妹を想いながら転生したら

弓立歩

文字の大きさ
4 / 73
本編

3

しおりを挟む
ガチャリ

扉を開けて中へと入る。中にはすでにカークスとフォルトがお茶をしていた。

「待たせたみたいね。どう?何かいい依頼はあったのかしら?」

「あるというにはちょっと難点がありそうだがな。いつもより早いが食事しながら説明しよう」

カークスに促され私たちは1Fの酒場兼食堂へと向かう。この月の宮亭は料理もまあまあおいしい。月の宮亭は宿の中でもちょっと変わっているようで、基本的にお風呂→食事→部屋の順番にグレードが落ちていく。王都は宿自体は結構ありそれぞれ特色を出しているのだが、競争は激しく廃業も多い。廃業する宿の多くは料金設定と客層の設定ミスが多いようだ。この宿のようにお風呂併設の場合は別料金か込みか。ないところでは料理の味中心にするか、部屋自体の居心地をよくするかだ。

冒険者向けには長期滞在型の部屋中心だが、逆に旅行者用の宿は観光後に食事にまで手が回らない旅行者相手に料理のおいしい宿は人気がある。そこから考えるとこの宿の経営方針は、旅行者向け短期滞在型になるのだが冒険者も割合多い。ちょっと高いもののお風呂はとても快適で、臨時収入のあったパーティーが気持ちよく使ってくれるらしい。そんな風変わりな宿にて今日も私たちはパーティー会議だ。

「リサちゃん、注文お願い」

「はーい。ただいま伺いまーす」

元気よく看板娘のリサちゃんが返事をする。この店の夫婦には1人息子がいるが兵士として家を出てしまっているため、住み込みで雇っているらしい。もとは孤児だったようで働き者の元気な子だ。王都といえどモンスターの被害はあり、彼女は宿で働く前は孤児院ではなく街のどこかで暮らしていたらしい。こういうところは平和な世界から来た私からするとやっぱり慣れない。

「本日のメニューは何にいたしましょう?」

「私はいつもので構わないけど、みんなはどう?」

「わたしもいつも通りでいいよ」

エミリーの返事とともに男性陣も頷く。もうここに拠点を構えて4か月あまり、お決まりの返事だ。ちなみに私は肉・魚・野菜のバランスのとれたもの。エミリー・カークス・フォルトは肉中心。キルドは野菜中心だ。意外なのはエミリーとキルドで、エミリーは冒険者になってからというもの、常に肉を所望している。体つきもほっそりしているので、冒険者風に見えるようにしたいらしい。キルドは肉が嫌いという訳ではなく、彼曰く「ちょっと外に出れば肉中心の保存料理や、現地調達の肉ばかりになって筋肉質になる」とのこと。この中では一番健康に気を使っているのではなかろうかと思う。

「かしこまりました!では、できた順番に持ってきますね」

リサは注文を確認すると厨房の方へかけていった。この時間帯は宿泊と食事のみの客に加え、お風呂客も捌くので手一杯だ。

「じゃあ料理が来る前に、依頼の件について話をするか。私とカークスであの後、依頼を確認したがめぼしいのは3つほど見つかった。一つ目が幼体飛竜討伐だ、依頼対象数こそ少ないものの私たちのパーティーのランク的にはぎりぎりかもしれない」

「俺の方で見つけたものがあと2つ。1つは希少薬草採集。一見簡単そうだが採集依頼の為、成功報酬型という点と
王都の北東の森での採集の為、魔物の強さも侮れない点だ。2つ目はオーガの討伐依頼だ。こちらは王都から東の衛星都市までの街道付近で最近確認されているオーガの討伐だ。討伐対象数も最低8体と多めで2体ごとに加算報酬がある」

「どれもそこそこ私達にしては危険度の高い依頼ね。個人的には幼体飛竜討伐かしら」

「めずらしく強敵退治に乗り気だねティア。僕はどれでもいいけど希少薬草採集の依頼は残っていたらやりたいかな」

「わたしは前線にあまり出ないからよくわからないので、みんなに任せる」

「エミリーは今まで確かに前線には出なかったものね。でも、幼体とはいえ飛竜討伐の時は別よ?」

「ふぇ?」

5人体制になってから無理をした依頼がなかったため、エミリーは同じように依頼が見えるのかもしれないので注意する。

「そうだな。飛竜と聞いて真っ先にエミリーは何を思い浮かぶ?」

「空を飛んでる?」

「そうだ。あいつらはこれまでのモンスターと違って自由に空を羽ばたいてる。森でならともかく草原では挟撃や背後から襲われることはなかったが、空からとなれば背後どころかどこが前になるかが難しい。その上、奴らは皮膚が固く戦いづらい。幼体といえど討伐依頼がCランクもしくはそれに近いDランク以上となっている条件からも明らかだ」

「じゃあ結構あぶないんだね。でも、ティアもみんなも乗り気だよね?」

「そりゃあ仕方ないんじゃない。まだ、我らが『黒龍』はDランクパーティーだからねぇ。ランクが上がらないことには依頼の幅も広がらないしね」

「そうだな。今回幼体飛竜討伐を成功させればそれをもってCランクパーティーへと格上げされるだろう。そういう意味ではちょうどいいタイミングで舞い込んだ討伐依頼ともいえる」

「へえ~。ランクって結構重要なんだね~」

からからと笑うエミリーだが一緒に学校で習ったはずだったのに。冒険者ランクはS~Fで分類されている。Fランクは採集など非戦闘ランク。主に子供や薬師が取得するものだ、採集も門外では街道沿いの一部区域のみ。後は街中の清掃などの不足人員の補填などである。もともと存在しなかったランクだが、世界中で孤児が多かったころに独り立ちできるようにと身元証明のために創設された。孤児の中には名前すらないものも多く、就業困難な状況から犯罪に手を染め、治安悪化の一因となったため一時的に、ギルドが身請けする代わりに依頼料の一部を回収し制度存続が可能となっている。中には防衛任務で功績をあげ、爵位を賜ったものもいる位だ。

Eランクからが戦闘行為を含む依頼をこなす。Eランクは装備も貧弱で技量もおぼつかない為、多くの依頼が制限されている。急な警備の増員やFランク採集任務の護衛などが主で討伐任務はほぼない。Dランクから討伐依頼が増え、多くの冒険者がこのランクにとどまっている。理由は様々だが多くは実力不足による停滞だ。夢あふれる冒険者たちもここからCランクへと如何にして上がるかが問題なのだ。若ければ駆け出し、中年以降は惰性とまで言われている。Cランクからは基本的に依頼制限はない。ただし、上位モンスターや機密情報を扱う場合などは制限される場合がある。この為、DランクとCランクには扱いに大きな隔たりがあるのである。なお、Sランクパーティーはこの数十年存在していない。冒険者たちは実質Aランクまでというのが共通認識だ。


パーティーランクに関しては本当に申し訳ないと思っている。個人ランクでいえばカークス・フォルトはCランク、それ以外がDランクだ。私たち2人が加わったため、半数以上がDランクとなり平均ランクが低くなり昇格が遠くなってしまった。パーティーランクは個人ランクの平均を参照されるため、基本的に半数以上が該当ランクにいなければ昇格できない。それどころか平均ランクが下がれば降格されることもまれにあるのだ。

「じゃあ、おおむね幼体飛竜討伐依頼で決まりだな。後は対策だが奴らは空を飛んでいるため俺やフォルトは限られたタイミングでしか攻撃できない。そのため基本は俺たちが護衛で、キルドが注意を惹きティアが魔法で撃ち落とすか倒す。落ちれば俺達でも対応できるだろう」

「わたしは~?」

「エミリーは中心にいて敵がどこにいるか知らせてくれ。自分に近づいてきたら私たちで対応する。ただし、敵は空からだ。対応できないときは自分で身を守るんだ。この依頼はこれまでとは違う対応を余儀なくされるだろうが、落ち着いて対応してくれ」

「わかった。でも、見つけたりできるかな?」

「不安なら僕が明日道すがら教えてあげるよ。偵察・索敵はお手のものだからね」

「そうだな、キルドにそこは一任する。何にせよ初めての大きな依頼になるかもしれない。今夜はちゃんと睡眠をとって明日に備えてくれ」

「そうね。誰かさんもちゃんと寝なさいよ」

「僕はいつも出発時間には間に合わせてるよ」

「ティアは誰とは言ってないがな」

笑いが起こりみんな笑みを浮かべる。そのあとすぐにリサが料理を運んできたので、明日朝に集合してギルド支部へ向かうということで、仕事の話は終わった。ちなみに本日の肉料理はオークステーキだった。お土産に渡した分ではないと思いたい…。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

処理中です...