妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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食事を終えた私たちはそれぞれ明日に備えて別行動だ。私とエミリーはお風呂に入っていた。入るといっても浴槽はあるものの大浴場ではない。3つ個別に浴槽があり、簡単な脱衣場も個別にある。このプライベート空間が人気なのだ。浴槽も大きめで男性でも足が伸ばせると好評だ。

「あしたからの討伐任務大変そうだね~」

「まるで他人事みたいに…。カークスも言っていたけれど、今回は貴女も危険なんだから。それに今後はそういうことも増えて行くんだからちゃんとキルドの言うことを聞くのよ」

「わかってますよ~。でも、ティアのこの魔法便利だよね。隣の部屋でも聞こえるし」

「魔道具を介しての念話だからね。あんまり言い触らさないでよ」

「わかってるけど、勿体ないよね。こういう便利魔道具作るだけでも他の人は大変なのに」

「それをいったら貴女もよエミリー。今はほとんど治癒魔法だけだけど、貴女の才能なら戦闘魔法もかなり使えるはずなんだからね」

「またそんなこと言って。無理だよ~」

「無理かどうか明日の依頼が片付いたらしごいてあげるわ」

「いや~、ティアの鬼~」

「今のでやる気が増したから覚えておきなさい」

これは引きずっては不味いと判断したエミリーは浴槽からでて、そそくさと部屋に戻ってしまった。

「あの子はもう…」

部屋に戻ってみるとエミリーはすでに寝ているようだった。寝付きのよさに感心してしまう。

「しかし、飛竜退治とはね。雪夏が聞いたら卒倒しそうね」

いまの自分を確認するように呟くと、これまでのことを振り返ってみる。雪夏を救って欲しいと願ってからその後の記憶は定かではない。あの時の約束が守られているかさえこの世界では確認もできなかった。気が付いた時には、自分は5歳のティアという子供の姿だった。事情が全くわからず、最初は両親と祖父母を困らせたものだ。数日経ってぼんやりとわかってくると途端に恥ずかしくなってきた。これ迄のティアとしての記憶がまとまってきて、自分が転生したのだとわかった。思春期男子だった自分が家族に盛大に甘やかされている光景を思い出してしまったのだ。

その後は半日かけて記憶が整理され今のティアの人格へと変化した。といっても基本はティアのままで、そこに前世の知識や記憶があるという形だ。もちろん前の家族も今の家族も大事な家族なのだが。お陰で言葉や文字はすぐに覚えられたし、勉強法も知っていたので、かなり効率よく学べた。兄には「この子は天才児だ!」と声高に叫ばれたが、止めて欲しかった。兄は現在は王都の警護騎士をしている。直ぐに甘やかしてくるので、ちょっと距離をとっている。

ここだけは前世の記憶のせいか、甘えるという事が素直に出来ない。でも、私も雪夏にはあんな感じだったのかな?私だったらちょっと嫌かもと思ってしまった。やっぱり、ティアとなった今でも雪夏の事が気になる。あの声の主が何者かはわからないけれど、病気は治してくれただろうか?もっと小さい時はその事を思い出しては夜に泣き腫らしていた。その度に両親や兄がやって来てくれて一緒に寝てくれた。すごく安心したけれど思い返すと恥ずかしかったな。ふと、時計をみると結構な時間になっていた。これ以上色々考えて明日に差し支えてもいけないしもう寝よう。

「おやすみ、エミリー」

寝ているエミリーを起こさないよう、そっと声をかけて私は眠りについた。

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