妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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見張りがカークスに決定してみんなが寝静まったことを確認して僕は、外へと向かう。

「眠れないのか、キルド?」

「まあ、まだ早い時間だからね。普段はまだ活動時間だし」

僕の主な仕事は後方支援だ。弓での攻撃だけではなく街での情報収集なども含まれる。依頼はギルドから受けるのはもちろんだ。しかし、中にはギルドにも説明しない依頼主もいる。こういった場合に対応するために、僕は日ごろから酒場などを練り歩くようにしている。大体は自腹だけど、成果報酬としてカークスやフォルトからいくらかもらうこともある。改めて言うことでもないので2人には話していない。

「それにしてもわざわざ俺のところに来るのは珍しいな」

「ひどいね。これでもパーティーの一員なんだから気が向いて来ることもあるよ」

そう言いながらもカークスと2人でいることはまれだ。フォルトにはつまらない愚痴などを流し聞きしてもらうことはある。カークスは態度でうっとおしいと振られるので基本的には他の誰かがいる事が常だ。

「それで何か話があってきたんだろう」

「多分フォルトからも話があったと思うことだけどティアの事」

「お前もか」

「一応気にはなっていたからね。簡単な調査結果の報告だよ」

「はいはい。じゃあ報告を聞こうか」

「間違ってたら本当に無駄足なんだけどカークスが気になってたのってティアが持ってた杖なんじゃない?」

ビクリとカークスの肩が動く、間違いないみたいだ。

「どうしてそう思う?」

「この前の討伐依頼の帰りにティアが言ってた。カークスが強く当たるのは最初の合同討伐の時だって。でも、思い出してみても行きにはそんな感じではなかった。じゃあ帰りかなと思って思い返すと、戦闘後にみんなを見まわした後だったなってね。ひょっとしたらって思ってね、僕も杖の紋章は気になってたから」

「確かにその通りだが、よくそんなことを覚えていたな。半年前の些細な出来事なのに」

「そうでもしないと情報屋はやってけないからね。彼らは同じことを聞きなおすときでさえ報酬を求めるからね。それでそもそもあの杖は何なのかと彼女の生家を調べてみたんだ」

「結果は?」

「あの杖は元々宮廷魔術師用の支給杖だった。しかもあのモデルは今より治安の悪い時代のモデルで、実用性に特化していて唯一の飾りが宮廷所属を示す紋章だった。ただあの杖自体が古いもののようで、現在の紋章とは意匠が異なっていたためすぐにはわからなかったんだ」

「そんな高級かつ希少なものをなぜ彼女が?」

「そう思って僕も調べたよ。宮廷所属の紋章の入ったものはおいそれと持っていることを許されない。あの杖も本人及び本人が実力と人格を認めたもののみに譲ることを許されるものだったよ。あの杖の持ち主は彼女の祖母だった。長期の在任ではなかったけど、情報通のおばばに聞いたら当時はかなりの実力者だったらしい。若くして師団長になるとも目されていたけれど、数年で退任。退任までの数年間の働きを認めて杖に関してはそのまま所持を許可されたって」

「そういういきさつだったのか…」

「どう満足した?」

「ああ。しかし、彼女には申し訳ないな。つまらない誤解をしていたようだ」

「ホントだよ。理由まではとやかく言わないけど、機会があったらちゃんと謝りなよ」

「そうする。しかし、お前にしては本当に珍しく踏み込んで調べたな」

「まあね。カークスがそこまで感情的になるのも気になったし、彼女は妹みたいな存在だからね」

「エミリーのことか?まあわからないではないな」

「エミリーじゃなくてティアだよ。」

「ティアが?」

「しっかりしているし、実力もあるけどね。僕からしたら背伸びしている妹みたいなものさ。多くを見てるから無茶しそうで心配だよ。きっとティアのお兄さんも同意してくれるよ」

「あったこともないのに無責任なことを…。」

「気にしてあげてね。ティアはすぐに背負おうとする。エミリーのこともそうだし今回の討伐依頼のこともね」

「今回の依頼の事か?確かにやけに乗り気だったが…」

「あれは乗り気なんかじゃなくて、申し訳ないと思ってるんだよ」

「何にだ?」

「2人が入った一瞬だけDランク依頼でもギルドの確認が入ったことがあったでしょ。あの時の事、まだずっと気になってるんだよ」


あれは半年前に加入に合意して正式に5人パーティーになった時、ギルドでいざ依頼を受けるときに言われたのだ。

「新規加入2名のランクが低い為、今回の依頼に関してはギルドの方より詳細な行動計画の提示を求めます」

「しかし、依頼の内容としてもDランク全般への依頼で問題ないはずだが?」

「冒険者養成学校出身者の加入後の傷病率が大きい為、今後4度の依頼の間は必要というギルドの判断です」

「分かった。書類は都度まとめて提出する。」

その後、4つの依頼をこなす間は依頼の受注から行動計画書の提出とかなり手間がかかった。実力不足の身の安全を図るためとはいえ大仰なことだとも思う。都度ティアもエミリーも謝っていたが、二人に落ち度はないし実力的に言えば2人より下の者はもっと大勢いる。だが、ティアはよほど気にしていたようで行動計画のうち3つは彼女が受注後すぐに作成したものだ。

「今回の依頼が完了したら間違いなくCランクだからね。あんなことはもうなくなる。そう思って自然と力が入ったんだろう。フォルトも事前の話と違うこと以上に気にしていたみたいだ」

「そうだったのか。俺はもっと気を付けなくてはな。2人にそういうところは頼ってばかりだ」

「ははっ、そこは任せてもらわないと。人の心の機敏に疎いカークスじゃないとお小遣いの当てがなくなるよ」

おどけていって立ち上がった。明日は本番になるかもしれない。前衛の二人は大いに危険だし、ティアは魔法を使う。僕は後方で索敵と気を引くぐらいしか出番はないだろうからせめてみんなの負担にならないようにしないと。そう思って寝に戻る。

「今日はすまなかったなキルド」

「そう思ったなら帰ったときに1軒支払い持ってよ。いい店紹介してもらったから」

「わかったよ」

それっきり会話をせずテントに戻り僕は眠った。さあ、明日はどうなることかな。
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