妹を想いながら転生したら

弓立歩

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本編

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カリンたちと明日また作業を行うことを約束して別れ、私たちは部屋で休憩していた。

「ティア~。今日は疲れたねぇ~」

「そうね。結局のところ障壁もゆるくはならなかったし、思ったより手ごわそうね」

「障壁をなくしたりできないかなぁ」

「同じ強さでぶつければ中和されるかもしれないけど…」

「明日やってみる?」

「試してみてもいいかもね。どっちがやる?」

「じゃあわたしやってみてもいい?」

「なら、明日任せるわね」

「おっけ~」

その後はしばらくだらだらしていたが、そろそろ夕食の時間という事で広場まで行くこととなった。

「こんばんは、サーリさん」

「こんばんは。皆さんお久しぶりですね」

サーリさんはちょうど食材を取っていたとのことで昼間は会えなかったのだ。

「サーリさんこれ!」

エミリーがサーリさんに取っておいたチーズを渡す。

「これは?」

「私たちからのお土産です。昼間のうちにみんなには渡したんですけど…」

「そうだったんですね。ありがたく」

そう言ってサーリさんはチーズを一口、口に運ぶ。

「!これ美味しいです。どういうものなんですか?」

「これはね~…」

エミリーがすかさず作り方を説明し始めた。熱心に聞いていたし任せておいて大丈夫だろう。ふむふむと頷きながら何かをメモしている。

「あっ、ティアたち来たんだね」

「さっきぶりね。カリン」

「うん。今日もおいしいのいっぱいだから食べてってね!」

「いつもありがとう。頂いてばかりだけど、ここらへんでみんな取れるの?」

「そうだよ。森の奥とかに生えてるの。最近は欲しいのを育てようって、植えたりもしてるんだよ」

「じゃあ、これもそうなの?」

「うん!結構、うまくいってるみたいで、季節によって渋いのとかを取らなくても良くなったんだ」

「ちなみに調理する前のものとかって見せてもらえる?」

「別にいいと思うけど何で?」

「単純においしいっていうのもあるんだけど、仲間の一人が店を開くことになってるの。それで、普段見ない珍しい植物とかを売れないかなって」

「どうだろうね。長老様に話しとくよ」

「お願いするわね」

「でも、わたしたちからするとそこら中にあふれてるのに、人間のところでは珍しいなんて不思議だね」

「そうね。そこまで離れてるわけでもないし昔は王都にも自生していたのかもね」

「お~い、ティア~。サーリさんが調味料の作り方教えてくれるって!」

「本当!ちょっと待っててすぐ行くから」

「じゃあいってらっしゃい。わたしはこっちで食べてるね」

「ええ、どうもありがとうカリン」

私はカリンと別れて再びサーリさんのところへ行く。

「ティアさん。調味料の作り方教えて欲しいんですって?」

「ええ、単純においしいのもありますし、実は店を開く仲間がいて一緒に置けないかなと。少なくとも私たちは知らない味付けなので」

「そうなの。別に構わないんだけど、一部のものはこの辺でとれるものを使っているから、同じとなると難しいかも。数が必要なの?」

「できればあると嬉しいですが、自然のものなので分けてもらえれば。もし、育てられるなら育ててもいいですし」

「そうなのね。持ち出しに関しては長老様に相談になるけど、そこの小屋のところで育てるならいいんじゃないかしら?」

「でも、管理とかエミリーたちできないけど、勝手に育つの?」

「それぐらいだったら、カリンとかにやらせるわ。その代わり…」

「その代わり?」

「さっきもチーズ?だったわね。おいしいものを届けて欲しいの。私たちにも何かないとみんなも納得しないでしょうし」

「それはそうですね。こちらに来るときに持ってくるようにします。エミリー、この村でも作れそうなのとか分かるかしら?」

「まあ、簡単なものならいくつかは。ちょっと回り見て似たようなのがないか確認したら、しばらくはそれを持ってこれるかな」

「なら、交渉成立ね。ああ、まだ見ぬ食材が手に入るなんて夢のようだわ」

「そう言えば、ちくわのこと聞きました?」

「ちくわ?そんな名前のものをだれか話してたわね」

昼にあった出来事を話し、どういったものかを説明する。

「ええっ、すりつぶして作るのね。実は魚ってすぐに傷むからあまり捕ってこなかったの。冷やしたり、焼いたりすれば少しはもつでしょうし、今後はもっと活用しましょう」

「そうそう、塩を振るだけでもおいしいし、いろいろできるんだよ」

「塩はね貴重だからそんなに使えないのよ」

とても残念そうに言うサーリさん。確かに海のないこの地方では岩塩を探すしか入手方法がないのだろう。

「塩なら作り方が確立されてるので、今度持ってきますよ」

「本当?ここでもできる?」

「ここではちょっと難しいですね。海といって川や池よりはるかに大きい場所の水が塩を含んでいるんです」

「海ね。聞いたことはあるけど、この辺じゃ無理なのね」

「でも、王都だとそんなに高くないし、結構持ってこれるよね?」

「そうね。リライアにいって売り上げの一部をこの村の資金にして、そこから買うようにしましょう」

「ぜひ、お願いします。みんな喜びますよ~」

「でも、塩の取りすぎは注意してくださいね。体を壊しますから」

「そうなの?この辺だと量が取れないからそんなことなかったから」

塩分の取りすぎで困ることがないというのはある意味うらやましいけど、急に取りだして体調を壊さないようにしてもらわないと。

「それじゃあ、長老様の許しがもらえたら明日からやりましょうか?」

「ほんと!じゃあ、明日の夕ご飯のちょっと前からお願いします!」

「エミリーったら張り切っちゃって」

「だって、お肉とかについてるの本当においしいんだよ。はやく作りたいなぁ」

新しい料理のレパートリーが増えると喜ぶエミリーの横で、知らない食材に思いを馳せるサーリさん。これはリライアにいいお土産を渡せそうだ。夕食を終えて小屋に戻ってきた私たちはリビングで改めて、今後の予定を話す。

「カークスたちには申し訳ないけど、飛竜の目の浄化は数日かかりそうだわ。目には障壁があって破るのにも魔力を使うの」

「そうか。具体的には分かるか?」

「全く。今日一日で障壁が一切弱まらなかったから、お手上げね」

「一切って、エミリーとティアでやったんだよね?」

「セイラちゃんにも手伝ってもらったけどね」

「それで、進展はあまりなしか」

「そうそう。頑張って浄化魔法使ったのに、障壁がずっと押し返そうとしてくるんだよね」

「こっちで何かできることはないか?」

「カークスにも手伝ってもらいたいのはやまやまだけど、浄化以外の魔法を使って何か影響が出ても困るしね」

「たしかにね~。魔光玉っていったら魔法職のあこがれだよね」

「使うにせよ売るにせよ、かなりの一品なのは確かだ。しょうがないな」

「そういう訳で、数日の間することがないか考えてもらえる?」

「とはいってもな。キルドは何かあるか?」

「昼間言ってた食材とかの件はどうなったの?」

「長老様に聞いてみて許可が出れば、ここで育てるなり、作って持って行っても大丈夫だろうって」

「なら、僕はその植物とかの場所とかを大丈夫だったら教えてもらおうかな。ここに地図として作って、迷わずに取りに行けるようにね」

「それなら私も手伝えそうだな。一緒に行こう」

「俺も行こうか?」

「カークスまで来ちゃったら不味いでしょ」

「流石にここがもぬけの殻というのもな」

「じゃあ、カークスは申し訳ないけど、この小屋周辺の植物とかを調べてもらうか子供たちの相手をしてあげてね」

「それなら、ティアたちの方がいいだろう?」

「私たちは魔力を使っちゃうし、実は一人だけ水の魔法使える子がいるのよね。私たちは見たことないけどあなたも魔法使えるわよね?」

「たしかに少しは使えるが、そんなに強力なものは使えんぞ」

「みんなに教えるくらいでいいのよ。初心者ばっかりだから問題ないでしょ。できれば土魔法で標的でも作ってくれればありがたいのだけど」

「まあ、それくらいならできるとは思うが…」

「きまり~。明日カリンちゃんに行っとくね」

「お、おい。いつもするわけじゃないぞ。」

「分かってるって!2日に1度って言っとくから」

「本当だろうな…」

「錆びつかない程度に、使っておくことも重要だろう。けん制位なら使えるだろうカークス」

「そう言われると耳が痛いな」

「なら、決まりだね。目的ができてよかったよ」

「じゃあ、とりあえず明日は午前中は畑でも作りましょうか」

「まだ、許可は出ていないだろう?」

「そうだけど、無理でもこっちに種とか持ってくるんだから、無駄にはならないでしょ」

「でも、道具ないよ?」

「木を削って何とかならないかしら?」

「魔法を使えば何とかなるだろうが…」

「使っちゃうとまずいかな」

「カークスがやれば?土魔法で木を起こせば何とかなるんじゃない?」

「む、そうだな」

「なら、どこまでできるか判らないけどやりましょうか。必要な道具は今度持ってくるようにしましょう」

「そうだね。じゃあ、今日はもうお開きってことで」

「お前たちも魔力を使って疲れているだろう」

「そうね。じゃあ、みんなお休みなさい」

「おやすみ~」

「お休み」

みんなと別れて2人で寝室へ向かう。私は日課の日記を書く。エミリーはベッドに座ってそれを待ってくれている。5分ほどで書き終わり私たちはベッドで寝る。

「待っててもらって悪いわね」

「どういたしまして」

笑顔で答えてくれるエミリーに私も笑顔を返す。

「じゃあ、明日も早いしおやすみなさいエミリー」

「おやすみ、ティア」

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