学園最強と言われている術師に何故か好かれている

イケのタコ

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2 手紙を渡して

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馴染めない学園で、今日も無難に授業を終えてイーナは学園の寮に帰って来ていた。
丁度、夕食時であり食堂は混んでいると知っているので一旦部屋へと戻る。
部屋は勉強机が二つと、二段ベッドが一つ収まる小さな部屋。二人部屋としては少々狭いが、同居人は寮に来た時から、一度も見ていないので実質一人部屋である。
その部屋に唯一ある黒電話の線を伸ばしては下段のベッドまで電話を運ぶ。ベッドに腰を下ろしては、ダイヤルを回してある人物に電話かけた。

「もしもし、今大丈夫か」
「もちろん、大丈夫だよ。兄さん」

イーナが電話をかけたのは弟のヴァイスである。弟の方は祖国で生活しているために、声が聞けるのは学園が終わった夜の隙間しかない。

「どう? 勉強は順調?」
「勉強は順調だけど……まだ、ここには慣れないよ。メガネ、また送ってくれてありがとうな」

当然、こちらでもメガネは買える。だが、買いに行くにも、学園の外にあまり出たことがなく。どこに売っているかが、まだ分からないためにメガネが壊れた時は、毎回弟に郵送してもらっていた。

「別にメガネくらい二個でも二十個でも送るけど……こっちに帰ってこない?」
「そうだな、お前の所に帰りたい」

弟のヴァイスはふふんと鼻で笑い。

「けど、勉強はしたいんだよね」
「そうだ。やはり、こっちでしか学べない事が沢山ある。どうせ帰る事になるなら、出来るだけ学んで帰りたい」
「ふふんっ、欲張りだな。どんな時でも、どこにいようと、兄さんが思う方でいいよ。俺は何も言わないよ。でも覚えておいて、いつ帰ってきても歓迎するし、兄さんがいない家は寂しいからね」
「うん、分かった。やりたい事が終わったら、絶対に帰るから」
「あまり、無理しないでね。兄さんがどこかにいなくなる方が俺は嫌だから」

弟はいつだって大切な家族であり、自身の唯一の理解者だ。弟のところに今すぐにでも帰りたい気持ちになったがグッと抑えて。

「もうちょっとこっちで頑張るから、待ってて」
「うん、頑張って」

優しい声援に胸が温かくなるのを感じて、余計に帰りたくなってくるので話題を変える。

「そっちの生活はどうだ? 不便ないか」
「おかげさまで。優秀な兄さんが学園に行ってくれているから、何不十分なく生活しているよ」

そう、我慢してまで通う理由がイーナにはある。国との交流するために学園に来た生徒達には、国から、学園から、手厚い補助金をもらっている。家族にも手当がいくので、少し行くだけで得するというわけだ。
生活だけで金がなくなる兄弟にとってはいい話だったのだ。

「それはよかった。言っても補欠だけど」
「補欠でも入りたい人いるんだから、誇り思っていいと思うけど」
「最初はそう思うけど。ここに来たら補欠って言えなくなるほど、恐いからな。そんな隙を見せたら一斉に喰いついてくる」
「そんな弱肉強食みたいなことある?」
「それがあるんだよな」

電話の向こうから弾んだ笑い声が聞こえてくる。この取るにたらない会話が一番好きで、学園という荒波の中でここが一番の安心できる時間。
安心できる場所。家に残してきてしまった大切な弟を今すぐに抱きしめたい。それでも、もう少し頑張ると決めたから会話をイーナは喜んで続けた。




あれから弟と色々話して、また頑張れそうだと気合いを入れた次の日の朝だった。
しかし、それをへし折るかのように後ろから生徒にぶつかられ。割れたメガネのせいでイーナの視界は悪く、足を詰まらせては門の柱に手をついた。
ぶつかってきた生徒は何もないかのように、友人の方に走っていくのが見える。

「あの! これ」

朝から最悪だと思っていれば突如横から声をかけられた。「なに」と柱に手をついたまま顔を上げると、知らない男子生徒が目の前で来ては手紙を押し付けてきた。

「えっと……どういう事?」

誰かも分からず、訳もわからず、白い封筒に入った手紙を渡されて呆然とするしかないイーナ。

「何って? 君は告白代行の人だろ。門の前で、メガネをかけて、黒髪で、平凡な見た目。お金はもう払ったんだ、何がなんでも渡してもらうよ」
「おかね? こくはくだいこう?」

男子生徒の話は耳に入ってこず、朝から自分は何に巻き込まれているのだろうかという疑問しかない。

「あの人だからって怖気付いたのは分かるけど、とにかく渡してくれるだけで良いから。僕だって、押し付けられたんだ。さっさとどうにかしてくれ」
「待て、待て、話が見えてこない。アンタは何かを大きな勘違いしている」
「嘘はいいから。渡さないと僕が怒られるんだ、さぁこれを持ってあの人の元に行って」

とにかく忙しいからと走り去っていく男子生徒を、イーナは必死に呼び止めるが全くこちらに耳を貸すことがない。

「というか、誰に渡すんだよ!」
「もちろん、黄色い悪魔ッ!」

そう叫んでは嵐のように過ぎ去っていく者が、残したのは胸元に押し付けられた手紙だけ。
封筒を裏返して見れば『私の愛おしいレオン様』と書かれていた。

誰だよーーーでも、どこかで聞いたことがある名前だ。しかも、最近だったような。
 
思い出せない、ただ手にあるのは恋文だけ。
ここに来てまだ日が浅いというのに、誰に渡すか分からないものを預けられてしまった。この手紙を返そうにも、あの一瞬で返す相手を覚えてはいない。
どうしようかと、柱の前に立ち往生していたが結局は手紙の相手『黄色い悪魔のレオン』を見つけるしかないとなった。
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