騎士爵とおてんば令嬢【完結済】

弓立歩

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「どうぞ、部屋に入ってください」

そういってティアナの部屋に入ってみると、部屋に壁にはレイピアと剣が1本ずつ飾られていた。その横には動きやすい服がかけられている。これとセットなのだろう。反対側の机の上には女の子らしくかわいい小物が置いてある。部屋は色味は赤みがかった色と紫のもの後は青が多いようだ。

「あまり見ないでください」

「すまない」

使用人といえどカレンの部屋にも入らない俺はつい見てしまったが、確かに異性にじろじろ見られたくはないなと謝った。

「それで、剣術の授業はどうだった?」

とにもかくにも話すとなれば今日の剣術の結果が気になったので聞いてみた。

「それがですね、やっぱりこう今までちゃんとした剣術を勉強できていなかったというか、いや、確かに道場の先生はきちんとした方だったんですけど、やはり子爵令嬢にけがをさせまいとほとんどが型の稽古と、簡単に素振りをする程度であとは自己流だったのがですね、今回ガーランド様に基礎から帝国流を教えていただいたじゃないですか、あれで一本芯が通ったような動きができるようになってですね、今日も別の方と手合わせした時は一撃で倒せたんです。ただ、ちょっとやりすぎたと思ったんでそこは反省ですけど、それで、いざグライム様と戦ってる時もいつもと違って自分の動きと相手の…」

「ちょ、ちょっと待てティアナ」

「あっ」

興奮して話す彼女を止める。さすがにこう一気呵成に話されては俺も理解が追い付かない。落ち着いて順番に話すように促す。

「す、すみません。嬉しかったので…」

「この邸に来てから一番うれしそうだな。時間はまだあるからゆっくりでいい」

「はい。それでですね、教えていただいた帝国流が私に合っていたみたいですごく動きやすいんです。前は結構硬い動きのところがスムーズに動けるようになって」

彼女は身振り手振りでこうこうと説明をしてくれる。しかし、部屋着であまり動き回られると非常に良くない。

「あー、なんだ。あまり動いて説明はなくてもいいぞ。剣術のことならわかるから…」

「いいえ、こういうのは実際動いたほうが…」

そこでハタとティアナが気づく。スカートをひらひらさせて動いていることに。

「ええと、最小限の動きで伝えますね」

恥ずかしそうにしながらも話を伝えてくれる。

「気を取り直して、型以外でも実際に動く時の注意なども教えていただいたので、隙ができにくく動きに余裕が持てて回避がうまくなったんです。それで、早くグライム様と戦いたかったのに、横やりが入ってですね!」

思い出しても腹が立つのか、怒りながら話をする。なんでも、いつも万年3位の人間が今日に限って因縁をつけてきたらしい。たしかに、今日のために普段から手合わせを減らして、望んでいるとは聞いてはいたがその結果その様なことになるとは。

「私がちょっと戦わずにいる間に調子に乗って、嫌味まで言ってきて。確かに負けが込んできてましたけど、それでも私は彼には一度も負けたことはなかったのに!」

「まあ、遠目から見ている分には実際の実力差なんてわからないやつも多いからな」

「そうなんですよね~、でも、一撃のもとに葬り去りましたから。こうシュッと!!」

そうして自重することなくティアナは突きを繰り出す。しかし、何度見ても突きの構えは美しい。最初から粗削りなところはあったが、なぜか突きだけはその時点でもかなり洗練されていた。

「そういえば、ティアナは突きはすごく練度が高いな」

「ああ、最初に読んだ教本に女性向けの剣術では、重量がない武器でも効果的な戦闘方法としては突きが有効とあったので、かなりいろんな本を読んでました。道場でも結構聞きましたし」

「そうだったのか」

「はい!それでですね、いよいよグライム様との戦いになったんですが、やはり先ほどの突きを警戒して、やや小さい動きだったのをいなしながら、左右前後に回避と防御しながら攻防を続けてたんです。その時もガーランド様の剣筋よりはるかに遅く、未熟なので私でも対応できました」

―まあ、学生に負けるとは思っていないが、流石にグライム様も現役騎士と比べられてはかわいそうだろう。まだまだ伸び盛りだし体格的にも成長中だ。それでもティアナはお構いなしに語り続ける。

「で、お互い結構時間を無駄に使う感じになってきたところでグライム様がそろそろ疲れたんじゃないかって言ってきたんです」

「確かに回避は動く分、防御より疲れやすい部分はあるな。とはいっても体格差がある以上はやむを得ないだろうが」

「ええ、ですがこの度の稽古を経た私はそこまで疲れていなかったので逆に言い返したんです。もう根を上げたんですかと」

そこで俺はハタと気づく。この言い回しはアルスにそっくりだ。しかも、俺の何でもないことを武勇伝のように話すときと。嬉しいのは分かるけどちょっとこれは盛ってるな。そう思いながらもこの後もティアナはグライム様からの勝利の喜びを語り続けたのだった。

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