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お出かけ
本屋からの帰りに偶然戸崎と会いいろいろ話した夜、バイト休みの日を送ってすぐこの日に遊びに行こうって返事が届いてから数日、俺は戸崎と一緒にプールに来ていた。
確かにプールとか行こうって言われたけど、やっぱり男二人で行く場所じゃないと思うんだよな。しかもこの強強顔面プラス背の高さでめちゃくちゃ目立ってるし。
「千晃、日焼け止め塗った?」
「え、めんどい」
「駄目だよ。せめて顔には塗らないと」
肌が焼けるとか痛くなる云々より面倒臭さが勝って思いっきり顔を顰めたら、苦笑した戸崎に日焼け止めが渡され渋々顔に塗る。だけど片手で前髪を上げおでこに塗ろうとしたら、何故か戸崎が近付いてきて俺の手から出したばかりのクリームを掬っておでこに塗ってくれた。
「見えなかったから助かった。ムラになってるとこあったらよろしく」
「ん」
片手だとイマイチちゃんと塗れてる感がなかったんだよな。
ついでに整えて貰おうと目を閉じたら、戸崎が小さく呻いて長ーい溜め息をついた。
何だ?
「はい、おしまい」
「サンキュー」
思いの外優しい手付きで顔全体が撫でられ、余ったのか首まで広げられて擽ったさに危うく声を上げるところだった。
前髪を軽く指で梳かし、流れるプールの縁に立つ。
学校の授業以外でプールに入るのもそうだけど、こういうところに来たのも初めてな俺は海パンだけはどうにか用意した。でも浮き輪やゴーグルとかはないし、流れるプールなんてどうやって遊べばいいのか分からないから入るのも躊躇ってる。
楽しそうに流れされてる人たちを見てたら、肩に何かが掛けられた。
「身体に塗らないならこれ着てて。ちょっとは防げるから」
「⋯ちょっとデカい」
「ないよりマシって事で」
「はいはい」
どうやら戸崎が着てたラッシュガードのようで、まぁいいかと袖を通したけど指先まで隠れるし裾も尻の下まである。確かに身長差あるけどさ、何かムカつくな。
しかもこれ、戸崎の匂いするし。
「ヤバい⋯俺の服ぶかぶか⋯可愛い⋯」
「? 何か言ったか?」
「ううん、何も。あ、浮き輪レンタルあるけどどうする?」
せめて手は出そうと袖を折ってたら何か聞こえた気がして見上げたけど、戸崎はにこやかに首を振るとプールサイドに建てられたお店に吊り下げられたポスターを指差した。
ホントだ。浮き輪レンタル1500円って書いてある。
どうしようかな⋯あった方が楽しいのかな。
「浮き輪ってあるのとないのとどう違う?」
「え? あったら流れるプールだと浮いたまま勝手に進むし、なかったら潜ったりするくらいかな」
「⋯こう言ったら悪いけど、それ楽しいのか?」
「プールに入れば楽しくなるよ。じゃあ浮き輪借りてくるね」
「あ、自分で⋯」
借りるって言い切る前に戸崎はお店へと足早に向かってしまい、俺は仕方なく流れるプールの縁に座り足を浸ける。夏休みだからかなり人は多いけど、これくらいなら邪魔にはならないだろう。
それにしても、楽しみ方くらいは勉強しておくべきだったか。
「悪い事したな⋯」
ただでさえ俺は喜怒哀楽がうっすいし、こういうとこは本当なら友達数人と来た方が圧倒的に楽しいからな。まぁカップルは別として。
せめて、俺と一緒に来て良かったって少しでも戸崎に思って貰いたいし。
今までは特に困る事がなかったからまったく気にもしてなかったけど、やっぱり俺ってあの人たちの言う通り欠陥だらけなんだな。ただ友達と遊ぶ、それさえ分からない。
「⋯⋯ってか、遅くないか?」
一人プールサイドに腰を下ろして待ってたけど一向に戻ってくる気配がなくて、そんなに混んでるのかとお店に視線を向けたら、両サイドを水着美女に挟まれた戸崎の姿が見えて目を見瞠る。
あれ、絶対ナンパされてるだろ。困った顔して首を振ってるけど、優しいから押せばいけると思われてんだろうな。
助け舟出すべきか? でも俺が入ったところで何が変わる?
なんてぐるぐる考えてたら、突然目の前に幼稚園くらいの男の子が現れ俺はキョトンとする。目を瞬く俺に男の子はおもむろに水鉄砲を構え、「え?」と短く零した俺の顔へと撃ち込んできた。
「!?」
「こ、こら! 何やってるの! すみません、鼻に入ったりとかしてませんか?」
「⋯っ、い、いえ⋯大丈夫です⋯」
「お兄さんに謝りなさい!」
お母さんらしき人が慌てて叱りつける声が聞こえ、俺は手で顔を拭きながら答える。
びっくりはしたけど、子供のした事だし特に変なところにも入ってないからそんなに怒らなくてもいいのに。
「あの、本当に大丈夫ですから」
「でも⋯⋯あ、あら」
「おにいちゃん、ごめんね」
「いいよ。でも、顔にお水がかかると怖いって人もいるから、知らない人にはしちゃダメだよ」
「わかったー」
濡れた前髪を掻き上げて後ろに流し、素直に謝ってくれる男の子の頭を撫でながら言えばこくりと頷いて小さな手で俺の顔を拭いてくれる。
お母さんの方は何故か固まってたけど、男の子にお礼を言って手を握り上下してたら突然ラッシュガードのフードが被せられ何も見えなくなった。軽く捲って覗いたら眉尻を下げた戸崎がいて、頭から更に浮き輪が通される。
ってか、あのナンパから抜けれたのか。
「浮き輪ありがとう」
「それはいいんだけど、何で前髪上げてるの?」
「濡れたから」
「濡れた⋯? えっと、この子は⋯」
「! す、すみません! 失礼しました!」
「あ、はい」
「ばいばーい」
「バイバイ」
さすがに濡れた前髪をそのまま下ろしてたら邪魔でしかないから上げただけなんだけど、戸崎は不満そうで珍しく不機嫌な様子で男の子を見る。
戸崎の登場で目を見瞠ってたお母さんはハッとして頭を下げ男の子の手を引き立ち去ったけど⋯挙動不審だったな。
遠くなっても手を振る男の子に返し続け、見えなくなった頃に立ち上がり頭から浮き輪を抜いたら、戸崎がフードの先を摘んできた。
「プールにいる間は、これ被ってて」
「何で?」
「何でも」
「?」
意味が分からないけど、日差し避けにはなるからいいかと前だけは見えるように調整した俺は、とりあえず暑いから入るかと再びプールサイドに腰を下ろした。
さてさて、浮き輪の使い心地はどんなもんなんだろうか。
確かにプールとか行こうって言われたけど、やっぱり男二人で行く場所じゃないと思うんだよな。しかもこの強強顔面プラス背の高さでめちゃくちゃ目立ってるし。
「千晃、日焼け止め塗った?」
「え、めんどい」
「駄目だよ。せめて顔には塗らないと」
肌が焼けるとか痛くなる云々より面倒臭さが勝って思いっきり顔を顰めたら、苦笑した戸崎に日焼け止めが渡され渋々顔に塗る。だけど片手で前髪を上げおでこに塗ろうとしたら、何故か戸崎が近付いてきて俺の手から出したばかりのクリームを掬っておでこに塗ってくれた。
「見えなかったから助かった。ムラになってるとこあったらよろしく」
「ん」
片手だとイマイチちゃんと塗れてる感がなかったんだよな。
ついでに整えて貰おうと目を閉じたら、戸崎が小さく呻いて長ーい溜め息をついた。
何だ?
「はい、おしまい」
「サンキュー」
思いの外優しい手付きで顔全体が撫でられ、余ったのか首まで広げられて擽ったさに危うく声を上げるところだった。
前髪を軽く指で梳かし、流れるプールの縁に立つ。
学校の授業以外でプールに入るのもそうだけど、こういうところに来たのも初めてな俺は海パンだけはどうにか用意した。でも浮き輪やゴーグルとかはないし、流れるプールなんてどうやって遊べばいいのか分からないから入るのも躊躇ってる。
楽しそうに流れされてる人たちを見てたら、肩に何かが掛けられた。
「身体に塗らないならこれ着てて。ちょっとは防げるから」
「⋯ちょっとデカい」
「ないよりマシって事で」
「はいはい」
どうやら戸崎が着てたラッシュガードのようで、まぁいいかと袖を通したけど指先まで隠れるし裾も尻の下まである。確かに身長差あるけどさ、何かムカつくな。
しかもこれ、戸崎の匂いするし。
「ヤバい⋯俺の服ぶかぶか⋯可愛い⋯」
「? 何か言ったか?」
「ううん、何も。あ、浮き輪レンタルあるけどどうする?」
せめて手は出そうと袖を折ってたら何か聞こえた気がして見上げたけど、戸崎はにこやかに首を振るとプールサイドに建てられたお店に吊り下げられたポスターを指差した。
ホントだ。浮き輪レンタル1500円って書いてある。
どうしようかな⋯あった方が楽しいのかな。
「浮き輪ってあるのとないのとどう違う?」
「え? あったら流れるプールだと浮いたまま勝手に進むし、なかったら潜ったりするくらいかな」
「⋯こう言ったら悪いけど、それ楽しいのか?」
「プールに入れば楽しくなるよ。じゃあ浮き輪借りてくるね」
「あ、自分で⋯」
借りるって言い切る前に戸崎はお店へと足早に向かってしまい、俺は仕方なく流れるプールの縁に座り足を浸ける。夏休みだからかなり人は多いけど、これくらいなら邪魔にはならないだろう。
それにしても、楽しみ方くらいは勉強しておくべきだったか。
「悪い事したな⋯」
ただでさえ俺は喜怒哀楽がうっすいし、こういうとこは本当なら友達数人と来た方が圧倒的に楽しいからな。まぁカップルは別として。
せめて、俺と一緒に来て良かったって少しでも戸崎に思って貰いたいし。
今までは特に困る事がなかったからまったく気にもしてなかったけど、やっぱり俺ってあの人たちの言う通り欠陥だらけなんだな。ただ友達と遊ぶ、それさえ分からない。
「⋯⋯ってか、遅くないか?」
一人プールサイドに腰を下ろして待ってたけど一向に戻ってくる気配がなくて、そんなに混んでるのかとお店に視線を向けたら、両サイドを水着美女に挟まれた戸崎の姿が見えて目を見瞠る。
あれ、絶対ナンパされてるだろ。困った顔して首を振ってるけど、優しいから押せばいけると思われてんだろうな。
助け舟出すべきか? でも俺が入ったところで何が変わる?
なんてぐるぐる考えてたら、突然目の前に幼稚園くらいの男の子が現れ俺はキョトンとする。目を瞬く俺に男の子はおもむろに水鉄砲を構え、「え?」と短く零した俺の顔へと撃ち込んできた。
「!?」
「こ、こら! 何やってるの! すみません、鼻に入ったりとかしてませんか?」
「⋯っ、い、いえ⋯大丈夫です⋯」
「お兄さんに謝りなさい!」
お母さんらしき人が慌てて叱りつける声が聞こえ、俺は手で顔を拭きながら答える。
びっくりはしたけど、子供のした事だし特に変なところにも入ってないからそんなに怒らなくてもいいのに。
「あの、本当に大丈夫ですから」
「でも⋯⋯あ、あら」
「おにいちゃん、ごめんね」
「いいよ。でも、顔にお水がかかると怖いって人もいるから、知らない人にはしちゃダメだよ」
「わかったー」
濡れた前髪を掻き上げて後ろに流し、素直に謝ってくれる男の子の頭を撫でながら言えばこくりと頷いて小さな手で俺の顔を拭いてくれる。
お母さんの方は何故か固まってたけど、男の子にお礼を言って手を握り上下してたら突然ラッシュガードのフードが被せられ何も見えなくなった。軽く捲って覗いたら眉尻を下げた戸崎がいて、頭から更に浮き輪が通される。
ってか、あのナンパから抜けれたのか。
「浮き輪ありがとう」
「それはいいんだけど、何で前髪上げてるの?」
「濡れたから」
「濡れた⋯? えっと、この子は⋯」
「! す、すみません! 失礼しました!」
「あ、はい」
「ばいばーい」
「バイバイ」
さすがに濡れた前髪をそのまま下ろしてたら邪魔でしかないから上げただけなんだけど、戸崎は不満そうで珍しく不機嫌な様子で男の子を見る。
戸崎の登場で目を見瞠ってたお母さんはハッとして頭を下げ男の子の手を引き立ち去ったけど⋯挙動不審だったな。
遠くなっても手を振る男の子に返し続け、見えなくなった頃に立ち上がり頭から浮き輪を抜いたら、戸崎がフードの先を摘んできた。
「プールにいる間は、これ被ってて」
「何で?」
「何でも」
「?」
意味が分からないけど、日差し避けにはなるからいいかと前だけは見えるように調整した俺は、とりあえず暑いから入るかと再びプールサイドに腰を下ろした。
さてさて、浮き輪の使い心地はどんなもんなんだろうか。
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