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本編
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しおりを挟む「今日のお昼ご飯は何にするかな~」
リビングへ行って食事の準備をしようとするエミリー。しかし、そこにはすでに食事を準備していたキルドがいた。
「おや、お帰り2人とも」
「あれ、キルドがお昼作ってくれるの?」
「ああ、ここに干してったままの飛竜の肉がどんな具合か気になったからね」
「そう言えば、多いから置いてったわね」
「じゃあ、お昼はお肉だね~」
「それとサーリさんからの差し入れで、香草のサラダをもらったからお昼はそれだね」
「そう言えば前から気になっていたんだけど、この村って結構香草とか木の実とか豊富よね」
「そうだね~。さっきは川もあるって言ってたけどあんまり行かないのかな?」
「前までは、出歩くのも難しかったからそれでじゃないかな。はい2人とも」
「ありがとうキルド」
キルドが料理を運んできてくれる。サラダの方は木の実から作ったドレッシングのようなものをかけてある。干し肉の方は以前にもらった調味料につけてから干しておいたものだ。様子を見にこれなかったからちょっと心配だけど。
「いただきま~す」
「頂きます」
「どうぞ」
パクリ
「ん~、おいしい。このサラダちょっと甘みのあるドレッシングがかかってておいしいね」
「本当ね。干し肉の方もちょっと心配だったけど、香ばしくて味もしっかりついてておいしいわ」
「ほんとほんと。こうなってくると毎日食べられないのが惜しいね」
「そりゃ無理でしょ。定期的に飛竜を狩るなんて疲れるよ」
「でも、サーリさんのくれたこの調味料のおかげかもね」
「じゃあさ、作り方教えてもらったら似たようなの食べられる?」
「どうでしょうね。まず材料がわからないしね。ひょっとしたらこの周辺にしかない珍しいものを使っているかもしれないわ」
「あー、その可能性はありそうだね。この、サラダにかかってるのも正直、似たような味のもの食べたことないし」
「まあ、教えてもらってから考えてもいいわね。今度聞いて見なさい」
「うん!そうする~。まずはこれ食べてからね」
「ふふっ、そうね」
私たち3人は楽しい食事の時間を終え、その後はカリンが来るまで適当におしゃべりをして過ごす。
「こんにちわ~、ティアいる?」
「待って、直ぐ開けるわ」
私はガチャリとドアを開けてカリンとセイラちゃんを招き入れる。
「こ、こんにちわ」
セイラちゃんはちょっと緊張している様だ。そのようすがまたかわいい。最近はエミリーもしっかりしてきたし、ちょっとうれしい。
「こんにちわ、セイラ。呼んでしまってごめんなさいね」
「ううん、なにもなかったから…」
「それじゃあ、みんな奥の部屋へどうぞ。キルド、私たち奥で作業するから」
「例の飛竜の目?」
「そうよ。カークスたちにも言っておいて、どのくらいかかるか判らないけど入ってこないようにって」
「分かったよ。でも、危ないと思ったらすぐやめなよ」
「ええ、分かってる」
そして寝室の方に私たち4人は入っていった。部屋に入ると隅にある大きな球体をベッドの上に置いて広げる。
「ごめんなさいエミリー。椅子3つ持ってきてくれる?」
「は~い」
その間に私は球体をくるんでいた布を外し、飛竜の目を確認する。ちょっとしてエミリーが椅子を持ってきてくれたので、カリンとセイラちゃんに座ってもらい説明する。
「エミリーも座ってて」
「うん」
「今からこの飛竜の目を浄化する作業をするの。その前提の話なんだけど、実はこの飛竜の目はそのままだと魔族を呼び出す魔法に使用されてしまうらしいの」
「魔族って、あの魔族?」
「そう。魔物より大きな魔力を持った人型の魔物ね。ハーピーも似ているけれど、伝承通りなら魔力の量が大きく違うわね」
「わたしも長老様から聞いたことがあったけど、本当にいるんだ」
「とはいっても、私も見たことはないけど記録はきちんとあるから、本当のことだと思うわ。それで、このままだと危険なので処分をしたいのだけど、実はこの飛竜の目を光の魔法で浄化すると、魔力を増幅させる素材に変化するらしいの。そっちは私も見たことがあるんだけど、とても高価で貴重なのよ」
「じゃあ、さっきみたいな危険がなくなるってこと?」
「そうなの。ただ、かなりの魔力が必要みたいで私とエミリーで数日かけてやる予定だったんだけど…」
「わたしもお手伝いするの?」
「そうね。セイラちゃんにはお手伝いをお願いするわ。折角光属性が使えるんだから、練習にもなるでしょうし。ただ無理はしないでね。疲れたら必ず休むこと」
「うん!」
「わたしはどうすればいいかな?光魔法は使えないよ?」
「申し訳ないんだけどカリンには私たちを見ていて欲しいの。かなり魔力を使うせいで周りにあまり気を配れないと思うから。2人のうちどちらかが疲れていると思ったら中断させてほしいの。後は、セイラちゃんが疲れていないかよく見ておいて」
「それならお任せだよ。しっかり見ておくから。セイラもしっかり見ておくよ!」
「おねがい。カリンおねえちゃん」
「わたしはティアと一緒に魔法使っていればいいんだね?」
「ええ、配置だけど私が左側、エミリーは右側ね。その中央のところに目を置いてその正面にセイラちゃん。ちょっと離れてカリンがみんなを見る感じで」
「分かった。じゃあこっちだね」
エミリーたちが私の指示通りの場所に動く。目をベッド上の手前側に移動させて私も配置につく。
「準備はいいわね。じゃあ、私が唱える通りに魔法を唱えて」
「うん」
「はい!」
「光よ、その輝きにて闇を払え」
「「光よ、その輝きにて闇を払え」」
私・エミリー・セイラの前に光の玉が現れ、飛竜の目に向かっていく。
バチバチッ!
飛竜の目は魔力を宿していて、障壁があるようだ。
「ひゃあ!」
「セイラ大丈夫?」
「う、うん。だいじょうぶです」
「なら、そのまま続けて。エミリー行くわよ!」
「うん!」
集中しなおしてもう一度挑戦する。
バチバチッ!
再び魔力同士が接触して激しくぶつかり合う。死してなお魔力を宿すとは、飛竜はドラゴンの中でも低位とはいえそれでもかなりの魔力を秘める様だ。さらに魔力を込めてついに光の魔法が障壁を破り、飛竜の目に届く。
数分後、セイラちゃんの魔法もようやく飛竜の目に届いた。流石に魔力の強さはまだまだ低いようだ。少しだが息も上がっている。もう少ししたら一度休憩を取った方がいいかもしれない。
「カリン、見てあげててね」
「もちろん」
「エミリー、私に魔力の大きさ合わせられる?無理なら私が合わせるわ」
「ちょっとお願いしていい?障壁にまた押し戻されそうで、あんまり調整できないんだ」
「分かったわ。じゃあ、ちょっとだけ力を抜いて。その魔力量に合わせるようにするわ」
「こ、こう?」
「その調子よ。それで維持をお願い。ちょっとぐらいならずれてもすぐ修正するから」
「うん」
私とエミリーは魔力の量を合わせて放出し続ける。2人とも光の魔法の強さはそこまで変わらないはずだから、同様の量を流し続ければ同じぐらいで魔力消費が起きる計算だ。その間にもセイラちゃんは何度か休憩を取っている。ただ、この飛竜の目の障壁自体が常に展開されているため、再びそれを突破するところからになってしまう。
お婆様が今の私ならできるかもというのがよくわかる。魔力が低いものや適性が低いものは、休憩ばかりで作業は進まないだろう。
「セイラ大丈夫?一回ちゃんと休む」
「だいじょうぶ、カリンおねえちゃん。もうちょっと頑張る」
「セイラちゃん。頑張りすぎないようにね。次の休憩はちょっと長くとりなさい」
「は、はい」
言いながらも少し辛そうだ。やはり、魔法を使い始めて間もない彼女にはかなりの負担だろう。種族として魔力を多く持っているものの、それでもまだ発達途上なのだ。
「エミリーはどう。まだいけそう?」
「なんとかね。でも、あと20分ぐらいかな。これ思ってたよりきついよ」
「そうね。障壁が厄介ね。小休止を繰り返しながらと思っていたけど、1日1回ずつやるのがいいかも」
平気な振りをしているが、私もちょっと疲れてきている。ここ数日は魔力を使いこむことが多くて、魔力総量が上がったのかもしれないが、それでもかなり疲れる作業になりそうだ。
「ごめんなさい、ちょっとやすみます」
「セイラ頑張ったね!」
倒れこみそうなセイラちゃんをカリンがしっかりと支える。やっぱりちょっと無理していたようだ。ゆっくり休ませてあげないと。
「こっちも後、15分というところね。頑張りましょうエミリー」
「うん。セイラちゃんに負けてられないね!」
気を入れなおして再び15分間魔力を放出し続けて、今日の作業を終えた。
「ふ~つっかれた~」
「本当疲れたわ」
「お疲れさま2人とも~」
「おつかれさま」
「ありがとうカリン、セイラちゃんも」
「セイラちゃん大丈夫~。かなり疲れてるみたいだけど…」
「ごめんなさい。魔力が空っぽに近いみたいです」
「じゃあ、ちょっとだけ新しい魔法を使ってみましょうか?」
「ティア、セイラはもう空っぽに近いんだけど…」
「そういう時の魔法があるのよ。闇属性だから2人は無理だけど」
そう言って私はセイラちゃんの耳元で魔法をつぶやいて教える。
「セイラちゃんいい?さっき言った通りに唱えるのよ」
「は、はい。でも…」
「大丈夫。セイラちゃんのためだもの」
「じゃあやってみます」
セイラちゃんが教えた魔法を使う。胸のところに黒い球体が現れ、カリンに向かっていく。
「え、なになに?」
「カリン、そのままで大丈夫だから」
カリンに動かないように指示すると球体がカリンに当たる。球体は消えずにカリンの体から光が出て球体に吸い込まれていく。
「ちょっと、これもしかして」
「あらカリン、もうわかっちゃったの。面白くないわね」
「ティア、どんな魔法教えたの?」
「ねえティア、これって魔力吸われてる?」
「その通りよカリン。これは吸魔の魔法よ。魔力が切れたり相手の魔力を削ぐ場合に有効なの。セイラちゃんは魔力が殆どないんだから抵抗しちゃだめよ」
「ふえっ、大丈夫カリンおねえちゃん?」
「あ、これぐらいなら大丈夫だから。必要な分だけ取っていいよ」
「う、うん」
それから1分ほど魔法は続き、ある程度までセイラちゃんは魔力が回復したようだ。
「ティア~、ちゃんと先に言ってよね」
「ごめんなさい。ちょっとどんな反応をするかと思って。でもすごいじゃないカリン。すぐに魔法が何なのか分かるなんて。遠慮してそこまで最初は吸ってなかったみたいだしよく気づいたわね」
「そう?やだな~。褒められると照れちゃうよ~」
「あ~あ、カリンちゃん騙されてる」
「声が大きいわよ」
褒めて話題をそらす作戦は成功したようだ。エミリーにもかなり使ってきた手だったが、ちゃんと使えてよかった。
「それにしても教えてすぐできるなんて、セイラちゃん才能あるわね」
「そうだよね~。結構、ティアも最初は苦労してたし闇属性はセイラちゃんの方が上になるかもね」
「わたしが?」
「まあ、私もそこまで得意じゃないから、ちゃんと練習すればそうなるかもね」
その為には努力が必要という事も伝えながら返事をする。実際、今の魔法自体は消費が少ないだけで、使うこと自体はやや難しい。カリンがセイラちゃんに対して敵対意思がないのも大きいだろうけど、相手の魔法障壁を破って吸い取るわけだから、中々成功しないのだ。私もエミリー相手以外では最初はあまり成功しなかったし。
「でも、今日みたいに無茶しちゃだめだよセイラ!」
「うん、次からきをつける」
「そうそう、無理してお母さんやカリンを悲しませちゃだめよ」
「ティアが言ってもね~」
「なになに、何かあったの?」
「実はね、この前王都に帰った時のことなんだけど―」
カリンやセイラちゃんに王都で付与魔法を使って、意識が朦朧としたままカークスに連れて帰ってもらった時のことを言い出す。
「ちょっとエミリーやめなさいよ」
「ええ~。でも、魔力の使い過ぎが何を起こすのか教えられるし~」
「くっ!」
そう言われては返す言葉もない。実際にきちんとした光景を伝えることで、事務的に伝えるよりはるかに意識するだろう。エミリーが話をしている間に、飛竜の目を片付けて話が耳に入ってこないように努める。
「へぇ~。ティアおねえちゃんもけっこう無理するんだね」
「そうだよ~。カークスにおんぶされて、街中を見られながら帰っていったんだから。セイラちゃんだと村中の人に見られて家に帰るよ」
「さすがにちょっと恥ずかしいかな」
「う~」
子供ゆえの気遣いのない忌憚ない意見が突き刺さる。あの時のことはまるで覚えていないから、何とも思っていなかったけど、改めて聞かされるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
「ティア顔真っ赤にして。そんなに恥ずかしいなら気を付けないとね」
「カリン、からかわないでよ。もう」
てしてしと翼で背中をたたかないでほしい。隣で熱心に話を聞かれているのが何とも言えない気持ちになる。
「ま、まあそういうことだから、みんなにも注意するように言ってあげてね。ただし、この話はしちゃだめよ」
「は~い」
念を押して再度確認する。こんな話が広がってしまっては、この村で満足に歩けなくなってしまう。
「それにしても、飛竜の目ってすごいよね~。あれだけ魔力を込めてもまだ駄目なんだね」
「そうね。私の見立ても甘かったわ。まさか、あんな障壁があるなんてね。あれさえなければ休憩を挟みながら効率よくできたんだけど…」
「なんか弾かれてたもんね。あれってわたしの魔法じゃだめなのかな」
「駄目ってことはないでしょうけど、目的のものは光の魔法で浄化ってことだし、何か起きても大変だしね」
「そっか~。じゃあ、見てるだけしか仕方ないね」
「でも、助かるわ。私たちも魔力を注ぐのに手いっぱいで、余裕があまりないから」
「そうそう。見てくれてるから安心して打ち込めるからね。ありがとうカリンちゃん」
「へへ~」
嬉しそうにカリンがばたばたする。
「何なら、さっきみたいに魔力を供給してもらってもいいわよ?」
「流石にそれはやめとくよ」
私たちは笑いあいながら、その日の飛竜の目の浄化作業を終えた。
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