モテモテ王子の秘密をうっかり知ったら溺愛されるようになりました

ミヅハ

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独り占め

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 うちの学校は二学期に行事が多くて、文化祭の一ヶ月後には早くも球技大会が待っていた。
 といっても体育祭のような大きなものじゃなく、全学年対抗でバレーやバスケ、野球、サッカーなどの競技で勝敗を決めるんもので、内申点的には参加する事に意味があるから勝つか負けるかはそこは本人たちのやる気次第だったりする。
 どんな種目がいいかはアンケートを取るからその年々で違うものの、クラスでそれぞれに出たい競技に推薦なり立候補なりするのは変わらない。
 ちなみに、俺のように運動が得意じゃない人は人数の足らないところに強制的に入れられるから、自分でも出来そうな種目で声を上げないと大変な目に遭う。あと、ルールもある程度知らないと迷惑をかける事も⋯去年はそれでみんなの足を引っ張ってしまった。
 今年はちゃんと勉強してから選ばないと。



「楪は何に出んの?」

 放課後、文化祭が終わってから久し振りに天ヶ瀬くんの家にお邪魔した俺の膝に、寝転がって頭を乗せている天ヶ瀬くんがそう聞いてきた。
 お茶請けの芋羊羹を食べていた俺は、緑茶で流してから答える。

「バレーボール」
「へぇ、意外」
「ルールは覚えたんだ。でも、ボールを取れるか自信はなくて⋯」
「周りの奴がフォローしてくれるだろ」
「でも迷惑はかけたくないし、足だけは引っ張らないよう頑張る」

 さすがに俺の身長でブロックとかは無理だから、相手からのボールを落とさない意識とか味方の邪魔をしないようにとか、自分が出来る限りの努力はするつもりだ。
 だからそう言って握り拳を作ったら、天ヶ瀬くんが起き上がりその拳を上から押さえてきた。

「頑張んのもいいけど、あんま無理すんなよ」
「うん」
「ホントに分かってんのか?」
「わ、分かってるよ。ほんとに無理はしない」

 ジト目で見られ慌てて何度も頷くと、天ヶ瀬くんはふっと笑って俺の肩に腕を回して抱き寄せた。
 二人だけの時こうして抱き締められる事が増えてきたからか、少しずつ慣れてきたような気がする。と言っても固まらなくなったってくらいで、相変わらず手は下がったままなんだけど。
 膝を立てた天ヶ瀬くんの足の間に収まると、俺の後頭部を撫でてた天ヶ瀬くんが息を吐いた。

「にしてもアイツ⋯」
「〝あいつ〟?」
「広尾だよ。馴れ馴れしく楪に近付きやがって⋯」

 言われてみれば、文化祭が終わってから広尾くんに話しかけられる事が増えた気がする。
 嫌われてると思ってたから最初はびっくりしたな。

「いいか、絶対あいつと二人きりになるなよ」
「どうして?」
「何されるか分かんねぇだろ。横から掻っ攫われるなんざ、ごめんだからな」
「う、うん⋯?」
「っつか、俺以外と二人きりにならなきゃいい」

 誰かと二人きりなんてなる機会ほとんどないと思うけど、ムスッとしてる天ヶ瀬くんに機嫌を直して欲しくて言わずに頷いたら、額が合わさって軽く頬が摘まれた。

「楪」
「?」
「俺、結構嫉妬深いし独占欲も強ぇみたいだから、覚悟しといて」
「え?」
「お前だけは、絶対誰にも渡さない」

 真っ直ぐに目を見て告げられる言葉は聞く人によっては重く感じるものなのに、俺はドキッとして俯き両手を握り合わせる。
 どうしてそんなに、俺の事好きでいてくれるんだろう。

「俺にそう言ってくれるの、天ヶ瀬くんだけだよ」
「ンな事ねぇよ。現に、声かけられるようになったろ。あれも俺は嫌なんだからな。俺の楪なのにって」
「俺の⋯」
「あ、悪ぃ。そういうの、嫌だったか?」
「⋯⋯」
「楪?」
「⋯⋯じゃあ、天ヶ瀬くんは俺のなの?」
「⋯⋯⋯」

 天ヶ瀬くんに独占されるのは嫌じゃないしむしろそう言ってくれるのは嬉しくて、もしかして恋人の俺も同じように思っていいのかなって聞いたら、少しの間黙り込んだ天ヶ瀬くんが大きく息を吐いた。
 それから苦笑して俺の頬を挟み親指で撫でる。

「あんま可愛い事言うな」
「か、かわ⋯?」
「⋯そうだよ、俺は楪だけのもんだよ」
「いい、のかな⋯」
「何が?」
「俺が、天ヶ瀬くんを独り占めしても⋯」

 学校の女子みんなの王子様な天ヶ瀬くん。誰に告白されても絶対に首を縦に振る事はなくて、最近では抜け駆けしないようにしようって暗黙のルールが出来始めてるって女子たちがヒソヒソ話してた。
 だからそんな天ヶ瀬くんを、恋人とはいえ俺のだって独占していいのかどうか⋯いつか知られた時、あんなに良くしてくれたみんなの目が敵意を持って俺に向けられるんじゃないかって思うと凄く怖い。
 でも天ヶ瀬くんは嬉しそうに笑うと、俺の手を取って自分の腰へと回させ首を傾げた。

「独り占めしたいって思ってくれてんだ?」
「え? そ、それは⋯⋯だって⋯」
「しろよ、好きなだけ。楪なら全部受け入れてやるから」
「全部⋯」
「ああでも、〝嫌い〟とか〝別れる〟とかは無理だけどな」
「そ、そんなの言わないよ」

 天ヶ瀬くんを好きって自覚した時よりももっと好きになってるのに、そんな心にもない事言う訳がない。
 慌てて首を振った俺に「分かってる」って笑った天ヶ瀬くんが額にキスしてきた。
 こういう触れ合いも、慣れてはないけどキョドらなくはなった⋯と思う。

「博愛主義の王子モードでも、今までよりもっと線引きする。お前が不安になったりしないように、必要以上に近付いたりしねぇから」

 天ヶ瀬くんは男女平等に優しくて、女子に何気なく触れられる事も多い。それを見てモヤってしてたの、もしかして気付いてた? 知らないところで気にかけてくれてたのかな。
 俺の為にいろいろ考えてくれるその気持ちが嬉しくて、腰元の服を握っていた手を天ヶ瀬くんの頬まで上げた俺は、指先で触れて軽く撫でた。

「⋯天ヶ瀬くん⋯」
「ん?」
「⋯⋯大好き⋯」
「俺も」

 蚊の鳴くような声でしか伝えられなかったけど、天ヶ瀬くんはちゃんと聞き取って応えてくれて、俺の手を握ると顔を寄せて唇を触れ合わせてきた。
 俺だって、天ヶ瀬くんが望んでくれる事なら全部受け入れたい。
 俺と同じで、俺の事がずーっと頭から離れないくらい、天ヶ瀬くんの中で俺の存在が大きくなるといいな。
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