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本編
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―――あれから、早1週間。とうとう今日は騎士団戦の当日となった。
『約束通り、ちゃんと戦ってきてくださいね』
そう念を押されては、やるしかないかと体を奮い立たす。稽古も並行して行ったが、それとは別にひそかに特訓もしていた。何しろ相手は王宮騎士団だ。警備隊と戦う機会は決勝までいかないとない。つまりあり得ない確率だ。
「よう、ガーランド。調子はどうだ?」
「隊長。悪くはないですが期待はしないでくださいよ」
結局、隊からの投票で決まったのは一番人気の警備隊から騎士団に行くのではないかという隊員1名と俺と隊長、そしてアルスに他4名。他としたのは申し訳ないが、実力からすればアルスにも1本取られるぐらいの実力だ。しかし、アルスが選ばれるのは意外だった。実力からすればそんなはずはないと声をかけたら『これも、見たいものを見るための犠牲』といっていた。
「まあ、だがこの組み合わせならそこそこ行けるんじゃないか?」
「前日に引いたくじでしょう?確かに騎士団長殿やカイラスとは別側ですが、こっちは猛将ガイザル殿がおられますよ」
猛将ガイザル―。貴族家にあって代々戦場で功をなす一族の一つ。恵まれた体躯と数々の戦傷から放たれる威圧感に多くの戦士が倒れてきた。生き延びることができても後遺症が残ると他国では恐怖の対象だ。医療体制が整っているとは言えない戦場では、たとえ帰れても五体満足というのは難しい。それをさらに悪化させる対象なのだ。
「そうですよ。先輩はまだいいっす。僕なんか初戦で騎士団長のギルバート様なんっすよ」
「そういやそうだったな。だが、安心しろ。お前が誰かに勝つなんて誰も思ってねえからな。大体、新人がポンと出て勝てるなら、今までにも警備隊から優勝者の1人でも出てるだろうぜ」
「隊長の言う通りだ。アルス、騎士団長と戦えるなど本来、我々ではこういう機会でもないとあり得ないわけだから頑張ってこい」
「そんな~。何かいい手はないっす?」
「じゃあ、3の型でもやってみろ」
「いいんすか?あれ、実戦以外では使うなって…」
「大丈夫だ。騎士団長殿なら躱されるだろうからな。まあ、何かしら見込みがあると思ってもらうよう手を尽くせ」
それだけ言うと俺は控室へ向かう。因みに控室は最初は騎士団と警備隊で分かれている。それが、戦いが終わるごとに勝者が騎士団側へ敗者は警備隊側へ向かうルールだ。なので、1回戦で騎士団員が負けて警備隊に来ると気まずい。
警備隊の控室にはもうみんなが揃っていた。あとは、アルスと隊長だけだ。
「おう、ガーランド。調子はどうだ」
「シェイク、なかなかだな。今年は行けそうか?」
彼は毎年隊長推薦でこの騎士団戦に参加している。しかし、あと一歩のところで及ばず敗戦となっていた。それでも、来期は騎士団に行けると喜んでいた。
「こっちでの最後の戦いになるかもしれんから、勝ちたいところだが相手がな…」
改めてトーナメント表を見る。1回戦は猛将ガイザル殿と警備隊、2回戦はその猛将所属の第2騎士団副団長と警備隊、3回戦は俺と第4騎士団の団長、4回戦は第3騎士団団長と我らが警備隊隊長。逆側の方は5回戦がカイラスと警備隊、6回戦が第1騎士団副団長とシェイク、第7回戦がギルバート騎士団長とアルス、8回戦が第3騎士団副団長と警備隊の組み合わせだ。
「シェイクは第1騎士団副団長殿とか…きついな」
「ああ、うれしくもあるが流石に猛将と並ぶ騎士団長の右腕とはな」
「まあ、お互い頑張るとしよう」
「そうだな、お前の試合も楽しみにしている」
「あまり期待はしないでくれ」
「そんなこと言ってお前は婚約者も来ているんだろう?無様なところは見せられないだろ」
「そうだな」
今日を本当にティアナは楽しみにしていた。あの笑顔を裏切ることはできそうにない。覚悟を決めてその時を待った。
「それではこれより、年に一度の王宮騎士団並びに王宮警備隊のトーナメント戦を開催する!諸君らの日ごろの鍛錬の成果を私は楽しみにしているぞ」
国王陛下がそう宣言されると、集まっていた貴族たちやその家族がワッと沸き立つ。最近では平和を取り戻しつつある王国を立て直した方として国民からの支持も篤い。
「それでは参加騎士たちの顔ぶれをご紹介いたします」
司会役の貴族が続けて参加者の簡単なプロフィールを説明していく。ガイザル殿のような爵位貴族騎士はその領の説明を騎士なら所属とあれば懇意にしている貴族の説明をされる。こうして、騎士と貴族の関係を紹介して互いに知名度を上げるのだ。とはいっても、警備隊員にはほぼそういうものはいないが。
「ガーランド様~」
小さいが声がした方向を向くと、そこにはティアナがいた。どうやったのか知らないが前の方の席にいる。あそこはかなり高位の貴族でしか取れないと聞いたことがあったのだが。手を振りたいがそうもいかないため、やや顔を向けて答える。そうしているうちに紹介も終わり、1回戦の対戦者を残してみんな控室に引いていった。
「おい、ガーランド。婚約者っておてんば姫って聞いてたが、とてもかわいいじゃないか。どうやったんだ?」
「どうといわれてもな、先方からの話だし…」
「あんな子に応援してもらえるんだ、頑張れよ」
「ああ」
そうして少しばかり話をしていると歓声が聞こえた。とうとう騎士団戦が始まったのだ。
『約束通り、ちゃんと戦ってきてくださいね』
そう念を押されては、やるしかないかと体を奮い立たす。稽古も並行して行ったが、それとは別にひそかに特訓もしていた。何しろ相手は王宮騎士団だ。警備隊と戦う機会は決勝までいかないとない。つまりあり得ない確率だ。
「よう、ガーランド。調子はどうだ?」
「隊長。悪くはないですが期待はしないでくださいよ」
結局、隊からの投票で決まったのは一番人気の警備隊から騎士団に行くのではないかという隊員1名と俺と隊長、そしてアルスに他4名。他としたのは申し訳ないが、実力からすればアルスにも1本取られるぐらいの実力だ。しかし、アルスが選ばれるのは意外だった。実力からすればそんなはずはないと声をかけたら『これも、見たいものを見るための犠牲』といっていた。
「まあ、だがこの組み合わせならそこそこ行けるんじゃないか?」
「前日に引いたくじでしょう?確かに騎士団長殿やカイラスとは別側ですが、こっちは猛将ガイザル殿がおられますよ」
猛将ガイザル―。貴族家にあって代々戦場で功をなす一族の一つ。恵まれた体躯と数々の戦傷から放たれる威圧感に多くの戦士が倒れてきた。生き延びることができても後遺症が残ると他国では恐怖の対象だ。医療体制が整っているとは言えない戦場では、たとえ帰れても五体満足というのは難しい。それをさらに悪化させる対象なのだ。
「そうですよ。先輩はまだいいっす。僕なんか初戦で騎士団長のギルバート様なんっすよ」
「そういやそうだったな。だが、安心しろ。お前が誰かに勝つなんて誰も思ってねえからな。大体、新人がポンと出て勝てるなら、今までにも警備隊から優勝者の1人でも出てるだろうぜ」
「隊長の言う通りだ。アルス、騎士団長と戦えるなど本来、我々ではこういう機会でもないとあり得ないわけだから頑張ってこい」
「そんな~。何かいい手はないっす?」
「じゃあ、3の型でもやってみろ」
「いいんすか?あれ、実戦以外では使うなって…」
「大丈夫だ。騎士団長殿なら躱されるだろうからな。まあ、何かしら見込みがあると思ってもらうよう手を尽くせ」
それだけ言うと俺は控室へ向かう。因みに控室は最初は騎士団と警備隊で分かれている。それが、戦いが終わるごとに勝者が騎士団側へ敗者は警備隊側へ向かうルールだ。なので、1回戦で騎士団員が負けて警備隊に来ると気まずい。
警備隊の控室にはもうみんなが揃っていた。あとは、アルスと隊長だけだ。
「おう、ガーランド。調子はどうだ」
「シェイク、なかなかだな。今年は行けそうか?」
彼は毎年隊長推薦でこの騎士団戦に参加している。しかし、あと一歩のところで及ばず敗戦となっていた。それでも、来期は騎士団に行けると喜んでいた。
「こっちでの最後の戦いになるかもしれんから、勝ちたいところだが相手がな…」
改めてトーナメント表を見る。1回戦は猛将ガイザル殿と警備隊、2回戦はその猛将所属の第2騎士団副団長と警備隊、3回戦は俺と第4騎士団の団長、4回戦は第3騎士団団長と我らが警備隊隊長。逆側の方は5回戦がカイラスと警備隊、6回戦が第1騎士団副団長とシェイク、第7回戦がギルバート騎士団長とアルス、8回戦が第3騎士団副団長と警備隊の組み合わせだ。
「シェイクは第1騎士団副団長殿とか…きついな」
「ああ、うれしくもあるが流石に猛将と並ぶ騎士団長の右腕とはな」
「まあ、お互い頑張るとしよう」
「そうだな、お前の試合も楽しみにしている」
「あまり期待はしないでくれ」
「そんなこと言ってお前は婚約者も来ているんだろう?無様なところは見せられないだろ」
「そうだな」
今日を本当にティアナは楽しみにしていた。あの笑顔を裏切ることはできそうにない。覚悟を決めてその時を待った。
「それではこれより、年に一度の王宮騎士団並びに王宮警備隊のトーナメント戦を開催する!諸君らの日ごろの鍛錬の成果を私は楽しみにしているぞ」
国王陛下がそう宣言されると、集まっていた貴族たちやその家族がワッと沸き立つ。最近では平和を取り戻しつつある王国を立て直した方として国民からの支持も篤い。
「それでは参加騎士たちの顔ぶれをご紹介いたします」
司会役の貴族が続けて参加者の簡単なプロフィールを説明していく。ガイザル殿のような爵位貴族騎士はその領の説明を騎士なら所属とあれば懇意にしている貴族の説明をされる。こうして、騎士と貴族の関係を紹介して互いに知名度を上げるのだ。とはいっても、警備隊員にはほぼそういうものはいないが。
「ガーランド様~」
小さいが声がした方向を向くと、そこにはティアナがいた。どうやったのか知らないが前の方の席にいる。あそこはかなり高位の貴族でしか取れないと聞いたことがあったのだが。手を振りたいがそうもいかないため、やや顔を向けて答える。そうしているうちに紹介も終わり、1回戦の対戦者を残してみんな控室に引いていった。
「おい、ガーランド。婚約者っておてんば姫って聞いてたが、とてもかわいいじゃないか。どうやったんだ?」
「どうといわれてもな、先方からの話だし…」
「あんな子に応援してもらえるんだ、頑張れよ」
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