身代わりの伯爵令息は冷徹公爵の寵愛を得る

ミヅハ

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一緒にいたい

 ふと目を覚ました時、窓の外には星空が広がっていた。

「⋯⋯あれ?」

 いつの間に寝たのか、どうしても思い出せなくて起き上がった僕は、帰ってきた時と違う服を着ている事に気付いて首を傾げ、ハッとする。
 そういえば、ルディウス様に凄い事をされたような⋯。


『ぁ、あ⋯離し、て⋯っ、だめ、だめ⋯』
『怖がらなくていい。アルシエ、大丈夫だから』
『やぁ⋯ぁ⋯何かきちゃ⋯⋯も⋯⋯ん、んん⋯⋯っ』
『⋯上手に出せたな、いい子だ』


 まさかあんなところをルディウス様が触るなんて思わなかったし、何か出た時漏らしちゃったかもって焦った。でもそのあとは疲労感に襲われて、眠気も増してたからルディウス様に口付けられて寝落ちたのかも。
 とにかく恥ずかしくて、夫婦ってこんな事もするんだって驚きとドキドキで訳が分からなかったけど、ルディウス様の声はずっと優しかったし触れて貰えて嬉しかった。
 囁くように自分の名前が呼ばれた時を思い出して、火が出そうなほど顔が熱くなった僕はもう一度ベッドに突っ伏し、頭までシーツを被る。
 しばらく一人で唸っていたらいきなりシーツごと抱き上げられ、頬に口付けられた。

「起きたのか。よく寝ていたな」
「ルディウス様⋯」

 ルディウス様だって分かった瞬間また頬が熱くなり、シーツを合わせて口元を隠すとふって笑われる。

「腹は減ってないか?」
「⋯今は⋯大丈夫です⋯」
「そうか。風呂はどうする?」
「あ、入りたい、です」
「なら隣にリーネがいるから、温め直すよう伝えてくる」
「ぼ、僕が行きます⋯っ」

 至って普段通りなルディウス様からの質問に呆けつつも答えてたら、とんでもない事を言われてまたベッドに降ろされそうになり慌てて首を振る。
 ルディウス様にそんな使いぱしりみたいな事させる訳にはいかない。
 だから腕から降りようとしたんだけどどうしてかルディウス様は離してくれなくて、それどころか僕をさらに強く抱き締めると唇を塞いできた。

「ん⋯っ」

 肉厚な舌が入ってきて僕の舌を掬い裏側を先でなぞる。
 口の中なのに気持ち良くて、お腹の下がぎゅってなってルディウス様の服を掴んだら、舌が軽く吸われて離れた。

「風呂に入ったら自分の部屋で過ごすだろう? それまでは一緒にいたいんだ」
「⋯もう、ルディウス様のお部屋に来たら⋯ダメなんですか?」
「いや⋯駄目ではないが⋯」

 やっとルディウス様と顔を合わせて話せてるのにここでおやすみなんて寂しいし、それこそ寝なくてもいいって思うくらい離れたくない。
 さすがにそれはルディウス様を困らせるから言わないけど。
 僕は緩く首を振り、腕に絡まっていたシーツを剥がしてルディウス様の首へと腕を回すと肩へと顔を埋める。

「⋯ルディウス様と⋯一緒にいたい、です⋯」
「⋯⋯⋯」
「目が覚めて、ルディウス様がいないの⋯やだ⋯」

 我儘を言ってるのは分かってる。でも、今日だけでもいいからずっと傍にいて欲しかった。
 何も言わないルディウス様に不安を抱きつつも腕の力を強めれば、少しして優しく頭を撫でられた。

「分かった。風呂から上がったらまたおいで」
「⋯はい⋯っ」

 ダメって言われるとは思ってなかったけど、むしろ甘やかすように言われて嬉しくなった僕は顔を上げ笑顔で頷く。
 ルディウス様、本当に優しいな。

「じゃあリーネさんのところに行ってきます」
「ああ」
「⋯⋯⋯えっと、ルディウス様?」
「ん?」
「お、下ろして貰えないと⋯行けないです⋯」

 何度も言うけど、ルディウス様は凄く背が高い。
 抱き上げられてる僕がこの高さで足を伸ばしても絶対届かないから、出来ればルディウス様に下ろして欲しいんだけど⋯。
 戸惑いつつ伝えたら、ルディウス様はクスリと笑っておでこを合わせてきた。

「アルシエはいつも愛らしいな」
「⋯?」

 どこにそう思う要素があったんだろう。
 首を傾げる僕に触れるだけの口付けをして下ろしたルディウス様は、僕の部屋へと続く扉を開けてくれた。

「待ってるから」
「はい、行ってきます」
「ああ」

 背中をトンッと押され、一度だけ振り向いた僕はルディウス様にそう言って扉をくぐる。
 今日はずっとルディウス様と一緒。たくさん話せるといいな。



 お風呂から上がり、これだけでもってリーネさんから渡された果物を食べたあとルディウス様の部屋へと続いている扉から入ったら、少し髪の濡れたルディウス様がいて立ったまま紙を見てた。
 僕に気付くとそれをテーブルに置き、手招きしてくれる。
 駆け寄れば肩が抱き寄せられ、腰を屈めたルディウス様が頭のてっぺんに唇を押し当ててきた。

「ちゃんと温まったか?」
「はい。ルディウス様もお風呂に入ったんですね」
「私も、アルシエと一緒にいたいからな」

 こうして僕と同じ気持ちだって教えてくれるルディウス様に、身体だけじゃなく心も温かくなる。勇気出して良かった。

「⋯⋯⋯」

 それにしても、初めてルディウス様の寝る前の姿を見たけど、どうして夜着姿なのにこんなにカッコいいんだろう。
 カッコいいのは普段からだし、いつも思ってるのにふとした事でドキドキする。
 ぼんやりと見ていたらルディウス様が気付いて微笑み、僕を抱き上げるとベッドへと寝かせて自分も隣に寝転んだ。

「アルシエの瞳に見つめられると、堪らない気持ちになるな」
「堪らない気持ち?」
「アルシエの全てに触れて、口付けたくなる」
「⋯い、いつでも⋯どうぞ⋯」

 全てがどこまでを指すのか分からないけど、もちろん嫌じゃないし僕だってそうして欲しいって思ってるからルディウス様の頬へ手を伸ばそうとしたら、それよりも早く抱き締められ動けなくなる。
 合図出来なかった。

「さすがに今日は疲れただろうから、休む事を優先しよう」
「⋯はい」
「明日は昼までは一緒にいられる。したい事、して欲しい事があれば教えてくれ」
「ルディウス様が傍にいてくださるだけで充分です」
「また欲のない事を」

 そうは言うけど、こんなに素敵な人を独り占めなんて凄く欲深いと思うんだ。
 僕はルディウス様の胸元に顔を寄せ目を閉じる。
 微かに聞こえる心音が凄く心地いい。

「ルディウス様」
「ん?」
「助けに来てくださって⋯ありがとうございます⋯」
「いや⋯遅くなってすまなかった」
「いいえ⋯⋯ホッとしたし⋯嬉しかった⋯です⋯」

 ルディウス様の優しい声と温もりと、少しだけスパイシーな香りに眠気が誘われ、会話の途中にも関わらず僕は自分でも気付かないうちに眠りについてた。
 あの施設では全然眠れなかったのに⋯。
 それだけルディウス様の傍が安心出来るって事なんだろうな。
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