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学園生活の始まり

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フェルン様と別れ数日後。私は計画通りに契約を結び、カティ嬢の婚約者と色々話をした。そして、彼の気を引いたのちにカティ嬢を見下す発言を繰り返すことで、彼との仲を取り持ったのである。まあ、仲を取り持ったといっても、彼の方からしてみればいいように遊ばれただけでしょうけど。

カティ嬢には今回の報酬の一部を免除する代わりに、公爵家の身分と私の美貌と知識を使ってできそうなことがあれば紹介するように言ってある。要は私の今後の活動を行うための営業ね。そう、私がこのリスティルとして生まれ変わって思いついたのは、断罪までの時間を悪役令嬢として過ごすことで、その権力や才を使って儲けようというものだ。

「実際断罪されてしまったら、お父様たちにも迷惑をかける訳だし仕方ないわ。最悪、そこで儲けたお金で断罪後も生活できるかもしれないし…」

それにしてもヒロインというのは誰なのかしら?一向に姿を見せないのだけど…。確か話が始まるのは学園生活入学からだから、もう数か月経った今ではそこそこルートが進んでいるはずなのに、私の前に姿を現さないなんて。

「このゲームの悪役は私一人だったと思うんだけど…」

「あの…リスティル」

「あら、ラウル様ではありませんか?どうしました」

「うん、いや。一応僕らは婚約者で同じクラスなんだけど、あまり話をする機会がないなって思ってね」

「そうですか?ですが、ラウル様のような素晴らしい方のお相手はそうそうできませんわ」

本当にラウル様は第2王子ということが功を奏したのか、おごりもなく人の意見を公平に聞くことのできる方だ。ちょっと経済に明るいだけの私には不釣り合いと思うのだけど。大体、婚約も正式には発表されていないものだし。

「そんなことはないよ。そうだ!今度の週末お茶会をしないか?」

「王宮でですか?う~ん、予定を確認いたしますわ」

何かイベントごとは入っていなかったかな?特に…ないみたいだ。

「ないみたいですから、お招きにあずかります」

「嬉しいよ。最近は入学の準備もあって会えてなかったからね」

「そうですわね」

私自身も王子自体は好きなのだけれど、いかんせん断罪の相手だし、立派過ぎてちょっとだけ苦手なのだ。なんていうのかしら?友人が芸能人みたいな感じかしら。勉強も他のことでも頑張っていて、どうしてもちょっと距離が開く感じ?

「さて、それはそうと今日の営業先はと…」

ラウル様と別れた私はすぐさま次の獲物を探す。実は次の目星はもう付けてあるのだ。先日、フェルン様と面倒ごとを起こした子爵令息と婚約している令嬢からだ。彼女はAクラスの子なのだけれど、父親がやり手で嫁ぎ先の領地との取引で、かなりの収入が得られるということで、パイプ作りのために子爵との婚姻を進めた経緯がある。しかし、この息子が大の貴族主義でこのままでは没落しかねないから、貴族というものも俗人だということを見せて欲しいとのこと。

「それで報酬はいかほど?」

「こ、こちらになるのですが…。本当に構わないのでしょうか?」

「ええ、この学園にいる間だけの簡単な仕事みたいなものですから。それに、あなたたちも困っているのでしょう?流石にあなたのお父様の提示された額は素晴らしいですわ」

貴族として侮られることなく、かといって一令嬢に過分にも渡さない素晴らしい金額だ。

「いえ、何とかこの額で…」

「構いませんわ。そうそう、カティ嬢から聞いているかもしれませんが、3か月以内に人を紹介していただけたら一部返金いたしますので、そちらもよろしくお願いいたします」

「それでよろしいのでしょうか?一部といってもかなりの額になりますが…」

「ええ、当然です。こちらは次の顧客が来ますから」

こうして次の獲物に狙いを定めて私は動き出した。


「お嬢様、次は誰の調査ですか?」

「あら早いわね。次はこいつよ」

令嬢から貰ったデータをポンと机の上に投げ捨てる。貰ったデータは簡単に集められる情報で、すでに知っているものばかりだ。彼女としても親の言いつけで嫁ぐだけなのだから、普段から積極的に会っている訳ではないのだろう。

「こちらでしたら、子爵自体が頭をかかえているとのことですね」

「なら、私が依頼の令嬢と仲良くしているとでも言って、ちょっと遊びに行こうかしら?」

「あとで面倒になる可能性もございますので止めておきましょう。こちらで手配します」

「わかったわ。それじゃ頼んだわよ」

彼女の報告が来る前にとりあえずどのように出会うかを考えないと。彼と私の双方の評価はどちらもマイナスだ。彼からすれば平民を評価する公爵令嬢、私からすれば平民でも優れた人物の価値を測れない貴族だ。

「ここから親しくするって言うのもなんだかね…。う~ん、ここはフェルン様にも関係者になってもらいましょう」

学園生活をしっかりと邪魔が入らないように終えられるか、耐えてどこかの省庁や商家に入った時に楽をするかで聞いてみましょうか。

「そうと決まれば今夜はお休み。ほんとに簡単に寝られるこの体がうらやましいわ。前世に欲しかったな」


「おはようございます」

「おはようございます」

クラスメイトの方々とあいさつをする。ちょうど私の後にフェルン様が入ってこられたので話をする。

「フェルン様、放課後少しよろしいかしら?」

「構いませんが何か?」

「ああ、その時になったら話しますので…」

そう言って席に着く。流石に仮でも婚約者がいる身で長々と話をする訳にもいかない。

「おはようございます、リスティル様」

「あら、おはよう。エミリー様」

「私など呼び捨てで結構ですのに…」

「それではフェルン様たちが妬いてしまいますわ。エミリー様だけが特別だって」

「えっ!?」

びっくりしたようにエミリー様が顔を赤らめる。何か言ったかな?

「そ、それよりもこの問題判りまして?」

「ああ、それでしたらここの問題からの発展形ですわ。ここをこうすればよろしいかと」

「なるほど!さすがです」

「いいえ、私は家に書庫がありましたので、調べ物もすぐでしたから。そうですわね…こちらの図書館は貴族向けと平民向けに分かれておりますが、一定以上の教養をお持ちの方は解放できるようにお願いしておきますわ」

「そんなとんでもない…」

「いいえ。この先、学ぶすべての方のためになることですからお気になさらず」

流石にBクラスやCクラスの方にまで解放されると、ろくでもない思想が出てしまうかもしれないし、彼らには今の図書館でも不便はないだろう。Aクラス以上への開放は私のお願いの時点で半分強制だからすぐに認可されるはず。王族や公爵家が入園するたびに補助金がもらえるからね。こういう要望は在学中だけでも無理が効くのだ。

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みんなの感想(1件)

popurabon
2022.02.07 popurabon

できるなら続きが読みたいです。

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