悪役令嬢の断罪イベント【完結済】

弓立歩

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お馬鹿!それ以上言うんじゃない!

「お前!今何と言った?」

おい、お前は親の出自も知らんのか?今の皇帝陛下の父親は側妃様の子で、金遣いの荒かった先代の尻拭いとして、かなりの金銭を皇宮から捻出し、自らも視察を繰り返して多くの政策を実らせた名君だぞ。国が立ち直りかけた頃には無理がたたって、ベッドの上で執務しながら亡くなられた程だ。

体調の変化が急すぎて現陛下も引き継ぎに忙しく、未だに自分がしっかりしていればもう少し長く生きられたと後悔なさっておられるのに。大体、国中を挙げて国葬が行われた程なんだけど。もちろんお金がかからないよう本人の希望にも配慮して。自分の家のことも知らんとは家庭教師に何教わってたんだ?

「ですから…その…」

「わが父の身の上を知った上で言っておるのか?もうよい!新たに沙汰を出すからそれまで頭を冷やしておけ」

陛下が首を振ると後ろの近衛兵が殿下を連れていく。

「そんな父上、お待ちください。ええい放せ!お前たちは皇族を守るためにいるのだろう」

あんた今、廃嫡されたけどね。あと、陛下、妃様、皇子の順だからお前の命令なんぞ聞く訳ない。

「あの、えっと…」

事態に取り残されたアルマナが所在無さげにしている。まあ、ちょっとの差かなこれは。

「お前にはその書類の件で聞くことがある」

アルマナも続いて近衛に連れていかれそうになる。

「そ、そんな。こんなはずじゃあ。お姉さま!」

「2人がかりで1人を嵌めようとしたなんて、スマートではありませんわ」

私はここぞとばかりにゲームで断罪される時に主人公が言うセリフをアルマナに聞こえるように言ってやる。

「あ、あなた!」

「こっちだって必死だったの。あなたが歩み寄りさえすればこんなことにはならなかったのよ?」

私はこの子と話したことは数度しかない。でも、この子はそれに気づくべきだったのだ。本来のシナリオ通りならば、無理やりにでも私は部屋に押しかけあれやこれやと嫌がらせをする令嬢だったのだ。自分の行動だけでそう簡単に人は変わらないことを彼女は知っていたはずなのに。

「バカ息子が迷惑をかけたな」

「陛下にそういって頂けただけで私は救われます。それにあの子も家で暮らさなければ、もう少しまともになっていたでしょう…」

「うむ。そうそう、後日この前の外交の件で登城してもらうからな」

「はい」

「皆の者!騒がせたようだが、これより卒業式を執り行う」

陛下の一言で式がつつがなく始まる。最も通例だった卒業生の送辞は殿下担当の為、やや変則的だったが。


「お疲れ様フィアナ」

「あら、レギオン殿下。ありがとうございます。ですが、私はこれからのんびりさせて頂きますので。殿下こそ兄君に変わり後継者となられたのですからこれから大変ですわよ」

「その点については指南役を見つけてあるから大丈夫さ」

「お手が早いのですね。それでは本日は失礼させていただきます」

「ああ。またね」


殿下と別れた私は家に帰る。面倒なことだが家に帰るとお母様に今日あったことを簡単に説明する。

「まあ、あいつがとうとう消えてくれたのね。さすがはフィアナ。この調子でレギオン殿下の妃になるべく動きなさい!」

「しかし、今回のことで陛下も直接相手を決められるのでは?」

「まだ決まったわけではないでしょう?この侯爵家をさらに押し上げるのです」

そんなこと言ってもお母様は侯爵家をどうするのだろう?妹があれでは婿を貰うしかない訳だが、分家から養子でも取る算段なのか?この人たちのすることは本当によくわからない。

バンッ

「フィアナ!お前はよくも!」

「あら、あなた。残念でしたわね。所詮、あの女の子供の浅知恵ではどうにもならなかったようですわね」

「お前たちは~!」

お父様は私とお母様をまとめるのをよして欲しい。私はあくまで身を守っただけで、あとはあの子の行いが出ただけだ。

「なせ、止めなかったのだ!あんなにやさしい子が金庫の書類など持ち出せるものか!」

お父様も見た目だけに騙されちゃって。この分だとあの子の母親も同類なのかしら。それにあの子が金庫の開け方を知っていたのはゲームの攻略に必須だから。あれを知らないと即ゲームオーバーなのよ。まあ、毎回金庫の数字は固定だから覚えていれば簡単なんだけど。

「じゃあ、お父様は邸の使用人を疑うとでもいうのですか?この侯爵家にはそのような者はおりませんが?」

「なぜそう言えるのだ!それ以外にあの子が知りえるはずもないだろう」

あ~あ、言っちゃった。私、知らないよ。侯爵家で給金は良いとはいえ、これ以上環境悪くなったら皆辞めてっちゃうよ。ただでさえお母様は暴れるわ、お父様は愛人宅に入り浸ってるか知らないけど、留守で領地も荒れ始めてて大変なのに。この上、優秀な執事と侍女を失ったらいくらうちでも没落まっしぐらだ。

「お父様、そのように言っては失礼ですわ。皆様いつもよくしてくれています」

「お嬢様…」

「何がだ!どうせお前だけにだろう。あの子に…アルマナにはろくに何もしておらんのだろう」

そりゃあ仕事とはいえ、今やあの子も汚す壊す当たる。ここに加えて礼の一つも言うところ見たことないからね。これはお母様やお父様も変わらないけど。前世持ちだからじゃないけど、もう少し大事にしてあげないと。家から人が消えたら、私もいよいよ家財道具を持って、おじさんの領地に住まわせてもらおう。正直、この家は空気悪いし。

「とにかく明日はお前にも登城の話が出ている。そこできちんと言いなさい」

「はい」

本当にめんどくさい人たちだ。私は部屋に戻って着替える。着替えるのは侍女がやってくれるがここはとっても楽なワンピースだ。どうせお父様たちはこの時間に部屋へ来ることもないし問題ない。

「いつもごめんなさい、あんな親で…」

「お嬢様は悪くありませんわ。アルマナ様もしばらく戻らないということですし、大丈夫でしょう」

「そうだといいんだけど…。そうそう、いつも通り食事は部屋で取るから持ってきて頂戴」

「はい」

できる侍女と執事たちも何とか待遇の改善をしてあげたいけど、私の権限ではできないしなぁ。


「用意はできたか?」

「少しお待ちください。今結い終わりますので」

「全く、登城が分かっておるのにのんびりしおって。お前たちもちゃんと仕事をせんか!」

「申し訳ございません」

いやいや、この事態はのんびり寝てたあなたのせいなんですけどね。しかも、朝食に文句言って作り直しの時間があったせいで着替えの時間削られたんだから。

「それでは行ってきます」

「「いってらっしゃいませお嬢様」」

私はみんなに見送られながら馬車に乗る。城までは10分ぐらいだ。侯爵家なのに公爵家よりも城に近いのはどうだろう?城に到着するとお父様とは別れ別室待機に。時間が来たらお呼びしますと言って侍女も下がっていった。

「こんにちはフィアナ」

「あらレギオン殿下。今日は出席なさいますの?」

「後継者指名された以上はね。今日はその簡単なお披露目さ」

「じゃあ、私はどうして呼ばれたのでしょう?何か知っておられますか?」

「知らないよ。まあ、ちょっとだけ分かるかも」

「そうなんですの。まあ、待つことにいたします」

「本当にフィアナは大人だね。母上も気に入るはずだよ」

「側妃様がですか?お会いしたことは余りありませんが…」

「違う違う、正妃様だよ。よく話を聞いていたから」

「変なお話でなければ良いのですけれど…」

「ああ、図書館に入りたいとごねてたこととか?あれは面白かったよ」

「あ、あれはその…仕方なくです」

隣国との関係を良くしようと言葉を覚えるのにどうしても本を借りたかったので、子供のおねだりを発動したのだ。やがて皇妃になるために有用かもと思った末の行動だったが、私がわがままを言ったことが気に入ったらしく、すんなり認められたのだった。

「まあ、使えるものは全部使うフィアナらしいね」

「そこまではしませんわ…多分」

ガチャリ

「お二人とも時間ですので袖口までお願いいたします」

侍女に言われて進んでいく。ここはどうやら玉座の間の中段らしい。下段は諸侯が居並び、中段は表彰などで使われる。上段が玉座となっている。

「それでは知ってはいると思うが、これから新しく後継者となったレギオンを諸君らに紹介する」

パチパチパチ

拍手とともにレギオン殿下が中段の中央に行かれる。きりっとしてとても年下とは思えない。

「ただいま陛下よりご紹介にあずかりました第2皇子のレギオンです。皆様にはこれからよろしくお願いしたします」

おおぉっーと諸侯からも声が上がる。みんな第1皇子との差に安心しているようでもある。

「続いて前回の隣国との協定において功のあったものを表彰したいと思う。フィアナ=レディーン!」

「はい!」

緊張しながらも陛下の方を向いて淑女の礼をする。すぐさま諸侯にも礼をして陛下に向き直る。

「うむ。此度の外交における働き見事であった。かの国とは戦の記憶もあり、以前より交渉が難航していたところをうまくまとめたことは非常に喜ばしい。よって、褒美としてファルディ伯爵の位を授けるものとする」

ザワザワ

諸侯がみな声を出している。私も心の中では驚きっぱなしだ。夫が死んでしばらく代行という形で夫人が位を一時的に継ぐことはあったが、今回のように爵位を与えるということは初めてのはずだ。よく見ると宰相閣下もびっくりしている。打ち合わせになかったのだろうか?

「陛下、恐れながらそのような前例にないことを…それにその娘はまだ学生です」

もっと、もっと言ってあげて!流石に予想外すぎてついていけない。

「ふむ、だが隣国の伯爵と話をしたが、中々に領地のことも話ができると感心していたぞ?」

「それに、その…侯爵家は…」

そう続けて発言したのはうちの侯爵家とあまり仲の良くない侯爵だ。うちが今でも権力握ってるのが気に食わないんだろうな。

「レディーンの元に権力が集まるといいたいのだろう?ガイデル侯爵」

「恐れながら…」

「ふん。我が家の功績をもってしただけのことだ!」

お父様は何を威張ってるのかしら。この件には関わっていないのに。うちは内務で力を持っていて、外交は担当外でしょう。

「その件は問題ない。…これより学園での卒業式に起きた件の沙汰を伝える。第1皇子エディールを廃嫡。リーベル男爵領の町はずれに幽閉。アルマナもそこに幽閉する。そして、レディーン侯爵は此度の騒ぎの責任と外交機密文書の管理不行き届きをもって、子爵へと爵位を落とすこととなる。新たな領地はこれより渡す書類にて通達する」

騎士がお父様のもとに書類を持っていく。それを開いたお父様は愕然としている。というか殿下は伯爵家からさりげなく男爵家の町はずれに居住地が変わってる。よほどいらないことをあれからも言ったのだろう。

「これは!このような山々のみの土地ではやっていけませぬ。それに隣国から皇都までの肥沃な土地はすべて娘のフィアナのものと書かれております。どうか陛下、ご再考を!」

「愚かな娘と同じ道を辿りたいなら構わぬぞ。邸にも帰らず、領地も顧みぬお前には過ぎた土地だと思うがな?」

「そ、それは…」

「わかったらさっさと引っ越しの準備でもするのだな。皇都のあのような土地に子爵の身でよもや居座ろうとは思うまいな?」

「は、はは~直ちに用意いたします」

去っていこうとするお父様に陛下が声をかける。

「そうそう、使用人は一度辞めさせておくのだぞ」

「な、なぜでしょうか?」

「伯爵家と子爵家のどちらで今後働きたいか選ばさせねばならぬであろう。そうだな…見届け人としてファーリス公爵、そなたがついてゆくがよい」

「御心のままに」

あらら、不正嫌いのファーリス公爵じゃ、お父様もどうしようもないわね。私もレギオン殿下に手を引かれて一旦、控室に戻る。


「さて、残った諸侯らにはまだ伝えることがある。ファルディ伯爵であるが、これまで厳しい皇妃教育に耐えてきた。しかし、此度の件でそれもなくなり、また一から婚約者を探さねばならぬ。しかも、今後は領地運営に関わるのであれば探す時間もないであろう。そこでだ、新たに後継者となるレギオンの婚約者にしようと思うのだがどうだろうか?」

「たしかに、フィアナ嬢は皇妃の教育を受けておりますが、此度の件にも関わりがあるのでは?」

「確かに無縁とは言わんがあのような家で育ちながらも、並外れた才覚をもっているのだ。頼りにはなるであろう」

「しかし、領地の経営も未知数でありますゆえ、時期尚早では?」

「…ふむ。ならば4年後。高等部を卒業する年齢でかのものが十分な成果を上げていたら問題はないな?」

「陛下がそうおっしゃるのであれば我ら一同、異論はございません」

そういうと諸侯らは帰っていった。自分の娘を押したい家もあるだろうが、フィアナを知っていてはそうそう勝てる見込みも少ない。自ら失敗するのであればというところだろう。他言無用と伝えたし、これで問題はない。

「陛下。うまくいきましたわね」

「ああ、それでは未来の皇妃に挨拶をせんとな」


部屋で少し待っていると陛下と皇妃様が入ってこられた。

「父上、何か話が続いていたのですか?」

「ああ、フィアナ嬢をそのまま皇妃候補としてはどうかなとな」

「ええっ!?」

もうあんな思いはこりごりだ。何とかして防がなければ…。

「そうですわ!フィアナにはバカ息子が迷惑を掛けましたし、ここ数年…そうですわね、4年ぐらいできちんとした領地の経営ができれば何か願いをかなえてあげてはどうでしょう?」

それだ!頑張って領地経営にいそしめば、結婚相手から外してもらえるかも。いや、これしかもうない!あれだけのいい土地があればきっと簡単にできるだろう。

「で、では差し出がましいのですがお願いしてもよろしいでしょうか?」

「構わん。だが、私にもできんことはある。先約がある場合はできぬからな」

「もちろん大丈夫です。きっと、問題ありませんわ!」

「でも、この子もいきなり後継者でしょう?一応、今は婚約者候補としてたまに会いに来てもらえないかしら?きっと通じるものもあると思うの」

「皇妃様が言われるのであれば…よろしくお願いしますね、レギオン殿下」

「ああ、これからもよろしく頼むフィアナ!」

まばゆいレギオン様の笑顔が目に染みる。皇族でなければなぁ。まあ、このイケメン男子の成長を見守れると思えば悪くないわね。そんな間抜けなことを考えていた私をしばき上げたいと4年後の私は思うのだった。




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あれからもう4年かぁ。邸は私のものになり、お父様たちは貴族街の端に家を構えている。この前はとうとう怒鳴り声がうるさいと領地で過ごすように沙汰が出てたっけ。執事長から伝え聞いた話ではあれ以来、お母様は鬼の首を取ったように自慢げに話し、それにつかみかかる勢いでお父様は対抗しているらしい。愛人とは信じていたのに娘があんなことになってと愛想をつかされたようだ。そんな暇があるなら後継者を決めて欲しいんだけどな。

「そろそろ分家の方が勝手に決めて送ってきそうよね~」

「お嬢様またそんな恰好で!」

「いいじゃないの。どうせこのうちには殿下しか来ないわよ~」

私はといえばあれ以来、領地経営に勤しんでいる。皇都と領地を往復するが、基本は領地にいる。その所為か夜会も必要最低限。男性からの声掛けもないに等しい。あるといってもうちの商会を通した取引や領地経営のことばかり。日常会話なんてレギオン殿下とアルスター殿下としかした記憶がないわ。

「殿下方が来られるから問題なのです。お嬢様も立派な淑女なのですよ!」

「そうはいってもお姉ちゃん心配だよ~。年々色気づく殿下にまだ婚約者が出来ないなんて」

「それは光栄だけど、さすがにその恰好はどうかと思うよフィアナ」

「で、殿下!どこから?」

「普通に入ったよ。それより明日は城に呼ばれてるでしょ?きちんとした格好で来てよ」

「もちろんですよ。あの日から4年間。私は頑張ってきたんですから」

「本当にすごいよフィアナは。収益がほぼ倍増するなんてね」

「この土地があればこそですよ。肥沃な土地と素晴らしい領民たちがいれば誰でも出来ます」

「誰でもねぇ…。それより願い事は決まってるの?」

「ひゃっ!」

急に顔を近づけてきたレギオン殿下にびっくりする。最近ちょっとこういうことをしてきて、ドキドキするからやめて欲しい。器量よし顔よしの殿下にのぞき込まれたらみんなこうなるだろう。

「ね、願い事は決まってますけど…秘密です」

「そう。かなうといいね」

「きっと陛下ならかなえてくださいますわ!」

「どうだかね」

意味深につぶやく殿下をしり目に私は大丈夫と侍女の入れてくれたお茶を飲んだ。そして、当日―――。


「これより、叙勲の儀を執り行う。ファルディ伯爵前へ」

宰相閣下の言葉で私は前に出る。

「ファルディ伯爵。これまでの4年間のそなたの働き、実に見事であった。狭くなった領地の収益が倍増するとは余も満足のいく結果だ」

「いえ、これも陛下の采配と領民たちの素晴らしい行いによるものです」

「うむ、変わらずの姿勢うれしく思う。さて、そなたには領地の経営について約束があったこと覚えておるか?」

「はい」

よっしゃ~きたきた~

「4年間の間に十分な成果を上げれば願いをかなえるというものだったな」

「はい。それで…」

「それとは別に私たちからもここまでの功績をあげた新たな伯爵には、別に褒美をやろうと思ってな。宰相よ、あの日のことを覚えておるか」

「もちろんです」

おや?何か変な流れに…。

「諸侯らも覚えておるであろう。この4年間の間にファルディ伯爵が十分な成果を上げたのであれば、レギオンとの婚約を認めると!」

「はっ。我ら諸侯一同、此度の伯爵の働きには感服いたしました」

ええ~、なんで!私との約束は?『先約がある場合はできぬからな』ってこういうことなの。そんなぁ~。

「さて、ファルディ伯爵。私との約束はどうかな?何か欲しいものはあるか?」

「と、特には…」

今欲しいものが消えたんですけど。それ以外のものは要らないよ~。

「なんと欲のない娘よ。これからも国の為、そして皇子の為にその力を尽くしてもらいたい」

「はっ!」

諸侯らは私を残して帰っていく。私はといえばその場に残るように言われている。もうこうなったらレギオン殿下に頼むしかない!じーーー。

「ど、どうしたんだフィアナ」

「いいえ、あと頼れるのは殿下しかいないので…」

「ごめんなさいフィアナ。あなた以外でこの国を任せられそうな令嬢が見つからなかったものですから」

「でも、皇妃様たちは4年も前から考えてたんですよね?」

「そういうな。知識も器量もお前以上のものはおらんのだ。それにこれはレギオンの意志でもあるのだ」

「殿下の?」

レギオン殿下の方に目を向けるとちょっと顔が赤くなってるように見える。

「俺では不満か?」

「い、いえ。不満とかはないですけど、私って夜会で見向きもされてませんし…」

「そんなことを気にしていたのか。皇帝の婚約者になるかもしれない女性にみんな近寄り難かっただけだ」

「そうそう、兄上はずっと昔からおねえちゃんのことが好きだったんだよ。ぼくも協力しておねえちゃんって呼んでたのにさ」

「こ、こらアルスター!」

アルスター殿下が私をおねえちゃんって呼ぶのってお義姉ちゃんだったんだ。

「そ、それでどうだ。返事は?」

「あの場で言われたのですわ。拒否できる訳ありません」

「そうだな、すまない…」

「…その代わりたくさん愛してくださいね。私、愛には飢えてますから」

「ああ、絶対幸せにする」

「それと殿下はまだ、一年間学園生活が残ってるでしょう?つまらない女にひっかからないようにしてくださいね」

「もちろん、もちろんだ!ありがとうフィアナ…」

「レギオン殿下…」

レギオン殿下と私の距離が縮まっていく。

「…今日が初めてですわね」

「ああ…」

「続きは部屋でやってくれぬかのぅ~」

「アルスターにはまだ早いかしらね~」

「はっ!いえ!これは!」

「父上、母上も!」

「よい、積もる思いもあるだろう。だがまだお互いやることもあるだろうし、無茶はいかんぞ?」



こうして私の断罪イベントからの日々は終わりを告げました。今となってはこれがゲームの世界だったのか、何だったのかは見当も付きません。ただひとつわかっていることは――――。

「おかあさ~ん、シャル君がいじめる~」

「あらあら~、ファーリス公爵に直接うかがうしかないわね。ガキの教育ぐらいちゃんとしなさいって」

「こら、フィアナ!また口調が崩れてる」

「しょうがないわよ。かわいい娘のためですもの!」

「全く君は変わらないな」

「侍女のライザにも言われましたわ。『何年仕えれば並みになりますか』と、息抜きしてるだけなのに」

「しょうがない。今回は私も行くとしよう。かわいい娘のためだからね」

「親ばか…」

「君もだろうフィアナ?」

笑いながら私たちは馬車に乗り込む。元気のよい公爵子息も乗せて。あの公爵の苦い顔を見れるかと思うとちょっと楽しみだ。問題はこの子が娘を狙ってることね。将来、揉めそうだわ。

「でも、こんな日常を送れるなんて―――」

私はとっても幸せだ。努力したということもあるけれど、彼が…レギオンがそばにいてくれるから…。私は今日もまぶしい日々を過ごしている。

fin.
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