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宿で一夜を明かした翌日、今日の午前中は王都観光だ!
「さあ、ケイト。準備をしなさい!」
「で、でも、街中を行くのにこのドレスですか?」
「これでも動きやすいようにデザインを考えてあるやつよ。もっと動きにくいのに変えられたくなかったらさっさと着替える!」
「お嬢様、その勢いでは街中でケイト様に悪いイメージがついてしまいますよ」
「おっと、そうだったわね。ケイト様、こちらでお願いいたします」
「はい……」
エマがケイトを着替えさせている間に、今日はどの店に行こうかと悩む。昨日は王都にはどんな店もあると言ったけれど、逆に色々な店がありすぎて見るだけで午前中なんて終わってしまう。あまり時間は取れないから仕方ないけれど、ここは馴染みだった店に行くことにしましょう。まあ、一か所ぐらいはケイトの希望も聞いてあげようかしら。それぐらいの時間はあるでしょう。
「こんな上質な服で本当にいいのですか?」
「ええ、やや薄めの青に銀の刺繍も入ったドレス。これがただの街行きの服だということにきっとみんなは引くでしょう」
「引かれるのですか……」
「当たり前よ! 貴族が平民と一緒でどうするの! 平民からは見ただけで道を開けさせるだけの輝きを出すのよ!」
「背筋も伸ばして歩き方はこうですよ」
ケイトはテレサによって歩き方の指導もされる。せっかくのドレスも変な歩き方ではおかしくなるのを防がないと。あんなんでも侯爵夫人なんだから。
「準備もできたわね。それじゃあ、出発よ!」
いざ王都の街に向けて侯爵家の馬車で乗り込む。街は今日もにぎやかだ。道行く人の数も多く、商店もにぎわっている。その中を我が家の馬車が我が物顔で通っていくのだ。
「ケイト様、どこか気になるところがあれば降ろしますので、言って下さい」
「はい。でしたらその……」
ケイトが言ったのは王都でも人気の服屋だった。しかも、どちらかというとやや高級だ。だけど、この店は服もさることながらアクセサリーが売りだ。
「珍しいですわね。ケイト様がこちらに行きたかったなんて……」
「以前から学園のみんなが話していて、一度行ってみたかったんです」
なるほど、これはもう少ししたらデザートが待ってるわね。ならあそこの角の店ねきっと。別に私がどこへ行きたいかと言い出さなくてもいいみたいだわ。
「では、店に入りましょうか。ここに止めて!」
「はい」
馬車を止めさせ先に降りて、ケイト様の手を引いて降ろす。この店でよかったかもしれないわね。今も店から貴族が見てるかもしれないし。
「いらっしゃいませ! どうぞこちらへ」
店員も私が付き添いで主がケイトだと認識したようだ。まあ、このために今日のドレスはやや簡素なものだし、仕方ないわね。
「お嬢様にはこちらの服などはいかがでしょう? きっと似合いますよ」
エマとケイト様が服を見ている。確かになかなかいいセンスだ。この店ならあれ以上は二,三着ぐらいだな。本人の好みもあるし、いい選択かも。そう思っていると私たちのところにも先ほどの店員が来る。
「お連れの方はこちらなどはいかがでしょうか?」
そう言いながら明らかにワンランク下の服の場所に連れていかれる。まあこれなら金持ちの商家の娘っぽい服もあるからいいかも。ただ、この時点で一度ぐらいは同じところに連れて行きなさいよ。そこで私がやっぱりもう少し動きやすい服をって言ってからここに来るところでしょう。
「そうね。この辺りの服をもらおうかしら」
「ではこちらでサイズ直しをさせていただきます」
私は早々に服を決めると店員に服を直させる。
「テレサも一緒にケイト様の服を見てあげて。私はもう少しこの辺りを眺めておくわ」
「はい」
「よし、行ったわね。さて、小物というか飾り物はこの辺りか……。今なら邪魔者もいないし思う存分見れるわね」
そうして、いくらか見ているとふいに目に留まるものがあった。
「ふむ、これにしましょう」
その後もケイト様は二、三服を見ると最終的に二着を購入した。ついでに購入した服に合わせて、アクセサリーも買わせておいた。この店に来たんだし、当然よね。
「次はどこに行きましょうか? ケイト様」
「すみませんイリス様。私のせいで時間を使ってしまって……」
「構いませんよ。それに今日はイリスと呼び捨てでお呼びください」
「わ、分かりました、イリス。では、あそこの角のデザート店に行きましょう!」
「はい」
予想通りの店だ。あの店は私が学園に通っていたころも人気店だったもの。それにしてもあまりに予想通りの行動パターンに心配になるわね。
「いらっしゃいませ。ご予約は在りますか?」
「いいえ」
「当店は本日、込み合っておりましてご予約の方以外は……」
「では二階を使わせていただけるかしら?」
「二階ですか? あちらにはお席の方は……はっ!」
「久しぶりね、アルナ。ケイト様にこちらの店のデザートを食べさせたいのだけれど」
「イリス様のお知り合いでしたら……」
「私の母よ」
「は?」
「もちろん書類上は、だけどね」
「噂は本当だったのですね。てっきり、嫌がらせでまたどこかの令嬢が噂を流されたのかと……」
「この歳まで私に嫌がらせしようなんて暇人はいないわよ。それじゃあ上がらせてもらうから」
「はい。ごゆっくり」
私は遠慮なしに二階へ上がる。上にあるのはこの店の従業員用の休憩スペースだ。店員が唯一ゆったりできるスペースを私が王都にいた時は占領していた。というのも私に突っかかってくる令嬢も多く、騒ぎを防ぐためだ。店としても侯爵家令嬢が来るというのはプラスだけど、もめ事はNGという折衝案だ。
もちろん占領していたといっても、楽しく店員とおしゃべりをしていたけどね。なんせ、私が気を遣わずにしゃべられるもの。ここじゃあ私が王様みたいなものだったからね!
「あら、意外にいいところですね」
「店の雰囲気を壊さないためよ。ここだって客が来る可能性はゼロじゃないもの」
現に私は来てたわけだし。
「私、楽しみです。ここのプリンが美味しいって評判で……」
「そうなの? 私はパイばかりだったから」
「お嬢様はここでも、最初はもめ事を起こされましたね」
「あいつらが悪いのよ、パイ姫なんてあだ名をつけるから! 人が何食べようと勝手よ」
「確かにそうなのですが、ラズベリーパイが週三回、アップルパイとミックスが一回ずつ。合計週五回も頼まれるのは……」
「だ、大丈夫だったのですか? お、お体とかは……」
「大丈夫よ。そのころはダンスを一所懸命にやってたし、すぐに消化してたわ」
そんな話しをしているとデザートが運ばれてきた。私はラズベリーパイに紅茶、ケイト様は名物プリンに紅茶だ。
「では食べましょう」
私は久しぶりのパイを一口大に切り、口に含む。うん懐かしい味だわ。ここにも卒業以来、来ることはなかったものね。王都でこの店ともなれば目立つし、いい思い出ばかりでもないからどことなく避けていたけれど、この味に比べれば些細なことだわ。今度から王都に来たらまた来ましょう。
「美味しいですね、イリス」
「でしょう? この店は貴族だって来るぐらいなのよ!」
「まあ、週五の侯爵令嬢が言うのですから間違いはないでしょうね」
何よテレサったら、そんないい方しなくてもいいじゃない。
「でも、こんなに美味しいなら私も学園にいるころに来たかったです!」
「だけど入り口で聞いた通り予約制よ。そんな簡単には来られないわね」
「それは残念です……」
「そうだわ! 下町近くに二号店を出させればいいんじゃない?」
「お嬢様。それでは、ケーキ作りをする者がいなくなりませんか?」
「最悪ここから運べばいいわ。貴族たちはどうせこっちにしか来ないし、それはそれで向こうでの売り文句になるわ」
「まあ、それが宣伝になるかは置いておいて、確かにいつでも来られないのでは困りますし、話しをしてきます」
「大丈夫なんですかテレサ。お店のことなのに?」
「大丈夫よ。テレサは私の馴染みの店には遠慮なく話すから。それに今回の話しも店にとっては悪くないでしょうし」
「しかし、イリス様は本当に幅広く知り合いがおられますね」
「ここはたまたまよ。王都でわがままが利く店があるのも大きなことよ」
そんなことを話しているとケイト様がメモを取っている。昨日からこそこそ取ってるようだけど何を書いているんでしょう?
「それにしても美味しかったです。また来ましょう!」
「そうですわね。あっ、時間がもう少なくなってきておりますので、私の良く行っていた店に最後、寄ってもよろしいですか?」
私はボロが出ないように口調を戻しつつ、聞いてみる。
「はい。イリスのなじみの店ならぜひ!」
こうして私たちは王都でよく行っていた雑貨屋に来たのだった。久しぶりとあいさつを交わした後は思い思いに見て回る。ケイト様は侯爵様にお土産をと何やら見ている。エマは故郷の家族宛にお土産を買っている。テレサは……。
「あんた何でついてきてるの?」
「特に見る物もございませんので」
「気を利かせて離れるって選択肢は?」
「メイドたるもの主の好みの品を知っておきませんと」
「初めて聞いた教えだわ。ドルシャにでも確認しましょう」
「あ、いや……」
テレサを退けた後は一人で見る。ここは平民用も貴族用もそれなりに揃っていてとてもいい店だ。テレサには疲れが取れるドリンクを。あいつは物だと仕舞って使わないからね。エマには手が荒れないようクリームを、これは貴族用のちょっとお高いやつ。これを使わせて邸でもきちんとした品質のを使わせないとね。ケイト様には……さっき使っていたペンは長い文章を書く用だから、メモを書くのに便利なペンにしよう。まあ、こういう短時間でその人物が必要になるものを選ぶのも、貴族令嬢のたしなみよ。
「あなた達も早く買いなさい!」
「はい、イリスは早いですね」
「誰に買うのでも、普段からその人物を見ていればすぐにでも思い浮かぶわよ。あなた達は注意力が足りないのよ!」
「気を付けます」
おっと、つい口調が戻ってしまった。何はともあれ買い物も済ませたし、一旦宿に戻りましょうか。この口調にも疲れてきたわ。
「さあ、ケイト。準備をしなさい!」
「で、でも、街中を行くのにこのドレスですか?」
「これでも動きやすいようにデザインを考えてあるやつよ。もっと動きにくいのに変えられたくなかったらさっさと着替える!」
「お嬢様、その勢いでは街中でケイト様に悪いイメージがついてしまいますよ」
「おっと、そうだったわね。ケイト様、こちらでお願いいたします」
「はい……」
エマがケイトを着替えさせている間に、今日はどの店に行こうかと悩む。昨日は王都にはどんな店もあると言ったけれど、逆に色々な店がありすぎて見るだけで午前中なんて終わってしまう。あまり時間は取れないから仕方ないけれど、ここは馴染みだった店に行くことにしましょう。まあ、一か所ぐらいはケイトの希望も聞いてあげようかしら。それぐらいの時間はあるでしょう。
「こんな上質な服で本当にいいのですか?」
「ええ、やや薄めの青に銀の刺繍も入ったドレス。これがただの街行きの服だということにきっとみんなは引くでしょう」
「引かれるのですか……」
「当たり前よ! 貴族が平民と一緒でどうするの! 平民からは見ただけで道を開けさせるだけの輝きを出すのよ!」
「背筋も伸ばして歩き方はこうですよ」
ケイトはテレサによって歩き方の指導もされる。せっかくのドレスも変な歩き方ではおかしくなるのを防がないと。あんなんでも侯爵夫人なんだから。
「準備もできたわね。それじゃあ、出発よ!」
いざ王都の街に向けて侯爵家の馬車で乗り込む。街は今日もにぎやかだ。道行く人の数も多く、商店もにぎわっている。その中を我が家の馬車が我が物顔で通っていくのだ。
「ケイト様、どこか気になるところがあれば降ろしますので、言って下さい」
「はい。でしたらその……」
ケイトが言ったのは王都でも人気の服屋だった。しかも、どちらかというとやや高級だ。だけど、この店は服もさることながらアクセサリーが売りだ。
「珍しいですわね。ケイト様がこちらに行きたかったなんて……」
「以前から学園のみんなが話していて、一度行ってみたかったんです」
なるほど、これはもう少ししたらデザートが待ってるわね。ならあそこの角の店ねきっと。別に私がどこへ行きたいかと言い出さなくてもいいみたいだわ。
「では、店に入りましょうか。ここに止めて!」
「はい」
馬車を止めさせ先に降りて、ケイト様の手を引いて降ろす。この店でよかったかもしれないわね。今も店から貴族が見てるかもしれないし。
「いらっしゃいませ! どうぞこちらへ」
店員も私が付き添いで主がケイトだと認識したようだ。まあ、このために今日のドレスはやや簡素なものだし、仕方ないわね。
「お嬢様にはこちらの服などはいかがでしょう? きっと似合いますよ」
エマとケイト様が服を見ている。確かになかなかいいセンスだ。この店ならあれ以上は二,三着ぐらいだな。本人の好みもあるし、いい選択かも。そう思っていると私たちのところにも先ほどの店員が来る。
「お連れの方はこちらなどはいかがでしょうか?」
そう言いながら明らかにワンランク下の服の場所に連れていかれる。まあこれなら金持ちの商家の娘っぽい服もあるからいいかも。ただ、この時点で一度ぐらいは同じところに連れて行きなさいよ。そこで私がやっぱりもう少し動きやすい服をって言ってからここに来るところでしょう。
「そうね。この辺りの服をもらおうかしら」
「ではこちらでサイズ直しをさせていただきます」
私は早々に服を決めると店員に服を直させる。
「テレサも一緒にケイト様の服を見てあげて。私はもう少しこの辺りを眺めておくわ」
「はい」
「よし、行ったわね。さて、小物というか飾り物はこの辺りか……。今なら邪魔者もいないし思う存分見れるわね」
そうして、いくらか見ているとふいに目に留まるものがあった。
「ふむ、これにしましょう」
その後もケイト様は二、三服を見ると最終的に二着を購入した。ついでに購入した服に合わせて、アクセサリーも買わせておいた。この店に来たんだし、当然よね。
「次はどこに行きましょうか? ケイト様」
「すみませんイリス様。私のせいで時間を使ってしまって……」
「構いませんよ。それに今日はイリスと呼び捨てでお呼びください」
「わ、分かりました、イリス。では、あそこの角のデザート店に行きましょう!」
「はい」
予想通りの店だ。あの店は私が学園に通っていたころも人気店だったもの。それにしてもあまりに予想通りの行動パターンに心配になるわね。
「いらっしゃいませ。ご予約は在りますか?」
「いいえ」
「当店は本日、込み合っておりましてご予約の方以外は……」
「では二階を使わせていただけるかしら?」
「二階ですか? あちらにはお席の方は……はっ!」
「久しぶりね、アルナ。ケイト様にこちらの店のデザートを食べさせたいのだけれど」
「イリス様のお知り合いでしたら……」
「私の母よ」
「は?」
「もちろん書類上は、だけどね」
「噂は本当だったのですね。てっきり、嫌がらせでまたどこかの令嬢が噂を流されたのかと……」
「この歳まで私に嫌がらせしようなんて暇人はいないわよ。それじゃあ上がらせてもらうから」
「はい。ごゆっくり」
私は遠慮なしに二階へ上がる。上にあるのはこの店の従業員用の休憩スペースだ。店員が唯一ゆったりできるスペースを私が王都にいた時は占領していた。というのも私に突っかかってくる令嬢も多く、騒ぎを防ぐためだ。店としても侯爵家令嬢が来るというのはプラスだけど、もめ事はNGという折衝案だ。
もちろん占領していたといっても、楽しく店員とおしゃべりをしていたけどね。なんせ、私が気を遣わずにしゃべられるもの。ここじゃあ私が王様みたいなものだったからね!
「あら、意外にいいところですね」
「店の雰囲気を壊さないためよ。ここだって客が来る可能性はゼロじゃないもの」
現に私は来てたわけだし。
「私、楽しみです。ここのプリンが美味しいって評判で……」
「そうなの? 私はパイばかりだったから」
「お嬢様はここでも、最初はもめ事を起こされましたね」
「あいつらが悪いのよ、パイ姫なんてあだ名をつけるから! 人が何食べようと勝手よ」
「確かにそうなのですが、ラズベリーパイが週三回、アップルパイとミックスが一回ずつ。合計週五回も頼まれるのは……」
「だ、大丈夫だったのですか? お、お体とかは……」
「大丈夫よ。そのころはダンスを一所懸命にやってたし、すぐに消化してたわ」
そんな話しをしているとデザートが運ばれてきた。私はラズベリーパイに紅茶、ケイト様は名物プリンに紅茶だ。
「では食べましょう」
私は久しぶりのパイを一口大に切り、口に含む。うん懐かしい味だわ。ここにも卒業以来、来ることはなかったものね。王都でこの店ともなれば目立つし、いい思い出ばかりでもないからどことなく避けていたけれど、この味に比べれば些細なことだわ。今度から王都に来たらまた来ましょう。
「美味しいですね、イリス」
「でしょう? この店は貴族だって来るぐらいなのよ!」
「まあ、週五の侯爵令嬢が言うのですから間違いはないでしょうね」
何よテレサったら、そんないい方しなくてもいいじゃない。
「でも、こんなに美味しいなら私も学園にいるころに来たかったです!」
「だけど入り口で聞いた通り予約制よ。そんな簡単には来られないわね」
「それは残念です……」
「そうだわ! 下町近くに二号店を出させればいいんじゃない?」
「お嬢様。それでは、ケーキ作りをする者がいなくなりませんか?」
「最悪ここから運べばいいわ。貴族たちはどうせこっちにしか来ないし、それはそれで向こうでの売り文句になるわ」
「まあ、それが宣伝になるかは置いておいて、確かにいつでも来られないのでは困りますし、話しをしてきます」
「大丈夫なんですかテレサ。お店のことなのに?」
「大丈夫よ。テレサは私の馴染みの店には遠慮なく話すから。それに今回の話しも店にとっては悪くないでしょうし」
「しかし、イリス様は本当に幅広く知り合いがおられますね」
「ここはたまたまよ。王都でわがままが利く店があるのも大きなことよ」
そんなことを話しているとケイト様がメモを取っている。昨日からこそこそ取ってるようだけど何を書いているんでしょう?
「それにしても美味しかったです。また来ましょう!」
「そうですわね。あっ、時間がもう少なくなってきておりますので、私の良く行っていた店に最後、寄ってもよろしいですか?」
私はボロが出ないように口調を戻しつつ、聞いてみる。
「はい。イリスのなじみの店ならぜひ!」
こうして私たちは王都でよく行っていた雑貨屋に来たのだった。久しぶりとあいさつを交わした後は思い思いに見て回る。ケイト様は侯爵様にお土産をと何やら見ている。エマは故郷の家族宛にお土産を買っている。テレサは……。
「あんた何でついてきてるの?」
「特に見る物もございませんので」
「気を利かせて離れるって選択肢は?」
「メイドたるもの主の好みの品を知っておきませんと」
「初めて聞いた教えだわ。ドルシャにでも確認しましょう」
「あ、いや……」
テレサを退けた後は一人で見る。ここは平民用も貴族用もそれなりに揃っていてとてもいい店だ。テレサには疲れが取れるドリンクを。あいつは物だと仕舞って使わないからね。エマには手が荒れないようクリームを、これは貴族用のちょっとお高いやつ。これを使わせて邸でもきちんとした品質のを使わせないとね。ケイト様には……さっき使っていたペンは長い文章を書く用だから、メモを書くのに便利なペンにしよう。まあ、こういう短時間でその人物が必要になるものを選ぶのも、貴族令嬢のたしなみよ。
「あなた達も早く買いなさい!」
「はい、イリスは早いですね」
「誰に買うのでも、普段からその人物を見ていればすぐにでも思い浮かぶわよ。あなた達は注意力が足りないのよ!」
「気を付けます」
おっと、つい口調が戻ってしまった。何はともあれ買い物も済ませたし、一旦宿に戻りましょうか。この口調にも疲れてきたわ。
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