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本編
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「おはよう」
「おはよ~ティア」
まだ眠そうな目をこすりながらエミリーが返事をする。いつもよく寝ているのに眠そうだ。でも今日は討伐依頼の確認をするのだから、余裕を持って行動しないといけない。
「ほら髪の毛を整えてあげるからこっち来なさい」
「は~い」
気持ちよさそうに髪を結わえられるエミリー。いつもやってあげているとはいえ、されるがままのエミリーには大丈夫かと心配してしまう。エミリーには冒険者という意識はあるものの、危険を感じられない面もある。甘やかしすぎかなと思いつつ今日もやってしまう。そんなことを考えているとセットも終わったので、また明日と意識を切り替えてから食堂に向かう。
「おはよう皆」
「ああ、おはようティア、エミリーも今日は早く起きたな」
「わたしも冒険者だからちゃんと依頼の日はおきます~。それを言ったらキルドだってそうでしょ」
「変に飛び火したな。まあ、すぐに朝食を食べて向かうとしよう。2人の分ももう頼んであるぞ」
「さすがフォルト。あなたがいれば安心ね。」
「2人ともおはようございます。もうすぐお二人の分も持ってきます!」
そう言いながらリサが男3人の朝食を運んでくる。今日は堅パンとコーンスープに麦茶のようだ。そこにベーコンでもあればなあと思ってしまうが、一定期間以上の滞在者への無料サービスとして朝食を出してくれているため、文句は言えない。これだって個別に注文すればチリも積もればなのだ。少し待った後、リサが私たちの分も持ってくれたのでそれを食べて、いざ冒険者ギルドへ。道すがらたわいない話をしているとあっという間にギルドにつく。こういう時間もかけがえない時間だと私は思っている。
「いらっしゃいませー」
ギルドの受付のおねえさんが元気に挨拶してくれる。もう顔なじみなので今日の用件もわかっているようですぐに受付へ向かう。
「今日は依頼の受注ですね。それで依頼はどれになりますか?」
昨日のやり取りを聞いていたのか、カークスとフォルトの依頼を探している姿を見ていたのだろう。すぐに用件に入ってくれる。
「これだ。依頼名は幼体飛竜の討伐、これをパーティーで受ける」
「幼体飛竜の討伐ですか…確かにまだどのパーティーも受けられてはいませんが、この依頼はどちらかというとCランク依頼になりますがよろしいですか?」
「ああ、かまわない。パーティー内でも話し合っての結果だ」
「大丈夫とは思いますが、改めて依頼を説明しますので奥へお願いします」
受付のお姉さんはそういうと依頼説明のために奥の小部屋へ案内する。大きいパーティーの場合はここで数名の代表者が入る。うちは少人数の為、全員でいつも入るようにしている。依頼の気になる点や、将来的にパーティーを抜けた時や、冒険者をやめる場合も考慮してだ。説明役の人間がいなくなって瓦解したパーティーなんてのもあるぐらいだ。こういうのに向いた商人というか商才のある人間はうちにはいないので、誰かいないだろうか?
「では依頼内容の説明をいたします。こちらは幼体飛竜討伐依頼。討伐完了の目安といたしましては3体からです。Cランク向けの依頼ということもあり未討伐・規定討伐数に満たない場合は依頼料が発生いたしません。また、依頼の原因としましては今年に入ってから幼体の分も含め、飛竜の確認報告が多い為の調査及び生息数の減少化です。最大討伐完了数は6体で以降は依頼料の審査対象外です。何か質問はありますか?」
「飛竜の発見報告が多いというのはこちらでは把握していなかったが、王都内では有名なのか?」
「こちらに関しては旅の冒険者も含め発見協力を行ってもらいました。その際に最悪討伐可能であることが条件でしたので、Cランク以上のパーティーで生息域に近づいた時のみの情報です。なので現在『黒龍』の皆さんには初めての情報かと思われます」
「それと、この依頼は数日残っているようだったがなぜだ?」
珍しくフォルトから質問が飛ぶ。彼は通常依頼に関しては質問をしない。カークスがするということもあるが、パーティーの実力を把握しているため無駄な質問は行わないのだ。
「少し言いづらいことなのですが…」
そう彼女にしては歯切れ悪く前置きして話し出す。この場はギルドとパーティーの信頼の場でもある。質問内容には必ず答えるし、情報に関しては質問がない他のパーティーにも公開しない。
「すでに1年間の飛竜発見報告がこの夏時点で来ています。それも数頭の群れの報告が多く、単独報告が多い飛竜には珍しいのです。そのためこの依頼にも成体や幼体の群れが現れる可能性が大きく…」
「Dランクパーティーはそもそも飛竜を狩れない。Cランクパーティも成体や複数体と遭遇した場合の被害を恐れてか」
「おっしゃる通りです。ギルドとしても歯がゆいのですが、依頼場所の渓谷は最大2体の成体が確認されています。ギルドとしては受けていただけること自体はありがたいのですが、とても危険なのです」
「思ったより危険な依頼だなどうする?」
フォルトが改めてみんなに意見を求める。確かに昨日時点の情報とは大きく異なったのは確かだ。
「でも、それってこの依頼をこなせれば確実にランクアップよね。Cランクのパーティーでも避ける依頼を問題なくこなして帰るんだから」
「おいおい、ティア。いつになくやる気になってるけど勝てる気でいるのか?」
「心外ね。飛竜は竜種の中では低級よ。我らがパーティーが負けるわけにはいかないでしょ?」
「ティアかっこいい~」
「確かにそうだな。この依頼受けよう。それと…」
「それと?」
「もし飛竜に会って討伐完了の場合は別途の依頼金の発生がでるように書き換えてくれ。聞いてる情報だとどっちにも出会う可能性もありそうだからな」
「判りました。ここで特別報酬として記載しておきます。あと、追加報酬用件ですが幼体のうろこと肉です。どちらも少量で構いませんのでお願いします。今回の大量発生に関してギルドと王立研究所がサンプルを欲しいとのことですので」
「品質は?」
「うろこは焼け焦げてなければ。肉はできるだけ生きている状況に近いものとのことです」
「了解した。では依頼受付書にサインを」
「サインをいただきましたので、これにて幼体飛竜討伐依頼受注手続き完了です。ご武運をお祈りしております」
受付のお姉さんに見送られながら私たちはギルドを後にして一路、渓谷へと出発する。荷物は目的地付近までは全員で大体同じぐらい、目的地付近からは後衛が多めに持つ。後衛は敵の接近までに荷物は投げ捨てられるが、前衛はそうもいかないため多くのパーティーがこの方式だ。街を出る時に門番の兵士にあいさつする。今日はバルガスさんの当番のようだ。
「何だ。お前ら帰ってきて早々また出発か。忙しいもんだな冒険者は?」
「おっちゃんそうは言うけど、僕らは毎日給料が入ってくるわけじゃないからね」
「だったらお前もこうやって立ってればいいんだ。危険なところに行ってばかりでしょうのないやつらだな全く」
そういって門を開けて通してくれる。バルガスさんは言い方はきついが冒険者に理解もある。中にはけがをした冒険者の仕事を斡旋したこともあるぐらいだ。これで強面でなければもっと人気のある門番だったろうに。初めて見る商人や冒険者は身をすくめて通行している。見知った人からはその姿がおかしくて仕方ない。
門を抜けて渓谷へ。渓谷は昨日まで行っていた森の奥へ進み、そこを抜けたところだ。今日はおそらく森の手前で1泊することになるだろう。幼体飛竜がすぐ見つからなければ、ぎりぎりまで滞在か最悪は何度か往復をしなければいけない。そんな事態にならないことだけを祈ろう。これでもこっちは乙女なのだ。お風呂もなにもないところで、ずっと野宿はいただけない。焦りはしないがゆっくりもできない、そう思って森へと向かう。
「そういや、今回の依頼よく受けたね?」
「あらキルド。受けるのは昨日話してたじゃない」
「そうだけどさ。結局依頼内容的には幼体じゃなくて、成体飛竜も含めた討伐依頼じゃないの。意外だなって思って」
「それは私も意外だったな。ティアの言う通り竜種としては低級だが成体ともなればますます危険な相手だ」
「まあ、確かにそれは意外だったけれど成体でも飛竜は特徴として飛ぶことだけだから」
「ブレスの事か?確かに飛竜が低級とされる要因はブレスを吐くことはないとされているな」
「だけどみんなも昨日言ってた通り、空飛ぶんですよね~」
「エミリー、あなたは知ってるでしょう、私の魔法適正」
「あ~、そうか。なら何とかなるのかな」
「そういえば結局、パーティー組んでから難易度高い依頼これが初めてだし、得意属性知らないや」
「すぐ抜ける可能性もあったから言わなかったのは悪かったわ。私の得意属性は風と光と闇よ」
「三属性もあるのか。それも光と闇の希少属性もちとは」
「今回は多分どっちも出番はなさそうだけどね」
「使うのは風か」
「ええ、飛竜の特徴が飛ぶことなら間違いなく落とすか、あなた達を飛ばして手が届くようにできるわ」
「なるほどフォルトの心配をあっさり蹴るとは思ったが、風魔法にそこまで自信があるなら納得だな」
「飛竜の堅いうろこも隙間がないわけではないわ。ただ、倒すのが困難なのは飛んでいるために狙いがつけられないことが大きからだし、飛べなくしてしまうか、こっちが空に上がってしまえば勝てない相手ではないわ」
「ブレスだと反らせられない場合などは危険だが、それもないとすれば確かにな」
「でも結成半年なのにまだまだ知らないこともあるんだね」
「そうだね~」
「だから謝ってるでしょ。キルドは魔法にあまり詳しくないから知らないでしょうけど、闇使いって勧誘すごいのよ」
「ああ、それは俺も聞いたことがあるな。光は主に癒し中心の為、水使いとかで代用されるし、教会が持っていくことも多い。それに対して闇の使い手は魔法知識のないもののイメージで嫌われることも多いが、精神耐性や暗闇での加護など補助も多く重宝される。多少使えるものに会ったことはあるが、実際メインで使えるというのは初めてだな」
「もっと褒めて!なんてね。最初はギルドのところでもちらっと言ったことがあったんだけど、それ目当ての人が多くて。すぐにセールストークの一環でほとんど使えませんって言ったら面白いように人が引いていったわ」
「そいつらはもったいないことをしたな。」
「もったいないといっても、冒険者はパーティー以外を不用意に信頼せずだ。ギルドとの依頼説明もそこにある。それが判らないようなのは結局ダメだっただろう」
「実際今も冒険者をやってるのは、その半数ぐらいかな?怪我してすぐ家を継ぐなり、普通に働いたりそれぞれね」
まあ、さらにその半分は冒険者のまま王都には戻らなかったのだけど。今から討伐依頼に行くのだからそのことは胸にとどめておいた。
「そろそろ目的地の森の入り口付近だな。ここで今日は野営だ」
カークスの合図でみんな野営の準備を始める。設営はカークスとフォルト。道具の準備などをキルド。料理の用意がエミリー。私はエミリーの手伝いと見張り役だ。
エミリーは料理がとてもうまい。幼いころから無理やり作らされてきたため手慣れているのもあるが、学校にいるときに人に作る楽しさを覚えてめきめき上達した。正直、すぐにどこかの宿にでも雇ってもらえるレベルだと思っている。本人に言ったら「そう言ってくれるのはティアだけだよ~」とのんきに返されたがみんなも言っていた。野営など数日の移動中は基本的には干し肉や現地での調達になるため、簡素な料理になりがちだ。ただ、1日目だけは王都から持ってきた新鮮な食材をいただくことができる。明日以降はエミリーといえどそこまで豪勢なものにはならないだろう。今日の恵みに改めて感謝を。
短い食事の時間が終わり、明日の出発に向けて打ち合わせをする。一番大事なのは見張りだ。これまでも見張りは交代で行ってきたが、目的の場所が近かったり危険度が少なかった。今回は翌日への影響も考えて行わないといけない。見張りに比重を置いていざという時に実力が発揮できないでは困る。
「今日の見張りだがどの順番で行うかだ。幸いこのあたりの危険度は低い。明日以降の行程にも差し支えないようにしたい」
「それについては私から意見が」
「ティアか。どうぞ」
「昼間に言ったと思うけど私は闇の魔法が使えるわ。その中に暗闇で迫ってくる相手を感知するというものがあるの。その魔法を駆使して作った魔道具がこの簡易型結界石。
中心に闇魔法の魔力を注ぎ込むと、近づく気配や敵意に反応して警告を鳴らしてくれるわ」
「そんな便利な魔道具があるの?すごいね。売れば大儲けじゃない」
「ありがとうキルド。でもこれ闇魔法を送り込むタイプだから使用者がかなり限られるの。それと材料費も結構かかるのよ」
「確かにその働きをする魔道具なら似たようなものでもかなりの高額だな。普段使いすればすぐに破産するだろう」
「そんな魔道具を簡単に使ってしまって大丈夫なの?」
「この魔道具は自作品だから材料費だけだし、闇魔法自体は私自身が使うから問題ないわ。一応、ためておけるしね。問題は2個しかないことぐらいかしら」
「じゃあ、見張りは簡易的にするか。初めて俺たちは使うから一応確認の意味を込めてな」
「それでいいわ。じゃあ見張りは…」
「魔道具を提供してくれるんだから、こっちでやるよ。一陣目は俺が、次はフォルトでいいか?」
「かまわない」
「そう、じゃあお言葉に甘えて寝させてもらうわ」
「見張りの件はこれで終わりか。じゃあ、明日もあることだし今日は早く寝るように」
カークスの合図を皮切りにみんな簡易テントへ向かう。一応、2張あり女性・男性で分かれている。男性が大きめで食糧とかもあっち側だ。
「エミリー。明日は久しぶりに森を進むから足元には注意するのよ」
「は~い。じゃあおやすみ~」
「おやすみなさい」
「おはよ~ティア」
まだ眠そうな目をこすりながらエミリーが返事をする。いつもよく寝ているのに眠そうだ。でも今日は討伐依頼の確認をするのだから、余裕を持って行動しないといけない。
「ほら髪の毛を整えてあげるからこっち来なさい」
「は~い」
気持ちよさそうに髪を結わえられるエミリー。いつもやってあげているとはいえ、されるがままのエミリーには大丈夫かと心配してしまう。エミリーには冒険者という意識はあるものの、危険を感じられない面もある。甘やかしすぎかなと思いつつ今日もやってしまう。そんなことを考えているとセットも終わったので、また明日と意識を切り替えてから食堂に向かう。
「おはよう皆」
「ああ、おはようティア、エミリーも今日は早く起きたな」
「わたしも冒険者だからちゃんと依頼の日はおきます~。それを言ったらキルドだってそうでしょ」
「変に飛び火したな。まあ、すぐに朝食を食べて向かうとしよう。2人の分ももう頼んであるぞ」
「さすがフォルト。あなたがいれば安心ね。」
「2人ともおはようございます。もうすぐお二人の分も持ってきます!」
そう言いながらリサが男3人の朝食を運んでくる。今日は堅パンとコーンスープに麦茶のようだ。そこにベーコンでもあればなあと思ってしまうが、一定期間以上の滞在者への無料サービスとして朝食を出してくれているため、文句は言えない。これだって個別に注文すればチリも積もればなのだ。少し待った後、リサが私たちの分も持ってくれたのでそれを食べて、いざ冒険者ギルドへ。道すがらたわいない話をしているとあっという間にギルドにつく。こういう時間もかけがえない時間だと私は思っている。
「いらっしゃいませー」
ギルドの受付のおねえさんが元気に挨拶してくれる。もう顔なじみなので今日の用件もわかっているようですぐに受付へ向かう。
「今日は依頼の受注ですね。それで依頼はどれになりますか?」
昨日のやり取りを聞いていたのか、カークスとフォルトの依頼を探している姿を見ていたのだろう。すぐに用件に入ってくれる。
「これだ。依頼名は幼体飛竜の討伐、これをパーティーで受ける」
「幼体飛竜の討伐ですか…確かにまだどのパーティーも受けられてはいませんが、この依頼はどちらかというとCランク依頼になりますがよろしいですか?」
「ああ、かまわない。パーティー内でも話し合っての結果だ」
「大丈夫とは思いますが、改めて依頼を説明しますので奥へお願いします」
受付のお姉さんはそういうと依頼説明のために奥の小部屋へ案内する。大きいパーティーの場合はここで数名の代表者が入る。うちは少人数の為、全員でいつも入るようにしている。依頼の気になる点や、将来的にパーティーを抜けた時や、冒険者をやめる場合も考慮してだ。説明役の人間がいなくなって瓦解したパーティーなんてのもあるぐらいだ。こういうのに向いた商人というか商才のある人間はうちにはいないので、誰かいないだろうか?
「では依頼内容の説明をいたします。こちらは幼体飛竜討伐依頼。討伐完了の目安といたしましては3体からです。Cランク向けの依頼ということもあり未討伐・規定討伐数に満たない場合は依頼料が発生いたしません。また、依頼の原因としましては今年に入ってから幼体の分も含め、飛竜の確認報告が多い為の調査及び生息数の減少化です。最大討伐完了数は6体で以降は依頼料の審査対象外です。何か質問はありますか?」
「飛竜の発見報告が多いというのはこちらでは把握していなかったが、王都内では有名なのか?」
「こちらに関しては旅の冒険者も含め発見協力を行ってもらいました。その際に最悪討伐可能であることが条件でしたので、Cランク以上のパーティーで生息域に近づいた時のみの情報です。なので現在『黒龍』の皆さんには初めての情報かと思われます」
「それと、この依頼は数日残っているようだったがなぜだ?」
珍しくフォルトから質問が飛ぶ。彼は通常依頼に関しては質問をしない。カークスがするということもあるが、パーティーの実力を把握しているため無駄な質問は行わないのだ。
「少し言いづらいことなのですが…」
そう彼女にしては歯切れ悪く前置きして話し出す。この場はギルドとパーティーの信頼の場でもある。質問内容には必ず答えるし、情報に関しては質問がない他のパーティーにも公開しない。
「すでに1年間の飛竜発見報告がこの夏時点で来ています。それも数頭の群れの報告が多く、単独報告が多い飛竜には珍しいのです。そのためこの依頼にも成体や幼体の群れが現れる可能性が大きく…」
「Dランクパーティーはそもそも飛竜を狩れない。Cランクパーティも成体や複数体と遭遇した場合の被害を恐れてか」
「おっしゃる通りです。ギルドとしても歯がゆいのですが、依頼場所の渓谷は最大2体の成体が確認されています。ギルドとしては受けていただけること自体はありがたいのですが、とても危険なのです」
「思ったより危険な依頼だなどうする?」
フォルトが改めてみんなに意見を求める。確かに昨日時点の情報とは大きく異なったのは確かだ。
「でも、それってこの依頼をこなせれば確実にランクアップよね。Cランクのパーティーでも避ける依頼を問題なくこなして帰るんだから」
「おいおい、ティア。いつになくやる気になってるけど勝てる気でいるのか?」
「心外ね。飛竜は竜種の中では低級よ。我らがパーティーが負けるわけにはいかないでしょ?」
「ティアかっこいい~」
「確かにそうだな。この依頼受けよう。それと…」
「それと?」
「もし飛竜に会って討伐完了の場合は別途の依頼金の発生がでるように書き換えてくれ。聞いてる情報だとどっちにも出会う可能性もありそうだからな」
「判りました。ここで特別報酬として記載しておきます。あと、追加報酬用件ですが幼体のうろこと肉です。どちらも少量で構いませんのでお願いします。今回の大量発生に関してギルドと王立研究所がサンプルを欲しいとのことですので」
「品質は?」
「うろこは焼け焦げてなければ。肉はできるだけ生きている状況に近いものとのことです」
「了解した。では依頼受付書にサインを」
「サインをいただきましたので、これにて幼体飛竜討伐依頼受注手続き完了です。ご武運をお祈りしております」
受付のお姉さんに見送られながら私たちはギルドを後にして一路、渓谷へと出発する。荷物は目的地付近までは全員で大体同じぐらい、目的地付近からは後衛が多めに持つ。後衛は敵の接近までに荷物は投げ捨てられるが、前衛はそうもいかないため多くのパーティーがこの方式だ。街を出る時に門番の兵士にあいさつする。今日はバルガスさんの当番のようだ。
「何だ。お前ら帰ってきて早々また出発か。忙しいもんだな冒険者は?」
「おっちゃんそうは言うけど、僕らは毎日給料が入ってくるわけじゃないからね」
「だったらお前もこうやって立ってればいいんだ。危険なところに行ってばかりでしょうのないやつらだな全く」
そういって門を開けて通してくれる。バルガスさんは言い方はきついが冒険者に理解もある。中にはけがをした冒険者の仕事を斡旋したこともあるぐらいだ。これで強面でなければもっと人気のある門番だったろうに。初めて見る商人や冒険者は身をすくめて通行している。見知った人からはその姿がおかしくて仕方ない。
門を抜けて渓谷へ。渓谷は昨日まで行っていた森の奥へ進み、そこを抜けたところだ。今日はおそらく森の手前で1泊することになるだろう。幼体飛竜がすぐ見つからなければ、ぎりぎりまで滞在か最悪は何度か往復をしなければいけない。そんな事態にならないことだけを祈ろう。これでもこっちは乙女なのだ。お風呂もなにもないところで、ずっと野宿はいただけない。焦りはしないがゆっくりもできない、そう思って森へと向かう。
「そういや、今回の依頼よく受けたね?」
「あらキルド。受けるのは昨日話してたじゃない」
「そうだけどさ。結局依頼内容的には幼体じゃなくて、成体飛竜も含めた討伐依頼じゃないの。意外だなって思って」
「それは私も意外だったな。ティアの言う通り竜種としては低級だが成体ともなればますます危険な相手だ」
「まあ、確かにそれは意外だったけれど成体でも飛竜は特徴として飛ぶことだけだから」
「ブレスの事か?確かに飛竜が低級とされる要因はブレスを吐くことはないとされているな」
「だけどみんなも昨日言ってた通り、空飛ぶんですよね~」
「エミリー、あなたは知ってるでしょう、私の魔法適正」
「あ~、そうか。なら何とかなるのかな」
「そういえば結局、パーティー組んでから難易度高い依頼これが初めてだし、得意属性知らないや」
「すぐ抜ける可能性もあったから言わなかったのは悪かったわ。私の得意属性は風と光と闇よ」
「三属性もあるのか。それも光と闇の希少属性もちとは」
「今回は多分どっちも出番はなさそうだけどね」
「使うのは風か」
「ええ、飛竜の特徴が飛ぶことなら間違いなく落とすか、あなた達を飛ばして手が届くようにできるわ」
「なるほどフォルトの心配をあっさり蹴るとは思ったが、風魔法にそこまで自信があるなら納得だな」
「飛竜の堅いうろこも隙間がないわけではないわ。ただ、倒すのが困難なのは飛んでいるために狙いがつけられないことが大きからだし、飛べなくしてしまうか、こっちが空に上がってしまえば勝てない相手ではないわ」
「ブレスだと反らせられない場合などは危険だが、それもないとすれば確かにな」
「でも結成半年なのにまだまだ知らないこともあるんだね」
「そうだね~」
「だから謝ってるでしょ。キルドは魔法にあまり詳しくないから知らないでしょうけど、闇使いって勧誘すごいのよ」
「ああ、それは俺も聞いたことがあるな。光は主に癒し中心の為、水使いとかで代用されるし、教会が持っていくことも多い。それに対して闇の使い手は魔法知識のないもののイメージで嫌われることも多いが、精神耐性や暗闇での加護など補助も多く重宝される。多少使えるものに会ったことはあるが、実際メインで使えるというのは初めてだな」
「もっと褒めて!なんてね。最初はギルドのところでもちらっと言ったことがあったんだけど、それ目当ての人が多くて。すぐにセールストークの一環でほとんど使えませんって言ったら面白いように人が引いていったわ」
「そいつらはもったいないことをしたな。」
「もったいないといっても、冒険者はパーティー以外を不用意に信頼せずだ。ギルドとの依頼説明もそこにある。それが判らないようなのは結局ダメだっただろう」
「実際今も冒険者をやってるのは、その半数ぐらいかな?怪我してすぐ家を継ぐなり、普通に働いたりそれぞれね」
まあ、さらにその半分は冒険者のまま王都には戻らなかったのだけど。今から討伐依頼に行くのだからそのことは胸にとどめておいた。
「そろそろ目的地の森の入り口付近だな。ここで今日は野営だ」
カークスの合図でみんな野営の準備を始める。設営はカークスとフォルト。道具の準備などをキルド。料理の用意がエミリー。私はエミリーの手伝いと見張り役だ。
エミリーは料理がとてもうまい。幼いころから無理やり作らされてきたため手慣れているのもあるが、学校にいるときに人に作る楽しさを覚えてめきめき上達した。正直、すぐにどこかの宿にでも雇ってもらえるレベルだと思っている。本人に言ったら「そう言ってくれるのはティアだけだよ~」とのんきに返されたがみんなも言っていた。野営など数日の移動中は基本的には干し肉や現地での調達になるため、簡素な料理になりがちだ。ただ、1日目だけは王都から持ってきた新鮮な食材をいただくことができる。明日以降はエミリーといえどそこまで豪勢なものにはならないだろう。今日の恵みに改めて感謝を。
短い食事の時間が終わり、明日の出発に向けて打ち合わせをする。一番大事なのは見張りだ。これまでも見張りは交代で行ってきたが、目的の場所が近かったり危険度が少なかった。今回は翌日への影響も考えて行わないといけない。見張りに比重を置いていざという時に実力が発揮できないでは困る。
「今日の見張りだがどの順番で行うかだ。幸いこのあたりの危険度は低い。明日以降の行程にも差し支えないようにしたい」
「それについては私から意見が」
「ティアか。どうぞ」
「昼間に言ったと思うけど私は闇の魔法が使えるわ。その中に暗闇で迫ってくる相手を感知するというものがあるの。その魔法を駆使して作った魔道具がこの簡易型結界石。
中心に闇魔法の魔力を注ぎ込むと、近づく気配や敵意に反応して警告を鳴らしてくれるわ」
「そんな便利な魔道具があるの?すごいね。売れば大儲けじゃない」
「ありがとうキルド。でもこれ闇魔法を送り込むタイプだから使用者がかなり限られるの。それと材料費も結構かかるのよ」
「確かにその働きをする魔道具なら似たようなものでもかなりの高額だな。普段使いすればすぐに破産するだろう」
「そんな魔道具を簡単に使ってしまって大丈夫なの?」
「この魔道具は自作品だから材料費だけだし、闇魔法自体は私自身が使うから問題ないわ。一応、ためておけるしね。問題は2個しかないことぐらいかしら」
「じゃあ、見張りは簡易的にするか。初めて俺たちは使うから一応確認の意味を込めてな」
「それでいいわ。じゃあ見張りは…」
「魔道具を提供してくれるんだから、こっちでやるよ。一陣目は俺が、次はフォルトでいいか?」
「かまわない」
「そう、じゃあお言葉に甘えて寝させてもらうわ」
「見張りの件はこれで終わりか。じゃあ、明日もあることだし今日は早く寝るように」
カークスの合図を皮切りにみんな簡易テントへ向かう。一応、2張あり女性・男性で分かれている。男性が大きめで食糧とかもあっち側だ。
「エミリー。明日は久しぶりに森を進むから足元には注意するのよ」
「は~い。じゃあおやすみ~」
「おやすみなさい」
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【学院期】
学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。
周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
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