転生特典に魔力をいただきました

弓立歩

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孤児院に着いた僕は事情を神父様に話して、すぐに彼女の治療が行えるようにお願いした。この国では魔法は多くのものが使える。しかし、実用レベルでいうと貴族や一部の平民にしか使えない。治癒となると基本的に教会や貴族の屋敷や王宮勤めが殆どで、なかなかいないのだ。

「大丈夫かヴェイン?」

「父さん…いえ、領主様。この度は申し訳ありませんでした。勝手な真似をしてしまい…」

「事情は道すがらこいつに聞いた。護衛としての意識の問題もある。お前だけを責められぬ」

「しかし、この子が…」

僕はうつむきながら彼女に駆け寄る。

「ケガをしているのか?」

「ワイルドウルフから僕をかばって、今は神父様に消毒をしてもらっています」

「わかった、すぐに治癒が使えるものを呼ぶ。おい、治癒師をよべ!」

「はっ!すぐに」

領主様付きの騎士がすぐに治癒師を呼びに行く。彼女のけがはどのぐらい治るだろうか…。

「お前たち、なぜあのようなところに…」

「ごめんなさい。俺が領主様の馬車が森に行くって聞いて、来年からの冒険者の前哨戦だって…」

「ロイドお前までいながら」

「申し訳ありません。止めるのが役目なのに…ライザが悪い予感がするといっても引き返さず、先に逃げてしまいました」

「神父様そこまでで…」

「うむ…この度は死者が出なかったのが幸いだ。だが、ルークよ。お前の冒険者の道を認めるにはいかない」

「どうしてですか。確かに今回は!」

「今日、ライザが魔法を使ってくれなければお前は死んでいた。そうだろう?」

「うっ」

「ここは孤児院だ。お前が考えていることも分かるつもりだが、せっかくここまで大きくなったお前をみすみす死なせるわけにはいかない。お前には周りを見る力が備わっていない。今のお前では自分以外も危険にさらすだろう」

ダッ

「おい、ルーク!」

「放っておいてあげなさい、ルークも分かっているの。それにケガ人の前ですよ」

「領主様すみません。お見苦しいところを…」

「いやよい。この孤児院はよくやってくれている。それに、その無謀な行動がなければこいつも危なかっただろう。ワイルドウルフは単体ならたやすいが、2体、3体となると集団戦法を使ってくる厄介な敵となる。今回の討伐でも、致命傷はないがケガの大部分は奴らとの戦いだ。十分な装備がなければ即座にやられていただろう」

その時、治癒師のものが部屋に入ってきて彼女の治癒を始める。集中して行えるように僕らは隣の部屋へと移動した。

「それにしてもあの子はどうして孤児院に?魔法持ちの子は優遇措置があるはずでは?」

僕は疑問に思っていたことを聞いてみる。魔力の大きいものは貴重だ。国に申請するなり、貴族の養子にするなりすればよかったのではないか。

「それは…」

神父様が父の方を見て答えにくそうにする。なんだろう?

「気にせずともよい。ヴェインよ、基本的に魔力の測定は7歳からだ。そのあと親元を引き離された場合には戻ろうとする子供も当然いる。そういった時のために元居た家をなくす貴族もいるのだ」

「は?」

一瞬、父が何を言っているのか理解できなかったけれどそれは…。領地にとって一平民の一家と貴重な魔力持ちの価値を天秤にかけるという事だ。

「なので、この子のように生まれつき魔力を持っていると分かった場合は、どこかに捨てられるか売られるしかないのです。おりしもこの子が捨てられたのは3年前、あの時は飢饉でしたので」

「たしかに、魔力持ちの子供なら保護されるし、売れば足も付こう。親としてもつらかったのだろうな」

「そんな…」

「しかし、ワイルドウルフを一撃で倒せるほどの魔力なのか?」

「そ、そうなのですか?魔法も最近習わせ始めたばかりですので…」

「それなら、僕の持って行った本だと思います。時たまライザは魔導書をねだったので…」

「ロイド!あれほど危ないから渡すなと…」

「どうしても見たいっていうので…」

「赤ちゃんなんて久しぶりでしたものね。あんなにかわいがって…」

シスターが言うと僕はチクリと胸が痛む。そんな彼女を傷つけてしまった。僕が来なければ無傷だったかもしれないのに…。

「ヴェインよ、悔やむな。悔やんでも時を戻すことはできない。彼女が目覚めてから次を考えるのだ」

「うん…」

「そういえば神父よ、彼女は魔法が使える様だが申請は?」

「領主様それですが…」

父は神父様に連れられて奥の方で二人で話している。僕も話を聞きたかったけど、そんな雰囲気ではなかった。


「わかった、できる限りのことはしよう」

「ありがとうございます。これでひとまず安心です」

「この度のお詫びといっては何だが、彼女は毎週どこかで邸に来るようしてもらいたい。ヴェインの魔法の授業を共に受けさせよう。その方が安心できるだろう」

「それはそうですが、大丈夫なのですか?」

「問題ない。息子の教育係は妻がやってくれている。外にはもらさん」

「では週末に行かせるようにします」

「うむ、その間は護衛も向かわせよう。ちゃんと目立たぬようにはする」

「お気遣いありがとうございます」

バタン

話が終わりかけたところで、彼女のいた部屋のドアが開いた。

「治療は終わりました。ほぼ、きれいになりましたがこれ以上はおそらく王都の術師でも難しいかと…」

「わかった。疲れているところすまなかった」

「いえ、では失礼します」

治療師はお辞儀をすると外へと向かった。僕たちは彼女の傷を確認するべく部屋へと戻った。

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