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第12話_理想を追う者、壁に突き当たる
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白陽が天頂へと差し掛かる頃、王都リオストの北区に位置する冒険者試験場では、今日も多くの挑戦者たちが訓練用魔物や罠に挑んでいた。
だが、その中でも一際注目を集めていたのは、ただ一人の男だった。
「おい、あれって……“蒼盾”所属の洋平だろ?」「マジか、あの襲撃事件の時に真っ先に飛び込んだ奴じゃん……」
名を呼ばれた青年――洋平は、試験場の中央、模擬戦闘区域にて鋼の模擬槍を構えていた。
汗が額を流れるのも気にせず、目の前の四体の魔法ゴーレムを睨み据える。
上級ランク認定試験。それは、ただの戦闘能力だけではなく、「状況判断」「連携構築」「生存意識」――すべてを試される総合試験であり、通過率はわずか八パーセント以下とも言われていた。
だが洋平は、そんな統計には興味がなかった。
――俺には、やるべきことがある。
あの夜、翔が刻印盤を護ったように。
誰かのために真正面からぶつかり、道を拓く。
それが、自分に課せられた“理想”だ。
「試験開始!」
審判の合図と同時に、ゴーレムたちが起動。
炎、風、岩、雷。それぞれ異なる属性を帯びた魔術装甲を纏い、四方から襲いかかってくる。
「悪いけど、俺は止まらねぇ!」
洋平は低く身を沈めると、雷属性のゴーレムに向かって突進。
高速で動きながら、その背後に回り込むと、関節部へ狙いすました一撃を叩き込む。
バチン、と火花が散り、動きが一瞬鈍る。
その隙を逃さず、今度は火のゴーレムの懐に飛び込んで盾を弾いた。
(いける……!)
直感が告げる。
このままなら、突破できる。
そう確信しかけた、そのときだった。
「……ぐっ!?」
唐突に足元が揺らいだ。
いや――違う。“揺れた”のではない。
地下から“何か”が魔力を吹き上げ、バランスを乱したのだ。
「試験場地下に魔力の流入……!? 誤作動だと?」
審判たちがざわめく中、試験場の中央にある魔力制御柱が、低く不吉な音を立てて振動を始めた。
洋平は本能的に跳び退く――その直後、地面から赤黒い触手状の呪印が這い出し、ゴーレムの外装に巻きついた。
呪印はたちまち暴走を引き起こす。
ゴーレムは本来の試験プログラムを無視し、無差別な攻撃を開始した。
「くそっ、制御不能か……!」
洋平は歯噛みした。
周囲の見物人が叫び、試験官が制止を呼びかけるが、誰も“暴走”を止められない。
その瞬間、洋平の脳裏に浮かんだのは――翔の姿だった。
あいつなら、こういうとき、絶対に退かない。
むしろ進むんだ。“縁”を信じて。
「なら、俺も――!」
暴走した岩のゴーレムが、巨大な拳を振り上げる。
洋平は踏みとどまり、全力で迎え撃とうとした。
――が。
その拳が叩き込まれる直前、一閃の光が空を断ち割った。
翔だった。
翔が握っていたのは、未完成のままだった“金属輪”。
それが空中で展開し、薄く輝く“縁の結界”を作り出し、拳の直撃を防いだのだ。
「翔……!」
「来るのが遅れて悪い。けど、こっからは一緒に行くぞ、洋平」
翔は一歩踏み出すと、鋼のハンマーを持ち上げ、全身の気配を集中させる。
「……この場で、俺たちの“絆”を鍛え直す」
翔のハンマーが空を裂いた。
まるで空間そのものを打ち据えるようなその動きに、魔力の振動が奔る。
暴走するゴーレムの周囲に、薄紅色の縁の光が重なり、呪印の暴走を押さえ込むように波打った。
「〈リンクフォージ〉発動――対象:洋平、補助属性強化、魂共鳴展開!」
翔の低く呟く声と共に、洋平の槍が淡い光を帯びる。
それは、ただの武器ではなかった。
翔と洋平の“信念の縁”が槍の芯へと注がれ、再構築される。
力強く、まっすぐに、迷いのない槍へと。
その手応えに、洋平は息を呑んだ。
「これは……!」
「“励起の腕輪”だ。お前の“理想を追う胆力”が刻まれてる。俺が、お前の信じる未来を信じるよ」
翔が差し出したのは、銀色の金属輪。
見た目は簡素だが、内側には七重の螺旋刻印が刻まれていた。
それは“自信を鼓舞する”ための精神補助具。
洋平のためだけに鍛えられた、特注の“縁武具”。
「翔……お前、こんなもんを……」
「受け取ってくれ。俺たちが見てきた地獄、守ってきた命、進む道……全部を繋ぐ絆だ」
洋平は無言で腕輪を装着する。
すると、胸の奥から熱が湧いた。
恐怖でも焦燥でもない。
ただ、強く生きたいという――まっすぐな想い。
暴走ゴーレムの咆哮が轟く。
風と火の属性が融合し、新たな混沌を纏って迫る。
だが今度は、洋平の足が止まらなかった。
「翔、縁を信じて飛び込むのが、お前なら……俺は“理想を叩き込む”のが俺のやり方だ!」
槍が唸る。
まっすぐに突き出された刃先が、火風の魔力を裂き、ゴーレムの心核を正確に突き抜けた。
重たい破砕音のあと、魔力の霧が舞う。
審判団がようやく制御装置を再起動し、残る二体のゴーレムも沈黙した。
試験場に静寂が戻る。
そして――拍手が鳴った。
「……試験、合格だ」
審判長の老騎士が、低く言い放ったその言葉は、どこか誇らしげだった。
「妨害に屈せず、仲間との縁で困難を打破する……理想を持つ者に、相応しい判断だった。ランクA認定、異論はない」
洋平は、槍をゆっくりと地に伏せた。
そして、翔と目を合わせる。
「ありがとうな、翔」
「ああ。お前の信じた理想は、俺が信じた縁でもあった」
拳を軽くぶつけ合う、無言の誓い。
その絆は、確かに鍛え上げられた。
だが、この事件は終わりではなかった。
試験場の地下に残された呪印の痕跡は、〈虚無教団〉の仕業を思わせる構造を持っていた。
つまり――これは、ただの試験妨害ではない。
新たな戦いの、始まりに過ぎなかった。
だが、その中でも一際注目を集めていたのは、ただ一人の男だった。
「おい、あれって……“蒼盾”所属の洋平だろ?」「マジか、あの襲撃事件の時に真っ先に飛び込んだ奴じゃん……」
名を呼ばれた青年――洋平は、試験場の中央、模擬戦闘区域にて鋼の模擬槍を構えていた。
汗が額を流れるのも気にせず、目の前の四体の魔法ゴーレムを睨み据える。
上級ランク認定試験。それは、ただの戦闘能力だけではなく、「状況判断」「連携構築」「生存意識」――すべてを試される総合試験であり、通過率はわずか八パーセント以下とも言われていた。
だが洋平は、そんな統計には興味がなかった。
――俺には、やるべきことがある。
あの夜、翔が刻印盤を護ったように。
誰かのために真正面からぶつかり、道を拓く。
それが、自分に課せられた“理想”だ。
「試験開始!」
審判の合図と同時に、ゴーレムたちが起動。
炎、風、岩、雷。それぞれ異なる属性を帯びた魔術装甲を纏い、四方から襲いかかってくる。
「悪いけど、俺は止まらねぇ!」
洋平は低く身を沈めると、雷属性のゴーレムに向かって突進。
高速で動きながら、その背後に回り込むと、関節部へ狙いすました一撃を叩き込む。
バチン、と火花が散り、動きが一瞬鈍る。
その隙を逃さず、今度は火のゴーレムの懐に飛び込んで盾を弾いた。
(いける……!)
直感が告げる。
このままなら、突破できる。
そう確信しかけた、そのときだった。
「……ぐっ!?」
唐突に足元が揺らいだ。
いや――違う。“揺れた”のではない。
地下から“何か”が魔力を吹き上げ、バランスを乱したのだ。
「試験場地下に魔力の流入……!? 誤作動だと?」
審判たちがざわめく中、試験場の中央にある魔力制御柱が、低く不吉な音を立てて振動を始めた。
洋平は本能的に跳び退く――その直後、地面から赤黒い触手状の呪印が這い出し、ゴーレムの外装に巻きついた。
呪印はたちまち暴走を引き起こす。
ゴーレムは本来の試験プログラムを無視し、無差別な攻撃を開始した。
「くそっ、制御不能か……!」
洋平は歯噛みした。
周囲の見物人が叫び、試験官が制止を呼びかけるが、誰も“暴走”を止められない。
その瞬間、洋平の脳裏に浮かんだのは――翔の姿だった。
あいつなら、こういうとき、絶対に退かない。
むしろ進むんだ。“縁”を信じて。
「なら、俺も――!」
暴走した岩のゴーレムが、巨大な拳を振り上げる。
洋平は踏みとどまり、全力で迎え撃とうとした。
――が。
その拳が叩き込まれる直前、一閃の光が空を断ち割った。
翔だった。
翔が握っていたのは、未完成のままだった“金属輪”。
それが空中で展開し、薄く輝く“縁の結界”を作り出し、拳の直撃を防いだのだ。
「翔……!」
「来るのが遅れて悪い。けど、こっからは一緒に行くぞ、洋平」
翔は一歩踏み出すと、鋼のハンマーを持ち上げ、全身の気配を集中させる。
「……この場で、俺たちの“絆”を鍛え直す」
翔のハンマーが空を裂いた。
まるで空間そのものを打ち据えるようなその動きに、魔力の振動が奔る。
暴走するゴーレムの周囲に、薄紅色の縁の光が重なり、呪印の暴走を押さえ込むように波打った。
「〈リンクフォージ〉発動――対象:洋平、補助属性強化、魂共鳴展開!」
翔の低く呟く声と共に、洋平の槍が淡い光を帯びる。
それは、ただの武器ではなかった。
翔と洋平の“信念の縁”が槍の芯へと注がれ、再構築される。
力強く、まっすぐに、迷いのない槍へと。
その手応えに、洋平は息を呑んだ。
「これは……!」
「“励起の腕輪”だ。お前の“理想を追う胆力”が刻まれてる。俺が、お前の信じる未来を信じるよ」
翔が差し出したのは、銀色の金属輪。
見た目は簡素だが、内側には七重の螺旋刻印が刻まれていた。
それは“自信を鼓舞する”ための精神補助具。
洋平のためだけに鍛えられた、特注の“縁武具”。
「翔……お前、こんなもんを……」
「受け取ってくれ。俺たちが見てきた地獄、守ってきた命、進む道……全部を繋ぐ絆だ」
洋平は無言で腕輪を装着する。
すると、胸の奥から熱が湧いた。
恐怖でも焦燥でもない。
ただ、強く生きたいという――まっすぐな想い。
暴走ゴーレムの咆哮が轟く。
風と火の属性が融合し、新たな混沌を纏って迫る。
だが今度は、洋平の足が止まらなかった。
「翔、縁を信じて飛び込むのが、お前なら……俺は“理想を叩き込む”のが俺のやり方だ!」
槍が唸る。
まっすぐに突き出された刃先が、火風の魔力を裂き、ゴーレムの心核を正確に突き抜けた。
重たい破砕音のあと、魔力の霧が舞う。
審判団がようやく制御装置を再起動し、残る二体のゴーレムも沈黙した。
試験場に静寂が戻る。
そして――拍手が鳴った。
「……試験、合格だ」
審判長の老騎士が、低く言い放ったその言葉は、どこか誇らしげだった。
「妨害に屈せず、仲間との縁で困難を打破する……理想を持つ者に、相応しい判断だった。ランクA認定、異論はない」
洋平は、槍をゆっくりと地に伏せた。
そして、翔と目を合わせる。
「ありがとうな、翔」
「ああ。お前の信じた理想は、俺が信じた縁でもあった」
拳を軽くぶつけ合う、無言の誓い。
その絆は、確かに鍛え上げられた。
だが、この事件は終わりではなかった。
試験場の地下に残された呪印の痕跡は、〈虚無教団〉の仕業を思わせる構造を持っていた。
つまり――これは、ただの試験妨害ではない。
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