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本編
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全くなんでこんな日に書類仕事が入るのか…。王宮警備隊は普段、王宮外周部の守りをしている。その結果を定期・不定期に報告書をまとめて提出するのだが、なぜか今回に限って不定期に出す書類が今日の締切日だった。しかも、提出日の連絡に齟齬があり、今は非番のものも含めて総出で書類仕事をしている。
「そういえばガーランド、婚約したって本当か?」
「なんだと!顔は悪くないのに今まで一切そんな話に乗ってこなかっただろう。どうしたんだ?」
「いや…まあ。断るに断り切れなくてな」
「なんだお貴族様からか。せいぜい苦労するんだな」
騎士の中には貴族からの縁談を持ち掛けられるものも当然いる。いるにはいるが、ほとんどは王宮騎士団だ。王宮警備隊にわざわざ令嬢を送ってくる貴族は物珍しい。理由もちょっと娘の遊び相手をしてほしいとか、騎士の暮らしを見せて上位貴族との政略結婚をさせ易くするとか、散々なものだ。わずかに恋愛結婚もあるが女っ気のない俺にはありえないことだと思ったのだろう。
「その通りではあるが、特に悪い印象はないな」
「なんだ、話したことあるのか?」
「いや、夜会でちらっと見かけただけだが」
「へぇ、ちなみにどこの令嬢だ?」
一瞬言っていいものかと思ったが、いずれ知られることだと思い答えた。
「ティアナ=レーガン子爵令嬢だ」
「子爵家っ!ていうか”おてんば姫”じゃないか、大丈夫なのか?」
「話したことはないし、会ってみるまでは分からんな。実は今日が初顔合わせなんだ」
「精々がんばれよ。よし、みんな!婚約者ができたガーランドのためにさっさと終わらせようぜ!」
「「「おおーっ!」」」
気のいい仲間たちのおかげで予定よりも早く仕事を終えて、足早に邸へと向かう。彼らにはああいったものの、噂通りだったらもめ事を起こしていないか心配ではある。最悪、今日が休日と思っているカイラスが来でもしたら…さらに早足で邸へ向かった。
「今帰った」
邸の玄関のかぎを開け、中に入る。さっさと靴を脱いで入ろうとするところに、気配が近づいてきた。正面には小走りでかけてくるレーガン嬢の姿があった。
「お帰りなさいませ、レイノル様」
彼女はそういうと貴族の礼をして手を差し伸べてくる。私はというとそのあまりの流麗さと可憐さに動けないでいた。
「どうかなさいました?」
「あ、ああ、ありがとう」
彼女の手を取り、案内されるようにリビングへと向かう。頭の中が混乱している。確かに目の前にいるのは夜会で見かけた少女だ。しかし、噂では剣を振り回す手の付けられない令嬢だったというのに、まるで正反対だ。むしろ、こんな騎士の礼しか知らぬ私に全く釣り合わないのではないかと思う。
「さあ、こちらへおかけください。早くお顔を拝見したいと思って待ってましたの」
促されるままソファに座る。彼女の言う通り、テーブルには彼女とカレンの使っているカップが置かれている。ロイとカレンを見ると私たちにもわかりませんとジェスチャーを返された。
「ああ、挨拶がまだだったな、ガーランド=レイノル。レイノル家4代目の当主だ」
「まあ!レイノル様の家は4代も続いておりますのね。先ほどの件といい申し訳ありません」
「先ほどの件?」
「レイノル様はいなかったんでしたね。カレンさんに案内されている時に伺ったのですが、邸の手入れが行き届いていて、業者でも使われているのですかと失礼なことを申し上げてしまったのです」
すみませんとうつむき加減に謝罪をする。貴族の家ではもっと使用人がいるはずだし、そう思うのも無理はないだろう。
「いや、こちらこそきちんとした迎えもできずに申し訳なかった。急な仕事が入ってしまって…」
「いいえ、騎士様は王家の剣となる方たちですもの仕方ありません」
「しかし、こういっては何だがレーガン嬢はとても礼儀正しい方なのだな。貴族の中には騎士など歯牙にかけぬ方もおられるのに」
「当たり前です。私たちを普段守ってくださっている方たちですもの。それにこの本にも剣に生きるものこそ礼を識れとありますし」
そういって彼女はそばの小さなバッグから一冊の本を取り出した。あの本は見たことがある。祖父に剣を教えてもらう際に初めに読まされた本だ。確かタイトルは…。
「その本は確か”一流の心構え”だったか。基本の型の前に事細かに礼節について書かれていて、祖父に暗記させられた」
「知っておられたんですね。残念です、名著ではありますが知名度はない本だったのですが…」
「祖父が大好きだった本でね。男女問わず礼節の部分は読めと言われ、一人に1冊持たされた」
「それは立派な心掛けだと思いますわ」
「だが、レーガン嬢も婚約者となったのだから、この家ぐらいはくつろいでもらって構わない」
「よろしいのですか?仰る通りこの話し方はちょっと窮屈ですの」
先ほどから話す時にちょっと間が開いたりしていたが、意識して話しているらしい。騎士の家なら夜会に出るなどまずないだろうし、これから長く暮らすかもしれないのだから、初めに言っておいた方がいいだろう。
「そういえばガーランド、婚約したって本当か?」
「なんだと!顔は悪くないのに今まで一切そんな話に乗ってこなかっただろう。どうしたんだ?」
「いや…まあ。断るに断り切れなくてな」
「なんだお貴族様からか。せいぜい苦労するんだな」
騎士の中には貴族からの縁談を持ち掛けられるものも当然いる。いるにはいるが、ほとんどは王宮騎士団だ。王宮警備隊にわざわざ令嬢を送ってくる貴族は物珍しい。理由もちょっと娘の遊び相手をしてほしいとか、騎士の暮らしを見せて上位貴族との政略結婚をさせ易くするとか、散々なものだ。わずかに恋愛結婚もあるが女っ気のない俺にはありえないことだと思ったのだろう。
「その通りではあるが、特に悪い印象はないな」
「なんだ、話したことあるのか?」
「いや、夜会でちらっと見かけただけだが」
「へぇ、ちなみにどこの令嬢だ?」
一瞬言っていいものかと思ったが、いずれ知られることだと思い答えた。
「ティアナ=レーガン子爵令嬢だ」
「子爵家っ!ていうか”おてんば姫”じゃないか、大丈夫なのか?」
「話したことはないし、会ってみるまでは分からんな。実は今日が初顔合わせなんだ」
「精々がんばれよ。よし、みんな!婚約者ができたガーランドのためにさっさと終わらせようぜ!」
「「「おおーっ!」」」
気のいい仲間たちのおかげで予定よりも早く仕事を終えて、足早に邸へと向かう。彼らにはああいったものの、噂通りだったらもめ事を起こしていないか心配ではある。最悪、今日が休日と思っているカイラスが来でもしたら…さらに早足で邸へ向かった。
「今帰った」
邸の玄関のかぎを開け、中に入る。さっさと靴を脱いで入ろうとするところに、気配が近づいてきた。正面には小走りでかけてくるレーガン嬢の姿があった。
「お帰りなさいませ、レイノル様」
彼女はそういうと貴族の礼をして手を差し伸べてくる。私はというとそのあまりの流麗さと可憐さに動けないでいた。
「どうかなさいました?」
「あ、ああ、ありがとう」
彼女の手を取り、案内されるようにリビングへと向かう。頭の中が混乱している。確かに目の前にいるのは夜会で見かけた少女だ。しかし、噂では剣を振り回す手の付けられない令嬢だったというのに、まるで正反対だ。むしろ、こんな騎士の礼しか知らぬ私に全く釣り合わないのではないかと思う。
「さあ、こちらへおかけください。早くお顔を拝見したいと思って待ってましたの」
促されるままソファに座る。彼女の言う通り、テーブルには彼女とカレンの使っているカップが置かれている。ロイとカレンを見ると私たちにもわかりませんとジェスチャーを返された。
「ああ、挨拶がまだだったな、ガーランド=レイノル。レイノル家4代目の当主だ」
「まあ!レイノル様の家は4代も続いておりますのね。先ほどの件といい申し訳ありません」
「先ほどの件?」
「レイノル様はいなかったんでしたね。カレンさんに案内されている時に伺ったのですが、邸の手入れが行き届いていて、業者でも使われているのですかと失礼なことを申し上げてしまったのです」
すみませんとうつむき加減に謝罪をする。貴族の家ではもっと使用人がいるはずだし、そう思うのも無理はないだろう。
「いや、こちらこそきちんとした迎えもできずに申し訳なかった。急な仕事が入ってしまって…」
「いいえ、騎士様は王家の剣となる方たちですもの仕方ありません」
「しかし、こういっては何だがレーガン嬢はとても礼儀正しい方なのだな。貴族の中には騎士など歯牙にかけぬ方もおられるのに」
「当たり前です。私たちを普段守ってくださっている方たちですもの。それにこの本にも剣に生きるものこそ礼を識れとありますし」
そういって彼女はそばの小さなバッグから一冊の本を取り出した。あの本は見たことがある。祖父に剣を教えてもらう際に初めに読まされた本だ。確かタイトルは…。
「その本は確か”一流の心構え”だったか。基本の型の前に事細かに礼節について書かれていて、祖父に暗記させられた」
「知っておられたんですね。残念です、名著ではありますが知名度はない本だったのですが…」
「祖父が大好きだった本でね。男女問わず礼節の部分は読めと言われ、一人に1冊持たされた」
「それは立派な心掛けだと思いますわ」
「だが、レーガン嬢も婚約者となったのだから、この家ぐらいはくつろいでもらって構わない」
「よろしいのですか?仰る通りこの話し方はちょっと窮屈ですの」
先ほどから話す時にちょっと間が開いたりしていたが、意識して話しているらしい。騎士の家なら夜会に出るなどまずないだろうし、これから長く暮らすかもしれないのだから、初めに言っておいた方がいいだろう。
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