妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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小屋に戻って、さっさと昼食を終えた私は寝室に籠り、冊子改めエリアの書を書き続けていた。名前が決まって一気に書きたい形が決まり、うんうん唸ってはペンを走らせていく。

風の魔法はもちろんのこと、光や闇。私自身は余り使えないが、火や水や地属性の魔法に関しても通常範囲の魔法は書き記し、使用方法についてわかる範囲で記載する。さっきの魔法の使い方についても、忘れないうちに記載する。かなりの部分を書き終えたところでしばし悩む。

「やっぱりあれも書くべきなんだろうか…」

魔導書となれば基本的には、自分の応用できる範囲全てを書き記しているものだ。どうしても秘匿しておきたいものに関しては記載をしないこともあるが。この魔導書は私の今のすべてを伝えるためのものだと、改めて意識する。

「カリンがこれを使わないでいてくれたらいいけど、難しいわよね」

今の現状を見ても、将来的にも飛竜とは狩場や住処を守るためにこの魔法は必要となるだろう。せめてその時に、あの子の身を守るようになれれば。

「これは最後の方のページに書きましょう。本当に必要になった時にだけ」

この魔法は学校の図書館で見つけた一冊の本の中にあった魔法の発展系だ。一度だけ使ったことがあったけど、あまりの魔力消費で2度目を打つほどの余裕はなかった。しかも、詠唱自体も長くとても単独で使うものではない。これまでも一切使ってこなかったが、この戦いではもしかしたら必要になるかもしれない。

その後も、私は執筆を進めていく。風魔法や光・闇魔法ならともかく、他の属性は私自身が余り使えないこともあって、この辺はスムーズだ。

「正直、他の属性は使えるってだけで、ゴブリン程度にしか効かないのよね」

これからの戦いで他の属性が必要になったとしても残念ながら、私には使えそうにない。それらの代替案も探さないとね。そう考えると、やることは山積みに思える。まずは、この依頼を片付けてからの話になるけれど。

「さあ、もう少しだけ書きましょうか」

つらつらと書き進めていく。ある程度まとまったところで、私はエリアの書を置いてリビングへ向かう。

「結構進んだことだし、気分転換に飲み物でも飲みましょう」

リビングでは、フォルトとキルドが相変わらず地図を作成していた。昨日までの調査のところは書き終えているらしく、今は複製を作っている様だ。横にはエミリーがいて飛竜のうろこの選別をしている。もう少しで全部終わるようだ。

「お疲れ様みんな。2人は地図を複製しているの?」

「うん、せっかくこの周辺の地図を作るんだから、調査に協力してくれたこの村の人にも渡そうと思ってね。一先ずは長老とカリンの分だけだけど」

「そうなの。きっと喜ばれると思うわ」

「でも、村の人は普段から空から見てるだろうから、下手なものは贈れないからね。ちゃんとしたものにしなきゃ」

「じゃあこの後も調査するときは、ますます力を入れないとね」

「そうだな。其れにこの地図自体は持って帰って私たちも使うことになるのだから、移しながら2人で点検しているという訳だ」

「頑張ってね、2人とも。それでエミリーはうろこの仕分けしてるの?」

「そうなの。ティアが部屋に籠っちゃうし、ぼ~っとしてたらフォルトが暇なら続きをやってほしいって」

「偉いじゃないエミリー。でも、ごめんなさい。私だけ自分のことばっかりで…」

「ティアは仕方ないよ。カリンに魔導書作ってあげるんでしょ。僕らじゃできないことだし、カリンの今後を左右することだしね」

「ありがとうキルド」

「そういう意味では、うちのリーダーが一番自分本位かもな」

「そういえばカークスはどこ行ってるの。また長老のところ?」

「残念。ずっと、素振りや型の見直しで外にいるよ。飛竜を相手にどう戦うか一生懸命考えてるみたい」

「まあ、一周回って私達のためになるからいいんじゃない?」

「そうだね。そう簡単にいく相手でもないし、期待しとくよ」

「ほら、ティア~終わったよ」

「頑張ったわねエミリー。結局、小さいものがやっぱり多いわね」

「そうだね。幼体っていうのが大きいんだろうけど、うろこもちょっと強度に欠けるのもあるみたいなんだ」

「最も、そっちは加工しやすいから、大したお金にはならないが細工用として売れるだろう」

「細工用かぁ。実家に売りつけちゃおうかな」

「たしかに、ティアの家は雑貨屋だからちょうどいいかもね」

「なら、1回値段を聞いてみてからギルドに行きましょう。フォルトは値段とかわかる?」

「そうだな、数が多いがこの3分の一ぐらいで金貨2枚ぐらいかな。ただ数が多いから個人店では難しいかもな」

「ダメもとで交渉かしらね」

「まあ、こっちとしてはどちらでもある程度になればいいわけだし、別にいいさ」

「でも、高く売れたらおいしいもの一杯食べれるよ?」

「そうね。いっぱい食べられるように頑張りましょうか」

その後は、木の実を少しとジュースを飲んで、また部屋へと戻る。

「じゃあ、また奥にいるから何かあったら呼んで」

「わかったよ」

それからは特に何もなく私は執筆を続け、フォルトとキルドは無事に地図の複製を4部作製したらしい。カークスも夕飯前には戻ってきて一緒に夕飯を食べた。そしてカリンに明日は早めに来てもらうように告げて小屋に戻る。

「明日はいよいよ渓谷でも谷のところだ。昨日飛竜に出会ったところにも近いから、十分に遭遇の可能性もある。みんな注意してくれ」

「そうね。結局、決着はついていないし出会う可能性も高いわね」

「しつこそうだったもんね、あの飛竜」

「狙われるなら、キルドが先じゃない?短剣も刺さったままだし」

「いやなこと言わないでよエミリー。こっちは武器らしい武器はもうないんだし逃げ回るのも疲れるよ」

「でも、実際ありえるかもね。」

「ティアまで」

「全く、もう少し緊張感をだな…」

「カークスだって、今日はずっと剣の練習をしていただろう?あんなこと滅多にないのに」

「覚悟を決めていただけだ。前はしっぽの先だけだったが次は必ず仕留めて見せる」

「ふっ、頼もしいことだ。ならみんな今日は早めに寝よう。明日は早くに起きるからな」

「そうね、そうしましょうか」

フォルトの言葉を皮切りに、私達はそれぞれの就寝場所へと向かう。ベッドに入った私たちも明日に備える。

「じゃあ、おやすみなさいエミリー」

「おやすみティア」

しばらくしたが、なかなか寝付けない。今日は寝すぎたせいだろうか。

「ねえ、ティア起きてる?」

ふと、エミリーから声をかけられた。寝つきのいい彼女にしては珍しい。

「なあにエミリー?」

「明日飛竜は現れると思う?」

「それは分からないわね。でも…」

「でも?」

「私は現れると思うわ。獲物を前にして、あれだけ手こずった果てに体を傷つけられた飛竜がおとなしくしているとは思えないもの」

「そっか。明日も頑張ろうね」

「そうね。じゃあまた明日…」

私は短く返事をして今度こそ眠りにつく。明日はきっと飛竜と出会う。そんな予感を感じながら。
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