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本編
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「ガ、ガーランド様、サーラたちときちんと挨拶を交わさなくてもよろしかったんですか?」
「ああ、向こうも分かってくれているし、また会うこともあるだろう」
ややぶっきらぼうになりながら返事をする。そんなことよりも今はティアナの前歴だ。先ほどの男は技量も低く、間違ってもティアナに傷をつけられるような腕ではないし、彼女もレイピアを持っていたから任せたが、あのような捕り物自体が初めてではないといった。
「それよりも邸に戻ってすぐに確認したいことがある」
「??何でしょうか?忘れ物でもされましたか」
ティアナは本当にわかっていないようだ。俺がいつも護衛をしている間は大丈夫だが、それ以外のところで無茶をしないように言い聞かせておかなければ。彼女が強いといってもそこは女性としてだ。騎士団という基準で見れば彼女が勝てる可能性のあるものは数えるほどしかいないだろう。
「とりあえず、帰ろう」
「ま、待ってください」
ティアナが置いていかれないように腕にしがみついてくる。
「ちょっ」
腕に柔らかい感触が当たることに、緊張しながら動揺しないように邸に帰る。こういう、何気なくも大胆な行動に本当にドキドキする。気さくといえば聞こえはいいが、我慢するほうも大変だ。
「戻った!」
「あら、旦那様お帰りなさいませ。ティアナ様も。お早いお帰りでしたね」
「ええ、ガーランド様が急いで帰ると言い出したので…」
「おや?何かありましたか?」
「ああ、ロイも聞いて欲しいからリビングでお茶を入れてくれ」
「?分かりました」
カレンがよくわからないという顔をしながらも、お茶を入れにキッチンに入る。下ごしらえをしていたのか、ロイもキッチンにいたようで2人とも一緒にリビングに入ってくる。
「旦那様、お早いお帰りでどうしました?」
「ああ、今から話をするからみんな席についてくれ」
「ティアナ様、どうかされました?」
「私にもさっぱりです」
未だ分かっていないティアナも座らせて本題に入る。
「実は今日、ティアナの友人とお茶をするという事で出かけていたのだが~」
そう言って、喫茶店で軽食を済ませた後、暴漢に対応したことを2人に話した。
「まあ、なんと無礼かつ無謀な!」
「あの手配犯ですな。さすが旦那様たちです」
しかし、2人ともティアナの行動に対しては心配だったらしく、すぐにけががないか確認する。
「大丈夫ですよ。あれぐらいなら年に何回か遭遇してますし、これがない時だって大丈夫でしたから」
エッヘンと胸を張って腰のレイピアをちらりと見せるティアナ。その顔を見て2人に俺は目配せする。2人ともやや呆れた顔をして頷く。どうやら何も言わずに分かってくれたようだ。
「ティアナ様。素晴らしい行いではありますがそのような危険な真似はおやめください」
「そうですぞ。近くの衛兵なり騎士を見つけお声がけするように」
てっきり褒められると思っていたティアナはやや不満そうにする。
「でもでも、殴られてる人とかもいたんです!知らないふりなんてできません」
「気持ちはわかる。俺もそのような場面に会えば手を出すだろう」
「ですよね」
「しかし、俺とでは身分も違う。それに実力からいっても男に掴まれれば逃げられないだろう。俺なら掴まれたところでそのまま投げ飛ばせるが…」
「それはそうなんですけど…」
「そうです。今までは相手が弱かっただけでよかったですが、ティアナ様は元々子爵令嬢。ひいてはこの家の主人となるお方です。今後は控えていただかなくては」
「じゃ、じゃあ。無理はしないようにしますから…」
なおも食い下がってくるティアナ。
「だがな、無理も何も関わってしまったら途中で抜けられないだろう」
「むぅ」
何とか次のセリフを探すティアナだが、中々思いつかないらしい。
「皆さまはティアナ様の行いが素晴らしいと思っておられます。しかし、それでティアナ様が傷つくことが心配なのです。助けるつもりが、ケガをして剣を握ることもできなくなった騎士もおりますので」
それとなくロイがティアナを諭す。ロイもこの家に仕えている間に多くの騎士が亡くなった報告や話を聞いている。怪我が浅くとも戦場に戻れるとは限らないことも、俺たち以上に知っているゆえんだろう。
「でも、どうしても譲れないときは無理ですから!」
しばらく考えこんでいたティアナだったが、どうしてもそこは譲れないという結論に達したようだ。
「するなといってもやるだろうけれど、あまり心配をかけないようにしてくれ。俺とティアナは会って間もないが、お前が傷ついている姿を見たくない」
「ガーランド様…」
じっとティアナと見つめあう。顔が次第に近づいていく…。
「おほん!まあ、できるだけティアナ様と出かけるときは、我々のうち誰かが無理しないよう、ついていくという事でよろしいですね」
バッ
2人とも4人で話していることを思い出し、すぐに離れてパッと頭を触って誤魔化す。
「そうですな。無理されないよう人が呼べるようにしておけば、そうそう危険な目に合うことはないでしょう」
「では、内容を詰めていきましょうか」
そうして、俺たち3人を中心にティアナガイドラインを作成したのだった。
「ああ、向こうも分かってくれているし、また会うこともあるだろう」
ややぶっきらぼうになりながら返事をする。そんなことよりも今はティアナの前歴だ。先ほどの男は技量も低く、間違ってもティアナに傷をつけられるような腕ではないし、彼女もレイピアを持っていたから任せたが、あのような捕り物自体が初めてではないといった。
「それよりも邸に戻ってすぐに確認したいことがある」
「??何でしょうか?忘れ物でもされましたか」
ティアナは本当にわかっていないようだ。俺がいつも護衛をしている間は大丈夫だが、それ以外のところで無茶をしないように言い聞かせておかなければ。彼女が強いといってもそこは女性としてだ。騎士団という基準で見れば彼女が勝てる可能性のあるものは数えるほどしかいないだろう。
「とりあえず、帰ろう」
「ま、待ってください」
ティアナが置いていかれないように腕にしがみついてくる。
「ちょっ」
腕に柔らかい感触が当たることに、緊張しながら動揺しないように邸に帰る。こういう、何気なくも大胆な行動に本当にドキドキする。気さくといえば聞こえはいいが、我慢するほうも大変だ。
「戻った!」
「あら、旦那様お帰りなさいませ。ティアナ様も。お早いお帰りでしたね」
「ええ、ガーランド様が急いで帰ると言い出したので…」
「おや?何かありましたか?」
「ああ、ロイも聞いて欲しいからリビングでお茶を入れてくれ」
「?分かりました」
カレンがよくわからないという顔をしながらも、お茶を入れにキッチンに入る。下ごしらえをしていたのか、ロイもキッチンにいたようで2人とも一緒にリビングに入ってくる。
「旦那様、お早いお帰りでどうしました?」
「ああ、今から話をするからみんな席についてくれ」
「ティアナ様、どうかされました?」
「私にもさっぱりです」
未だ分かっていないティアナも座らせて本題に入る。
「実は今日、ティアナの友人とお茶をするという事で出かけていたのだが~」
そう言って、喫茶店で軽食を済ませた後、暴漢に対応したことを2人に話した。
「まあ、なんと無礼かつ無謀な!」
「あの手配犯ですな。さすが旦那様たちです」
しかし、2人ともティアナの行動に対しては心配だったらしく、すぐにけががないか確認する。
「大丈夫ですよ。あれぐらいなら年に何回か遭遇してますし、これがない時だって大丈夫でしたから」
エッヘンと胸を張って腰のレイピアをちらりと見せるティアナ。その顔を見て2人に俺は目配せする。2人ともやや呆れた顔をして頷く。どうやら何も言わずに分かってくれたようだ。
「ティアナ様。素晴らしい行いではありますがそのような危険な真似はおやめください」
「そうですぞ。近くの衛兵なり騎士を見つけお声がけするように」
てっきり褒められると思っていたティアナはやや不満そうにする。
「でもでも、殴られてる人とかもいたんです!知らないふりなんてできません」
「気持ちはわかる。俺もそのような場面に会えば手を出すだろう」
「ですよね」
「しかし、俺とでは身分も違う。それに実力からいっても男に掴まれれば逃げられないだろう。俺なら掴まれたところでそのまま投げ飛ばせるが…」
「それはそうなんですけど…」
「そうです。今までは相手が弱かっただけでよかったですが、ティアナ様は元々子爵令嬢。ひいてはこの家の主人となるお方です。今後は控えていただかなくては」
「じゃ、じゃあ。無理はしないようにしますから…」
なおも食い下がってくるティアナ。
「だがな、無理も何も関わってしまったら途中で抜けられないだろう」
「むぅ」
何とか次のセリフを探すティアナだが、中々思いつかないらしい。
「皆さまはティアナ様の行いが素晴らしいと思っておられます。しかし、それでティアナ様が傷つくことが心配なのです。助けるつもりが、ケガをして剣を握ることもできなくなった騎士もおりますので」
それとなくロイがティアナを諭す。ロイもこの家に仕えている間に多くの騎士が亡くなった報告や話を聞いている。怪我が浅くとも戦場に戻れるとは限らないことも、俺たち以上に知っているゆえんだろう。
「でも、どうしても譲れないときは無理ですから!」
しばらく考えこんでいたティアナだったが、どうしてもそこは譲れないという結論に達したようだ。
「するなといってもやるだろうけれど、あまり心配をかけないようにしてくれ。俺とティアナは会って間もないが、お前が傷ついている姿を見たくない」
「ガーランド様…」
じっとティアナと見つめあう。顔が次第に近づいていく…。
「おほん!まあ、できるだけティアナ様と出かけるときは、我々のうち誰かが無理しないよう、ついていくという事でよろしいですね」
バッ
2人とも4人で話していることを思い出し、すぐに離れてパッと頭を触って誤魔化す。
「そうですな。無理されないよう人が呼べるようにしておけば、そうそう危険な目に合うことはないでしょう」
「では、内容を詰めていきましょうか」
そうして、俺たち3人を中心にティアナガイドラインを作成したのだった。
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