紺碧のミシマ ~ホームレスだったけど異世界へ行ってロボットになったので俺は自由に生きる~ Vol.3

田中

文字の大きさ
9 / 94
第九章 錬金術師とパラサイト

オルニアルからの依頼

しおりを挟む
 首都カラッサの研究所敷地内で薬を取り込んだ健太郎けんたろうは、人工降雨装置内で薬を複製、雨としてカラッサ周辺に降らせる事に成功した。

 いや、成功事態は喜ばしい事だけれども、薬の原材料とか何処から調達してるんだよ。

 もうもうと雲を生みながら健太郎は自らの体にツッコミを入れた。
 もしかしたら、四次元ポケット的な物に材料を貯め込んでいるのかしらん、そんな事を考えて何だか頭が痛くなってきた健太郎にミラルダが声を掛ける。

「ミシマ、アキラに調べてもらったら、降ってる雨は間違いなく自分が作った薬と同じ成分だってさ」
「シュゴーッ」

 そりゃ良かった。

 健太郎はそう答えながらも、この機能が少し怖くなった。

 水や今回の様な薬ならいい。だがもし漏斗に入れられたのが毒物だったら……そしてそれに気付かずゴーサインを出してしまったら……。

 今の体のどの力も色々危険だけど、人工降雨装置モードはこの一件が片付いたら封印だな。

 そう心に決め、一通り雲を吐き出し終わった健太郎は人型モードに姿を変えた。
 ちなみに人型モードに戻った健太郎を見て、研究所の庭にやって来たアキラがパニックを起こした。
 彼の心の傷はかなり根深いようだ。

「コホーッ」

 ごめんね、アキラ。


■◇■◇■◇■


 薬の雨を降らせることに成功した健太郎達は、カラッサに集まる被害状況を元に各地を巡り、雨を降らせていった。
 まず初めに被害の大きかったオルニアル西部、ベントを中心に雨を降らせ寄生された者達から寄生体を排除した。
 その事で寄生体に乗っ取られていた者で浸食の程度が深かった者については、寄生体から解放された事で多臓器不全を起こし死亡。
 しかし、程度の軽かった者は後遺症は残るものの、少なからず助かった者もいた。

「ミシマさん、ミラルダさん、ありがとうございます。あなた達のおかげでベントの街は救われました」



 共に戦った事で顔なじみとなった守備隊の隊長が、街のそこかしこで倒れている寄生体に乗っ取られた人々を見て、厳しい表情のまま敬礼して謝意を伝える。

「コホー……」

 被害を食い止めただけで、助けられた訳じゃないから……。

 ミラルダが健太郎の言葉を隊長に伝えると、彼は唇を噛んで、それでもと顔を上げた。

「それでも、あなた達のおかげで、この街はまたやり直す事が出来ます」
「コホー……コホーッ!」

 やり直すか……そうだよな、人は前に進む事しか出来ないもんなッ!

 健太郎は隊長にカメラアイを向け、深く頷きギュッと親指を立てた手を突き出した。
 それを見た隊長も健太郎を真似て親指を突き出す。

「おい、こいつら何処に運べばいいんだ?」
「ああ、ありがとうございますッ! その人達はこの先の病院へ運んで下さい。白い大きな建物ですからすぐわかりますよ」
「病院、白い大きな建物だねッ」
「この先か……パム、運んでいる者が瓦礫に引っ掛からない様に引き続き注意を頼む」
「了解だよッ」

 ギャガンとグリゼルダ、それにパムは野外にいて薬の雨を浴びた寄生体犠牲者の中で、まだ息がある者達を回収していた。
 グリゼルダが浮遊魔法で犠牲者を浮かせ、ギャガンが護衛を、パムがグリゼルダが浮かせた者達が瓦礫等で怪我を負わない様に全体を見て、危ない時は声を上げ、時には自分で押して瓦礫に当たらない様にしていた。

 脳に根を伸ばされた者の中には意識障害を起こしている者もいたが、それでもまだ生きている者を見捨てる事は健太郎達もそしてベントの街の住民達も選択出来なかった。

 彼らもこの街で、オルニアルという国で生きて来た人間に変わりはないのだ。

「コホー……」

 俺の力でどうにか出来れば……。

「また、自分だけでやろうとしてるのかい?」
「コホーッ」

 だって、雨だって降らせる事が出来たんだ。治す事だって……。

「そいつは多分あんたの仕事じゃないんだよ……そうだ、カラッサに戻ったらアキラに相談してみようか?」
「コホー?」

 アキラに?

「ああ、グリゼルダの話じゃアキラは錬金術師として人の体の治療も研究していたみたいなんだ。後遺症の軽減も出来るかもしれない。それに元々、こんな事になったのはアイツが寄生生物なんて物を作った事が原因だからね」
「……コホー……」

 ……そうだな……治ればいいな。

「だね」

 その後も健太郎達は各地を巡り、寄生体は順調に駆逐されていった。

 報告のあった地域に薬の雨を降らせ終え、ようやく一息ついた、そんな時、ミラルダの持っていた水晶球に通信が入る。

「聞こえるかね?」
「あ、はいはい。こちらミラルダ」
「君がブラックウッド公爵が言っていた凄腕冒険者のリーダー、ミラルダか」
「凄腕冒険者……そんなモノになった覚えはないけど、たしかにあたしゃミラルダだよ。それであんたは?」
「私はオーグル・ランデルマン。今回の事態で臨時で議員長官をやっている政治家だ」
「議員長官って……確かこの国じゃ一番偉い人じゃ……」

 ミラルダがそう言って首を捻ると、隣にいたグリゼルダが頷きを返した。

「それであっている、この国は上級錬金術師が国政議員を務め国を運営している、議員長官はその国政議員の長だ」
「んで、その偉い長官が一体何の用だい?」
「……この国の北西、湖と草原が多い湖水地方で、眠っていたベヒモスが目を覚ましたと報告があった」
「何、ベヒモス……トラスの叙事詩にもある伝説の巨獣だな……」

 グリゼルダはベヒモスと聞き、表情を明るくしたがその一瞬後にはレベッカの事を思い出し、表情を曇らせていた。

「ねぇねぇ、ギャガン、グリゼルダは何で残念そうなの?」
「パム、世の中にゃあ、知らなくていい事もあんだよ」
「うーん、そう言われると余計に聞きたくなるねぇ」

 ギャガン達のやり取りを聞き苦笑を浮かべながら、ミラルダはオーグルに続きを促す。

「それでベヒモスがどうしたのさ。ありゃ確かに迷惑な魔物だけど、基本、歩くか眠るかだけだろ?」
「……真っすぐにカラッサに向かっている。しかもベヒモスが移動した地域で再度、寄生体の被害が増えているんだ」
「まさか……行方不明だったシリンダーのッ!?」
「寄生体を操っていたアウルという粘菌だな。報告を受けて我々もその可能性が高いと判断した」
「……私達にどうして欲しいんだい?」
「雨をベヒモスにぶつけてみて欲しい。それで巨獣から寄生体を排除出来れば、被害を最小に出来るかもしれん」
「コホーッ」

 分かった、やろう。

「いいのかいミシマ? ベヒモスは生きた災害って呼ばれれて、あんたでも危険かもしれないよ?」
「コホー……」

 あいつを取り逃がしたのは俺達だしな……それに人が死ぬのはもう見たくないよ……。

「そうだね……あたしはミシマと一緒に行くとして、みんなはどうする?」
「あん? お前らが行くなら、行くに決まってんだろ?」
「当然だ。仲間だろう、私達は」
「だねだね。まぁ、ベヒモス相手に何が出来るって訳でもないだろうけど……」
「……決まりだね」

 ミラルダは仲間の顔を順繰りに眺めてから、掌の上の水晶球に視線を落とした。

「オーグルさん、その依頼、たしかに引き受けた」
「そうか……感謝する。現状でベヒモスはカラッサの北西、千キロを南東に向かい進行中。軍を派遣しベヒモスの進行を押さえようとはしているが、効果は出ていない。頼む、何とか奴を止めてくれ」

 憔悴した様子のオーグルにミラルダは静かに頷きを返した。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。 敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。 結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。 だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。 「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」 謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。 少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。 これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。 【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...