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本編
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馬車に揺られること10分、目的地に着いたようだ。子爵家はやや郊外寄りにあり、レイノル様の邸はさすが王宮警備隊だけあって、王都や学園に近い位置にある。しかも、思っていたよりも大きなお邸だ。別の騎士爵の家を見たことはあるが、もう少し小さかったと思う。馬車から降りると家の前には男性が一人立っていた。
「ようこそいらっしゃいました。私はこの家の執事をしておりますロイと申します。本日より、よろしくお願い致します」
「私はティアナ=レーガンです。こちらこそこれからご迷惑と思いますがよろしくお願いいたしますわ」
私は貴族令嬢らしくきちんとした挨拶をする。おてんば姫とは言われているが別に粗暴ではないのだ。勘違いする人が多いが誤解しないでほしい。それからロイという執事さんは私を邸に案内した後、馬車の荷物を運びこんでくれた。家に入るともう一人の使用人のメイドさんが挨拶をしてくれた。
「私はこの家のメイドでカレンと申します。この邸の使用人は先ほどのロイと私の2人です。これからお嬢様のお世話をさせていただきます。何なりとお申し付けくださいませ」
そういってカレンさんは丁寧なお辞儀をしてくれた。あまりにきれいだったので少し止まってしまった。
「あの…何か?」
「ご、ごめんなさい。私はレーガン子爵家のティアナ=レーガンと申します。こちらこそよろしくお願いします」
使用人相手といえどきちんと礼儀を示すようにとリラにも本にも書かれていたのに失敗してしまったと未熟さを嘆く。まだまだ、私は修行不足のようだ。
「では、お荷物は後程、部屋に運びますのでまずは邸を案内します」
「あ、あのっ!レイノル様は?」
「申し訳ございません。旦那様は現在書類仕事のため出かけております。昼前にはお戻りになられますので」
そうか、まだ会えないんだ。それにしてもレイノル様って旦那様って使用人に呼ばれてるんだ。私も将来、旦那様なんて呼ぶようになるのかな…。そんな姿を想像すると急に恥ずかしくなってしまった。
「どうかなさいましたか?」
「ナンデモアリマセン」
変な想像をしてしまい機械的に返事を返してしまった。それにしても2人であれこれしているとは思えないほど手入れされている。花壇はもとより、厨房や廊下などもきっちり掃除が行き届いており、家と変わらないように見える。
「お二人しかいらっしゃらないと言われましたが、とてもよく手入れされていますね。業者の方でも雇われているのですか?」
気になったのでつい聞いてしまった。
「ありがとうございます。旦那様には申し訳ありませんが、騎士爵はそこまで金銭的に余裕はありませんので、どこの家も基本的には執事とメイドの2人のみです。業者はよほどのことがない限り使いません」
ああ、本当に余計なことを聞いてしまった。すぐにフォローせねば。
「そうでしたか。申し訳ありません。お二方の努力によるものだったのですね。今後ともよろしくお願いいたします」
そういってメイドさんに感謝の意を伝える。その後も中庭や各部屋を案内してもらったところで、私がレイノル様に早く会いたいということもあり、リビングで待つことになった。
…目の前にいるのは誰なのだろうか?私はカレン=フォード。この邸で働き始めて2年になるメイドです。元々は貧乏男爵家の3女でしたが、不作の際に少しでも負担を減らすため、奉公に出ることになりレイノル様に雇っていただいた身だ。旦那様にはろくに家事もできない私を雇っていただきとても感謝しています。そのため、押し付けられた婚約について何とかできないかと思っていたものの、おてんば姫と称される彼女の言動は今のところ全く問題ないどころか、立派な淑女です。会った瞬間はなぜか、ぼーっとされていたようですが、今は何の問題もありません。私はお茶の準備をしながらロイさんに話しかけた。
「私は夢を見ているのでしょうか?とてもおてんば姫と称される様には見えないのですが…」
「お前もか。私にもとても丁寧にあいさつされた。騎士爵の使用人に対してもここまでとは」
「ですよね」
騎士爵は一代限りで、息子が騎士を継がなければ即平民となるため、貴族であって貴族でない微妙な扱いをされることが多い。使用人も基本は平民だ。しかし、今のところお嬢様から高圧的な感じは見受けられない。おてんばというのも間違いではないかという気がする。
「噂とはあてにならないものですね」
「全くだ。まあ、書物も読まれているということだから礼儀には思うところがあるのでしょう」
私はそのような本は読んだことはありませんが、機会があったらお嬢様に見せてもらおうと思いました。
それからお嬢様にお茶を持っていき、しばらくとりとめのない話をしていると、玄関から声がしました。きっと旦那様が戻ってこられたのでしょう。お嬢様の方を見るとロイさんと私の方を交互に見つめている。行きたくて仕方がないのでしょう。なんだか先ほどの令嬢姿との差に笑いをこらえながら話す。
「どうか旦那様を迎えてくださいませ」
「はいっ!」
ビシッと立ち上がったかと思うと小走りに駆けていかれた。鍛えているせいか足音もなくススッと行く姿にとうとう笑いをこらえきれなかった。横を見るとロイさんも同じようだ。
「にぎやかになりそうですね」
「ああ」
「ようこそいらっしゃいました。私はこの家の執事をしておりますロイと申します。本日より、よろしくお願い致します」
「私はティアナ=レーガンです。こちらこそこれからご迷惑と思いますがよろしくお願いいたしますわ」
私は貴族令嬢らしくきちんとした挨拶をする。おてんば姫とは言われているが別に粗暴ではないのだ。勘違いする人が多いが誤解しないでほしい。それからロイという執事さんは私を邸に案内した後、馬車の荷物を運びこんでくれた。家に入るともう一人の使用人のメイドさんが挨拶をしてくれた。
「私はこの家のメイドでカレンと申します。この邸の使用人は先ほどのロイと私の2人です。これからお嬢様のお世話をさせていただきます。何なりとお申し付けくださいませ」
そういってカレンさんは丁寧なお辞儀をしてくれた。あまりにきれいだったので少し止まってしまった。
「あの…何か?」
「ご、ごめんなさい。私はレーガン子爵家のティアナ=レーガンと申します。こちらこそよろしくお願いします」
使用人相手といえどきちんと礼儀を示すようにとリラにも本にも書かれていたのに失敗してしまったと未熟さを嘆く。まだまだ、私は修行不足のようだ。
「では、お荷物は後程、部屋に運びますのでまずは邸を案内します」
「あ、あのっ!レイノル様は?」
「申し訳ございません。旦那様は現在書類仕事のため出かけております。昼前にはお戻りになられますので」
そうか、まだ会えないんだ。それにしてもレイノル様って旦那様って使用人に呼ばれてるんだ。私も将来、旦那様なんて呼ぶようになるのかな…。そんな姿を想像すると急に恥ずかしくなってしまった。
「どうかなさいましたか?」
「ナンデモアリマセン」
変な想像をしてしまい機械的に返事を返してしまった。それにしても2人であれこれしているとは思えないほど手入れされている。花壇はもとより、厨房や廊下などもきっちり掃除が行き届いており、家と変わらないように見える。
「お二人しかいらっしゃらないと言われましたが、とてもよく手入れされていますね。業者の方でも雇われているのですか?」
気になったのでつい聞いてしまった。
「ありがとうございます。旦那様には申し訳ありませんが、騎士爵はそこまで金銭的に余裕はありませんので、どこの家も基本的には執事とメイドの2人のみです。業者はよほどのことがない限り使いません」
ああ、本当に余計なことを聞いてしまった。すぐにフォローせねば。
「そうでしたか。申し訳ありません。お二方の努力によるものだったのですね。今後ともよろしくお願いいたします」
そういってメイドさんに感謝の意を伝える。その後も中庭や各部屋を案内してもらったところで、私がレイノル様に早く会いたいということもあり、リビングで待つことになった。
…目の前にいるのは誰なのだろうか?私はカレン=フォード。この邸で働き始めて2年になるメイドです。元々は貧乏男爵家の3女でしたが、不作の際に少しでも負担を減らすため、奉公に出ることになりレイノル様に雇っていただいた身だ。旦那様にはろくに家事もできない私を雇っていただきとても感謝しています。そのため、押し付けられた婚約について何とかできないかと思っていたものの、おてんば姫と称される彼女の言動は今のところ全く問題ないどころか、立派な淑女です。会った瞬間はなぜか、ぼーっとされていたようですが、今は何の問題もありません。私はお茶の準備をしながらロイさんに話しかけた。
「私は夢を見ているのでしょうか?とてもおてんば姫と称される様には見えないのですが…」
「お前もか。私にもとても丁寧にあいさつされた。騎士爵の使用人に対してもここまでとは」
「ですよね」
騎士爵は一代限りで、息子が騎士を継がなければ即平民となるため、貴族であって貴族でない微妙な扱いをされることが多い。使用人も基本は平民だ。しかし、今のところお嬢様から高圧的な感じは見受けられない。おてんばというのも間違いではないかという気がする。
「噂とはあてにならないものですね」
「全くだ。まあ、書物も読まれているということだから礼儀には思うところがあるのでしょう」
私はそのような本は読んだことはありませんが、機会があったらお嬢様に見せてもらおうと思いました。
それからお嬢様にお茶を持っていき、しばらくとりとめのない話をしていると、玄関から声がしました。きっと旦那様が戻ってこられたのでしょう。お嬢様の方を見るとロイさんと私の方を交互に見つめている。行きたくて仕方がないのでしょう。なんだか先ほどの令嬢姿との差に笑いをこらえながら話す。
「どうか旦那様を迎えてくださいませ」
「はいっ!」
ビシッと立ち上がったかと思うと小走りに駆けていかれた。鍛えているせいか足音もなくススッと行く姿にとうとう笑いをこらえきれなかった。横を見るとロイさんも同じようだ。
「にぎやかになりそうですね」
「ああ」
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