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本編
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ガーランド様とカイラス様は親しそうに話されていたけれど、私が間に入って話をしたせいで稽古をするようになったみたい。なんだか悪いことでも言ってしまったのかな?カイラス様は妬いているだけとおっしゃっていたけれど、昨日今日あったばかりの私なんかに、そんな訳がないわ。あったらうれしいけど…。
「旦那様、ティアナ様、カイラス様、昼食ができました」
「ああ、ロイすまないね。いつもお昼をいただいてしまって」
「いえいえ、旦那様のもとを訪れる方はあまりおりませんので、腕の振るいがいがあります。」
「では、いただきます。…わっおいしい!」
一口食べてみたが鳥の燻製焼きだろうか?香草も使用されていて香りも味付けも文句なしだ。
「お口に合ったようで安心いたしました。これから長くお世話になりますので」
「いいえ、こちらこそです。今度教えてください。邸のものにも食べさせたいわ」
「へえ、レーガン嬢は料理もするんだな、ってそれより住んでるの?ここに?」
「住んでいるというか今日からですが…」
さすがに急に婚約者ですとは言えずガーランド様の方を見る。頷いてくれたので任せておけということだろう。
「先日の彼女の家のパーティーで間者を捕まえただろう。その時の身のこなしが彼女の目を引いたようで子爵から是非にとな」
「えらく急な話だね。二人とも知ってたの?」
聞かれた以上は流石にガーランド様に頼る訳にはいかない。この件に関しては私の家の方に問題があるんだから。
「実はですね…」
今後のことも考えればここでカイラス様に嘘をついて、後日気まずくなるよりは言ってしまった方がいいだろうと、話の流れを説明する。
「…ということなんです。ガーランド様にも申し訳なく思ってます。ですが、実際のところ私にはこれまで縁談もありませんでしたし、会ったばかりですが、素敵な方と思いますのでおいていただけたらと思います」
改めてガーランド様にも私の思いを告げる。確かに無理に進められた縁談ではあったが、かといってこのまま縁談も持ちあがらずおかしな縁談や、老人の後妻などまっぴらごめんではある。この優しい青年にならと思うのも事実だ。
「いや、私としてもロイやカレンがこの年で恋人の一人もいないのはよくないとうるさかったからな。偶然とはいえティアナのような可愛らしい令嬢を迎えられてほっとしている」
「そんな…」
急にかわいいと褒められてポッとほほが熱くなるのが自分でもわかる。
「いやあ熱々だねぇ~」
「そう思われるのでしたら、黙っていていただけますか。お二人の邪魔をしないでください」
「カレンさんは旦那様好きだもんね」
「ティアナ様もです」
「ガーランドこれは気を付けた方がいいよ。ライバルはカレンになるだろうね、きっと」
何を言っているんだという目をガーランド様は向けている、私にもよくわからないけどカレンさんは当然ですって顔をしてる。そんな風ににぎやかな食事は過ぎていく。食事を終えて少しくつろいだ後は中庭で手合わせだ。正直、私も食事の終わりの方からそわそわしていた。中庭に着くと少し遅れて防具をつけたガーランド様とカイラス様がやってくる。
「しかし、ガーランドとやるのも久しぶりだね。奥さんにかっこいいところを見せたいのかい?」
「お前が手合わせをしたいと言ってきたんだろう」
「いつも断るくせに。そういうことなら確かにタイミングが良かったかも」
「では、お二人とも準備はよろしいですか…。始めっ!」
カレンさんの掛け声とともに二人は距離をいったん開ける。その間にカレンさんも私の方へと下がってきた。
「カレンさんもここで見学ですか?」
「お二人の戦いは危ないですからね。このぐらい離れていないと安心できません」
「それってどういう…」
キィン
甲高い音とともに二人の打ち合いが始まった。私とは違い二人とも金属の剣を使っている。鎧も着ているが、その重さを感じさせないほど力強く、そして早い。私と戦っている時はどう動くかを見られながらだったけれど、完全に読みあっている感じだ。
「くっ、さすがに王宮騎士団の期待の星だな」
「そっちこそ警備隊とは思えない腕だね。相変わらず」
そういうとカイラス様が斜めに構えたと思うと、鋭い突きを繰り出した。
「あっ…」
思わず危ないと叫びそうになった。しかし、ガーランド様はそれを剣の腹を巧みに使い受け流す。あの突きは重さも早さも私とは比べ物にならない。流石はカイラス様だ。噂では第1騎士団の副団長と互角らしい。副団長は現在の団長であるギルバート様を尊敬していて、他の団長への推薦をすべて蹴って副団長を続けている人だ。剣の腕は団長クラスといわれている。そんな人と互角に打ち合うなんて、とんでもない方と婚約してしまったのかもしれない。
「やるな」
「こちらも負けていられん!」
ガーランド様も上段に構えて、一気に剣を振り下ろす。しかしカイラス様はそれをぎりぎりのところで躱す。二人ともそこは読んでいたようですぐに体をひねると、横一線に剣を振る。お互い剣先が斜めになっていたので力比べのようになる。
「前はちょっと力では負けていたけど今度はそうはいかない」
「その様だな」
このままではらちが明かないと思った二人は同時に剣を引き再び打ち合い始める。
「なんていうか、すごいですね」
私がぼーぜんとしているとカレンさんが答えてくれる。
「私も初めてこの邸に来たときはびっくりしました。士官学校時代の友人だというだけかと思っていましたが、腕の方も同等とは思いませんでしたので。そうですわ、せっかくですし応援されたらどうでしょう?」
「お邪魔ではないですか?」
「あのぐらいなら周りの声も聞こえるでしょうし大丈夫ですよ」
「本当ですか、じゃあ…ガーランド様、頑張ってください!」
人が殆どいないので、恥ずかしいけど頑張って声を出してみる。私の声はちゃんと届いただろうか…。
「旦那様、ティアナ様、カイラス様、昼食ができました」
「ああ、ロイすまないね。いつもお昼をいただいてしまって」
「いえいえ、旦那様のもとを訪れる方はあまりおりませんので、腕の振るいがいがあります。」
「では、いただきます。…わっおいしい!」
一口食べてみたが鳥の燻製焼きだろうか?香草も使用されていて香りも味付けも文句なしだ。
「お口に合ったようで安心いたしました。これから長くお世話になりますので」
「いいえ、こちらこそです。今度教えてください。邸のものにも食べさせたいわ」
「へえ、レーガン嬢は料理もするんだな、ってそれより住んでるの?ここに?」
「住んでいるというか今日からですが…」
さすがに急に婚約者ですとは言えずガーランド様の方を見る。頷いてくれたので任せておけということだろう。
「先日の彼女の家のパーティーで間者を捕まえただろう。その時の身のこなしが彼女の目を引いたようで子爵から是非にとな」
「えらく急な話だね。二人とも知ってたの?」
聞かれた以上は流石にガーランド様に頼る訳にはいかない。この件に関しては私の家の方に問題があるんだから。
「実はですね…」
今後のことも考えればここでカイラス様に嘘をついて、後日気まずくなるよりは言ってしまった方がいいだろうと、話の流れを説明する。
「…ということなんです。ガーランド様にも申し訳なく思ってます。ですが、実際のところ私にはこれまで縁談もありませんでしたし、会ったばかりですが、素敵な方と思いますのでおいていただけたらと思います」
改めてガーランド様にも私の思いを告げる。確かに無理に進められた縁談ではあったが、かといってこのまま縁談も持ちあがらずおかしな縁談や、老人の後妻などまっぴらごめんではある。この優しい青年にならと思うのも事実だ。
「いや、私としてもロイやカレンがこの年で恋人の一人もいないのはよくないとうるさかったからな。偶然とはいえティアナのような可愛らしい令嬢を迎えられてほっとしている」
「そんな…」
急にかわいいと褒められてポッとほほが熱くなるのが自分でもわかる。
「いやあ熱々だねぇ~」
「そう思われるのでしたら、黙っていていただけますか。お二人の邪魔をしないでください」
「カレンさんは旦那様好きだもんね」
「ティアナ様もです」
「ガーランドこれは気を付けた方がいいよ。ライバルはカレンになるだろうね、きっと」
何を言っているんだという目をガーランド様は向けている、私にもよくわからないけどカレンさんは当然ですって顔をしてる。そんな風ににぎやかな食事は過ぎていく。食事を終えて少しくつろいだ後は中庭で手合わせだ。正直、私も食事の終わりの方からそわそわしていた。中庭に着くと少し遅れて防具をつけたガーランド様とカイラス様がやってくる。
「しかし、ガーランドとやるのも久しぶりだね。奥さんにかっこいいところを見せたいのかい?」
「お前が手合わせをしたいと言ってきたんだろう」
「いつも断るくせに。そういうことなら確かにタイミングが良かったかも」
「では、お二人とも準備はよろしいですか…。始めっ!」
カレンさんの掛け声とともに二人は距離をいったん開ける。その間にカレンさんも私の方へと下がってきた。
「カレンさんもここで見学ですか?」
「お二人の戦いは危ないですからね。このぐらい離れていないと安心できません」
「それってどういう…」
キィン
甲高い音とともに二人の打ち合いが始まった。私とは違い二人とも金属の剣を使っている。鎧も着ているが、その重さを感じさせないほど力強く、そして早い。私と戦っている時はどう動くかを見られながらだったけれど、完全に読みあっている感じだ。
「くっ、さすがに王宮騎士団の期待の星だな」
「そっちこそ警備隊とは思えない腕だね。相変わらず」
そういうとカイラス様が斜めに構えたと思うと、鋭い突きを繰り出した。
「あっ…」
思わず危ないと叫びそうになった。しかし、ガーランド様はそれを剣の腹を巧みに使い受け流す。あの突きは重さも早さも私とは比べ物にならない。流石はカイラス様だ。噂では第1騎士団の副団長と互角らしい。副団長は現在の団長であるギルバート様を尊敬していて、他の団長への推薦をすべて蹴って副団長を続けている人だ。剣の腕は団長クラスといわれている。そんな人と互角に打ち合うなんて、とんでもない方と婚約してしまったのかもしれない。
「やるな」
「こちらも負けていられん!」
ガーランド様も上段に構えて、一気に剣を振り下ろす。しかしカイラス様はそれをぎりぎりのところで躱す。二人ともそこは読んでいたようですぐに体をひねると、横一線に剣を振る。お互い剣先が斜めになっていたので力比べのようになる。
「前はちょっと力では負けていたけど今度はそうはいかない」
「その様だな」
このままではらちが明かないと思った二人は同時に剣を引き再び打ち合い始める。
「なんていうか、すごいですね」
私がぼーぜんとしているとカレンさんが答えてくれる。
「私も初めてこの邸に来たときはびっくりしました。士官学校時代の友人だというだけかと思っていましたが、腕の方も同等とは思いませんでしたので。そうですわ、せっかくですし応援されたらどうでしょう?」
「お邪魔ではないですか?」
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