公爵令嬢の護衛のうちのひとりなんですが、異母兄である三男様が離してくれません!

白千ロク(玄川ロク)

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14話

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「ちぃちゃんは酷いと思うよ」
「オレはその気がなくなりましたので~」

 覆い被さったまま不機嫌さを隠さないルーくんだったが、緩く抱きしめ直してやると機嫌も少し直してくれた。ふへへ、チョロいぜ! と思ったのも束の間、美声の囁きですべてが終わる。

「チェルチちゃんがそういうことなら、朝まで寝かせないだけだけどね」
「善処してほしいです」

 朝までコースなんて言葉が出なくなるよ。いつも言っているけど、酷いのはオレじゃなくてルーくんの方だろ? この引き攣った笑顔が解るか? 微笑みながら頭を撫でるな!


     ◆


 戯れはやめて続きをやろうと寝室を後にしたのは、ケット・シーが「ケットは早く終わらせてみんなでお菓子を食べたいです~」と言ったからだ。ケット・シーの言うみんなとはみんなである。オレたちを含めたほかの仲良しケット・シーたちと一緒にお菓子を食べたいということなのだ。むんむんとやる気を出す姿がかわいすぎるよね。

 ケット・シーに行動を促されるエルフはオレとルーくんしかいないだろう。最後に触れるだけのキスをされたが、触れるだけだからいいかな。ここで言い返したらまた時間を使ってしまうだけだから、我慢するよ。ケット・シーに怒られたくないし。

 部屋の換気はトイレや物置まで含めてすべてやった。トイレは窓がない作りだから魔術頼りだったけれども。ちゃんと屋根裏部屋もしたよ~。ここの屋根裏部屋はただの物置であって、秘密基地感はまったくなかったね。物は少なかったが、整理されていたので動かすことなくさっさと空気を入れ替えた。念の為にした換気作業だったが、なんだかんだで時間は使っていたようだった。

 昼も近くなってきたので厨房へと行くが、ここには料理人はおりません。なぜかと言えば、自分達で好きに作りたいからだ。料理人がいては邪魔にしかならないんですよ。

「ケット・シーはなにが食いたい~?」
「ケットはルフが作るふわとろ親子丼が食べたいです~」
「ルーくんの親子丼うまいよな~。ルーくん頼む!」
「はいはい。ちぃちゃんもケット・シーも卵は割ろうね」
「はいよ~!」

 興奮気味にきゃーと小さく騒ぎながら両頬に短い手を置いてなにが食べたいかを言うケット・シーを撫で回したのは言うまでもない。この子にとっては何年か振りだからな。さっさとローブと魔術杖を空間庫へ仕舞い、お揃いの紺色のエプロンを出す。ケット・シーもお揃いだよ。

「にゃ~。エプロン久し振りです~!」
「オレも久し振りだな~」
「チェルチもですか~?」
「そうなんだよ~。砦門にいる時は雑用は見習いがやるし、部屋の掃除や料理はルーくんがするからオレのすることがないんだよね~」
「ちぃちゃんは昔から家事は得意じゃないからね」
「得意な奴に任せたほうが安全だろ」

 家事全般が出来ないわけではないのだが、オレだとどうやっても時間がかかる。慣れと経験もあるんだろうが、短時間でなんて無理ですよ、無理。だから家事と育児、そして仕事を両立している人は尊敬しかない。お母さんでもお父さんでも凄いとしか言えないんだよな。だからルーくんのことも尊敬しているんだけれども、普段の言動がおかしいから少しだけマイナスになっている。

 魔術で手洗いが出来るのはいいよ~。さっと終わるのがいい。やっぱり魔術様々よ! ここでもやる気満々なケット・シーは専用包丁とまな板を自分の空間庫から取り出して、鶏肉を一口サイズに切ると言った。ルーくんの指名だけど。オレたちが切ると、どうしてもケット・シーには大きすぎるからね。精霊たちは器もカトラリーも自分たちで作っているんだよ。なかには職人に頼むこともあるようだが、職人も職人で精霊サイズは難しいこともあるみたいでね、最終的には一緒に作ることもあるらしいよ。お代は精霊が集めたものでいいし、一緒に作れたことで無料という場合もあるね。

 今回使う鶏肉は、鳥型の魔物の肉である。この国には鳥型の魔物もいるし、動物の鳥もいたりするんだが、動物の方はサイズがちょっと大きめなんだよな。だから鶏も大きめだね。魔物に比べると小さいだけであって。世界中を旅したわけではないので、世界になると解らないんだが、猫と小型犬以外の動物はちょっと大きめなのが基準なのかもしれない。異世界だから地球産とは違うんだよ。売る場合は大きい方が金になるとは思うけど、大きいとなると倒す方はそれだけ大変になるよ。

 米を研ぐルーくんを横目にボウルを出して玉ねぎも出す。空間庫は時間停止機能付きだから、食材が腐らない。力ある精霊たちの自前の空間庫も時間の流れがゆっくりとなっているみたいだから、劣化が少ない。魔術鞄――マジックバッグよりも空間庫の方がレアらしいね。エルフはまあまあの人数が空間庫持ちだからレア感は薄い。ただ周りに知られると面倒事にしかならないから黙っているだけだからな。最悪洗脳されるからな。口を噤むのが大正解というわけだ。精霊たちも心を許した者でないと自分のことを話さないからね。

「ケットお肉切ったです~。こっちがチェルチたちの分で、こっちがケットの分です~」
「了解。次は玉ねぎをお願いしま~す」
「解ったです~!」

 ほいと皮を剥いた玉ねぎをケット・シーに渡したあとは一度まな板を浄化する。お肉の菌が他に移らないようにするのは常識だよ。魔物肉だからこそ、特に気をつけないとならないだろ。
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