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合図
目が覚めた時ルディウス様の顔が間近にあって、昨日寝落ちた事を思い出した僕は真っ青になって膝から降りようとしたんだけど、ルディウス様が離してくれないから膝の上で縮こまる事しか出来ない。
寝れないからと付き合わせただけじゃなく、ルディウス様の睡眠まで妨害してしまうなんて⋯でも、おかげでぐっすり眠れた。
やっぱり僕、ルディウス様と一緒にいると眠れるのかもしれない。
「あの⋯ルディウス様⋯ごめんなさい、僕⋯」
「いや、よく眠れたようで何よりだ」
「でもルディウス様は、眠れてないですよね⋯」
優しいルディウス様は、きっと僕を起こさないようにずっとこうしていてくれたんだろうな。それが申し訳なくて俯く僕のおでこにルディウス様の唇が触れ、宥めるように背中が撫でられた。
「私は野営などで慣れているから大丈夫だ。それよりも、アルシエがきちんと眠れる事の方が大事だよ」
「⋯凄く、よく眠れました⋯」
「そうか、それは良かった」
あんなに眠れないかもって思ってたのに、ルディウス様に抱き締められて、頭を撫でられたらいつの間にか眠ってた。自分でも気付かないくらいあっさり。
もしかしてルディウス様の手って不思議な力があるのかも。
「ん?」
「あ、いえ⋯」
じっとルディウス様の手を見ていたら不思議そうな顔をされて、慌てて首を振って僕はルディウス様へと寄りかかる。
着替えとかしなきゃいけないけど、もうちょっとこのままでいたいな。
「甲板には当分近寄らないよう伝えてあるから、少しゆっくりしようか」
「⋯⋯⋯」
「どうした?」
「心が読まれたのかと思いました⋯」
同じような事を口にするから驚いてしまって、目を瞬いて答えるとルディウス様はクスリと笑って僕の頬へと触れてきた。
「アルシエも、まだ私といたいと思ってくれたのか」
「⋯はい」
「だが、出来ればそういう事は口にして欲しい」
「え?」
「愛する妻に一緒にいたいと言われて、喜ばない夫などいないよ」
それはルディウス様が優しいからではって思ったけど、もし僕がルディウス様にそう言って貰えたら嬉しいかもしれない。
そっか、こういうのは言ってもいいんだ。
「ルディウス様」
「ん?」
「あの⋯⋯もう少し、だけ⋯こうしててもいいです、か⋯?」
ぎこちないのはきっと一生直らないと思うけど、ルディウス様が望んでくれるならもう少し言葉にするのを頑張りたい。
⋯頑張りたいばっかりで出来てるのかは分かんないけど。
でもルディウス様は、僕の言葉を聞くと、柔らかく微笑んで頷いてくれた。
「もちろん。少しとは言わず、アルシエが望むだけこうしていようか」
そんな事言ったらいつまでだってくっついてるかもしれないのに。
目を閉じたルディウス様が僕のおでこに鼻先を寄せたあと、頬を挟んで上向かせ軽く唇を触れ合わせてきた。瞬間、昨日の事を思い出して僕の顔が熱くなる。
そういえば、昨日はした事ない口付けをしたんだった。
「⋯ん⋯」
もしかして今からするのかなって思ったら身体に力が入って、気付いたルディウス様がふっと笑いペロって唇を舐めてきた。
「⋯!?」
「そんなに緊張しなくても、今はしないよ」
「⋯⋯し、しないん、ですか⋯?」
「してもいいのか?」
「る、ルディウス様が、したいなら⋯」
いつも僕の気持ちを優先してくれるんだから、たまにはルディウス様だって好きにして欲しい。恥ずかしいけど、それがルディウス様のしたい事ならどんな事だって受け入れたいって思ってるから。
頬を挟んだままのルディウス様の手に自分の手を重ねて見上げると、ルディウス様は一瞬だけ唇を合わせて抱き締めてきた。
「アルシエがしたいと思わないならもうしない」
「ぼ、くは⋯」
「君がこういう事に疎いのは分かっている。だから、君がいいと思うまでは過度な触れ合いはしない」
したいって思ってない訳じゃないけど、それを口にするのははしたなくないかな。ルディウス様との口付け、幸せいっぱいになるから好きなんだけど。
目を伏せる僕に、ルディウス様は少し間を置いて「そうだな」と切り出した。
「もしアルシエも同じ気持ちなら、合図を決めないか?」
「合図⋯?」
「そう。いつもの口付けなら私の手を握って、昨日のような口付けなら私の頬に触れる。どうだ?」
口で言わずに手で合図を出す⋯それなら口に出すのが苦手な僕でも出来るかも。
そんな事思い付くなんて、やっぱりルディウス様は凄いな。
僕はルディウス様の手から離した手をぎゅっと握り込み、ゆっくりとルディウス様の頬へと伸ばした。指先で触れた瞬間、柔らかく微笑んで僕の方へとまた顔を寄せる。
唇が触れ合って、僕のよりも厚みのある舌で口の中を舐められて、息をするのが下手な僕はすぐヘトヘトになっちゃったけど、ドキドキはしてもやっぱり全然嫌じゃない。むしろ何ていうか⋯ゾワゾワする?
分かんないけど、もっとして欲しいって思っちゃう。
やっぱり僕、はしたないのかもしれない。
お昼過ぎ、ヨーディアの港に入るとみんなが驚いたように船を見上げてた。
ここはあまり他国との貿易に力は入れていないって聞いたから、大きな船にザワついてるのかも。それにしたって慌てふためき過ぎだと思ってたら、船から降りた時近くにいた人が「リトルハイム公爵様だ」って零したから、どうやら家紋の入った旗に驚いてたみたい。
よその国にまで名前が知られてるのは凄いけど⋯みんな怯えてるから、〝冷徹公爵〟の方が伝わってるんだろうな。ルディウス様、凄く優しいのに。
事前に連絡をしてあるという貴族用の宿に向かう間チラチラとみんなを見たけど、誰も目を合わせようとしないでそそくさと逃げるように立ち去ってた。ルディウス様は気にもしてなかったのが何だか切なくて、何とか出来ないのかって考えてしまう。
誰か一人にでも、ルディウス様は怖くないって知って欲しいな。
寝れないからと付き合わせただけじゃなく、ルディウス様の睡眠まで妨害してしまうなんて⋯でも、おかげでぐっすり眠れた。
やっぱり僕、ルディウス様と一緒にいると眠れるのかもしれない。
「あの⋯ルディウス様⋯ごめんなさい、僕⋯」
「いや、よく眠れたようで何よりだ」
「でもルディウス様は、眠れてないですよね⋯」
優しいルディウス様は、きっと僕を起こさないようにずっとこうしていてくれたんだろうな。それが申し訳なくて俯く僕のおでこにルディウス様の唇が触れ、宥めるように背中が撫でられた。
「私は野営などで慣れているから大丈夫だ。それよりも、アルシエがきちんと眠れる事の方が大事だよ」
「⋯凄く、よく眠れました⋯」
「そうか、それは良かった」
あんなに眠れないかもって思ってたのに、ルディウス様に抱き締められて、頭を撫でられたらいつの間にか眠ってた。自分でも気付かないくらいあっさり。
もしかしてルディウス様の手って不思議な力があるのかも。
「ん?」
「あ、いえ⋯」
じっとルディウス様の手を見ていたら不思議そうな顔をされて、慌てて首を振って僕はルディウス様へと寄りかかる。
着替えとかしなきゃいけないけど、もうちょっとこのままでいたいな。
「甲板には当分近寄らないよう伝えてあるから、少しゆっくりしようか」
「⋯⋯⋯」
「どうした?」
「心が読まれたのかと思いました⋯」
同じような事を口にするから驚いてしまって、目を瞬いて答えるとルディウス様はクスリと笑って僕の頬へと触れてきた。
「アルシエも、まだ私といたいと思ってくれたのか」
「⋯はい」
「だが、出来ればそういう事は口にして欲しい」
「え?」
「愛する妻に一緒にいたいと言われて、喜ばない夫などいないよ」
それはルディウス様が優しいからではって思ったけど、もし僕がルディウス様にそう言って貰えたら嬉しいかもしれない。
そっか、こういうのは言ってもいいんだ。
「ルディウス様」
「ん?」
「あの⋯⋯もう少し、だけ⋯こうしててもいいです、か⋯?」
ぎこちないのはきっと一生直らないと思うけど、ルディウス様が望んでくれるならもう少し言葉にするのを頑張りたい。
⋯頑張りたいばっかりで出来てるのかは分かんないけど。
でもルディウス様は、僕の言葉を聞くと、柔らかく微笑んで頷いてくれた。
「もちろん。少しとは言わず、アルシエが望むだけこうしていようか」
そんな事言ったらいつまでだってくっついてるかもしれないのに。
目を閉じたルディウス様が僕のおでこに鼻先を寄せたあと、頬を挟んで上向かせ軽く唇を触れ合わせてきた。瞬間、昨日の事を思い出して僕の顔が熱くなる。
そういえば、昨日はした事ない口付けをしたんだった。
「⋯ん⋯」
もしかして今からするのかなって思ったら身体に力が入って、気付いたルディウス様がふっと笑いペロって唇を舐めてきた。
「⋯!?」
「そんなに緊張しなくても、今はしないよ」
「⋯⋯し、しないん、ですか⋯?」
「してもいいのか?」
「る、ルディウス様が、したいなら⋯」
いつも僕の気持ちを優先してくれるんだから、たまにはルディウス様だって好きにして欲しい。恥ずかしいけど、それがルディウス様のしたい事ならどんな事だって受け入れたいって思ってるから。
頬を挟んだままのルディウス様の手に自分の手を重ねて見上げると、ルディウス様は一瞬だけ唇を合わせて抱き締めてきた。
「アルシエがしたいと思わないならもうしない」
「ぼ、くは⋯」
「君がこういう事に疎いのは分かっている。だから、君がいいと思うまでは過度な触れ合いはしない」
したいって思ってない訳じゃないけど、それを口にするのははしたなくないかな。ルディウス様との口付け、幸せいっぱいになるから好きなんだけど。
目を伏せる僕に、ルディウス様は少し間を置いて「そうだな」と切り出した。
「もしアルシエも同じ気持ちなら、合図を決めないか?」
「合図⋯?」
「そう。いつもの口付けなら私の手を握って、昨日のような口付けなら私の頬に触れる。どうだ?」
口で言わずに手で合図を出す⋯それなら口に出すのが苦手な僕でも出来るかも。
そんな事思い付くなんて、やっぱりルディウス様は凄いな。
僕はルディウス様の手から離した手をぎゅっと握り込み、ゆっくりとルディウス様の頬へと伸ばした。指先で触れた瞬間、柔らかく微笑んで僕の方へとまた顔を寄せる。
唇が触れ合って、僕のよりも厚みのある舌で口の中を舐められて、息をするのが下手な僕はすぐヘトヘトになっちゃったけど、ドキドキはしてもやっぱり全然嫌じゃない。むしろ何ていうか⋯ゾワゾワする?
分かんないけど、もっとして欲しいって思っちゃう。
やっぱり僕、はしたないのかもしれない。
お昼過ぎ、ヨーディアの港に入るとみんなが驚いたように船を見上げてた。
ここはあまり他国との貿易に力は入れていないって聞いたから、大きな船にザワついてるのかも。それにしたって慌てふためき過ぎだと思ってたら、船から降りた時近くにいた人が「リトルハイム公爵様だ」って零したから、どうやら家紋の入った旗に驚いてたみたい。
よその国にまで名前が知られてるのは凄いけど⋯みんな怯えてるから、〝冷徹公爵〟の方が伝わってるんだろうな。ルディウス様、凄く優しいのに。
事前に連絡をしてあるという貴族用の宿に向かう間チラチラとみんなを見たけど、誰も目を合わせようとしないでそそくさと逃げるように立ち去ってた。ルディウス様は気にもしてなかったのが何だか切なくて、何とか出来ないのかって考えてしまう。
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