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7話
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「っらぁ!」
「ちぃちゃん痛い」
麗しき顔を近づけてくるルーくんに頭突きを食らわす。困ったような笑みを浮かべつつも額を押さえるが、オレだって痛いわバカ! この痛さは赤くなってそうだよ……。精霊さんは手加減して?
「ルーくんは変態だから痛くないはずだ」
「俺は変態ではないんだけどねえ。でも、ごめんね。ちぃちゃんがオロオロするのがかわいくて、意地悪したくなってくるんだよねー」
「だよねーじゃないから! さっきから意地の悪いことをされているオレは可哀想なんであって、かわいくはないからなっ」
睨み上げるが「そういうところだよ」と唇を舐められた。いまそういう要素あったか!? 一ミリもないよな!?
「ルーくんっ!」
「――行こうか」
外で変なことをするなと吐き出しながら唇を拭うと、手を差し出される。キラキラ笑顔とともに。変わり身が早い。早すぎてついていけません。
「急に真面目になるのはやめろよなあ。はいはい行きますよ~っと」
「ケットも行くですっ」
大人しくしていたケット・シーだったが、どうやら付いてくる気満々らしい。ルーくんはと言えば、オレの左肩に慌ただしくしがみついてきたケット・シーを一度眺めたあと、こちらが乗せた手を緩く握りしめて魔術を発動する。詠唱なし――無詠唱なんだが、魔術陣は淡い光を放った。視界がぶれたのは一瞬。予め転移魔術陣を設置していた場所へと飛んだ。
その場所とは――第三離れである。早い話が、ルーくんの実家の敷地内に建てられたお屋敷なのだ。二階建てだよ。オレが想像する離れは平屋建てだからさ、二階建てを見た時は驚いたよね。さすが金持ち~! と。騎士団にあるものも離れにあるものも、どちらの転移魔術陣もバレなきゃいいの秘密裏設置なので、バレたら説教コースなのは決まっております!
「ふみゃ~、ここが離れです~?」
「離れの裏庭だね」
肩から離れて辺りを見渡し始めるケット・シーにルーくんがそう答えると、オレたちに気がついたのか、周りがきゃ~と騒がしくなる。精霊たちはここの裏庭が気に入っているのかなんなのか、オレたちが来る時はだいたいいるんだよね。
「チェルチが来たですよ~」
「クッキーほしいです~」
「クッキーです~」
「なんでオレに集まってくるんだよ!」
「餌付けの結果だと思うよ」
「餌付けした覚えはないんだよなあ」
頭や肩や腕にケット・シーが抱きついてくる。こら! アホ毛を揺らす子は誰だ! というか、ルーくんの方には誰もいかないのはなんでなの? あと本当に餌付けをしたことはないんですがね。手伝いのお礼としてクッキーを渡すことはあっても。
「ルーくんの方にもいっていいんだぞ~」
「ケットたちはクエルトルフの魔力に当てられるから行かないです~」
「ふらふらになるですからぁ、チェルチの傍にいるのです~」
「ケット・シーに言われてるぞ~」
「魔力が特殊なのは解ってはいるけど、ケット・シーが酔うほどなんだ」
ルーくんは感心したように言うと、「魔力を抑えるといいのかな?」と、魔力を抑え始めた。オレと違い、いまでも魔力は出来得る限りで抑えているんだけれども、しれっと簡単にやってしまうのがルーくんだ。腹立つぐらいに綺麗に最小にやれてしまうのがチートなんだよぉ!
「これぐらいなら問題ないです~」
「ケット、クエルトルフの方にも行くです~」
「ケット・シーにもモテモテじゃん」
「ちぃちゃんそんな、恨みの籠もった目で見られても困るよ。抱き潰したくなるから」
「最後が余計なんだよ!」
バカ! と肩を殴るが、ルーくんは「本当のことだよ」と笑むだけ。その間にも、ケットも~ケットも~と、次々にケット・シーがルーくんの元へとふよふよ移動していく。オレの方はケット・シーに埋もれる姿も絵になるのか~と感心するばかりだ。オレが知っているのはルーくんだけだよ。こんなにもなにをしていても絵になる人なんて。ケット・シーをわしゃわしゃ撫でている手からもう美しいと思うのはルーくんだからだ。勝負はしてないけど、負けた気になるよな。
「そういえば、ケット・シーはどうして案内係になったんだ?」
「はいはい! ケットはクッキーもらいたかったですから、案内係になったです~! 勝負をして勝ったのです~」
ふと湧いた疑問に当のケット・シーが答えてくれる。答えてくれるんだが、内容がちょっと危なくないか?
「言ってくれればすぐにクッキーあげるけどさ、勝負事で決めてるのかよ」
「クッキーはほしいですが、ケットは勝たないといけないのです~。勝ってこそのクッキーのおいしさです~」
「気持ちは解るな。どういう内容なの?」
オレも気持ちは解らなくない。ルーくんが問うと、ケット・シーはふむんと胸を張る。
「こうやって転がるのです~! 時間内に1番遠くに行けたケットが勝ちなのです~」
「うげ、酔いそうなんだけど……」
ケット・シーは躯を伸ばして地面に横たわると、その場でコロコロコロ~と転がる。じゃんけんをしたらいいのではと思うが、ケット・シーにはじゃんけんは無理か。前足だからな~。ネコパンチで殴り合うわけでもないからこのままでもいいのか。オレがやるわけでもないし。今日も平和だよなあ~。
ルーくんが転がったケット・シーに「汚れを落とそうね」と魔術を発動させると、淡い水色の光に包まれる。ケット・シーは「ありがとうです~」とお礼をしながらルーくんの右肩に乗った。
「そろそろ本邸に移動しようか」
「あいよ~」
握られたままの手を軽く引かれると、ルーくんが「あ」と小さく漏らす。
「どうした?」
「いま母様が来た」
「抱きしめられる運命からは逃れられないか~」
似た者親子なので、オレのことを力の限りぎゅうぎゅうに抱きしめてくるんだよ。こちらは苦しいと訴えているのに、かわいいかわいいと頬擦りしてくるのもそっくりだよ!
「ちぃちゃん痛い」
麗しき顔を近づけてくるルーくんに頭突きを食らわす。困ったような笑みを浮かべつつも額を押さえるが、オレだって痛いわバカ! この痛さは赤くなってそうだよ……。精霊さんは手加減して?
「ルーくんは変態だから痛くないはずだ」
「俺は変態ではないんだけどねえ。でも、ごめんね。ちぃちゃんがオロオロするのがかわいくて、意地悪したくなってくるんだよねー」
「だよねーじゃないから! さっきから意地の悪いことをされているオレは可哀想なんであって、かわいくはないからなっ」
睨み上げるが「そういうところだよ」と唇を舐められた。いまそういう要素あったか!? 一ミリもないよな!?
「ルーくんっ!」
「――行こうか」
外で変なことをするなと吐き出しながら唇を拭うと、手を差し出される。キラキラ笑顔とともに。変わり身が早い。早すぎてついていけません。
「急に真面目になるのはやめろよなあ。はいはい行きますよ~っと」
「ケットも行くですっ」
大人しくしていたケット・シーだったが、どうやら付いてくる気満々らしい。ルーくんはと言えば、オレの左肩に慌ただしくしがみついてきたケット・シーを一度眺めたあと、こちらが乗せた手を緩く握りしめて魔術を発動する。詠唱なし――無詠唱なんだが、魔術陣は淡い光を放った。視界がぶれたのは一瞬。予め転移魔術陣を設置していた場所へと飛んだ。
その場所とは――第三離れである。早い話が、ルーくんの実家の敷地内に建てられたお屋敷なのだ。二階建てだよ。オレが想像する離れは平屋建てだからさ、二階建てを見た時は驚いたよね。さすが金持ち~! と。騎士団にあるものも離れにあるものも、どちらの転移魔術陣もバレなきゃいいの秘密裏設置なので、バレたら説教コースなのは決まっております!
「ふみゃ~、ここが離れです~?」
「離れの裏庭だね」
肩から離れて辺りを見渡し始めるケット・シーにルーくんがそう答えると、オレたちに気がついたのか、周りがきゃ~と騒がしくなる。精霊たちはここの裏庭が気に入っているのかなんなのか、オレたちが来る時はだいたいいるんだよね。
「チェルチが来たですよ~」
「クッキーほしいです~」
「クッキーです~」
「なんでオレに集まってくるんだよ!」
「餌付けの結果だと思うよ」
「餌付けした覚えはないんだよなあ」
頭や肩や腕にケット・シーが抱きついてくる。こら! アホ毛を揺らす子は誰だ! というか、ルーくんの方には誰もいかないのはなんでなの? あと本当に餌付けをしたことはないんですがね。手伝いのお礼としてクッキーを渡すことはあっても。
「ルーくんの方にもいっていいんだぞ~」
「ケットたちはクエルトルフの魔力に当てられるから行かないです~」
「ふらふらになるですからぁ、チェルチの傍にいるのです~」
「ケット・シーに言われてるぞ~」
「魔力が特殊なのは解ってはいるけど、ケット・シーが酔うほどなんだ」
ルーくんは感心したように言うと、「魔力を抑えるといいのかな?」と、魔力を抑え始めた。オレと違い、いまでも魔力は出来得る限りで抑えているんだけれども、しれっと簡単にやってしまうのがルーくんだ。腹立つぐらいに綺麗に最小にやれてしまうのがチートなんだよぉ!
「これぐらいなら問題ないです~」
「ケット、クエルトルフの方にも行くです~」
「ケット・シーにもモテモテじゃん」
「ちぃちゃんそんな、恨みの籠もった目で見られても困るよ。抱き潰したくなるから」
「最後が余計なんだよ!」
バカ! と肩を殴るが、ルーくんは「本当のことだよ」と笑むだけ。その間にも、ケットも~ケットも~と、次々にケット・シーがルーくんの元へとふよふよ移動していく。オレの方はケット・シーに埋もれる姿も絵になるのか~と感心するばかりだ。オレが知っているのはルーくんだけだよ。こんなにもなにをしていても絵になる人なんて。ケット・シーをわしゃわしゃ撫でている手からもう美しいと思うのはルーくんだからだ。勝負はしてないけど、負けた気になるよな。
「そういえば、ケット・シーはどうして案内係になったんだ?」
「はいはい! ケットはクッキーもらいたかったですから、案内係になったです~! 勝負をして勝ったのです~」
ふと湧いた疑問に当のケット・シーが答えてくれる。答えてくれるんだが、内容がちょっと危なくないか?
「言ってくれればすぐにクッキーあげるけどさ、勝負事で決めてるのかよ」
「クッキーはほしいですが、ケットは勝たないといけないのです~。勝ってこそのクッキーのおいしさです~」
「気持ちは解るな。どういう内容なの?」
オレも気持ちは解らなくない。ルーくんが問うと、ケット・シーはふむんと胸を張る。
「こうやって転がるのです~! 時間内に1番遠くに行けたケットが勝ちなのです~」
「うげ、酔いそうなんだけど……」
ケット・シーは躯を伸ばして地面に横たわると、その場でコロコロコロ~と転がる。じゃんけんをしたらいいのではと思うが、ケット・シーにはじゃんけんは無理か。前足だからな~。ネコパンチで殴り合うわけでもないからこのままでもいいのか。オレがやるわけでもないし。今日も平和だよなあ~。
ルーくんが転がったケット・シーに「汚れを落とそうね」と魔術を発動させると、淡い水色の光に包まれる。ケット・シーは「ありがとうです~」とお礼をしながらルーくんの右肩に乗った。
「そろそろ本邸に移動しようか」
「あいよ~」
握られたままの手を軽く引かれると、ルーくんが「あ」と小さく漏らす。
「どうした?」
「いま母様が来た」
「抱きしめられる運命からは逃れられないか~」
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