転生先が同類ばっかりです!

羽田ソラ

文字の大きさ
90 / 132
ザガルバ編

89.依頼をこなしていくよ

しおりを挟む
 ともあれ、こうして俺にとって初めての冒険者としての活動が始まった。現場は冒険者組合のある所から20キロ以上離れているらしく、普通に言ったら往復だけで半日潰れてしまうとのことで、急遽組合備えの魔動車を貸してもらった。
 何でも、この依頼用にあらかじめ確保しておいたのだとか……いい加減進めないとまずいっていう話は本当だったんだな。

「にしても、現場がこんなに遠いなんて思わなかったぜ。魔動車で1時間弱って、歩いたり馬車だったりじゃ今日中に帰って来れねえよ」
「それはサラさん、国境近くなんだからそれくらい距離もあるでしょう。そもそも泊りがけの依頼もそれなりにあるという話を聞きますが?」
「そういうのはキャンプなりで泊まれる場所が確保出来る状況だけだっつうの。店長は初めてだから知らねえだろうけど」
「そうですね、私も泊りがけは受けた事ありませんけど……トーゴさん、例えば私たちがここまで来るのに通った場所で、キャンプに向いているであろう場所ってどれくらいあったと思う?」
「え、ザガルバまでの道で? ……うーん、あれくらいだったら道から外れてれば大体大丈夫なんじゃないの?」
「ううん、むしろ逆。あの道でキャンプに向いているのは、盗賊が出たあの近辺だけなのよ。私たちの知るレベルで遊びのキャンプをするならともかく、野獣や魔獣にも気をつけなきゃいけないし飲み水の確保も優先課題だし……」
「ああ……なるほど」

 考えてみれば、そうでなければあそこに盗賊が拠点を構えているわけもないか。まさかあれだけ広い中でキャンプに向いてるのがあそこだけとは思わなかったけど。

「だからさー、せっかく休業にするんだからエリナさんたちの魔動車を使わせてもらえればよかったんだよ。寝泊まり前提なんだから便利じゃねえか」
「そ、そんな、サラさん、失礼ですよ」
「というかアレ私たちの家なので……」

 正直あんな俺たちの生活感あふれる魔動車でパーティーメンバー引き連れての依頼に出かけたくはない。まあ快適ではあるけど、あのキャンピングカーに4人も同時に入ったら絶対狭くなるしな。
 俺たちは子供が出来たらその時はどこかに定住する時だと思ってるから、あれくらいの広さで生活していても特に文句はないけど……平たく言えばあれは仮住まいだ。当たり前と言えば当たり前だけど。
 さて、そんな事よりもだ。

「採取するのは合計10か所、採取の仕方はある程度の深さまでの地層を採取器で筒状に……でしたっけ」
「ああ、乗り込む前に採取器は見たと思うけど、使い方分かるかい?」
「ええ、以前同じようなものを使ったことがあるので」

 運転中なのでもう一度確認というわけにはいかないけど、組合の方で渡されたのは前世でも何かの機会に見た事のあるハンディタイプのボーリング機械だった。使い方に関しては……一応、生産スキルの方にそれに相当するものがあったのでごまかしも含めて何とかなるだろう。
 とは言えそんなに大きいものではないためか、電動でも魔動でもなくハンドルねじ込みタイプの手動。こう考えるとステータスの差もさることながら、男手はやっぱり必要だったわけだななんて思ったりもする。
 そして先端から半分くらいがドリルタイプになっているボーリングコアが10本。そこまで長いものではなく、これで掘った組成標本はそのままコアの中に入れた状態で提出してほしいとのことだった。
 ……まあ結構ドリルの部分鋭いし、下手に出そうとすると手を怪我しかねないからかななんて思っている。

「それで最初は国境付近からザガルバに近い方で採取するんですよね。トーゴさん、あとどのくらいかかるかな?」
「そうだねえ……まずは今から10分くらいの場所で条件に合うところを探そう。そこでまず5か所環境の違う場所で掘って、終わったらもう10分走って同じように条件に合う場所で残り5か所を掘るって感じかな。ですかね、サラさん」
「ああ、打ち合わせ通りだな。掘る条件も確認しておこうか」
 出発前に伝えられた採取ポイント……というか、採取ポイントになりうる場所の条件は次の5パターンとのこと。
 すなわち、



 ・周囲に障害物などのないだだっ広い草原
 ・山岳に存在するような硬い岩盤(スキルで軟化させて採取すべし)
 ・太陽光が入らないほど鬱蒼と茂った森林
 ・湖沼河川脇の粒子の細かい土壌
 ・水はけのいい砂場。了解を得られるのであれば砂主体の畑でもいい



 の5パターンらしい。ぱっと見どう見ても近場で全部集まるとは思えないラインナップなんだけど――

『我が国とスヴェスダの国境地帯というのは、世界でも珍しいこれらの土壌が内包されている土地なんですよ。この辺りの地理をご存知なら、我が国の北側が山に囲まれている事もご存知ですね?』
『ええ、それ故に防衛の要所になるものの国境都市以外の人里はなかなか置く事が出来ないとも』
『その通りです。この辺りは山から出る湧き水が湖を作っていたり、それによる土や砂があったりで地形は豊富なのです。ただし元々がやせた土地なので、せいぜい芝生が生える程度なんですが』

 なんて話を聞かされたあたり、本当にこれはここら辺で全部集まるんだろう。人が住みたがらないのも何となくわかる。

「さて、それじゃこの辺りで採取を始めるか……」
「うん、いいんじゃねえか。まずは草原の土ってこったな」
「いや、そこにむき出しになってる岩から始めます。草原の土は道からそれなりに離れた場所である必要があるから、近場としては岩の方が採取しやすいし」
「採取しやすいって……岩だぜ岩」

 スキルを使って軟化させるって書いてあるし、そこは問題ないと思うけどな。

「それじゃ打ち合わせ通り、サラさんとエリナさんは俺が採取してる間周囲を見張っててください。クララさんは万が一誰か怪我した時に治療を」
「りょーかい」
「おっけー、トーゴさん」
「わ、分かりました」

 言って、全員配置についたところで作業を始める。えーと、その前に軟化させるスキルを探して、と。



 土壌軟化



 これでいいのかな。何かこうしてスキルを探すの久々な気がする。……実際にはそうでもないかもしれないけど。

「さてと」

 そうと決まれば早速採取だ。まずはボーリング機械とボーリンクコアを用意する。適度に安定した場所を選んで、キャップを外したコアの先端を当てて、当たった部分にだけ土壌軟化のスキルを適用する。
 すると刃の当たる部分だけが少し沈み込むので、その状態で機械をセットして手動で掘削していく。ちなみに掘削の際、刃に当たると思われるところは常に注意深く軟化していく。でないと刃が欠けかねない。
 コアの刃が完全に埋め込まれてもう少し進むと、パイプのように中空になっているコアの中に標本が入り込んでいるので、機械から出ていたアダプターをコアから外し、あらかじめコアに接続してあったアンカーと機械のワイヤーを繋いで、滑車の原理でコアを引き抜いていく。
 最後に再び先端にキャップをセットして出来上がり。その際キャップと刃の両方とも手を触れないように注意をしながら……と。

「はい、1本終わり。それじゃ次はサラさんの言った通り草原の土だね」
「もう終わった……だと……夫婦揃って何なんだ……」

 ……サラさんにとって俺とエリナさんの存在って何なんだろうかと、ちょっとばかり興味が湧いてきたな……



---
相変わらずの生産エキスパートでございます。まあでも前にも土壌改良やってトロリ草採取とかやってたし多少はね?
そしてこんなところでボーリング調査をやることになるとは思ってなかったであろうトーゴさん。ちなみに彼にはボーリング経験ございません。ただ単に映像か何かで見ただけです。それで出来るのも凄い話だけど。

次回更新は05/31の予定です!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

処理中です...