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頑張りチャージ
次の日、宿をあとにした僕とルディウス様は、昨日チラシを貰ったカフェに行って軽食を済ませ、船で食べられるようにといくつかケーキを買って貰った。
初めて食べたパンケーキはふわふわで、生クリームの甘さとフルーツの酸っぱさがちょうど良くてあっという間に完食してた。ルディウス様はコーヒーとサンドイッチを食べてて、一口貰ったけどそれも美味しかったなぁ。
それから最後にってあの木を見に広場にも行ったんだけど、周りを人で囲まれてて結局話しかけられなかった。
名残惜しいけど出港時間もあるし、また次の機会があればその時は話せたらいいな。
――――――――――――
キリのいいところまで読み終えた本にルディウス様が買ってくれたしおりを挟んで閉じた僕は、両腕を上に伸ばして固まっていた肩を解した。
アンジェラ様からの贈り物である温室の中は静かで読書には最適だけど、ルディウス様にとってはお昼寝の場所みたい。
執務室で仕事をしていたルディウス様は、ここに来るなり僕の膝に頭を乗せて目を閉じるとあっという間に寝息を立て始め、もうかれこれ一時間は寝てる。本を読んでたから退屈はしなかったけど、ちょっとだけ足が痺れてきたかも。
でもよく寝てるから起こせない。
(ルディウス様、寝ててもカッコいいけどいつもより気が抜けてるから幼い感じがする)
でもぐっすりって事は疲れてるんだよね。
花祭りから戻ってすぐ仕事だったし、もうすぐ殿下のご婚約者様がこの国にお輿入れをされるそうだから、それも合わせて忙しくなるって言ってたし。
警備体制の整理と確認、城壁に綻びはないかとかいろいろ教えてくれたけど、難しい言葉だらけであんまり理解は出来なかった。でも、とにかく殿下やご婚約者様を守ろうってみんなで頑張ってるんだよね。
ただ、ちょっとだけ心配な事はある。
もしかしたら、僕の誕生日とルディウス様の忙しい時期が被るかもしれない。それ自体はいいんだけど、ルディウス様は絶対気にするから、どうにかしようって無理をしないかだけが僕は気になってた。
〝約束〟の事もあるけど、大事なのはルディウス様だから仕事に集中して欲しい。
「ん⋯」
ルディウス様の寝顔を見ながら考えてたら、視線に気付いたのか軽く身動ぎして目を開ける。なかなか焦点は合わないけど、僕がおでこに触れるとふっと微笑んだ。
「おはよう」
「おはようございます。お水飲みますか?」
「ああ、ありがとう」
ルディウス様が寝てる間に用意して貰ってた水差しのお水をグラスに注ぎ、起き上がったルディウス様に手渡したら一気に飲み干す。
空のグラスを受け取りテーブルに置いたところで肩が抱き寄せられた。
「最近は朝食も一緒に出来ていないな⋯すまない」
「いえ、お忙しいのは分かってますから」
「本音は?」
「え?」
「アルシエの本当の気持ち」
まさかそう聞かれるとは思ってなくて、戸惑う僕にルディウス様は重ねて言いじっと目を見てくる。
ほ、本当の気持ちと言われても⋯。
「私と食事が別になって、どう思ってる?」
「⋯⋯⋯寂しい、です⋯」
「私も寂しいよ。一人での食事など、慣れていたはずなんだがな」
それは僕もだ。
食事の時だけじゃなく、一人でいる事は当たり前だったはずなのにここではいつも誰かが傍にいてくれるから、今ではそれが日常になってる。
もう一人になるのは耐えられないだろうな。
それもこれも、こうして僕の気持ちや言葉を引き出すルディウス様のせいだ。
「アルシエの誕生日までにはどうにかするから。⋯ちなみに、欲しい物はあるか?」
「ルディウス様がいてくれるなら、他に何もいりません」
「そう言うだろうとは思っていたが⋯」
僕が一番嬉しいのは、誕生日とか何かの記念日にルディウス様が傍にいてくれる事だから、これは本当の気持ち。
ルディウス様は少し考えたあと、立ち上がると僕の頭をポンポンと叩いた。
「まぁいい。私はそろそろ仕事に戻るよ」
「あ、はい。お仕事、頑張ってください」
お見送りしようと立ち上がったら、温室の出入口に向かおうとしたルディウス様が振り向いて顔を近付けてきた。
「アルシエ」
「はい?」
「私が仕事を頑張れるよう、アルシエから口付けてくれないか?」
「え」
突然のお願いに目を丸くする僕にさらに顔を寄せ、ルディウス様は人差し指で唇をトントンする。
前にも僕からしてって言われ事あるけど、正直まだ恥ずかしい。
でも、それでルディウス様が頑張れるって言うなら⋯うん、しよう。
僕はルディウス様の頬を両手で挟むと、顔を傾けて唇を触れ合わせた。ルディウス様がするみたいに薄い唇を食んで、ペロって舐めてから離したら満足そうな顔が見える。
「そこまでしてくれるとは思わなかった」
「頑張る気持ち、いっぱいになりました?」
「ああ。明日の仕事も片付けられそうだ」
「ほどほどに、ですよ? 無理は禁物です」
「分かってる。ありがとう」
ぎゅって抱き締められて、さっきよりも明るい声で言われておでこに口付けられる。
しばらくそのままでいたけど、短く息を吐いたルディウス様は腕を離すと「じゃああとでな」と言って温室から出て行った。
それを見送り温室の中をぐるりと見回した僕は、閉じた本を脇に挟み水差しとグラス、僕が飲んでいた紅茶のカップを持って温室をあとにしたんだけど⋯それを見たリーネさんに怒られたのは言うまでもない。
初めて食べたパンケーキはふわふわで、生クリームの甘さとフルーツの酸っぱさがちょうど良くてあっという間に完食してた。ルディウス様はコーヒーとサンドイッチを食べてて、一口貰ったけどそれも美味しかったなぁ。
それから最後にってあの木を見に広場にも行ったんだけど、周りを人で囲まれてて結局話しかけられなかった。
名残惜しいけど出港時間もあるし、また次の機会があればその時は話せたらいいな。
――――――――――――
キリのいいところまで読み終えた本にルディウス様が買ってくれたしおりを挟んで閉じた僕は、両腕を上に伸ばして固まっていた肩を解した。
アンジェラ様からの贈り物である温室の中は静かで読書には最適だけど、ルディウス様にとってはお昼寝の場所みたい。
執務室で仕事をしていたルディウス様は、ここに来るなり僕の膝に頭を乗せて目を閉じるとあっという間に寝息を立て始め、もうかれこれ一時間は寝てる。本を読んでたから退屈はしなかったけど、ちょっとだけ足が痺れてきたかも。
でもよく寝てるから起こせない。
(ルディウス様、寝ててもカッコいいけどいつもより気が抜けてるから幼い感じがする)
でもぐっすりって事は疲れてるんだよね。
花祭りから戻ってすぐ仕事だったし、もうすぐ殿下のご婚約者様がこの国にお輿入れをされるそうだから、それも合わせて忙しくなるって言ってたし。
警備体制の整理と確認、城壁に綻びはないかとかいろいろ教えてくれたけど、難しい言葉だらけであんまり理解は出来なかった。でも、とにかく殿下やご婚約者様を守ろうってみんなで頑張ってるんだよね。
ただ、ちょっとだけ心配な事はある。
もしかしたら、僕の誕生日とルディウス様の忙しい時期が被るかもしれない。それ自体はいいんだけど、ルディウス様は絶対気にするから、どうにかしようって無理をしないかだけが僕は気になってた。
〝約束〟の事もあるけど、大事なのはルディウス様だから仕事に集中して欲しい。
「ん⋯」
ルディウス様の寝顔を見ながら考えてたら、視線に気付いたのか軽く身動ぎして目を開ける。なかなか焦点は合わないけど、僕がおでこに触れるとふっと微笑んだ。
「おはよう」
「おはようございます。お水飲みますか?」
「ああ、ありがとう」
ルディウス様が寝てる間に用意して貰ってた水差しのお水をグラスに注ぎ、起き上がったルディウス様に手渡したら一気に飲み干す。
空のグラスを受け取りテーブルに置いたところで肩が抱き寄せられた。
「最近は朝食も一緒に出来ていないな⋯すまない」
「いえ、お忙しいのは分かってますから」
「本音は?」
「え?」
「アルシエの本当の気持ち」
まさかそう聞かれるとは思ってなくて、戸惑う僕にルディウス様は重ねて言いじっと目を見てくる。
ほ、本当の気持ちと言われても⋯。
「私と食事が別になって、どう思ってる?」
「⋯⋯⋯寂しい、です⋯」
「私も寂しいよ。一人での食事など、慣れていたはずなんだがな」
それは僕もだ。
食事の時だけじゃなく、一人でいる事は当たり前だったはずなのにここではいつも誰かが傍にいてくれるから、今ではそれが日常になってる。
もう一人になるのは耐えられないだろうな。
それもこれも、こうして僕の気持ちや言葉を引き出すルディウス様のせいだ。
「アルシエの誕生日までにはどうにかするから。⋯ちなみに、欲しい物はあるか?」
「ルディウス様がいてくれるなら、他に何もいりません」
「そう言うだろうとは思っていたが⋯」
僕が一番嬉しいのは、誕生日とか何かの記念日にルディウス様が傍にいてくれる事だから、これは本当の気持ち。
ルディウス様は少し考えたあと、立ち上がると僕の頭をポンポンと叩いた。
「まぁいい。私はそろそろ仕事に戻るよ」
「あ、はい。お仕事、頑張ってください」
お見送りしようと立ち上がったら、温室の出入口に向かおうとしたルディウス様が振り向いて顔を近付けてきた。
「アルシエ」
「はい?」
「私が仕事を頑張れるよう、アルシエから口付けてくれないか?」
「え」
突然のお願いに目を丸くする僕にさらに顔を寄せ、ルディウス様は人差し指で唇をトントンする。
前にも僕からしてって言われ事あるけど、正直まだ恥ずかしい。
でも、それでルディウス様が頑張れるって言うなら⋯うん、しよう。
僕はルディウス様の頬を両手で挟むと、顔を傾けて唇を触れ合わせた。ルディウス様がするみたいに薄い唇を食んで、ペロって舐めてから離したら満足そうな顔が見える。
「そこまでしてくれるとは思わなかった」
「頑張る気持ち、いっぱいになりました?」
「ああ。明日の仕事も片付けられそうだ」
「ほどほどに、ですよ? 無理は禁物です」
「分かってる。ありがとう」
ぎゅって抱き締められて、さっきよりも明るい声で言われておでこに口付けられる。
しばらくそのままでいたけど、短く息を吐いたルディウス様は腕を離すと「じゃああとでな」と言って温室から出て行った。
それを見送り温室の中をぐるりと見回した僕は、閉じた本を脇に挟み水差しとグラス、僕が飲んでいた紅茶のカップを持って温室をあとにしたんだけど⋯それを見たリーネさんに怒られたのは言うまでもない。
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