騎士団隊長が生き返ったら、険悪だった部下に愛される?

イケのタコ

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3 過去

三話 騎士団

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「人を生き返らせるか。いきなり、どうしたの。そんな事聞いてきて」
「いや、出来るのかと思って。ほら、前に事件があっただろ」

相変わらず両手によく分からない液体が入ったフラスコと、見た事がない植物を手にして、字が読めない本を開いては相変わらず魔術研究に入り浸るミオン。
そして、俺の質問にミオンは少し悩んでから。

「理論上、不可能ではないと思うよ」
「へー。その術が完成すれば、人が生き返り放題だな」
「残念ながら、それは無理かな」

人を蘇らせる事は出来ると肯定しておいて、すぐに否定した。

「まず、私達って基本的に何かを作り上げるには何かを使わないといけないでしょ。イナミの腰に身につけている剣一つ作るだけでも、魔法石や鉄が必要になる。魔術も同じ、何かを唱えるなら何かを使用して消費しないといけない」
「あーそういう事か。壊れた体には人の命を差し出さないといけないのか」
「大まかにはそういうこと。過去も未来も魔術師が生き返らせる方法を試さない理由が分かるでしょ。それに、完璧な魔術式にならいいけど、一回切りの魔術に試す事なんて到底出来ないし、一つ間違えればミイラ取りがミイラになる可能性だってある」
「意味のない、魔術だな」

自分の命を代償に生き返らせる事が出来る魔術か。
 
「ん?という事は術式はあるって事か」
「あるけど、当然禁止されている術式。そんな事をするのは馬鹿か、命知らずの奴だけ。だから、成功させて大魔導士になるとか何とか言って、死んでるのを数年に一度は見るくらいには無意味な術式ね」
「俺から言えば、命綱なしの綱渡り感じだな」
「そうそう……やったことあるの?」
「子供の時に、一度だけ」
「えっ、貴方のお父さんそんな事を許してくる人だった?」
「したのは孤児院の時だ。それより、父親で思い出したけど、お前の親に娘と結婚しないかって言われるくらいには心配してたけど、親にちゃんと連絡してるか」
「いつの会話!?」

ミオンは机を揺らすほどの衝撃、フラスコと植物を置いて勢いよく顔を上げた。

「一昨日だな。実家に用があって、その時に偶然遭遇してな。久しぶりから始まって、娘と最近連絡取ってないって落ち込んでて、話がそうなった」
「何で、そんな話に飛躍するのよ。もう、あの人たちは変なことを友人に言わないでよ、私が勘違いされたら最悪だよ……でイナミはどう返したの、親にしつこく詮索されてない?」
「いや何も詮索もされてない。そもそも、許嫁いるんで無理ですって言ったからな」
「ちょっと、いいなづけ!! 嘘だ、いつからそんな人いたの!」

衝撃の新事実にミオンはもう一度大きく机を揺らす。

「いつからなの、聞いてないよ」
「聞いてないも何も、俺も知ったのは一ヶ月前だ。こっちに手紙と写真が送られてきて知った。それで一昨日はその人と会う為に帰る羽目になった訳だ」
「えっえっ、そんな人と結婚するの。今まで会った事ない訳でしょ、どういった性格とか好きな物とか分からないまま結婚する気なの」
「そうだけど、ーーー政略結婚ってそんな物じゃないのか」

固まって口を開けたままのミオンは手をワナワナと動かしては、無意味に空気を掴んでいた。

「ちっ違う、もっとこう結婚ってふわふわしてて甘々って感じで、将来を支え合う事を一緒に誓い合うようなそんな感じで、仕方ないから結婚するようなものじゃなくてキラキラしてるものな筈でしょ」
「それは前後があるかないかの話だろ。どちらだろうと契りを結ぶのは変わらないだろ」
「えーん、全然伝わらないよ! 全然違うよー政略結婚しなくてもイナミにはもっと良い人いるって、今から断れないのその結婚話」
「今から手続きを解約するみたいな話じゃないからな。それに父さんの決めた事だ、無視する訳にはいかないだろ」
「……たまには歯向かってみるとか」
「無理だ。お前なら、分かるだろ。俺はあの人に恩を返さないといけない」
「分かってるけど……それと、これとを秤にかけるのは違うと思うけどな」

幼馴染は断れないのと再度訊いてきたが俺は無理だと首を横に振る。
父親のバルトにはここまでの人生で沢山の支援してくれた。不自由のない生活に加えて、俺を学校に行かてくれた。騎士になった時もそれなりの地位につけるように口添えもしてくれたのも知っている。
三番隊長になれたのはあの人のおかげだと言ってもいい。
腹も減らない、金も困らない、寝床も困らない、それ以上の事をしてくれたバルトに返せるだけ恩は返していきたい。

「結婚相手くらい自分で決めさせてあげてよと私は思うけど、それでもイナミが納得してるなら私は何も言わなけど……」
「けど?」
「可哀想だなと思って」
「誰が?」
「レオンハルト君が」

顎に手を添えて口を尖らせてたミオン。何故、そこで部下の名前が出てくるのか。
理由を探るように頭を傾けていると、研究室の扉が叩かれた。

「すいません、入ります。イナミ隊長はいらっしゃいますか」

扉から黄色の頭を覗かせたのは今まさに名前を出していたレオンハルトだった。

「ここにいる。どうした、何かあったのか」
「休みの日にすみません。すぐに対処するものではないのですが、騎士団長がイナミ隊長を呼んでました」
「珍しくなんだ? 何か、またやらかしたか」
「呼ばれた内容は聞いてないのですか。とりあえず、呼んで来いとの事です。案内するので着いてきてください」
「分かった、すぐに行く。ミオン、すまないが話はまた今度で」

「はいはい」と手を振っては再びミオンは研究に戻り、イナミはレオンハルトに案内されるまま着いて行く。

「であの人は、団長はどこにいるんだ」
「今は資料室かと」
「そうか、また何か街であったんだな。レオンハルトの方は俺がいなくとも問題ないか」

イナミはこの日休みだった。気楽に一日全ての仕事を隊員に預けていたが、結局は緊急が入った為に休みを返上する事になった訳である。

「問題ないです」
「ロードリックとは仲良くしてるか」
「……仲良くやってます」
「何だよ、その間。絶対、何かで喧嘩しただろ」
「アイツが突っかかってくるだけです。俺は何もしないです」

俺からしたらお互いどうでもいい事で噛み付いては喧嘩しているように見えるが。

「どうだか。それより、レオンハルト。聞き耳を立てるならもう少し、相手に気配を悟られないようにしろよ」

レオンハルトは体を錆びつかせ足を止めた。そのまま案内人を追い越して行くイナミは振り返って一度止まる。

「なんだ、バレてないとでも思ってたのか」
「……いつからですか」
「最初から。あと誰でも分かる事だ、扉の隙間から突然影が入り込んだ事と、3人目の息遣いが聞こえてたからな」
「……イナミ隊長は結婚するんですか」
「やっぱり、聞いてたな」

途中から気付いただけで、レオンハルトがいつからいたなんて知らない。一つ、鎌をかけてみたがやはり話を聞いていたようだ。

「どうなんですか、結婚するんですか」

はめられた事にレオンハルトが激怒すると思ったが、そんな事はどうでもいいようで俺の結婚話の方が気になるようだ。

「近い内にはな。一応、結婚式に騎士団は呼ぶから祝いの品の用意しとけよ」
「そんな結婚、どこに意味があるんですか。ただ親に言われたからそうするまででしょ。貴方に何のメリットもないじゃないですか」
「メリット? それはお前の中での損得の考えだろ。俺にはあるから、そうするまでだ」
「じゃあ、貴方は親に言われれば化け物だろうと結婚するつもりですか。親は貴方の未来なんか考えてない、今の自分の事しか見てないんですよ。なのに、なんで、そうする意味があるか」

握りしめられていく拳。レオンハルトなりの結婚観があるのか、俺がそういう結婚に対して拒絶する反応みせては理解できないようである。

「レオンハルト、お前には関係だろ。身内でもないんだ、人の事情に首を突っ込んでくるな」
「……っわかってますけど。俺に分からないです、貴方のことが」
「分からなくても、それでいい。どうせ、ここでは上司と部下であって、家に帰ればただの他人だ。お前が気にかける様な事じゃない」

ここでこの話は終わり、部下と対論するような内容ではないと俺は速攻切り上げた。

「誰でもいいなら……」
「何だ?」
「……何でないです」

そう言って、俺より前に出たレオンハルト案内役だというのに早歩きで突き進む。

優秀な部下ではあるが、上司の俺とどうも意見が中々合わず。

それが弊害になっているのか優秀な筈の部下の能力を、上司として上手く扱い切れていない。そろそろ、他の部隊に上げるのを打診したほうがいいのかもしない。
この部隊にいるより空気に合った部隊の方がレオンハルトと楽だろうし、そのまま努力を続けていればすぐに昇進も出来るだろう。
後々を考えればレオンハルトが早めに三番隊から抜けさすべきか。それでも、入団した時からみているからなのか隊から抜ける事を想像するだけで胸に穴が空いたように寂しくなった。

親の気分にでもなっているのか。

自分の一時の感情より、これから歩む部下の未来の方が大切だと、そんな事を考えながらイナミはレオンハルトを追った。


「おい、案内役が俺を置いていくな」

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