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【 まえがき 】
■激強溺愛三男様と護衛抜擢人(伝令役兼雑用係)(自称凡人)の攻防戦。
なお、この物語はフィクションです。作中に登場する人物・団体・事件・名称等は実在のものとは一切関係ありません。
異世界ファンタジー万歳であります。
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
2025.10.28/火
◆--・--・--・--◆
伝言に走らされたであろう団員から、自分は呼ばれているのだと言われて急いで顔を出したのは騎士団長の執務室。オレ自身は変なことをやらかした覚えはないが、呼び出されるのならなにかしら用事があるのだろうと思う。
執務机に座るのは緊張感漂う騎士団長。では応接セットのソファーに腰を下ろしているのは誰であろうか?
――いや、わさわざ『誰か』なんて言わなくとも解っている。この目立つ銀髪は王族か王族に連なる者の証なのだから。出入り口のドアから眺めると横顔になるが、それさえも絵になりそうなのが腹立つ。今日も朝早くに出ていったはずなんだが、優雅に飲み物を口にしているのか。
なんでここにいるんだ、と思った時には遅かった。だからオレはこうなったんだろう。逃げ切れなくとも、回れ右をして逃げていればよかったと後悔しかない。向かい合わせでなく隣なのは嫌がらせだよな、これ。完全に嫌がらせだよな!? そうだよな? 身長差が死ぬほど解るのが嫌だー!!
くそっと胸の中で吐き出すと、団長が呼び出した理由を話してくれた。
貧乏男爵令息は、公爵令息――三男様の鶴の一声により、本日より妹であらせられる公爵令嬢の護衛となりました。妹といっても、第二夫人の子供だから腹違いね。三男様は第三夫人の第一子――長男となる。この世界のエルフはだいたい一夫多妻なんだよ。オレの母親も第二夫人ですしね。
団長の言葉には「は!?」と口を大きく開けるしかない。言っている内容はよく解るんだが、言っている意味が解らないんだから。本当になにを言っているの?
オレはただの騎士団の一員であって、強くはないから護衛騎士に指名しても旨みが全くないんだがね? 護衛騎士は護衛対象をなにがあろうとも守る者のことであって、クソ雑魚なオレはお呼びでないよ?
ちょっと目の前にいる男の考えが解らない。おい、愉快そうに目を細めるんじゃねえぞ、クソ美貌が! コイツの考えは昔から解らなかったが、転生してからも解らないから、もう一生解らないと思われる。なにを言われるのか解らなくて怖いから、解らなくてもいいけど。『命大事に』だよ。自分を大事にしないとな!
「ちぃちゃんの百面相はクるね」
「黙ってもらえますぅ?」
クエルトルフ・レージェン。レージェン公爵家の三男坊様はうんうんと頷きながらよく解らないことを言った。お前の中になにがクるんだよ。契約精霊に精霊の国に連れて行ってもらえ! よく効く治癒魔術か回復薬で頭を治してもらってこい! 精霊だからできるだろ!
銀髪蒼眼チートエルフだからって調子に乗るんじゃないぞ! オレは前世から続く女顔コンプレックスが治らないんだからな! エルフに転生したのに! なんでまた母親似なの!? 騎士団の訓練メニューだってきちんとやっているのに、これ以上の筋肉がつかないんですけどぉ!? なんでなんですかねー!?
それなのにっ、なんで元幼馴染みの方はチート美貌エルフなの!? 身長交換しよう! そうしよう! 魔力量もちょっとおかしいから、オレがもらってやるよ~! ください、くれ! 家格だってなあ、違いすぎるしなあ、女神様に嫌われたのかなあ、オレ……。会った記憶はないんだけど。
あ……? 会った記憶がないからダメなの……? それならどうあっても望みがないじゃないですかぁ……。落ち込むなぁ。
「ちぃちゃんさあ」
「おわ!?」
本当にさあ、自分のこと解ってる? と鼻先まで近づいた美貌がなんか言ってらっしゃる。なんなんだよと睨み返すと、暗い青い瞳とぶつかること数秒。気持ちが落ち着いてきたようで、湧いた疑問をぶつけてみた。
「ルーくん」
「うん」
「なんでわざわざオレを指名したわけ?」
「ちぃちゃんだからだよ」
「オレだから……?」
「チェルチちゃんは俺のものでしょう?」
蕩けるような笑みを浮かべながら言った男は、手を伸ばしてくる。あっぶな!? 反射的に叩き落としてしまったけど、それがなかったらベロチュー行きだったから危ない危ない。この男は本気で危険なんだよな! 身長差も体格差もあるから、捕まったら逃げ出せんし! オレの貞操はオレが守らねば!
「違いますけど!?」
「え?」
「違いますけどぉ!?」
「え?」
前世の幼馴染みだからって、わがままが通るとは思わないことだな!
「オレはオレ自身のものであって、ルーくんのものじゃないんで! お前のわがままには付き合いきれないんだよバーカ!」
「え?」
話は解りましたから戻りますと、縮こまったままの騎士団長に伝えると、執務室を後にする。光の如く。
オレことチェルチ・ブロッセンは逃げた。空気が悪くなった執務室から。実を言うと女の子っぽい名前からも逃げ出したかったが、そちらは完全に塞がれてしまっている。主に母親によってな!
団長様、わがまま野郎をお願いしますね! オレは相手をしたくないんで!
■激強溺愛三男様と護衛抜擢人(伝令役兼雑用係)(自称凡人)の攻防戦。
なお、この物語はフィクションです。作中に登場する人物・団体・事件・名称等は実在のものとは一切関係ありません。
異世界ファンタジー万歳であります。
少しでもお楽しみいただければ幸いです。
2025.10.28/火
◆--・--・--・--◆
伝言に走らされたであろう団員から、自分は呼ばれているのだと言われて急いで顔を出したのは騎士団長の執務室。オレ自身は変なことをやらかした覚えはないが、呼び出されるのならなにかしら用事があるのだろうと思う。
執務机に座るのは緊張感漂う騎士団長。では応接セットのソファーに腰を下ろしているのは誰であろうか?
――いや、わさわざ『誰か』なんて言わなくとも解っている。この目立つ銀髪は王族か王族に連なる者の証なのだから。出入り口のドアから眺めると横顔になるが、それさえも絵になりそうなのが腹立つ。今日も朝早くに出ていったはずなんだが、優雅に飲み物を口にしているのか。
なんでここにいるんだ、と思った時には遅かった。だからオレはこうなったんだろう。逃げ切れなくとも、回れ右をして逃げていればよかったと後悔しかない。向かい合わせでなく隣なのは嫌がらせだよな、これ。完全に嫌がらせだよな!? そうだよな? 身長差が死ぬほど解るのが嫌だー!!
くそっと胸の中で吐き出すと、団長が呼び出した理由を話してくれた。
貧乏男爵令息は、公爵令息――三男様の鶴の一声により、本日より妹であらせられる公爵令嬢の護衛となりました。妹といっても、第二夫人の子供だから腹違いね。三男様は第三夫人の第一子――長男となる。この世界のエルフはだいたい一夫多妻なんだよ。オレの母親も第二夫人ですしね。
団長の言葉には「は!?」と口を大きく開けるしかない。言っている内容はよく解るんだが、言っている意味が解らないんだから。本当になにを言っているの?
オレはただの騎士団の一員であって、強くはないから護衛騎士に指名しても旨みが全くないんだがね? 護衛騎士は護衛対象をなにがあろうとも守る者のことであって、クソ雑魚なオレはお呼びでないよ?
ちょっと目の前にいる男の考えが解らない。おい、愉快そうに目を細めるんじゃねえぞ、クソ美貌が! コイツの考えは昔から解らなかったが、転生してからも解らないから、もう一生解らないと思われる。なにを言われるのか解らなくて怖いから、解らなくてもいいけど。『命大事に』だよ。自分を大事にしないとな!
「ちぃちゃんの百面相はクるね」
「黙ってもらえますぅ?」
クエルトルフ・レージェン。レージェン公爵家の三男坊様はうんうんと頷きながらよく解らないことを言った。お前の中になにがクるんだよ。契約精霊に精霊の国に連れて行ってもらえ! よく効く治癒魔術か回復薬で頭を治してもらってこい! 精霊だからできるだろ!
銀髪蒼眼チートエルフだからって調子に乗るんじゃないぞ! オレは前世から続く女顔コンプレックスが治らないんだからな! エルフに転生したのに! なんでまた母親似なの!? 騎士団の訓練メニューだってきちんとやっているのに、これ以上の筋肉がつかないんですけどぉ!? なんでなんですかねー!?
それなのにっ、なんで元幼馴染みの方はチート美貌エルフなの!? 身長交換しよう! そうしよう! 魔力量もちょっとおかしいから、オレがもらってやるよ~! ください、くれ! 家格だってなあ、違いすぎるしなあ、女神様に嫌われたのかなあ、オレ……。会った記憶はないんだけど。
あ……? 会った記憶がないからダメなの……? それならどうあっても望みがないじゃないですかぁ……。落ち込むなぁ。
「ちぃちゃんさあ」
「おわ!?」
本当にさあ、自分のこと解ってる? と鼻先まで近づいた美貌がなんか言ってらっしゃる。なんなんだよと睨み返すと、暗い青い瞳とぶつかること数秒。気持ちが落ち着いてきたようで、湧いた疑問をぶつけてみた。
「ルーくん」
「うん」
「なんでわざわざオレを指名したわけ?」
「ちぃちゃんだからだよ」
「オレだから……?」
「チェルチちゃんは俺のものでしょう?」
蕩けるような笑みを浮かべながら言った男は、手を伸ばしてくる。あっぶな!? 反射的に叩き落としてしまったけど、それがなかったらベロチュー行きだったから危ない危ない。この男は本気で危険なんだよな! 身長差も体格差もあるから、捕まったら逃げ出せんし! オレの貞操はオレが守らねば!
「違いますけど!?」
「え?」
「違いますけどぉ!?」
「え?」
前世の幼馴染みだからって、わがままが通るとは思わないことだな!
「オレはオレ自身のものであって、ルーくんのものじゃないんで! お前のわがままには付き合いきれないんだよバーカ!」
「え?」
話は解りましたから戻りますと、縮こまったままの騎士団長に伝えると、執務室を後にする。光の如く。
オレことチェルチ・ブロッセンは逃げた。空気が悪くなった執務室から。実を言うと女の子っぽい名前からも逃げ出したかったが、そちらは完全に塞がれてしまっている。主に母親によってな!
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