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訓練場に走っていく後方で轟音が聞こえてくるが、周りはなんら気にしていないのがこの騎士団の特徴だろうか。何人かは反射的にだろうが剣の柄に手を添えたが、訓練の賜物だろう。普通ならあんなヤバげな音を聞いて普段通りに過ごすことなど難しいだろうに、完全に感覚が麻痺しているんだよな~。こういうことは日常の一部になっているんだから。魔術士の実験の失敗や訓練で爆音や轟音なんて鳴りまくりだからな! いちいち反応してたら自分の仕事や訓練なんてできないしさ。慣れって怖いね~。
騎士団を心配しつつもオレがいまやるべきことは、追いつかれる前に逃げること。というわけで、そのままオレは自由だ~! と駆け抜けていっている。――が、数秒後には気配が迫ってきていた。実力で決まるはずの騎士団長を超えてくるの早すぎだろ! これだからチート持ちは嫌いなんだよ~!! 何度か騎士団長に打診されていても、書類仕事が面倒臭いからと現場第一主義なのはもうやめよう? この力を遊ばせておくのはもったいないって! オレが説得するからさあ! とは言っても、説得は失敗してるんですけど~。人の話を聞いてくれないからね~。
「ちぃちゃ~ん」
「早すぎるぅ! 付いてくるなっての!」
「やだ~」
「嫌なのはオレの方なんですけど!?」
追いつかれるままですぐさま並走になるのは、身体能力の差だろう。ぐぬぬ。同じメニュー量を消化しているというのに、なんで差が縮まらないんですかね!?
「逃げたということは、護衛の話をなかったことにする気なの?」
「お前がオレに変なことをしようとするから逃げるんだろ! こっちはもっと仕送りしたいんだから、護衛の話は受ける気しかないねっ! お前が持ってきた話だから、裏になにかありそうで怖いけどなぁっ!」
「真面目なちぃちゃんはかわいいね」
「ぶわぁっ!?」
走りながら抱きしめてくるのやめて!? 危なすぎるからね!? 現にめちゃくちゃ鼻打ったからないま!? 痛い……。鼻も背中も痛すぎる。なにより目の前で見せられている能力差に泣きたくなってくるよ。
「ルーくん待って背骨死ぬぅ……!」
「ん~、ちぃちゃん温かい」
「人の話を聞いてくれませんか!?」
頭頂部に頬擦りを始めた男をどうにか引き剥がそうとするが、胸板を叩こうが背中を叩こうが頭突きを繰り出そうが頬を平手で張り倒そうが無理だった。こちらの額と手が痛くなっただけだ。息をするように身につけている身体強化を解いてくれ。え? 解いてるって? 嘘だろ。どうなってんのお前の躯。あ、精霊が守ってくれてるのか。化け物ではなかったのね。
「離す気がないようだからこのまま運べよ」
「了解」
「了解すんなっての」
あのさあ、呆れたように言われたら離すものでしょ? なんで抱え上げてんの? いやまあ、お姫様抱っこではない分いいけれども! やっぱり高いところから見える景色は違うのな~。あ~、オレも高身長になりたい! モテたい!
「オレも身長ほしい」
「ちぃちゃんはそのままでいいよ。俺の女神様のままでいてほしい」
「女神様に怒られるからオレを女神様呼びするのはやめてくれ」
「無理」
きっぱり言うのはやめよ? 嫌ではなく無理とはどういうことよ? ええ? 怒らないから言ってみなさいな!
聞かなければならないと「無理ってなんだよ?」と先を促すと、顔が熱くなった。不意打ちはやめてくれ~。
一番に声をかけてくれたその時から、オレはこの男の女神様らしい。オレの方ははっきりとは覚えていないから、言われても『そんなことあったか?』という困惑状態になるんだけど、確かにコイツは引っ越してきたから、友達ができるか不安があったんだろう。あと、一番に声をかけたのはたまたま隣の席になったからであって、オレでなくてもよかったと思うぞ? 特に女子なんて話したくてうずうずしてたし!
転校初日なんて、緊張でどうにかなりそうなことは簡単に想像できる。しかも小学五年生の二学期からなんて可哀想な時期だったし。親の仕事の都合とはいえ、付き合わなければならない子供の方も大変だよな。オレは転校したことがないから、当人の気持ちまでは解らないけど。
そうしてこの男の心をオレが占めるのに時間はかからなかったらしい。なんで!? 昼休みにドッチボールに誘うただのガキだったぞオレは!? チビなオレが考えた結果、身長が高くなってイケメン感が増したコイツに絡んで女の子にアピールしようとしてたんだぞ!
訓練場に来る傍らでそれを暴露したオレは「解ってたよ」と言われてしまう。わ、解ってたってどういうことだ!?
「動きを見ていればすぐに解るよ? ちぃちゃん解りやすいし。すぐ顔に出るからね」
「嘘だろおいぃ!」
ちょっと待て待てと首に回してきた腕でそのまま締めると、「危ないからやめてね」と腕を緩まされた。こ、コイツぅ、自分は好き勝手にしておいて、人がやるとさらりと跳ね除けたぞ! なんて奴だ!
「首は危ないから」
「あ、はい。そうですね」
お前どういうことだと大きな声を出そうとすると、唇に人差し指を添えられてしまう。はい、そうね。さすがに首は危ないね。反省しました。
騎士団を心配しつつもオレがいまやるべきことは、追いつかれる前に逃げること。というわけで、そのままオレは自由だ~! と駆け抜けていっている。――が、数秒後には気配が迫ってきていた。実力で決まるはずの騎士団長を超えてくるの早すぎだろ! これだからチート持ちは嫌いなんだよ~!! 何度か騎士団長に打診されていても、書類仕事が面倒臭いからと現場第一主義なのはもうやめよう? この力を遊ばせておくのはもったいないって! オレが説得するからさあ! とは言っても、説得は失敗してるんですけど~。人の話を聞いてくれないからね~。
「ちぃちゃ~ん」
「早すぎるぅ! 付いてくるなっての!」
「やだ~」
「嫌なのはオレの方なんですけど!?」
追いつかれるままですぐさま並走になるのは、身体能力の差だろう。ぐぬぬ。同じメニュー量を消化しているというのに、なんで差が縮まらないんですかね!?
「逃げたということは、護衛の話をなかったことにする気なの?」
「お前がオレに変なことをしようとするから逃げるんだろ! こっちはもっと仕送りしたいんだから、護衛の話は受ける気しかないねっ! お前が持ってきた話だから、裏になにかありそうで怖いけどなぁっ!」
「真面目なちぃちゃんはかわいいね」
「ぶわぁっ!?」
走りながら抱きしめてくるのやめて!? 危なすぎるからね!? 現にめちゃくちゃ鼻打ったからないま!? 痛い……。鼻も背中も痛すぎる。なにより目の前で見せられている能力差に泣きたくなってくるよ。
「ルーくん待って背骨死ぬぅ……!」
「ん~、ちぃちゃん温かい」
「人の話を聞いてくれませんか!?」
頭頂部に頬擦りを始めた男をどうにか引き剥がそうとするが、胸板を叩こうが背中を叩こうが頭突きを繰り出そうが頬を平手で張り倒そうが無理だった。こちらの額と手が痛くなっただけだ。息をするように身につけている身体強化を解いてくれ。え? 解いてるって? 嘘だろ。どうなってんのお前の躯。あ、精霊が守ってくれてるのか。化け物ではなかったのね。
「離す気がないようだからこのまま運べよ」
「了解」
「了解すんなっての」
あのさあ、呆れたように言われたら離すものでしょ? なんで抱え上げてんの? いやまあ、お姫様抱っこではない分いいけれども! やっぱり高いところから見える景色は違うのな~。あ~、オレも高身長になりたい! モテたい!
「オレも身長ほしい」
「ちぃちゃんはそのままでいいよ。俺の女神様のままでいてほしい」
「女神様に怒られるからオレを女神様呼びするのはやめてくれ」
「無理」
きっぱり言うのはやめよ? 嫌ではなく無理とはどういうことよ? ええ? 怒らないから言ってみなさいな!
聞かなければならないと「無理ってなんだよ?」と先を促すと、顔が熱くなった。不意打ちはやめてくれ~。
一番に声をかけてくれたその時から、オレはこの男の女神様らしい。オレの方ははっきりとは覚えていないから、言われても『そんなことあったか?』という困惑状態になるんだけど、確かにコイツは引っ越してきたから、友達ができるか不安があったんだろう。あと、一番に声をかけたのはたまたま隣の席になったからであって、オレでなくてもよかったと思うぞ? 特に女子なんて話したくてうずうずしてたし!
転校初日なんて、緊張でどうにかなりそうなことは簡単に想像できる。しかも小学五年生の二学期からなんて可哀想な時期だったし。親の仕事の都合とはいえ、付き合わなければならない子供の方も大変だよな。オレは転校したことがないから、当人の気持ちまでは解らないけど。
そうしてこの男の心をオレが占めるのに時間はかからなかったらしい。なんで!? 昼休みにドッチボールに誘うただのガキだったぞオレは!? チビなオレが考えた結果、身長が高くなってイケメン感が増したコイツに絡んで女の子にアピールしようとしてたんだぞ!
訓練場に来る傍らでそれを暴露したオレは「解ってたよ」と言われてしまう。わ、解ってたってどういうことだ!?
「動きを見ていればすぐに解るよ? ちぃちゃん解りやすいし。すぐ顔に出るからね」
「嘘だろおいぃ!」
ちょっと待て待てと首に回してきた腕でそのまま締めると、「危ないからやめてね」と腕を緩まされた。こ、コイツぅ、自分は好き勝手にしておいて、人がやるとさらりと跳ね除けたぞ! なんて奴だ!
「首は危ないから」
「あ、はい。そうですね」
お前どういうことだと大きな声を出そうとすると、唇に人差し指を添えられてしまう。はい、そうね。さすがに首は危ないね。反省しました。
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