少女勇者、女神の依頼はお断り

弓立歩

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物語の始まり

交渉

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商人さんの前にどんどん持ってきたものを並べる。

「これは熊さんの毛皮。こっちは大鹿さんの角です」

「おおっ!? バーサーカーベアーだけでなく、パワーホーンディアの角まで! 立派ですなぁ」

「でも、この形だと使い道がなくて…」

「まあ、ほとんどの場合は飾りに使いますから。他には何がありますか?」

「他は…ああそうだ! これって売れますか?」

私はついでに入れてきた火と水の杖を見せる。

「う~ん、これはあまり形がよくないですね。妖精さんが?」

「はい! 一応、魔力が通っているんですけど…」

「ふぅ~む。水の方を使わせてもらってもいいですかな? 私は水魔法なら使えまして」

「いいですよ。どうぞ!」

トレントは数体狩ったから、まだ木はある。ここで何かになればラッキーだ。

「では…アクア」

バシャーン

「こ、これは…!」

「どうですか?」

「うう~ん、正直難しいですな」

「どうしてですか?」

感触は良かったと思ったのに。

「私の魔力は知れているのですが、それでもかなり増幅されました。他の物を買い取っては予算が…」

「うう~ん、そうですか」

残念だ。いっぱい持ってても邪魔になるし、私が保管できる量にも限界があるのにな…そうだ!

「じゃあ、それを代わりに売ってきてもらえませんか?それなら、一部を手間賃でお渡しします」

「そ、それは構いませんが、お支払いは?」

「あ、えっと、お金はいらないので調味料分を交換して残りでマジックバッグを買うことってできますか?」

「それはできるとは思いますが、買い手次第ですのでマジックバッグの大きさが変わってしまいますよ」

「いいです。ちょっと保管するのに不便でしたから」

「そういうことでしたら。こちらの二本ですね」

「はいっ! それで、こっちの分で調味料と交換して欲しいんですけど」

私はもう一度、熊さんの毛皮を見せる。

「もちろんです。ですが、それではうちが儲けすぎてしまいますので、まずは調味料だけ先にお渡ししておきますね。いかほど御入りでしょうか?」

「うう~ん、塩はたくさん! 他にもコショウと砂糖があれば欲しいです」

「それぐらいならお安い御用です。他には必要なものはありませんか?」

「他ですか?うう~ん、何かあったかな?」

わぅ

「えっ!? 服? そうですね、服ってあります?」

「ございます。ついでに街の帰りに何点か持ってきます。いらないものは回収しますので気軽に選んでください」

「わっ!? お願いします」

今まで服といえばその場で貰ってたから、選ぶなんていつ振りだろう?

「それにしても、そちらは従魔ですかな? とてもよく躾されていますね」

「リキラですか? この子はお友達で同居人ですよ。だから、ご飯も一緒に食べてるんです」

「そうでしたか。では必要なものを置いていきますね。足りないものがあれば言って下さい」

商人さんに調味料をどんどん出してもらう。塩に至ってはただの塊じゃなくて、数か所の地方で取れたものをミックスした塩だって! いいなぁ~。期待が膨らんじゃうよ。切れる前に補充出来たらって思ってただけだったからね。

「さて、塩のストックはこれでいいし、他の調味料も良し!ナイフとかは牙で作れるし他に必要なものがあったかなぁ」

わぅわぅ

「えっ!? 街の食べ物? そっか~、リキラってそういうの食べたことないもんね。商人さん、街で買える保存が効きそうな食べ物もお願いしていいですか?」

「分かりました。そちらのウルフ種も食べられるようなものを選んできます」

「お願いしますね!」

商人さんには色々なことを頼んで苦労をかけるけど滅多にない機会だし、頑張ってもらわないと!

「では、五日後にはまた来ますので」

「その時はまた一人になるか、ここに置いて行ってくれればいいですから」

「はい。承知しました」

商人さんとはここで別れる。


「さあ、もらったものを置いてきたら元々の目的を果たさないとね」

私はリキラを連れて一度洞窟に戻ると再び大鹿さんを探しに森へと出かける。

「とはいっても、もう今日は出ないかなぁ?」

さっき戦闘の気配をたっぷり出してしまったし、もう気づいて住処に戻ってしまった可能性が高い。

「でも、可能性はあるし一応見て回ってと…」

せっかく塩を入手したことだし、それに合わせる食材も欲しい。

わぅ

「ん? この先に何かいるって?」

リキラの言う通りにちょっと先に進んでみる。その先には…。

「うさぎさんかぁ。ちょっと小さいけどしょうがないか」

たまに見かけるうさぎさんがいた。倒すのも簡単なんだけど、可食部があまり多くないので普段はご遠慮させてもらっている。まあ、皮は手袋にちょうどいいから重宝するけどね。

「そ~っと…アクアランス」

シュッ

放った魔法がうさぎさんの体を貫く。

「ようし、これで一体確保。さすがにこれじゃあ足りないからもう一体は欲しいなぁ」

ちらりと横のリキラを見る。まだ子どもの狼だけど、それなりに体は大きいし一体なら丸々食べちゃうだろう。ここは追加で探さないと。

「ここにいるってことは近くにまだいるかもしれない。ちょっと、探知をかけて行こう」

私は集中して水の魔力をサーッと広げていく。これで物体に当たるとその魔力のゆがみで形が分かるのだ。ただし、ちょっとでも強いと魔物に気づかれちゃうけどね。

「いたっ! この奥だ…慎重に行かないと私のお肉がなくなっちゃう」

リキラだけじゃなく私だって今日の夕飯を楽しみにしている。なんてったってしばらく調味料の心配もしなくていいしね!

ガサッ

「遅いっ!アクアランス」

ドスッ

「あっ、ちょっと力入っちゃった」

肉のことを考えていたらつい力が入ってしまった。

「まあ無事に仕留められたしいいか。皮はちょっと穴が大きく空いたけど、これぐらいなら私には問題ないし」

また今度時間がある時にでも手袋にしよう。

「あ~、糸と針も頼めばよかった。ああいうの持ってる商人さんって少ないんだよね。服は製品を交換してもらうし忘れてたなぁ。他に作るって言ったら、マントみたいな毛皮のコートとかだしね」

わぅ

「また持って来てって言えばいいって? そうだなぁ~。でも何回も来てもらうのってちょっと悪くないかなぁ?」

わぅわぅ

助けてやったんだからいいだろうというリキラ。ん~、一応今度言うだけは言ってみようかな。

「それじゃあ、うさぎさんを回収してと…あとは近くの薬草でも探そう」

まだ日が暮れるまで時間があるので私は森に生えている薬草を探していく。今でもたまに体調不良になることもあるし、色々な組み合わせを試せる上に時間も使えるのでため込んでいる。

「これも瓶がもっとあれば分別が簡単になるなぁ。やっぱり、落ち着いて話をすればよかった。リキラの言う通りもう一度来てもらうことにしよう!」

そう決心して私は薬草を回収すると洞窟へと引き返したのだった。



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