでのはずだからだからつまりダメダメダメダメダメダメ!!!! 今この事について考えちゃダメダメダメダメ!!!
「ミューサ エリナ? オ リュ リート?」
「え? ああ、何でもナイデスヨ、あ、あはは……」
相変わらず言ってることはパッと聞き分からないけど、何となく言ってる事はわかる。で、内容についてももしかしたら……なんて思うところはあるけど、取り敢えず体冷えちゃうし先にサウナ入ろうそうしよう。
「レニさん、体洗い終わった? いろいろお話したいし、サウナ入ろう?」
「……!」
レニさんの息をのむ音を背中に受けて、私はサウナのドアを開ける。ああ、やっぱり結構温度高いなあ。湿度も高いけど。でもこれくらいの方がもしかしたら後で冷水をかぶっても風邪ひかなくて済むかもね……
まずはサウナで温まって冷水シャワーでさっぱりしてからプールかなー。湯船はそれからでもいいや。取り敢えずは空いてるところに並んで座って、と……
「ふー、やっぱりサウナ気持ちいー……さてと、レニさん? 私の言葉、少し分かる?」
「……少し、分かる。やっぱり、少し喋れる?」
「いえ、貴女たちの……ええと、高地マジェリア語? は、喋れないわ」
トーゴさんと違って私にはそんな器用な真似は出来ない。あの人ならそういうスキルだって謙遜するだろうけど、そんなのを転生の時に選ぶ余裕がある時点で凄いと思う。とにかく、この娘の言っていることを私は全部理解することなんか出来ないし、この娘の言葉を喋ることも出来ない。
では私は何をしているのかというと……それこそ普通にしゃべっているだけだ。
ただしジェルマ語ではなく英語で。
甲高い声に気をとられて全く言葉が通じない、どうしよう、と思いかけてたけど、よくよく聞いてみると発音の感じが母音をしっかり発音するフランス語って感じで、言葉そのものはどうにも英語に似通っているように感じたのだ。
で、ダメもとで英語で喋ってみるとこの通り。トーゴさんはレニさんの言葉を片っ端から翻訳しちゃうから気付かなかったんだろうなー。後で教えておいてあげよ。
それにしても全く前世の言葉と互換性がないはずこの世界の言葉に何でこんな共通点があるのかはちょっと気になるところだけど、そこら辺は後でもいいか。
「あの、エリナ、さん。あなたの言葉、アルブランエルフ語」
「アルブランエルフ?」
後でもいいかって思った矢先にそんな単語出してこられたらどう考えても気になっちゃうでしょうが!
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温泉回です。
何か微妙に伏線っぽい内容もあったけど取り敢えずエッッッッッッッッッッ
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