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2 友人のY
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学校の帰り、待ち合わせというものをしてみた。
いつも横を通る時計台の下に行くだけなのに、なんだが緊張する。
いつになっても慣れないな、胸あたりを撫でて焦りを紛らす。俺にとっての、雪久の存在はいつだって大きくて遠い存在。緊張するし、不恰好なところ見せたくないと、ついつい格好をつけてしまう。
いつになったら、自然体になれるのだろうか。
「ねぇねぇ、あの人かっこよくない」
「本当だ、モデルかな」
「だねー。話しかけにくいよね」
横を通り過ぎていく女子高生。うん、一生無理かもしれない。
何を指して彼女たちは頬を赤らめるのかが、分かっているからお腹が痛くなるのを感じながら雪久のもとに駆けつける。
今日は制服の上からコートを着る雪久。スマホを見てるだけで様になるのは、羨ましいを通り越して腹が立つ。世の中結局は顔ですかと拗ねてみるが、どこから見ても絵に描いたように綺麗なので何も言えなくなる。
「ごめん、待った」
「いや、俺もさっき着いたところだ。これ、やる」
スマホから顔を上げると、雪久は手に持っていたドーナツの箱を掲げてはこちらに渡す。開けてみると中身はもちろんドーナツが入っていた。
「えっと……、なんでしょうか。これは」
「ドーナツ」
「それは分かってます。何故、俺に」
「なんか限定だったから」
「あーと、ありがとうございます」
色々、言葉が抜けている気がするが彼なりの気遣いだということは分かった。
こう、表情と声に抑揚がないのもあって、喜怒哀楽がなかなか読めず、どう答えたら正解なのかが分からなくなるんだよな。
椿の時はどう読んでいたか。あのコミュ力最強の友人は読めそうだけど。ーーー、ここに薮内が欲しい。
そんな事を思いながら、雪久を見ていたら、フードに赤くて棘々した何かが挟まっているのに気がついた。
「ちょっと、ごめん。何かついてる」
そう言うと大人しく動かず待ってくれる雪久。手を伸ばしてフードの間に挟まった物を取ってみると
「紅葉だ」
手のような形をした、ただの枯れた葉っぱ。並木道でも通ってつけてきたのだろう。
「いりますか」
なんて、冗談のつもりだったが雪久は「いる」と言ったので
「寒くなると茄子などに含まれるアントシアニンという成分が残るか、作られるかで赤く見えるとか」
どうでもいい豆知識を添えて雪久に渡す。雪久は浅く頷いては指先で先を掴み取ると紅葉をくるくると回す。
「どこに行こうか」
あれーーー今、笑った?
「あっちにゲームセンターがあるので、行きますか」
「ユーホーキャッチャー?」
「そうそう。リズムゲームとか面白いですよ。音楽に合わせてボタンを押したりとかー」
リズムゲームの楽しさを教えつつ場所に案内する。
「そうだ。お菓子、ありがとう」
「おかし……?」
突然、なんの話をしているのか。
「海北が渡してくれた。外箱が崩れていたのは臓物だとか意味がわからない事を言っていたが、中身は無事だった」
「あれ、たっ食べたの」
「ああ、美味しかった。俺のために選んでくれたんだろ」
「えっいや、そうだけど。違くて、あの、もっと綺麗な物をわた」
「プレゼント、嬉しかった」
「あっ、はい」
良かったと心の底から嬉しそうしてる雪久に、何も言えず。
もっと好みにあって、綺麗な物を渡したかったのに。
憎らしいアイツの顔が思い浮かんできて、あのクソ野郎と心の中で叫ぶのだった。
いつも横を通る時計台の下に行くだけなのに、なんだが緊張する。
いつになっても慣れないな、胸あたりを撫でて焦りを紛らす。俺にとっての、雪久の存在はいつだって大きくて遠い存在。緊張するし、不恰好なところ見せたくないと、ついつい格好をつけてしまう。
いつになったら、自然体になれるのだろうか。
「ねぇねぇ、あの人かっこよくない」
「本当だ、モデルかな」
「だねー。話しかけにくいよね」
横を通り過ぎていく女子高生。うん、一生無理かもしれない。
何を指して彼女たちは頬を赤らめるのかが、分かっているからお腹が痛くなるのを感じながら雪久のもとに駆けつける。
今日は制服の上からコートを着る雪久。スマホを見てるだけで様になるのは、羨ましいを通り越して腹が立つ。世の中結局は顔ですかと拗ねてみるが、どこから見ても絵に描いたように綺麗なので何も言えなくなる。
「ごめん、待った」
「いや、俺もさっき着いたところだ。これ、やる」
スマホから顔を上げると、雪久は手に持っていたドーナツの箱を掲げてはこちらに渡す。開けてみると中身はもちろんドーナツが入っていた。
「えっと……、なんでしょうか。これは」
「ドーナツ」
「それは分かってます。何故、俺に」
「なんか限定だったから」
「あーと、ありがとうございます」
色々、言葉が抜けている気がするが彼なりの気遣いだということは分かった。
こう、表情と声に抑揚がないのもあって、喜怒哀楽がなかなか読めず、どう答えたら正解なのかが分からなくなるんだよな。
椿の時はどう読んでいたか。あのコミュ力最強の友人は読めそうだけど。ーーー、ここに薮内が欲しい。
そんな事を思いながら、雪久を見ていたら、フードに赤くて棘々した何かが挟まっているのに気がついた。
「ちょっと、ごめん。何かついてる」
そう言うと大人しく動かず待ってくれる雪久。手を伸ばしてフードの間に挟まった物を取ってみると
「紅葉だ」
手のような形をした、ただの枯れた葉っぱ。並木道でも通ってつけてきたのだろう。
「いりますか」
なんて、冗談のつもりだったが雪久は「いる」と言ったので
「寒くなると茄子などに含まれるアントシアニンという成分が残るか、作られるかで赤く見えるとか」
どうでもいい豆知識を添えて雪久に渡す。雪久は浅く頷いては指先で先を掴み取ると紅葉をくるくると回す。
「どこに行こうか」
あれーーー今、笑った?
「あっちにゲームセンターがあるので、行きますか」
「ユーホーキャッチャー?」
「そうそう。リズムゲームとか面白いですよ。音楽に合わせてボタンを押したりとかー」
リズムゲームの楽しさを教えつつ場所に案内する。
「そうだ。お菓子、ありがとう」
「おかし……?」
突然、なんの話をしているのか。
「海北が渡してくれた。外箱が崩れていたのは臓物だとか意味がわからない事を言っていたが、中身は無事だった」
「あれ、たっ食べたの」
「ああ、美味しかった。俺のために選んでくれたんだろ」
「えっいや、そうだけど。違くて、あの、もっと綺麗な物をわた」
「プレゼント、嬉しかった」
「あっ、はい」
良かったと心の底から嬉しそうしてる雪久に、何も言えず。
もっと好みにあって、綺麗な物を渡したかったのに。
憎らしいアイツの顔が思い浮かんできて、あのクソ野郎と心の中で叫ぶのだった。
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