妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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森を抜けた私たちは街道沿いにひたすら王都への道を進んでいく。このあたりは冒険者も多く、王都への重要な交通網というだけあって、まず危険はない。たまに低級の魔物が来ることもあるが、移動中の冒険者に退治されるのが殆どだ。

「今日は何たべよっかな~」

「久しぶりの王都ではしゃぎたくなるのも分かるが、ギルドの報告は今回はみんなで行うからな。あんまり時間は取れないぞ」

「そんなぁ~」

「エミリーったら王都は逃げないわよ」

「それもそうだね。じゃあティア、明日一緒に行こうね?」

「用事が終わったらね」

私はエミリーと明日の予定について約束する。その前にお婆様に瞳の件と、母さんにはうろこの件を話しておかないとね。それから2時間ほど歩いて、ようやく王都の門が見えてきた。

「王都の門が見えてきたな。幸い今日は込み合っていないようだ」

「王都の入門の検査の列、長いと1時間待つもんね」

「これなら、10分もあれば終わるだろう」

「そんなに時間違うんですね。私が初めて来たときは半時間ほど待ってましたけど」

「商人たちが商隊を引き連れたり、旅行の行き返りでごった返すとひどいことになる」

「そうそう。だから、王都に戻るときはちょっと余裕を持って動かないと門がしまっちゃうんだよね」

門は基本的に18時以降閉められてしまう。少しおまけをしてくれる門番もいるが、見つかったら配置換えなどになりかねないので、時間は厳守される傾向だ。そうなったら、門の前で野宿となる。一応衛兵が見張ってはいるものの、夜は魔物が来ない保証もない。また、野宿の人間を襲う盗賊もいたりするので、気が抜けないのだ。

「一応言っておくけど、門が閉まったら野宿よ。リライアも外に出る際は気をつけた方がいいわ」

「覚えておきます」

いよいよ、私たちの番だ。今日の門番は誰だろう?

「次、来い!」

「うへぇ、バルガスじゃん!」

「なんだ、キルドか。貴様ら姿を見せんと思ったら生きて帰ったとはな。ん?後ろの奴は見ない顔だな」

「森で1人いたところを保護したんです。ギルドにはこれから行って説明します」

「そうか。なんにせよ戻ったことだけは褒めてやる。さっさと行け」

今日の門番はバルガスだ。門番としては短いが、王都の勤務は長く腕もかなりのものらしい。いつも、昇進の話が出るが上司ともめるなどして遠ざかっている。最近娘さんも生まれたのだから、もうちょっと落ち着いたらいいのにと思わずにはいられない。口は悪いところもあるが、疲れているだろう私たちをすぐ通してくれるなど、面倒見もいいのにな。

「あ、あの…」

エミリーがおずおずと袋を出す。体格も良く威圧感を与える彼が苦手なのだ。乱暴な人でないことは分かっているので、何とか話しかけられるようだが。

「どうした?早くいかんか」

「これ、奥さんにどうぞ」

ずい、っとエミリーが袋を差し出す。中身はこの前倒した飛竜の幼体の干し肉だ。食べ比べた結果、幼体の方が肉は柔らかく味はちょっと薄味なことが分かった。産後、そんなに経っていないのでこちらを選んだのだろう。

「これは?」

「今回倒した飛竜の幼体の肉です。奥さんにあげてください」

「飛竜のか。お前たちもやるようになったな!暇ができたら門番を任せたいくらいだ。ありがたくいただくとしよう」

バルガスは袋を丁寧に受け取ると、エミリーにお礼を言う。奥さんに良いお土産ができたとホクホク顔だ。あんな体格と性格をしていて、奥さんには頭が上がらないのだから面白い人である。

「それじゃあ私たちはこれで。ありがとうございます」

「なんの。こちらこそ滅多なものをもらえてすまんな」

私たちは門を通り抜けると、一路ギルドへ向かう。ここまで王都を離れての行動もなかったので、目線が定まらない。

「ほんとに帰ってきたんだね~」

「そうだな。これまで離れても2日ほどだったから新鮮だな」

みんなも私と同じ考えのようで、エミリーの言葉に頷いている。

「あの…皆さんさっき飛竜を倒したって」

「え、ああ言ってなかったわね。私たちは森のさらに奥の渓谷へ行って、飛竜の幼体の討伐依頼を受けた帰りだったのよ」

「すごいです。この人数であの飛竜を!通りで皆さん強いわけです」

「えへへ、すごいでしょ~」

リライアはしきりに褒めてくれる。確かにそうなのだが、なんかそこまで褒められると恥ずかしい。

「ほら、着いたぞ」

目的地に到着したので、話を切り上げギルドの中へ。

カランカラン。

「いらっしゃいませー。あら、『黒龍』のみなさん、戻られたんですね」

「もちろんだ。依頼を受けたからにはやり遂げるさ」

「よかったです。お戻りが遅いと心配していたんです。他の方に聞いても一度も王都には戻ってないといわれましたし」

「ああ、ちょっといい場所があってな。それより報告があるので奥は空いているか?」

「ええ、ちょうど今日はギルドマスターもいらっしゃるので、呼んできます。ところでそちらの方は?」

「帰りに森で拾った」

「これを返却する。報酬の方は彼女に渡してくれ。あと、彼女も臨席させる」

フォルトがカードを受付に見せる。

「拾ったって…わかりました。言われた通り手配します」

カードの記載を見て察したのだろう。彼女の境遇と、所属パーティーの状況が。彼女は奥の係員にカードを渡し、耳打ちをする。奥の係員も目を伏せてすぐにカードを預かり、奥へと戻っていく。その後、ギルドマスターを呼びに彼女は2階の部屋へと向かう。

数分としないうちにギルドマスターが降りてくる。王都勤務だけあって、実力も人望もかなりのものらしい。今でも討伐依頼などに出向くこともあるという程だ。

「待たせたね。奥で話を聞こうか」

促され、私たちは全員奥の部屋へと入る。入ったところで、受付のハンナさんにより鍵が閉められた。閉めるときに魔法が発動したみたいで、完全に外と隔離されたようだ。

「それでは今回の報告だが、まずは謝らせてほしい。ハンナからも話があったとは思うが、私やランクの高い者たちは別の依頼のためにこちらを離れていて危険な依頼をさせてしまったようだ」

「いや、こちらとしては受けるのに十分なメリットもあった。気にしないでもらいたい」

「そう言ってくれるとありがたいよ。正直、みんな無事で帰ってくるとは思っていなかったからね。君たちの実力は聞き及んでいたが、成体の飛竜まで確認されたのは数年ぶりだったからね。それも複数いるとなれば、通常はBランクのパーティーや10人以上の人数で当たるものだったからね」

「まあ、運も良かったというか…」

正直、カリンや大鷹さんに会っていなければ、実際はそうなっていただろう。

「運が良くても、帰られないものはいるわけだし、そこは誇るべきだと思うよ。では、報告を聞こうか」

「まず、今回依頼のあった飛竜の幼体の討伐については最終的に4体の討伐となる」

「へえ、依頼は3体だったけれど、追加で1体倒したんだね」

ギルドマスターは感心している。私たちのようなランクの低いパーティーがランクより依頼を受けるときは、目標を達成した時点で依頼を終えるのが普通だからだ。その方が安全で危険も少なく、上位のパーティー程そのような道を歩んできたものが多い。

「それと、成体の飛竜の確認されていた2体のうち、1体は倒した」

「成体の飛竜を…倒した?」

ハンナさんが目をぱちくりとさせている。横にいるリライアも成体を倒したとは思っておらず、みんなを2度見している。

「それは本当か!?」

「これが証拠だ」

カークスは持っていたバッグから、飛竜のうろこを取りだす。傷だらけではあるが、まさしくそのうろこの大きさは成体のみが持ちうるものだ。

「確かに…このサイズのうろこは成体のみでしか取ることはできない。失礼だが、君たちDランクのパーティーが倒せるとは…」

「実際、かなりの強敵だったが何とか1体はこの通り倒した」

「評判は聞いているから嘘だとは思わないが、これだけ立派な飛竜のうろこだ。さぞ、苦労しただろう」

「ほんと大変だったよねえ~」

「エミリー、失礼よ」

「いやいや、私こそ済まない。これだけの成果を確認できるとは思ってはいなかったんだ。幼体の討伐だけでも十分だったし、その話を聞いて討伐隊を結成しようかと思っていたんだ」

「ギルドマスター自ら?」

「それほど王都にとって危険だという事さ。にわかに森に入る者たちにもすでに広まりかけていてね」

「あなた達が依頼を受けたって大変だったんですよ。帰ってきた高ランクの方から質問攻めにされたり、他の方からも今日も見てないって騒ぎになってたんですよ」

「そうなの?」

「渓谷には基本的に人は近づかないようにしているからね。あそこには主と呼ばれる魔物もいるが、人前に姿は見せないしこちらから仕掛けなければ平和だから。それが突然の飛竜騒ぎで依頼を受けたのが、売り出し中とはいえDランクだ。この辺に飛竜の討伐依頼が出たのも珍しいし、準備はどうだったのかとベテラン勢が騒いでね」

「実のところ、あと2日もすれば帰還を待たずに臨時の討伐隊を組む手配をしていたんです」

「そこまでの話になっていたとは」

「しかし、無事でよかったよ。みんなも安心しただろうし、ギルドの信頼も高まったしね」

「それで報酬とランクの件だが…」

「もちろん、追加の報酬も多く出そう。他の冒険者も納得できるようにね。それとランクの件も飛竜の成体を倒せるなら、問題なくCランクだよ。これまでは審査の関係でDランクだったから、今回の依頼の達成時点で上がる予定だったからね」

「それなら問題ない」

「それで、飛竜の件に戻るけど、奴らはもう1体だけなのかな?」

「正直、俺たちが見たのが1体いるとしか言えない。だが、森の出口付近で2体の幼体に出会ったことから、まだ複数いると思った方がいいだろう」

「そうか…やはり情報は正しかったのか」

「情報というと南の村の飛竜ですか?」

「…どうしてそれを?」

「実はこのリライアはその村の出身で、最近村の近くに住んでいた飛竜が突然消えたといっていたんです」

「それで、飛竜が移動したと。確かに可能性として今はそれが一番高いとこちらでも考えている。君たちが1体倒したとはいえ、いまだ脅威があるというなら一度調査を行わないといけないかもね」

「それならここに良いものがあるよ」

キルドがすかさず一枚の紙を取りだして広げた。一生懸命に作っていた地図だ。

「これは?地図」

「僕らが調査できた範囲のみだけど、結構いい出来だと思うんだけどどう?」

「確かにこれは、素晴らしい出来だ。あの周辺は地図もろくになくて、調査隊もどの規模を作るか迷っていたんだ。これがあればずいぶん助かるよ」

「ただ、この山の付近には近づかないでください。さっき言っておられた主がいるようで、私たちも襲われかけたんです」

私はすかさずカリンたちの村の方へは近づかないようにくぎを刺しておく。

「分かった。確かに主と事を構えるのは避けた方がよさそうだ。この近くにはいかないようにする」

「調査が決まったら一声かけていただいてもいいでしょうか」

「どうしてだい?」

「もし、我々も時間があるようでしたら、同行はできないかもしれませんがアドバイスぐらいはできると思いますので」

フォルトも違和感なく、調査の時の情報をつかめるよう動いてくれる。

「それはこちらとしても願ったりだよ。よろしく頼むよ」

「それにしても、飛竜を倒した割に結構身軽だね?」

「ああ、持ちきれないものは見つかりにくい場所に置いてある。折を見て取りにいくつもりだ」

「大丈夫なんですか?危険なところでしょう?」

「心配ありがとうございます。でも、2体目の飛竜も私たちが倒したと知って、飛び去ってしまいましたからしばらくは大丈夫だと思います」

「それでも安全とは言い切れない。十分注意するんだよ」

「ありがとうございます」

「では、報告はそのぐらいかな?」

「飛竜の件はこれで終わりだな」

「あとはその、このリライアの件なんですが…」

遠慮がちに私がリライアを紹介する。ハンナさんがそっと耳打ちする。一瞬、ギルドマスターは目をひそめたが、すぐに向き直った。

「なるほど、森でパーティーが壊滅したと」

「そうなんです。ティアさんたちにここまで連れてきてもらったのですが、この後の働き口がなくて…」

「力になってあげたいところだが、ギルドにも空きの人員はいない。斡旋はできないことあるが、今すぐとなると難しいだろう」

「そんな…何とかなりませんか?」

「残念だがこちらでは難しい。リライアの登録カードを見せてもらえるか」

リライアは個人カードをギルドマスターに渡す。それをハンナさんに渡して機械に通す。

「ふむ。この経歴なら簡単な店を開くといいのではないか?冒険者の持ち帰った素材の売買などだ。小さいが店の空きはあったはずだ」

元ギルド所属の人間が起こした店が不渡りで、差し押さえのものがあるのだという。

「でも、お金がないんです!」

「『黒龍』の持ち帰った素材があるだろう。それを借り受けてやってみてはどうだい?」

「えっ」

突然の提案に私たちもびっくりする。何を言い出すのだろう。

「君たちの腕のほどは確認させてもらったけれど、素材なんかを扱う商人はいないだろう。この機会に作ってみてはどうだい?うまくいけば儲かるし、いらない素材も買い叩かれないよ」

苦い顔をしてギルドマスターが言う。どうやら冒険者時代に結構もめたことがあるようだ。

「確かに我々にはそういったルートはありませんが、急に商売を始めても他の商人たちから反発もあるのでは?」

「なら、自分たちの取ってきた素材と交換、販売を軸に不要な素材も引き取れますって感じでどうかな?素材だけならそこまで反発はないだろうし、基準も市場のものとは少し変えて、君たちや君たちと取引するパーティーの欲しいものだけ引き取り価格を高くして他は下げるんだ。そうすれば大丈夫だろう」

「それなら、効率的に集められそうではあるな…」

カークスがいい話だと考え始めた。あ、これはもう決まったぽいかな。

「そうだろう?話は早い方がいいから、資産部のところに行ってすぐにでも話を通しておくよ。明日には現地見学してそのまま入れるようにするから」

ハンナさんと話をして、てきぱきと進めていく。さすがに歴戦の猛者ともなるとマネージメントも優れているらしい。

「なあ、これって」

「もう、だめね。観念してこれからのことを考えましょう」

「なになに、私たちの店ができるの?」

「正確には私たちが出資したリライアの店がね」

「ええっ、いいんですか。そこまでしていただいて…」

「まあ、私たちも今回は素材が多く集まっているから、こういう店があるのはありがたいわ。でも、しばらくは融通してくださいね」

「もちろんです。命を助けていただいたばかりか店まで、頑張って大きくしますね!」

「大きくはしなくていいから。にらまれちゃうし」

そこそこ繁盛してくれればいいと思いながら答える。しかし、彼女はやる気にあふれておりそんなことはお構いなしに商売するだろう。

「とりあえず、リライアさんの件はそれでお願いするよ。代わりにといっては何だけどこれを」

「これは?」

「今回の討伐先で見つけた宝石さ。何も売るものがないと大変だろうし、進めた手前の迷惑料ってところだね」

「そんな、ありがたく使わせていただきます」

アメジストだろうか、怪しい輝きの中にも落ち着いた雰囲気があり、魔法を込めるのにも適した宝石だ。サイズも中々で結構な値が付くだろう。すぐに布で包んで受け取る当たり、リライアの審美眼がすぐれていることも分かって安心した。

「じゃあ、手配もあるし私は失礼するよ。ハンナ、依頼料の件はさっきの額で。後、調査隊の件も2日後のは白紙で改めて日取りを考えてくれ」

「分かりました。では、皆さんは戻ってください。依頼料の計算を行います。そういえば、うろこは持ってきていただきましたが、肉の方はどうですか?」

「ああ、こちらです。大きい方が成体のもの。小さい方が幼体のものです。どちらもすぐに凍らせたので、鮮度はいいと思います」

私はバッグから2つの凍った塊を渡す。中にはもう一つあるのだが、そちらは見えないように出す。

「これですか、結構大きいですね。質も…よさそうですね。依頼料に上乗せしておきますので」

「はい、お願いします。じゃあ、みんな出ましょう」

酒場の方に戻ると、来た時より多くのギルド員がいる。今日は多いなと思って席に着くと声が駆けられる。

「よう!カークスたちじゃねえか。長らく見ないから戻ってこないかと思ってたぜ」

「ん、ようやく帰ってきたのか。心配していたぞ」

みんな口々に声をかけてくれる。ハンナさんが言っていた通り、かなり気にかけていてくれたらしい。

「依頼を受けたら達成するのが、冒険者だろう?」

カークスも負けじと返す。

「そりゃそうだな。だが、飛竜と来ちゃ万が一ってこともあるしな」

「そうそう、あの辺はでかいのもいるらしいじゃないか。運悪く出会わなかったかい?」

「運良く出会ったおかげで、依頼料が弾みそうだよ」

今度はフォルトが返す。彼にしてはめずらしくユーモアな返しだ。

「へっ?まさかお前ら」

「そういうこと、おっさんらもたまにはこういうの倒さないとね」

「本当なのかいティア?」

女性剣士が話しかけてくる。ここで活動し始めたころから気にかけてくれる人だ。

「本当よ。大変だったけどね」

思い出して思わずため息がこぼれる。

「これはやられたね。いつの間にそんなに強くなったんだ?」

「私だけじゃないわ。エミリーも頑張ってたわ。いなかったらやられちゃったかもね」

私の言葉にエミリーをじっと見る。エミリーもえへへとちょっと得意げだ。

「あんたからそんな言葉を聞く時が来るとはね。エミリー、やるようになったんだねぇ」

ぐりぐりとエミリーの頭を強くなでている。

「いたい、いたいよ~」

「こうしてると、信じられないけど」

私たちは笑いあった。こうしてつかの間の平和が味わえることに私たちは感謝する。冒険者なら明日にはそこは空席になっていることもあるのだ。

「じゃあ、素材とかもたんまりなんだろ?ここで売っていくのかい?」

「それが…」

私は簡単にだがリライアさんのことを話す。あまり身の上話を人に聞かせたくはないのだが、彼女のように情に厚い人ならきっと力になってくれるだろう。

「ふ~ん。どうして大変なんだねぇ」

「でも、皆さんに助けられて店まで構えられるようになりましたから。頑張ります!」

ぎゅっと両手を握って力強く話すリライア。彼女もその表情を見て満足げだ。

「まあ、価格にもよるけど何かあれば寄るようにパーティーの連中にも言っとくよ。じゃあね」

そういうと奥のパーティーのところに引っ込んでいった。顧客一組目ゲットっと。後で、リライアにはメンツのことを話して気持ちよく利用できるように話をしておこう。

あそこは真面目なパーティーだから、特に変な値引きをしないように気を付けないと。変に安くしたりすると気を損ねちゃうのよね。みんなはというと、まだほかのパーティーに捕まっている様だ。

カランカラン

新しく入ってきたのは、王都でも有名なパーティーだ。人数は6人で私たちと同じくらいの規模。何店舗も契約店を持っていて、先日まで別の依頼で王都を離れていたパーティーの一つだ。

「飛竜討伐のパーティーが帰ってきたと聞いたんだが?」

「ああ、皆さんならそちらですよ」

ハンナさんが私たちの方を案内する。

「お前たちか、無謀な依頼を受けたと思ったが違ったようだな」

「ちゃんと"飛竜"を倒してきたので」

「ほう、聞いたか?俺たちもうかうかしてると抜かれてしまうな」

カークスが一応、礼を守りながら飛竜の成体を倒したことを暗に伝える。向こうも成体を倒したとは思っていなかったので、驚いた顔を見せた後、興味深そうに私たちを見て奥の方へ座った。

「なんか感じ悪い」

「そう言ってやるな。あいつらが真っ先に捜索隊の話を出したんだ」

「そうなの?」

「あんまり大きくは言えないが、あのパーティーは昔に飛竜討伐の依頼に加わったこともあってな。合同だったが結構被害も出たらしく、心配だったんだろうよ」

「なら、そう言ってくれればいいのに」

「冒険者としては他人に首を突っ込まないのも大事なことだ。心配してもらえるだけ、ありがたいことだ」

「むぅ」

「ほら、エミリー可愛い顔が台無しよ」

「むにーってしないで」

そんなことをしているとハンナさんから声がかかる。

「皆さん計算終わりました。とりあえず依頼料と追加の分ですね」

カークスが受け取ったが、結構大きい。50枚前後はありそうだ。

「今回は手渡しでいいですか?」

「ああ、傷みがあるものを買い替えたりもするだろうから頼む」

「では、分けてくださいね。それでは店の件は明日のお昼ぐらいにでもまた来てください」

「分かった。じゃあ、みんな行くとしよう」

私たちはみんなにあいさつをして、ギルドをでる。目指すはお世話になっている月の宮亭だ。そんなに時間はかからないので休憩もなくそのまま向かう。

「ここが、俺たちが使っている宿だ」

「ここがそうなんですね。私も泊まるんですか?」

「別なところがあればそこでもいいけど、待ち合わせとか大変でしょ?」

「そうですね。何から何まですいません」

「気にしなくても、これからは僕らがお世話になるんだから」

「そうだね~」

この店も久しぶりだ。懐かしさを覚えながら店にみんなで入る。
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