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フローラの想い
初めての顔合わせのあと、僕がお暇な時の話し相手になると聞いてフローラ様は驚いてたけど、殿下が決めた事ならとあっさり受け入れてた。
フローラ様にとって殿下って、僕にとってのルディウス様のようだ。
さっそく次の日に呼ばれて歓談室に招かれたものの⋯僕はどうしたらいいのか途方にくれてた。
「クロード様はそれはもうお優しくて、いつも微笑んで私の話を聞いてくださるのよ。子供の頃から決められていた婚約とはいえ、私はクロード様をお慕いしているから、あの方のお嫁さんになれて本当に幸せですわ。わがままを言って成人前に輿入れしたのも、早くクロード様のお傍に行きたかったからなの」
こんな風に、会ってからずっと殿下の事を話されてる。
どれだけ殿下が素晴らしくて、どれほど殿下を想っているか。
女性とのこういった話は初めてだから、どんな言葉を返したらいいか分からない。
「そ、そうなのですね」
「この国の王族は一夫多妻制でしょう? 私が子を成せなければ側室を娶るのが当然だけれど、クロード様は私だけと約束してくださったの。どれだけ時間がかかっても、私との子だけを望むって。誠実だと思いません?」
「は、はい。嬉しいですよね」
「そうなの、凄く嬉しかったわ。だからますますクロード様が好きになって、早く結婚したいって思うようになったんですの」
アンジェラ様はわりと感情を見せてくれるものの、僕にとって殿下はまだまだ心の内が計り知れない方だ。お優しい方だというのは充分分かってるけど。
あ、でも、やっぱりルディウス様の前だと砕けてはいるかな。
フローラ様はそこで話を止めてふっと息を吐くと、テーブルに両肘をついて組んだ手の上に顎を乗せた。
「一度も口にしてくださった事はないけれど、クロード様もきっと同じ気持ちのはず。私の今の目標は、貴方たちのようにラブラブな夫婦になる事ですわ」
「らぶらぶ⋯?」
「そうでしょう? あんなに仲の良さを見せつけてくれて。それに嫉妬深いだなんて、私からすれば羨ましい限りですもの」
〝らぶらぶ〟がちょっと分からなかっただけだけど、フローラ様の言葉に仲睦まじいって意味なんだって知りなるほどってなる。
僕もヤキモチは嬉しいから、そこはフローラ様と気が合うかも。
「ねぇ」
「はい」
「貴方の話も聞きたいのだけど」
「えっと⋯どのような話をでしょう⋯」
「旦那様の事ですわ。どんな方なの?」
存分に話せて落ち着いたのか、紅茶を飲んだフローラ様が小首を傾げてそう聞いてきた。
ルディウス様の事か⋯話すのはもちろんいいんだけど、フローラ様みたいに素敵なところ上手に言えるかな。
どこかわくわくした様子のフローラ様を見て、僕も紅茶を一口飲んでから口を開く。
「ルディウス様は⋯凄く優しくて温かい方です。僕は色んな事が下手なんですけど、僕のペースでいいよって言ってくれて、出来るまで待ってくれるんです。それに、見上げるといつも気付いて微笑んでくれて⋯」
「愛ですわね」
「そう、ですね。ルディウス様のおかげで、僕は幸せを知りました」
自分には過ぎたものだと思ってたけど、ルディウス様は当たり前のように与えてくれるから僕も素直に感じて受け入れられるようになった。
今まで諦めていた事も、今は全部僕の手の中にある。
紅茶が揺れるカップを見ながら言えば、フローラ様はクスリと笑って僕の手にご自分の手を重ねてきた。
「旦那様を好きな者同士、仲良く出来そうですわね」
「仲良く⋯してくださると嬉しいです」
「もちろんですわ」
にこりとはにかんだフローラ様は年相応で、つられて僕も笑ったら今度はぎゅって握られた。
想い合って結ばれる事ほど幸せな事はない。
まだ知り合ったばかりだけど、フローラ様には笑顔でいて欲しいって思うのはおこがましいかな。
その日の夜、ようやく忙しい時期を抜けたルディウス様が夕飯時より早く帰ってきて、出迎えた僕と目が合うなり抱き上げて胸元に顔を埋めてきた。
そのまますーっと息を吸い、満足げな息を吐く。
「あー⋯落ち着く」
「お、おかえりなさい、ルディウス様」
「ただいま」
みんながにこにこと見てて気恥ずかしい。
ルディウス様は僕の頬に口付けてから下ろすと、みんなに「着替えてくる」と行って僕の肩を抱き部屋へと向かう。
「今日はどうだった? フローラ王女殿下と話したんだろう?」
「はい。フローラ様、本当に殿下が大好きみたいで、殿下のお話をたくさんお聞きしました。僕たちみたいな夫婦になりたいって」
「そうか」
部屋に入り、着替えを始めたルディウス様を壁に寄りかかって待つ僕は、ルディウス様の返事に首を傾げる。
何ていうのかな⋯困った感じ?
そんな僕に気付いたルディウス様は、シャツのボタンを嵌めながら苦笑する。
「恐らく、殿下は王女殿下の願いには応えてくれるとは思う。だが、殿下が本当に心を寄せるかは分からない」
「どういう意味ですか?」
「殿下はこの国を第一に考え、フローラ王女殿下との婚姻を結んだ。もちろん培ってきた関係値はあるし大切には思っているだろうが、そこに夫婦としての愛情があるかは私にもハッキリとは言えないんだ。何せ殿下は、ご家族にさえ本心を見せないからな」
兄弟同然のルディウス様でも分からない事があるなんて。
そんなまさかって驚いてポカンとしたら、ラフな格好になったルディウス様に抱き締められる。
「だから、私たちはきちんと言葉にしよう。嫌な事、不安な事があればすぐに言ってくれ」
「はい」
「ちなみに今はないのか?」
「ありません」
こんなに大切にして貰ってるのに、不安なんてあるはずがない。
ルディウス様の背中に腕を回して胸元に顔を寄せた僕は、フローラ様の笑顔を思い出して目を伏せる。
いつかフローラ様だけにでも、殿下が心を許せるようになるといいんだけど。
フローラ様にとって殿下って、僕にとってのルディウス様のようだ。
さっそく次の日に呼ばれて歓談室に招かれたものの⋯僕はどうしたらいいのか途方にくれてた。
「クロード様はそれはもうお優しくて、いつも微笑んで私の話を聞いてくださるのよ。子供の頃から決められていた婚約とはいえ、私はクロード様をお慕いしているから、あの方のお嫁さんになれて本当に幸せですわ。わがままを言って成人前に輿入れしたのも、早くクロード様のお傍に行きたかったからなの」
こんな風に、会ってからずっと殿下の事を話されてる。
どれだけ殿下が素晴らしくて、どれほど殿下を想っているか。
女性とのこういった話は初めてだから、どんな言葉を返したらいいか分からない。
「そ、そうなのですね」
「この国の王族は一夫多妻制でしょう? 私が子を成せなければ側室を娶るのが当然だけれど、クロード様は私だけと約束してくださったの。どれだけ時間がかかっても、私との子だけを望むって。誠実だと思いません?」
「は、はい。嬉しいですよね」
「そうなの、凄く嬉しかったわ。だからますますクロード様が好きになって、早く結婚したいって思うようになったんですの」
アンジェラ様はわりと感情を見せてくれるものの、僕にとって殿下はまだまだ心の内が計り知れない方だ。お優しい方だというのは充分分かってるけど。
あ、でも、やっぱりルディウス様の前だと砕けてはいるかな。
フローラ様はそこで話を止めてふっと息を吐くと、テーブルに両肘をついて組んだ手の上に顎を乗せた。
「一度も口にしてくださった事はないけれど、クロード様もきっと同じ気持ちのはず。私の今の目標は、貴方たちのようにラブラブな夫婦になる事ですわ」
「らぶらぶ⋯?」
「そうでしょう? あんなに仲の良さを見せつけてくれて。それに嫉妬深いだなんて、私からすれば羨ましい限りですもの」
〝らぶらぶ〟がちょっと分からなかっただけだけど、フローラ様の言葉に仲睦まじいって意味なんだって知りなるほどってなる。
僕もヤキモチは嬉しいから、そこはフローラ様と気が合うかも。
「ねぇ」
「はい」
「貴方の話も聞きたいのだけど」
「えっと⋯どのような話をでしょう⋯」
「旦那様の事ですわ。どんな方なの?」
存分に話せて落ち着いたのか、紅茶を飲んだフローラ様が小首を傾げてそう聞いてきた。
ルディウス様の事か⋯話すのはもちろんいいんだけど、フローラ様みたいに素敵なところ上手に言えるかな。
どこかわくわくした様子のフローラ様を見て、僕も紅茶を一口飲んでから口を開く。
「ルディウス様は⋯凄く優しくて温かい方です。僕は色んな事が下手なんですけど、僕のペースでいいよって言ってくれて、出来るまで待ってくれるんです。それに、見上げるといつも気付いて微笑んでくれて⋯」
「愛ですわね」
「そう、ですね。ルディウス様のおかげで、僕は幸せを知りました」
自分には過ぎたものだと思ってたけど、ルディウス様は当たり前のように与えてくれるから僕も素直に感じて受け入れられるようになった。
今まで諦めていた事も、今は全部僕の手の中にある。
紅茶が揺れるカップを見ながら言えば、フローラ様はクスリと笑って僕の手にご自分の手を重ねてきた。
「旦那様を好きな者同士、仲良く出来そうですわね」
「仲良く⋯してくださると嬉しいです」
「もちろんですわ」
にこりとはにかんだフローラ様は年相応で、つられて僕も笑ったら今度はぎゅって握られた。
想い合って結ばれる事ほど幸せな事はない。
まだ知り合ったばかりだけど、フローラ様には笑顔でいて欲しいって思うのはおこがましいかな。
その日の夜、ようやく忙しい時期を抜けたルディウス様が夕飯時より早く帰ってきて、出迎えた僕と目が合うなり抱き上げて胸元に顔を埋めてきた。
そのまますーっと息を吸い、満足げな息を吐く。
「あー⋯落ち着く」
「お、おかえりなさい、ルディウス様」
「ただいま」
みんながにこにこと見てて気恥ずかしい。
ルディウス様は僕の頬に口付けてから下ろすと、みんなに「着替えてくる」と行って僕の肩を抱き部屋へと向かう。
「今日はどうだった? フローラ王女殿下と話したんだろう?」
「はい。フローラ様、本当に殿下が大好きみたいで、殿下のお話をたくさんお聞きしました。僕たちみたいな夫婦になりたいって」
「そうか」
部屋に入り、着替えを始めたルディウス様を壁に寄りかかって待つ僕は、ルディウス様の返事に首を傾げる。
何ていうのかな⋯困った感じ?
そんな僕に気付いたルディウス様は、シャツのボタンを嵌めながら苦笑する。
「恐らく、殿下は王女殿下の願いには応えてくれるとは思う。だが、殿下が本当に心を寄せるかは分からない」
「どういう意味ですか?」
「殿下はこの国を第一に考え、フローラ王女殿下との婚姻を結んだ。もちろん培ってきた関係値はあるし大切には思っているだろうが、そこに夫婦としての愛情があるかは私にもハッキリとは言えないんだ。何せ殿下は、ご家族にさえ本心を見せないからな」
兄弟同然のルディウス様でも分からない事があるなんて。
そんなまさかって驚いてポカンとしたら、ラフな格好になったルディウス様に抱き締められる。
「だから、私たちはきちんと言葉にしよう。嫌な事、不安な事があればすぐに言ってくれ」
「はい」
「ちなみに今はないのか?」
「ありません」
こんなに大切にして貰ってるのに、不安なんてあるはずがない。
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いつかフローラ様だけにでも、殿下が心を許せるようになるといいんだけど。
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