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どんな子でも
花が咲き誇る暖かく晴れた日、殿下とフローラ様の結婚式が執り行われた。
国中の貴族が集まり、大聖堂で開かれた結婚式はさすが王族なだけあって荘厳で、そこにあるすべてのものがキラキラ輝いてて見惚れてたのを覚えてる。
真っ白な花嫁衣裳に身を包んだフローラ様は本当に綺麗で幸せそうで、これからの大変ささえも楽しんでるようだった。
祝福に包まれた式が終わったあとご令嬢たちがソワソワしててどうしたのかなって思ってたら、ルディウス様が、この国には花嫁さんが横に並んだご令嬢に背中を向けてブーケを投げ上げ、それをキャッチ出来た未婚の女性は近いうちに縁談に恵まれるって習わしがあるって教えてくれた。
僕の時はさすがになかったけど、キャッチ出来た子爵令嬢は凄く喜んでて何だかほっこりしたな。
次は殿下の戴冠式かなってルディウス様と話してたら何とびっくり、一ヶ月も経たないうちに今度はアンジェラ様のご結婚が決まった。お相手は西にある小国の王様らしいけど、ある日のパーティで意気投合してトントン拍子に話が進んだって。
若くてイケメンな王様らしい。
遠くに嫁いで行ってしまうのは寂しいけど、アンジェラ様が楽しく幸せに暮らせるならいいかな。
そうしてそれからさらに一年が経ち、僕とルディウス様はそろそろ子供を作ろうかって話して決めた。
それにはまず僕の身体を魔法によって妊娠出来る身体にしなければいけなくて、一週間くらいは身体に不調が出るらしい。
実際、お腹の中を弄られてる感覚がひどくて、食べる事も起き上がる事もほとんど出来なかった。ルディウス様にもみんなにも、たくさん心配かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
それでもルディウス様の子供を宿す準備が出来て、僕は幸せいっぱいだった。
「奥様、お子様が生まれたあとの話を少ししませんか?」
ルディウス様からあまり動き回らないようにと言われてしまい、大人しく僕専用のバルコニーで花たちと喋っていたら、お茶を運んで来てくれたリーネさんにそう言われた。
首を傾げる僕をソファへ促し、紅茶を淹れてくれる。
「生まれたあとの話、ですか?」
「はい。旦那様は、奥様のしたいようにと仰られましたので」
「⋯⋯何も分からない場合はどうしたら⋯?」
子供がお腹に宿っておよそ十ヶ月後に生まれるというのは分かってるけど、生まれたあとはお乳をあげるくらいしか知らない。
そもそも僕から出るのかどうか。
そう答えれば、リーネさんは僕の前に紅茶とお菓子を置いて微笑む。
「貴族の方は、育児と教育を担う〝ナニー〟を雇うのですが、公爵家ではこれ以上人を入れる予定はないので奥様がよろしければ私が務めさせていただきます」
「あ、はい。それはもちろん。リーネさんなら安心です」
「ありがとうございます。それから乳母についてですが、旦那様も必要ないとおっしゃっているので授乳は専用のミルクになります。残念ながら、男性は出産してもお乳が出ませんからね」
「えっと⋯つまり?」
「奥様の子育てを、私がお手伝いするという形になりますね」
〝なにー〟も〝うば〟も良く分からないけど、基本的にはリーネさんが一緒にいてくれるって事なのかな。
リーネさんも子供を産んだ訳じゃないのにいろいろ知ってるの凄い。
というか、やっぱりお乳は出ないんだね。
「旦那様がお休みの日は、ご家族でお出かけするのもいいですね。就寝時にはお預かりも出来ますし、ご夫婦の時間が欲しい時は遠慮なくお申し付けください」
「でもリーネさんの負担が増えませんか?」
「負担だなんてとんでもない。お二人のお子様と過ごせるのです、嬉しい気持ちしかありませんよ」
もう何年も一緒にいるけど、リーネさんから否定的な言葉を聞いた事がない。どんなお願いでも笑顔で承諾してくれて、すぐに叶えてくれる。
本当にリーネさん様々だ。
「お子様の誕生、心からお待ちしておりますね」
「⋯⋯魔力がなくても、ですか?」
「当然です。私は奥様を魔力の有無でお好きな訳ではないですよ。奥様だから好きなんです」
リーネさんやオルウェンさんやマーディンさんはともかく、公爵家のみんなが僕を受け入れてくれてるのは、僕がルディウス様の奥さんだからかもって不安は小さいけどまだあった。
だからもし、魔力のない子供が産まれたらガッカリされるんじゃないかって最近は思うようになってて、今日まで口に出せずにいたんだ。
リーネさんは僕の手を両手で握ると、いつもと同じ笑顔で見上げてくる。
「例え魔力がなくても、私の大好きな方たちのお子様には変わりありません。むしろ可愛過ぎて、何でもお願いを聞いてしまいそうです」
「リーネさんに甘やかされたら、我儘な子になりそうですね」
「子供は我儘なくらいがちょうどいいんです。⋯ですから、魔力がなかったらなんて不安に思わなくても大丈夫ですよ」
「⋯⋯⋯」
「それに旦那様が聞いたら、何を言ってるんだって一蹴されるでしょうし」
確かにルディウス様が聞いたら呆れられそうだ。
それを想像してクスリと笑った僕にリーネさんはホッと息を吐き、僕の手にフォークを持たせてくれた。
リトルハイムなら大丈夫。どんな子だって愛してくれる。
僕とルディウス様の子には、マルグリアで味わった思いだけは絶対させない。
国中の貴族が集まり、大聖堂で開かれた結婚式はさすが王族なだけあって荘厳で、そこにあるすべてのものがキラキラ輝いてて見惚れてたのを覚えてる。
真っ白な花嫁衣裳に身を包んだフローラ様は本当に綺麗で幸せそうで、これからの大変ささえも楽しんでるようだった。
祝福に包まれた式が終わったあとご令嬢たちがソワソワしててどうしたのかなって思ってたら、ルディウス様が、この国には花嫁さんが横に並んだご令嬢に背中を向けてブーケを投げ上げ、それをキャッチ出来た未婚の女性は近いうちに縁談に恵まれるって習わしがあるって教えてくれた。
僕の時はさすがになかったけど、キャッチ出来た子爵令嬢は凄く喜んでて何だかほっこりしたな。
次は殿下の戴冠式かなってルディウス様と話してたら何とびっくり、一ヶ月も経たないうちに今度はアンジェラ様のご結婚が決まった。お相手は西にある小国の王様らしいけど、ある日のパーティで意気投合してトントン拍子に話が進んだって。
若くてイケメンな王様らしい。
遠くに嫁いで行ってしまうのは寂しいけど、アンジェラ様が楽しく幸せに暮らせるならいいかな。
そうしてそれからさらに一年が経ち、僕とルディウス様はそろそろ子供を作ろうかって話して決めた。
それにはまず僕の身体を魔法によって妊娠出来る身体にしなければいけなくて、一週間くらいは身体に不調が出るらしい。
実際、お腹の中を弄られてる感覚がひどくて、食べる事も起き上がる事もほとんど出来なかった。ルディウス様にもみんなにも、たくさん心配かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
それでもルディウス様の子供を宿す準備が出来て、僕は幸せいっぱいだった。
「奥様、お子様が生まれたあとの話を少ししませんか?」
ルディウス様からあまり動き回らないようにと言われてしまい、大人しく僕専用のバルコニーで花たちと喋っていたら、お茶を運んで来てくれたリーネさんにそう言われた。
首を傾げる僕をソファへ促し、紅茶を淹れてくれる。
「生まれたあとの話、ですか?」
「はい。旦那様は、奥様のしたいようにと仰られましたので」
「⋯⋯何も分からない場合はどうしたら⋯?」
子供がお腹に宿っておよそ十ヶ月後に生まれるというのは分かってるけど、生まれたあとはお乳をあげるくらいしか知らない。
そもそも僕から出るのかどうか。
そう答えれば、リーネさんは僕の前に紅茶とお菓子を置いて微笑む。
「貴族の方は、育児と教育を担う〝ナニー〟を雇うのですが、公爵家ではこれ以上人を入れる予定はないので奥様がよろしければ私が務めさせていただきます」
「あ、はい。それはもちろん。リーネさんなら安心です」
「ありがとうございます。それから乳母についてですが、旦那様も必要ないとおっしゃっているので授乳は専用のミルクになります。残念ながら、男性は出産してもお乳が出ませんからね」
「えっと⋯つまり?」
「奥様の子育てを、私がお手伝いするという形になりますね」
〝なにー〟も〝うば〟も良く分からないけど、基本的にはリーネさんが一緒にいてくれるって事なのかな。
リーネさんも子供を産んだ訳じゃないのにいろいろ知ってるの凄い。
というか、やっぱりお乳は出ないんだね。
「旦那様がお休みの日は、ご家族でお出かけするのもいいですね。就寝時にはお預かりも出来ますし、ご夫婦の時間が欲しい時は遠慮なくお申し付けください」
「でもリーネさんの負担が増えませんか?」
「負担だなんてとんでもない。お二人のお子様と過ごせるのです、嬉しい気持ちしかありませんよ」
もう何年も一緒にいるけど、リーネさんから否定的な言葉を聞いた事がない。どんなお願いでも笑顔で承諾してくれて、すぐに叶えてくれる。
本当にリーネさん様々だ。
「お子様の誕生、心からお待ちしておりますね」
「⋯⋯魔力がなくても、ですか?」
「当然です。私は奥様を魔力の有無でお好きな訳ではないですよ。奥様だから好きなんです」
リーネさんやオルウェンさんやマーディンさんはともかく、公爵家のみんなが僕を受け入れてくれてるのは、僕がルディウス様の奥さんだからかもって不安は小さいけどまだあった。
だからもし、魔力のない子供が産まれたらガッカリされるんじゃないかって最近は思うようになってて、今日まで口に出せずにいたんだ。
リーネさんは僕の手を両手で握ると、いつもと同じ笑顔で見上げてくる。
「例え魔力がなくても、私の大好きな方たちのお子様には変わりありません。むしろ可愛過ぎて、何でもお願いを聞いてしまいそうです」
「リーネさんに甘やかされたら、我儘な子になりそうですね」
「子供は我儘なくらいがちょうどいいんです。⋯ですから、魔力がなかったらなんて不安に思わなくても大丈夫ですよ」
「⋯⋯⋯」
「それに旦那様が聞いたら、何を言ってるんだって一蹴されるでしょうし」
確かにルディウス様が聞いたら呆れられそうだ。
それを想像してクスリと笑った僕にリーネさんはホッと息を吐き、僕の手にフォークを持たせてくれた。
リトルハイムなら大丈夫。どんな子だって愛してくれる。
僕とルディウス様の子には、マルグリアで味わった思いだけは絶対させない。
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