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本編
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夕食を終え、風呂から上がると騎士爵としての僅かばかりの執務が待っている。領地もなければ使用人も2人のみ。日々の家計簿かと思うぐらい簡単なものだが、王家から給金をいただいている以上、おろそかにはできない。
苦手なものは専門の事務員を雇うそうだが、あいにくとうちはこのいただいた家の管理費がそこそこかかるのでそんな余裕はない。ティアナの父親の子爵様などはここに領地・領民が入ってくるのだからさぞ大変だろう。
「ガーランド様お茶を」
「ありがとうカレン」
「いいえ。そういえば旦那様、今日の帰りはティアナ様とご一緒だったのですね?」
「ああ、少し買い物で寄り道をしていたようだった。俺も久しぶりに早く帰るからゆっくりしていて、たまたま出会ったんだ」
「では、差し出がましいとは思いますが、時間が合う時にティアナ様と一緒に帰られてはいかがでしょう?」
「ああ、そのことなら帰り際から考えていた。どうもティアナは自分がおてんば姫と呼ばれているから、あまり異性に興味を持たれていないと思っているらしい」
「それは危険ですな。王都といえど戦禍の孤児はもちろんのこと、盗人などもおりますからな」
「孤児の方は問題ないでしょうが、あの性格では何かあれば巻き込まれそうですわね」
「うむ、幸い朝の時間もさほど変わらないようだし、明日からはできる限り送り迎えする」
「そうですね。私が送り迎えをして差し上げたいのですが、さすがに剣の腕では敵いませんから」
「代わりに家の中のことは任せる。さすがに部屋までは乗り込めないからな」
「当たり前です!せめて学園卒業までは我慢してくださいませ」
「別にそういう意味で言ったわけでは…」
「まあ二人とも。そういえば旦那様。明日ティアナ様が料理をしたいとのことでしたが、よろしいですか?」
「ああ、今日買ってきた食材を使ってお菓子を作るといっていたな」
「なんと!ロイさんそんな情報を隠していたなんて…」
「てっきり聞いているものとばかり、まあカレンはお楽しみということで」
「そうですね。何か意図があるかもしれませんし、聞かなかったふりをしておきます」
そうこうしているうちに手元の作業も終わったので、話もここまでになり部屋に戻ろうとしたところでロイに呼び止められた。
「そういえば旦那様。そろそろ王宮騎士トーナメントの時期ですが、今年は警備隊からはどなたがお出になるので?」
「どうなんだろうな。選ばれることはないと思うので気にしていなかったな」
「家族の観覧も、貴族の観覧も許可されていますから、ティアナ様に良いところを見せるチャンスでは?」
「さすがに簡単にはいかないだろうし、目立つのもな。それにあれは推薦式だからな。さすがに無理だろう」
「そうですか。もし、選ばれた場合にはレイノル家として出ていただきますように」
「わかっている」
そんなことはないだろうがと心の中で付け加えながらガーランドは部屋を後にした。
「いきましたね」
「いきましたな」
「では、ティアナ様が家を出ていかれることはないとは思いますが、思い出の1ページということで頑張るとしましょうか」
「まずは、カイラス様に文を出して、警備隊に働きかけてもらいましょう。あの方ならばきっとお力になっていただけるでしょう」
「公式の場で戦えることと、旦那様の実力を知らしめることができて、一石二鳥ですものね」
「「では…」」
「おはようございますガーランド様」
「おはようティアナ」
ロイとカレンにも挨拶をし、いつも通り朝食を食べる。食べ終わる頃を見計らって昨日話し合ったことを切り出す。
「ティアナ、昨日の帰りの馬車の話なんだがな…」
「ああ、送り迎えに馬車がって話ですね、それがどうか?」
「家では馬車の手配はできないが、幸運なことに私の業務の時間とティアナの学校の時間がほとんど一緒なんだ」
「へ~そうなんですね。じゃあ昨日みたいにばったり街であったりするかもしれないですね!」
嬉しそうに言ってくれるけれどそうじゃない。
「いや、それでだな、昨日カレン達とも話し合ったんだが、いくら腕が立つといってもティアナも年頃の女の子なんだから、今日からは私が送り迎えをしようと思う」
ただ、送り迎えをするといえばよかったのかもしれないが、ついカレン達をダシにしてしまう。ちらりとカレンの方を見やると、そこは言うなと白い目で見られた。
「へ~送り迎えですか…えっ、いいのですか?」
「ああ、別に王宮から学園なら道すがらだし、途中までだが話もできてお互いを知れるいい機会だと思う」
「そう…ですね。じゃあ、お願いします!帰りはどうすればいいですか?」
「ふむ、では学園前で待っていよう。早い方が待つことになってしまうがそれでいいか?」
「はい!じゃあ、今日から一緒に行きましょう」
なんだかティアナの頭にピコピコ耳が動くのが見えたような気がしたが、気のせいだろう。
それから食事を終えた私たちは、それぞれ準備をして一緒に学園へと向かった。
苦手なものは専門の事務員を雇うそうだが、あいにくとうちはこのいただいた家の管理費がそこそこかかるのでそんな余裕はない。ティアナの父親の子爵様などはここに領地・領民が入ってくるのだからさぞ大変だろう。
「ガーランド様お茶を」
「ありがとうカレン」
「いいえ。そういえば旦那様、今日の帰りはティアナ様とご一緒だったのですね?」
「ああ、少し買い物で寄り道をしていたようだった。俺も久しぶりに早く帰るからゆっくりしていて、たまたま出会ったんだ」
「では、差し出がましいとは思いますが、時間が合う時にティアナ様と一緒に帰られてはいかがでしょう?」
「ああ、そのことなら帰り際から考えていた。どうもティアナは自分がおてんば姫と呼ばれているから、あまり異性に興味を持たれていないと思っているらしい」
「それは危険ですな。王都といえど戦禍の孤児はもちろんのこと、盗人などもおりますからな」
「孤児の方は問題ないでしょうが、あの性格では何かあれば巻き込まれそうですわね」
「うむ、幸い朝の時間もさほど変わらないようだし、明日からはできる限り送り迎えする」
「そうですね。私が送り迎えをして差し上げたいのですが、さすがに剣の腕では敵いませんから」
「代わりに家の中のことは任せる。さすがに部屋までは乗り込めないからな」
「当たり前です!せめて学園卒業までは我慢してくださいませ」
「別にそういう意味で言ったわけでは…」
「まあ二人とも。そういえば旦那様。明日ティアナ様が料理をしたいとのことでしたが、よろしいですか?」
「ああ、今日買ってきた食材を使ってお菓子を作るといっていたな」
「なんと!ロイさんそんな情報を隠していたなんて…」
「てっきり聞いているものとばかり、まあカレンはお楽しみということで」
「そうですね。何か意図があるかもしれませんし、聞かなかったふりをしておきます」
そうこうしているうちに手元の作業も終わったので、話もここまでになり部屋に戻ろうとしたところでロイに呼び止められた。
「そういえば旦那様。そろそろ王宮騎士トーナメントの時期ですが、今年は警備隊からはどなたがお出になるので?」
「どうなんだろうな。選ばれることはないと思うので気にしていなかったな」
「家族の観覧も、貴族の観覧も許可されていますから、ティアナ様に良いところを見せるチャンスでは?」
「さすがに簡単にはいかないだろうし、目立つのもな。それにあれは推薦式だからな。さすがに無理だろう」
「そうですか。もし、選ばれた場合にはレイノル家として出ていただきますように」
「わかっている」
そんなことはないだろうがと心の中で付け加えながらガーランドは部屋を後にした。
「いきましたね」
「いきましたな」
「では、ティアナ様が家を出ていかれることはないとは思いますが、思い出の1ページということで頑張るとしましょうか」
「まずは、カイラス様に文を出して、警備隊に働きかけてもらいましょう。あの方ならばきっとお力になっていただけるでしょう」
「公式の場で戦えることと、旦那様の実力を知らしめることができて、一石二鳥ですものね」
「「では…」」
「おはようございますガーランド様」
「おはようティアナ」
ロイとカレンにも挨拶をし、いつも通り朝食を食べる。食べ終わる頃を見計らって昨日話し合ったことを切り出す。
「ティアナ、昨日の帰りの馬車の話なんだがな…」
「ああ、送り迎えに馬車がって話ですね、それがどうか?」
「家では馬車の手配はできないが、幸運なことに私の業務の時間とティアナの学校の時間がほとんど一緒なんだ」
「へ~そうなんですね。じゃあ昨日みたいにばったり街であったりするかもしれないですね!」
嬉しそうに言ってくれるけれどそうじゃない。
「いや、それでだな、昨日カレン達とも話し合ったんだが、いくら腕が立つといってもティアナも年頃の女の子なんだから、今日からは私が送り迎えをしようと思う」
ただ、送り迎えをするといえばよかったのかもしれないが、ついカレン達をダシにしてしまう。ちらりとカレンの方を見やると、そこは言うなと白い目で見られた。
「へ~送り迎えですか…えっ、いいのですか?」
「ああ、別に王宮から学園なら道すがらだし、途中までだが話もできてお互いを知れるいい機会だと思う」
「そう…ですね。じゃあ、お願いします!帰りはどうすればいいですか?」
「ふむ、では学園前で待っていよう。早い方が待つことになってしまうがそれでいいか?」
「はい!じゃあ、今日から一緒に行きましょう」
なんだかティアナの頭にピコピコ耳が動くのが見えたような気がしたが、気のせいだろう。
それから食事を終えた私たちは、それぞれ準備をして一緒に学園へと向かった。
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