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光の庭
それから十日後、ルディウス様は朝早くから騎士服と鎧を纏って仕事へと出向き、見送ったあと自分の部屋のバルコニーで雪の積もった庭を眺めていた僕は、首筋に触れてふっと息を吐いた。
ここには、ルディウス様が〝シルシ〟を残してくれてる。
ちゃんと戻って来るよって、約束のシルシ。
初めて付けられた時は全然分からなかったけど、あれからもルディウス様が首とか胸に口付けるたび微かな痛みがしてたから、気になって聞いてみたら教えてくれた。でもいつも付けてるのは、僕がルディウス様の奥さんっていう証なんだって。
照れくさいけど、嬉しいの方が大きいから毎日でも付けて欲しいって思った。
「奥様、温かいお茶でもいかがですか?」
「あ、はい。いただきます」
「今日のご予定は?」
「ちょっとだけ庭を散歩して、勉強しようかなって思ってます」
「雪が避けられた道以外は、深いですから気を付けてくださいね」
「はい」
部屋に入り、扉を閉めて窓際のソファに腰を下ろすと目の前にティーカップと一口サイズのタルトが並べられる。一つだけ絞られた生クリームの上にはカットされたフルーツが乗っててカラフルだ。
ルディウス様なら、ホントにポンって口に入れそう。
「それと奥様、王女殿下からお手紙が届いていましたよ」
「ありがとうございます」
リーネさんがエプロンのポケットから封筒を取り出し僕へと渡してくれる。
アンジェラ様、こうして定期的にお手紙をくれるんだよね。お茶のお誘いだったり、こんな事あったよってお知らせだったり。たまにお菓子のお裾分けがついてたりもする。
王家の中で一番アンジェラ様とお話してるけど、本当に気さくで素敵な人だ。
もちろん殿下もお優しいけど、僕はアンジェラ様の着飾らなさが好きだった。
「あ、そうだ。リーネさん」
「はい、何でしょう?」
「雪の夜市、今日からですよね? せっかくですし、みんなと行ってみてはどうですか?」
「ですが⋯」
「どんな感じだったか教えて欲しいんです。それに、たまには息抜きだってしないと」
ずーっとお屋敷にいて働いてくれてるんだから、街を上げてのイベントだけでもみんなで楽しんで来て欲しい。
そう言えば、リーネさんは少し考えたあとふわりと微笑んで頷いた。
「ありがとうございます。お屋敷を完全に空ける訳にはいきませんので、みんなと話して、何人かで順番に行かせていただきますね」
「ぜひ」
リーネさんは出先でも僕の事を考えてしまうって言ってたけど、誰かと一緒ならきっと楽しいに集中出来るはず。
提案を受け入れて貰えてホッとした僕は、新しいお皿にタルトを半分移してリーネさんに渡し、一緒にお茶を飲みながらたくさん話した。
どんなお土産話が聞けるのか、僕も楽しみだ。
今日は雪の夜市最終日。
五人一組で出かけて行く使用人を転移装置まで見送り、雪が舞い降りてくる空を見上げる。あと一ヶ月もすればこの雪も止んで、だんだんとあったかくなるんだろうな。
ルディウス様とのお出かけはその頃の方がいいかもしれない。
寒さに身体を震わせ、お屋敷の中に入った僕は部屋ではなく図書室に向かう。
ルディウス様が殿下の護衛として北に行ってから少しでも寂しい気持ちを紛らわせようと思って、僕は物語の本を部屋へ持って行き寝る前に読むようにしてた。
二日前に持って行った本は読んだから、また新しいのを選ばないと。
手にしていた本を元の場所に戻し、同じ列から気になるタイトルを探す。今日はこの、魔法使いが主役の物語にしようかな。
ちょっと厚めの本を抱え、図書室から出てルディウス様の部屋へと続く廊下を歩く。
ルディウス様、あとどれくらいで帰ってくるんだろう。
「奥様、こちらにいらっしゃいましたか」
エントランスを抜けた時、僕を捜していたのかリーネさんがそう言いながら歩み寄ってきた。
「図書室に行っていました」
「そうだったのですね。お部屋に戻られるところで申し訳ないのですが、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
僕にそんな事を言うなんて珍しいと思いながらも頷き、リーネさんのあとについて行く。どこに行くんだろうって首を傾げてたら僕専用のバルコニーについて、手摺りの傍に立つよう促された。
肩に厚手のブランケットがかけられ、リーネさんを振り向くとにこりと笑う。
「お庭をご覧になっていてくださいね」
「? はい」
庭は地面にポツポツとライトが埋められてるから真っ暗ではないけど、雪が積もってるくらいで変わったところはないから何を見たらいいか分からなくて、右へ左へ視線を動かしてたら次の瞬間には一気に周りが明るくなった。
「⋯!」
眩しくて反射的に閉じてしまった目を恐る恐る開けると、庭の木や生け垣にたくさんの光の玉がくっついてて庭全体がライトアップされてる。
驚きと困惑で固まってたら、隣にリーネさんが来て肩からズレたブランケットを直してくれた。
「私たちから、奥様へのプレゼントです」
「え?」
「光魔法が使える者にお願いして、光の玉を灯してなんちゃってイルミネーションを作ってみました」
「⋯⋯凄い⋯」
まさかこんなに素敵な景色を見せて貰えるなんて⋯予想外過ぎて当たり障りのない言葉しか出なかった。
光に照らされた雪がキラキラしてる。
「雪の夜市ほどの綺麗さはありませんが、せめて少しでも体感していただけたらってみんなで話し合ってみたんです」
「そんな事⋯とっても綺麗です」
ゆっくりと明滅する光をじっと眺めながら首を振り、僕はほうっと息を吐いた。
どんなに綺麗なものでも、みんなの想いが詰まったこの光景に勝るものはない。
「ありがとうございます」
嬉しさで胸がいっぱいになってお礼しか言えなかったけど、この景色は一生の宝物だ。絶対に忘れないし、何があっても忘れたくない。
それから僕はリーネさんに言われるまでずっと庭を見てて、すっかり身体が冷えてしまい大急ぎでお風呂へと入れられてしまった。
どうせ眠れないからあのまま見ていたかったって言ったら、リーネさんはどんな反応をしたかな。
ここには、ルディウス様が〝シルシ〟を残してくれてる。
ちゃんと戻って来るよって、約束のシルシ。
初めて付けられた時は全然分からなかったけど、あれからもルディウス様が首とか胸に口付けるたび微かな痛みがしてたから、気になって聞いてみたら教えてくれた。でもいつも付けてるのは、僕がルディウス様の奥さんっていう証なんだって。
照れくさいけど、嬉しいの方が大きいから毎日でも付けて欲しいって思った。
「奥様、温かいお茶でもいかがですか?」
「あ、はい。いただきます」
「今日のご予定は?」
「ちょっとだけ庭を散歩して、勉強しようかなって思ってます」
「雪が避けられた道以外は、深いですから気を付けてくださいね」
「はい」
部屋に入り、扉を閉めて窓際のソファに腰を下ろすと目の前にティーカップと一口サイズのタルトが並べられる。一つだけ絞られた生クリームの上にはカットされたフルーツが乗っててカラフルだ。
ルディウス様なら、ホントにポンって口に入れそう。
「それと奥様、王女殿下からお手紙が届いていましたよ」
「ありがとうございます」
リーネさんがエプロンのポケットから封筒を取り出し僕へと渡してくれる。
アンジェラ様、こうして定期的にお手紙をくれるんだよね。お茶のお誘いだったり、こんな事あったよってお知らせだったり。たまにお菓子のお裾分けがついてたりもする。
王家の中で一番アンジェラ様とお話してるけど、本当に気さくで素敵な人だ。
もちろん殿下もお優しいけど、僕はアンジェラ様の着飾らなさが好きだった。
「あ、そうだ。リーネさん」
「はい、何でしょう?」
「雪の夜市、今日からですよね? せっかくですし、みんなと行ってみてはどうですか?」
「ですが⋯」
「どんな感じだったか教えて欲しいんです。それに、たまには息抜きだってしないと」
ずーっとお屋敷にいて働いてくれてるんだから、街を上げてのイベントだけでもみんなで楽しんで来て欲しい。
そう言えば、リーネさんは少し考えたあとふわりと微笑んで頷いた。
「ありがとうございます。お屋敷を完全に空ける訳にはいきませんので、みんなと話して、何人かで順番に行かせていただきますね」
「ぜひ」
リーネさんは出先でも僕の事を考えてしまうって言ってたけど、誰かと一緒ならきっと楽しいに集中出来るはず。
提案を受け入れて貰えてホッとした僕は、新しいお皿にタルトを半分移してリーネさんに渡し、一緒にお茶を飲みながらたくさん話した。
どんなお土産話が聞けるのか、僕も楽しみだ。
今日は雪の夜市最終日。
五人一組で出かけて行く使用人を転移装置まで見送り、雪が舞い降りてくる空を見上げる。あと一ヶ月もすればこの雪も止んで、だんだんとあったかくなるんだろうな。
ルディウス様とのお出かけはその頃の方がいいかもしれない。
寒さに身体を震わせ、お屋敷の中に入った僕は部屋ではなく図書室に向かう。
ルディウス様が殿下の護衛として北に行ってから少しでも寂しい気持ちを紛らわせようと思って、僕は物語の本を部屋へ持って行き寝る前に読むようにしてた。
二日前に持って行った本は読んだから、また新しいのを選ばないと。
手にしていた本を元の場所に戻し、同じ列から気になるタイトルを探す。今日はこの、魔法使いが主役の物語にしようかな。
ちょっと厚めの本を抱え、図書室から出てルディウス様の部屋へと続く廊下を歩く。
ルディウス様、あとどれくらいで帰ってくるんだろう。
「奥様、こちらにいらっしゃいましたか」
エントランスを抜けた時、僕を捜していたのかリーネさんがそう言いながら歩み寄ってきた。
「図書室に行っていました」
「そうだったのですね。お部屋に戻られるところで申し訳ないのですが、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
僕にそんな事を言うなんて珍しいと思いながらも頷き、リーネさんのあとについて行く。どこに行くんだろうって首を傾げてたら僕専用のバルコニーについて、手摺りの傍に立つよう促された。
肩に厚手のブランケットがかけられ、リーネさんを振り向くとにこりと笑う。
「お庭をご覧になっていてくださいね」
「? はい」
庭は地面にポツポツとライトが埋められてるから真っ暗ではないけど、雪が積もってるくらいで変わったところはないから何を見たらいいか分からなくて、右へ左へ視線を動かしてたら次の瞬間には一気に周りが明るくなった。
「⋯!」
眩しくて反射的に閉じてしまった目を恐る恐る開けると、庭の木や生け垣にたくさんの光の玉がくっついてて庭全体がライトアップされてる。
驚きと困惑で固まってたら、隣にリーネさんが来て肩からズレたブランケットを直してくれた。
「私たちから、奥様へのプレゼントです」
「え?」
「光魔法が使える者にお願いして、光の玉を灯してなんちゃってイルミネーションを作ってみました」
「⋯⋯凄い⋯」
まさかこんなに素敵な景色を見せて貰えるなんて⋯予想外過ぎて当たり障りのない言葉しか出なかった。
光に照らされた雪がキラキラしてる。
「雪の夜市ほどの綺麗さはありませんが、せめて少しでも体感していただけたらってみんなで話し合ってみたんです」
「そんな事⋯とっても綺麗です」
ゆっくりと明滅する光をじっと眺めながら首を振り、僕はほうっと息を吐いた。
どんなに綺麗なものでも、みんなの想いが詰まったこの光景に勝るものはない。
「ありがとうございます」
嬉しさで胸がいっぱいになってお礼しか言えなかったけど、この景色は一生の宝物だ。絶対に忘れないし、何があっても忘れたくない。
それから僕はリーネさんに言われるまでずっと庭を見てて、すっかり身体が冷えてしまい大急ぎでお風呂へと入れられてしまった。
どうせ眠れないからあのまま見ていたかったって言ったら、リーネさんはどんな反応をしたかな。
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三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。