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なんで、こんなに悲しいのだろう。傷付けつけてしまったことよりも、レオン先輩に嫌われると思うと胸が締め付けられるように痛くなる。
前もまとも見れず、一直線で部屋に戻る俺は下唇をグッと噛み締めた。そうしていないと、込み上げてくる感情に流されそうになる。
「あれ、イーナさん。おかえりなさい」
丁度、帰る部屋から出てきたヨモギ。劣等感とか、孤独感とか、色んな感情の中で知り合いを見た途端に一気に感情が昂り、足が地面を軽く蹴ってはそのままヨモギに抱きついていた。
「えっ」
寝起きだったこともあり、突進してきたイーナを受け止めきれず、ヨモギは雪崩れように後ろ側に倒れ、二人は廊下で折り重なる。黒兎の二匹が腕から解放されてはヨモギの顔の近くに居座る。
「なっ、なんですか。私、殺されるんですか。てか、魔物が増えてる」
「おれ、馬鹿で」
「ちょっと、何が言いたいのか分かりませんが、とりあえず魔物の兎をあっちに持っていってください。すごく睨まれているんですけど」
ヨモギは黒兎二匹を見ては慌てているが、イーナは抱きついたまま胸に額をつけては鼻を啜る。
「ーーー、本当にどうされたんですか」
「……っ」
「イーナさん、一旦落ち着きましょうか。それから言葉にしてください」
優しい声が降ってきては、緊張していた背中を撫でてくれた。
「何、やってんだ」
開けていた部屋の扉から現れたのはアルカナであり、瞼はまだ半開きで大きな欠伸を一つすると、二人を見下ろした。
「さぁ、分からないです。イーナさんが不調だという事だけです」
「朝から何があったんだよ……」
アルカナはイーナに一方的に抱きつかれいるヨモギを交互に見ては、
「ヨモギ、良かったな。顔が幼くて」
「どういう意味だ、クソ餓鬼」
部屋から出ようとした二人はイーナを連れて、再び部屋に戻ることにした。
そして、しっかりと扉を閉めてから朝起きた事を淡々とイーナは二人に話した。
「ーーーということがありました」
「なるほど、それは大変ですね。魔術師が、ましてやこの由緒正しい学園の生徒が、使い魔を暴走させるなんて退学ものですからね」
「うっ」
ヨモギに事実を言われて、イーナはまだ敷いてあった布団に伏せる。
「とはいえ、レオンさんで良かったですね」
「いや、良くないですよ」
「良かったですよ。もし、その人じゃなかったらもっと大事になってますよ。貴方だから許されたと思った方がいいです」
「許されてない気がするんだけど……」
嫌われるのは嫌だな。余計に落ち込むイーナを他所に、アルカナが近づいてきては頭を傾けた。
「この兎は灰色なんだな」
「本当だ。灰色ですね」
イーナの隣で鎮座する二匹の黒兎。その内の片方を指した。
黒兎は全て黒色のはず。見る暇もなく逃げた為意識していなったが、イーナは起き上がり注意深くを見ると、指摘された通りに一匹だけが灰色の毛並みと灰色の瞳を持っていた。
その灰色の兎を見てまず思ったのは、劣化。何十、何百と増えていくなら、必ず不良品が生まれ筈だと。
「なんか、大人しそう」
「今はダメ」
自身が取り乱している今、黒兎に触れるのは危険な行為だと止めようとしたが、アルカナが手を伸ばして灰色の兎に触れたが噛む事はなかった。
「あれ? 噛まない、どういうこと」
「全然、黒い兎よりか大人しいけど」
アルカナに触れる灰色の兎は微動だせず。
何が事実か、分からなくなってきた。スズランの仮説なら気が立っていると噛みつくと言われたが、灰色の兎には全くその素振りがない。
「やはり、劣化しているのか」
イーナも同じように灰色の兎に手を伸ばした時だった、灰色の兎は後ろ足を地面に叩きつけタンタンと鳴らす。先程の無反応とは違い、苛立ちを見せてくる。
「なぁ。その兎、怒ってないか」
アルカナに言われて手を遠ざけると、灰色の兎は地面を蹴るのをやめる。やはり、黒兎達は気が立っているのだろうかと、もう一匹に目線を寄せるが直立不動でその場から動かず、感情を表すことがなかった。
あれ? 何か、違和感がある。
「イーナさん、あぶない!」
叫ぶヨモギに目を向けた時点で、額に風を切り衝撃が走る。そう、灰色の兎がこちらに向かって飛んできては、後ろ足で俺の額を蹴ったのだった。
キラキラと光る正面に、ふらりと浮かぶ頭。記憶が飛ぶような衝撃により背中側から倒れ、灰色の兎はくるり一回転して綺麗に着地するのが見えた。
「あっ、逃げた」
ヨモギの抜けた声。間抜けな術師が起き上がる前に、灰色の兎は横を通り過ぎ。身体を使ってドアノブを捻り、勝手に扉を開けて出ていく。
「大丈夫ですか。イーナさん」
「これはダメだな、一発KOだ」
ヨモギとアルカナが、布団の上で寝転ぶイーナの顔を覗いた時には、額に可愛い足跡をつけて目を回していた。
「まさに、兎の逆襲」
「そんなこと言ってる場合か。イーナさんを早く起こさないと、学校に遅れる」
「お前もそんなこと言ってる場合じゃないけどな」
前もまとも見れず、一直線で部屋に戻る俺は下唇をグッと噛み締めた。そうしていないと、込み上げてくる感情に流されそうになる。
「あれ、イーナさん。おかえりなさい」
丁度、帰る部屋から出てきたヨモギ。劣等感とか、孤独感とか、色んな感情の中で知り合いを見た途端に一気に感情が昂り、足が地面を軽く蹴ってはそのままヨモギに抱きついていた。
「えっ」
寝起きだったこともあり、突進してきたイーナを受け止めきれず、ヨモギは雪崩れように後ろ側に倒れ、二人は廊下で折り重なる。黒兎の二匹が腕から解放されてはヨモギの顔の近くに居座る。
「なっ、なんですか。私、殺されるんですか。てか、魔物が増えてる」
「おれ、馬鹿で」
「ちょっと、何が言いたいのか分かりませんが、とりあえず魔物の兎をあっちに持っていってください。すごく睨まれているんですけど」
ヨモギは黒兎二匹を見ては慌てているが、イーナは抱きついたまま胸に額をつけては鼻を啜る。
「ーーー、本当にどうされたんですか」
「……っ」
「イーナさん、一旦落ち着きましょうか。それから言葉にしてください」
優しい声が降ってきては、緊張していた背中を撫でてくれた。
「何、やってんだ」
開けていた部屋の扉から現れたのはアルカナであり、瞼はまだ半開きで大きな欠伸を一つすると、二人を見下ろした。
「さぁ、分からないです。イーナさんが不調だという事だけです」
「朝から何があったんだよ……」
アルカナはイーナに一方的に抱きつかれいるヨモギを交互に見ては、
「ヨモギ、良かったな。顔が幼くて」
「どういう意味だ、クソ餓鬼」
部屋から出ようとした二人はイーナを連れて、再び部屋に戻ることにした。
そして、しっかりと扉を閉めてから朝起きた事を淡々とイーナは二人に話した。
「ーーーということがありました」
「なるほど、それは大変ですね。魔術師が、ましてやこの由緒正しい学園の生徒が、使い魔を暴走させるなんて退学ものですからね」
「うっ」
ヨモギに事実を言われて、イーナはまだ敷いてあった布団に伏せる。
「とはいえ、レオンさんで良かったですね」
「いや、良くないですよ」
「良かったですよ。もし、その人じゃなかったらもっと大事になってますよ。貴方だから許されたと思った方がいいです」
「許されてない気がするんだけど……」
嫌われるのは嫌だな。余計に落ち込むイーナを他所に、アルカナが近づいてきては頭を傾けた。
「この兎は灰色なんだな」
「本当だ。灰色ですね」
イーナの隣で鎮座する二匹の黒兎。その内の片方を指した。
黒兎は全て黒色のはず。見る暇もなく逃げた為意識していなったが、イーナは起き上がり注意深くを見ると、指摘された通りに一匹だけが灰色の毛並みと灰色の瞳を持っていた。
その灰色の兎を見てまず思ったのは、劣化。何十、何百と増えていくなら、必ず不良品が生まれ筈だと。
「なんか、大人しそう」
「今はダメ」
自身が取り乱している今、黒兎に触れるのは危険な行為だと止めようとしたが、アルカナが手を伸ばして灰色の兎に触れたが噛む事はなかった。
「あれ? 噛まない、どういうこと」
「全然、黒い兎よりか大人しいけど」
アルカナに触れる灰色の兎は微動だせず。
何が事実か、分からなくなってきた。スズランの仮説なら気が立っていると噛みつくと言われたが、灰色の兎には全くその素振りがない。
「やはり、劣化しているのか」
イーナも同じように灰色の兎に手を伸ばした時だった、灰色の兎は後ろ足を地面に叩きつけタンタンと鳴らす。先程の無反応とは違い、苛立ちを見せてくる。
「なぁ。その兎、怒ってないか」
アルカナに言われて手を遠ざけると、灰色の兎は地面を蹴るのをやめる。やはり、黒兎達は気が立っているのだろうかと、もう一匹に目線を寄せるが直立不動でその場から動かず、感情を表すことがなかった。
あれ? 何か、違和感がある。
「イーナさん、あぶない!」
叫ぶヨモギに目を向けた時点で、額に風を切り衝撃が走る。そう、灰色の兎がこちらに向かって飛んできては、後ろ足で俺の額を蹴ったのだった。
キラキラと光る正面に、ふらりと浮かぶ頭。記憶が飛ぶような衝撃により背中側から倒れ、灰色の兎はくるり一回転して綺麗に着地するのが見えた。
「あっ、逃げた」
ヨモギの抜けた声。間抜けな術師が起き上がる前に、灰色の兎は横を通り過ぎ。身体を使ってドアノブを捻り、勝手に扉を開けて出ていく。
「大丈夫ですか。イーナさん」
「これはダメだな、一発KOだ」
ヨモギとアルカナが、布団の上で寝転ぶイーナの顔を覗いた時には、額に可愛い足跡をつけて目を回していた。
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「そんなこと言ってる場合か。イーナさんを早く起こさないと、学校に遅れる」
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