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第27話_群青の旗、初陣
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夜が明けきらぬ砂漠の空に、まだ星の光が名残を留めていた。
風は冷たく、乾いた砂を巻き上げる。夜の帳を抜けるように、連合軍の旗がひるがえった。群青と銀の縁が織り込まれた“連環の旗槍”――葵翔の打った旗が、前線に突き立てられていた。
「……まさか、本当に七国連合ができるとはな」
砂丘の陰に身を伏せた洋平が、じりじりと陽が昇る東を見ながらぼやいた。表情は険しいが、その目には迷いがなかった。
「でも、現実だよ。今日がその第一歩」
咲耶が資料と作戦図を膝に乗せたまま、冷静に答える。彼女の声にも、わずかに緊張が混ざる。
ここは砂漠国ザハル南端、かつて交易都市だった廃墟〈ビラ・ザムル〉。現在は〈虚無教団〉の前線基地と化し、補給路と捕虜収容所を兼ねているという情報を得た。
この襲撃作戦は、連合として初めての実戦だった。
「見張り二組、ルート通り交代……タイミングは、予定通り」
知也が幻光石を使って、遠隔視による観測報告を伝える。その横で、琴音はひそひそ声で仲間たちの士気を鼓舞していた。
「大丈夫大丈夫、私たちがついてる! 翔もいるし、咲耶の作戦通りならきっと!」
「よし、行こう」
翔が短く告げ、〈リンクフォージ〉を発動させる。
仲間全員の縁が光り、翔の手元に集束する。その槌から生まれたのは――
「“縁爆槌(えんばくつい)”」
空気が震えた。巨大な砂鉄の槌の内部に、七色の光が宿る。これは、絆によって増幅された衝撃を前方の一点に集中させ、拠点の城門を破壊するために用意された決戦用の道具だった。
翔の後方では、連合軍が二百名超の兵で布陣を整える。
「では、作戦を確認するわ」
咲耶が静かに口を開く。
「翔が“縁爆槌”で正門を粉砕。突入部隊が陽動し、琴音と志保の部隊が捕虜を救出。ブライセンと洋平が側面の魔導塔を制圧、知也が支援と指揮。全体の流れは私が管理する」
「了解!」
全員がうなずくと、翔は深呼吸して砂を蹴った。
夜が明けるその一瞬。旗槍が風を受けた。――初陣の幕が、上がった。
轟音とともに、拠点の正門が爆ぜた。
“縁爆槌”の衝撃波は、砂上を波のように走り、門扉の結界を力任せにねじ伏せた。刻まれた〈教団紋章〉が崩れ、呪符の紙片が舞い散る。
「行けっ!」
翔の号令と同時に、第一突撃隊が駆ける。連合軍の先頭には、鋼製の盾を手にした戦士たちが並ぶ。
すぐ後方、ブライセンと洋平が左右へ分かれ、側面に建つ魔導塔へ向かった。
「教団の術者を放っておくと、正面が持たねえ! 一気に潰すぞ!」
「了解。こっちは任せろ!」
ブライセンは笑いながら風のように駆けた。彼の背には、“潮切りの鍔”が煌めく。彼と翔の縁から生まれた刀身――今や、戦場を裂く主戦武器だ。
一方、洋平は魔導塔に向かいながらも、仲間の後方に視線を向けていた。
(……捕虜たち、頼んだぞ)
その想いに応えるかのように、裏門から回り込んだ琴音と志保の小隊が、隠し通路を抜けて突入する。
通路の先は、教団が収容所としていた瓦礫の蔵屋敷だった。奥からは、震えた声がかすかに漏れる。
「……だ、誰か、助けて……」
琴音が走り出した。言霊のように、彼女の声が場を明るく染める。
「大丈夫! 連合軍です! すぐに、出られます!」
志保が続けて負傷者のもとへ駆け寄り、魔術符で治療を施す。
「怖くない、今は前を向いて。私たちが守るから」
翔と皆との縁が、戦場の各所に息づく。
だがそのとき、知也の幻光石が警告を放った。
「魔導塔から高位術式の発動反応! 空から、来る!」
翔は顔を上げた。
空に、巨大な雷の槍が形成されていた。
青白い雷光が天に螺旋を描き、次の瞬間、凄まじい音とともに雷槍が地上へと撃ち込まれた。
だが、その一撃が地を穿つ寸前――
「〈リンクフォージ〉――縁結界・七重防!」
翔が地面に叩きつけた槌の音と共に、七枚の結界が重なり空を覆った。縁を結んだ仲間たちの絆が、雷を防ぐ盾となる。
雷槍が結界に激突し、白い閃光と衝撃波があたりを包んだ。
しかし結界は砕けない。
咲耶との計画の中で鍛え上げた“重結縁式”が、空からの暴威を食い止めていたのだ。
結界の端で、ブライセンが吼える。
「今だ、翔ォ! こっちは片付いた!」
彼はすでに、塔の一角を崩し終えていた。飛び散る破片をものともせず、ブライセンの鍔が閃光のように走る。
そして反対の塔では、洋平が突入し、術者たちと対峙していた。
「君たちが、どんな理屈で刻印を否定しても……! 人の心まで縛る資格はない!」
叫びとともに、翔が彼との縁から打ち出した“圧縮斧スチームバスター”が吼えるように魔導塔の心臓部へ叩き込まれた。
塔の魔力源が爆ぜ、術者たちは制御を失い散っていく。
翔はそれを見届けながら、主門へと再び目を向けた。
仲間たちが突き進む先には、教団の幹部格――鉄面の魔将が、巨大な二枚刃を構えて立ちはだかっていた。
「俺の番か……」
翔は槌を構え、仲間との縁を再び意識する。
志保の前向きさ、琴音の賑やかさ、知也の静かな支援、洋平の理想、ブライセンの信念、咲耶の冷静な導き。
すべての“縁”が、翔の中で火花を散らして交わる。
「鍛えるぞ。すべてを、力に――!」
翔が振り下ろした“縁爆槌”が、再び轟いた。
爆音とともに地面が裂け、火門の重厚な扉がひしゃげて崩れ落ちた。灼熱の魔炎が吹き出す直前、翔は再び槌を振るい、咲耶との縁から編んだ“冷却縁環”を床に打ち込んだ。
「冷却、展開。これで――通れる!」
火炎を吸収し、縁環は一瞬で氷壁を創出。前線部隊がその隙を逃さず突入する。
城壁上では、琴音が士気を上げるように叫んでいた。
「みんな! 怖がらなくていいよ! 翔くんがちゃんと守ってくれるから!」
その声に合わせて、翔の槌が再び輝く。
「〈リンクフォージ〉――“鼓縁の大太鼓”!」
空中に出現した光の太鼓が、仲間たちの鼓動と同調しながら鳴り響く。勇気を与え、足を軽くし、身体に力を与える戦場の鼓動。
不安に満ちていた兵たちの顔が、少しずつ戦士のそれへと変わっていく。
そしてその最前線で――知也が冷静に布陣を敷いていた。
「後衛は、ここで結界を展開する。射手はこのラインを守ってくれ」
静かに、しかし確実に指示が通る。翔の鍛えた“縁索の眼鏡”で戦場の流れを読み、支援魔法の配置を最適化する。
縁の力が、ひとつずつ戦場の流れを掌握していく。
そして――最後の障壁、教団の副将が槍を構えて前に出た。
翔は仲間たちとの“連環縁”を最大限に活用し、最後の鍛造に取りかかる。
「全員との縁を、今この場に結実させる!」
槌が天へ、地へ、心へと打ち下ろされる。
「〈リンクフォージ〉最終工程――“群青連鎖ハルバード”!」
七色の縁が交差し、巨大な双刃の斧槍が翔の手に出現する。
それは、仲間全員の信念と歩みを象った、翔にしか作れない最強の武器。
翔がそれを掲げると、背後の兵士たちが歓声を上げた。
「群青の旗だ……!」
「縁鎖の、連合の象徴だ!」
そして――翔は駆けた。
刃の軌道は、空を割り、敵の障壁を断ち、幾重にも重なった絶望を破った。
初陣の地に、群青の旗が、ついに翻る。
風は冷たく、乾いた砂を巻き上げる。夜の帳を抜けるように、連合軍の旗がひるがえった。群青と銀の縁が織り込まれた“連環の旗槍”――葵翔の打った旗が、前線に突き立てられていた。
「……まさか、本当に七国連合ができるとはな」
砂丘の陰に身を伏せた洋平が、じりじりと陽が昇る東を見ながらぼやいた。表情は険しいが、その目には迷いがなかった。
「でも、現実だよ。今日がその第一歩」
咲耶が資料と作戦図を膝に乗せたまま、冷静に答える。彼女の声にも、わずかに緊張が混ざる。
ここは砂漠国ザハル南端、かつて交易都市だった廃墟〈ビラ・ザムル〉。現在は〈虚無教団〉の前線基地と化し、補給路と捕虜収容所を兼ねているという情報を得た。
この襲撃作戦は、連合として初めての実戦だった。
「見張り二組、ルート通り交代……タイミングは、予定通り」
知也が幻光石を使って、遠隔視による観測報告を伝える。その横で、琴音はひそひそ声で仲間たちの士気を鼓舞していた。
「大丈夫大丈夫、私たちがついてる! 翔もいるし、咲耶の作戦通りならきっと!」
「よし、行こう」
翔が短く告げ、〈リンクフォージ〉を発動させる。
仲間全員の縁が光り、翔の手元に集束する。その槌から生まれたのは――
「“縁爆槌(えんばくつい)”」
空気が震えた。巨大な砂鉄の槌の内部に、七色の光が宿る。これは、絆によって増幅された衝撃を前方の一点に集中させ、拠点の城門を破壊するために用意された決戦用の道具だった。
翔の後方では、連合軍が二百名超の兵で布陣を整える。
「では、作戦を確認するわ」
咲耶が静かに口を開く。
「翔が“縁爆槌”で正門を粉砕。突入部隊が陽動し、琴音と志保の部隊が捕虜を救出。ブライセンと洋平が側面の魔導塔を制圧、知也が支援と指揮。全体の流れは私が管理する」
「了解!」
全員がうなずくと、翔は深呼吸して砂を蹴った。
夜が明けるその一瞬。旗槍が風を受けた。――初陣の幕が、上がった。
轟音とともに、拠点の正門が爆ぜた。
“縁爆槌”の衝撃波は、砂上を波のように走り、門扉の結界を力任せにねじ伏せた。刻まれた〈教団紋章〉が崩れ、呪符の紙片が舞い散る。
「行けっ!」
翔の号令と同時に、第一突撃隊が駆ける。連合軍の先頭には、鋼製の盾を手にした戦士たちが並ぶ。
すぐ後方、ブライセンと洋平が左右へ分かれ、側面に建つ魔導塔へ向かった。
「教団の術者を放っておくと、正面が持たねえ! 一気に潰すぞ!」
「了解。こっちは任せろ!」
ブライセンは笑いながら風のように駆けた。彼の背には、“潮切りの鍔”が煌めく。彼と翔の縁から生まれた刀身――今や、戦場を裂く主戦武器だ。
一方、洋平は魔導塔に向かいながらも、仲間の後方に視線を向けていた。
(……捕虜たち、頼んだぞ)
その想いに応えるかのように、裏門から回り込んだ琴音と志保の小隊が、隠し通路を抜けて突入する。
通路の先は、教団が収容所としていた瓦礫の蔵屋敷だった。奥からは、震えた声がかすかに漏れる。
「……だ、誰か、助けて……」
琴音が走り出した。言霊のように、彼女の声が場を明るく染める。
「大丈夫! 連合軍です! すぐに、出られます!」
志保が続けて負傷者のもとへ駆け寄り、魔術符で治療を施す。
「怖くない、今は前を向いて。私たちが守るから」
翔と皆との縁が、戦場の各所に息づく。
だがそのとき、知也の幻光石が警告を放った。
「魔導塔から高位術式の発動反応! 空から、来る!」
翔は顔を上げた。
空に、巨大な雷の槍が形成されていた。
青白い雷光が天に螺旋を描き、次の瞬間、凄まじい音とともに雷槍が地上へと撃ち込まれた。
だが、その一撃が地を穿つ寸前――
「〈リンクフォージ〉――縁結界・七重防!」
翔が地面に叩きつけた槌の音と共に、七枚の結界が重なり空を覆った。縁を結んだ仲間たちの絆が、雷を防ぐ盾となる。
雷槍が結界に激突し、白い閃光と衝撃波があたりを包んだ。
しかし結界は砕けない。
咲耶との計画の中で鍛え上げた“重結縁式”が、空からの暴威を食い止めていたのだ。
結界の端で、ブライセンが吼える。
「今だ、翔ォ! こっちは片付いた!」
彼はすでに、塔の一角を崩し終えていた。飛び散る破片をものともせず、ブライセンの鍔が閃光のように走る。
そして反対の塔では、洋平が突入し、術者たちと対峙していた。
「君たちが、どんな理屈で刻印を否定しても……! 人の心まで縛る資格はない!」
叫びとともに、翔が彼との縁から打ち出した“圧縮斧スチームバスター”が吼えるように魔導塔の心臓部へ叩き込まれた。
塔の魔力源が爆ぜ、術者たちは制御を失い散っていく。
翔はそれを見届けながら、主門へと再び目を向けた。
仲間たちが突き進む先には、教団の幹部格――鉄面の魔将が、巨大な二枚刃を構えて立ちはだかっていた。
「俺の番か……」
翔は槌を構え、仲間との縁を再び意識する。
志保の前向きさ、琴音の賑やかさ、知也の静かな支援、洋平の理想、ブライセンの信念、咲耶の冷静な導き。
すべての“縁”が、翔の中で火花を散らして交わる。
「鍛えるぞ。すべてを、力に――!」
翔が振り下ろした“縁爆槌”が、再び轟いた。
爆音とともに地面が裂け、火門の重厚な扉がひしゃげて崩れ落ちた。灼熱の魔炎が吹き出す直前、翔は再び槌を振るい、咲耶との縁から編んだ“冷却縁環”を床に打ち込んだ。
「冷却、展開。これで――通れる!」
火炎を吸収し、縁環は一瞬で氷壁を創出。前線部隊がその隙を逃さず突入する。
城壁上では、琴音が士気を上げるように叫んでいた。
「みんな! 怖がらなくていいよ! 翔くんがちゃんと守ってくれるから!」
その声に合わせて、翔の槌が再び輝く。
「〈リンクフォージ〉――“鼓縁の大太鼓”!」
空中に出現した光の太鼓が、仲間たちの鼓動と同調しながら鳴り響く。勇気を与え、足を軽くし、身体に力を与える戦場の鼓動。
不安に満ちていた兵たちの顔が、少しずつ戦士のそれへと変わっていく。
そしてその最前線で――知也が冷静に布陣を敷いていた。
「後衛は、ここで結界を展開する。射手はこのラインを守ってくれ」
静かに、しかし確実に指示が通る。翔の鍛えた“縁索の眼鏡”で戦場の流れを読み、支援魔法の配置を最適化する。
縁の力が、ひとつずつ戦場の流れを掌握していく。
そして――最後の障壁、教団の副将が槍を構えて前に出た。
翔は仲間たちとの“連環縁”を最大限に活用し、最後の鍛造に取りかかる。
「全員との縁を、今この場に結実させる!」
槌が天へ、地へ、心へと打ち下ろされる。
「〈リンクフォージ〉最終工程――“群青連鎖ハルバード”!」
七色の縁が交差し、巨大な双刃の斧槍が翔の手に出現する。
それは、仲間全員の信念と歩みを象った、翔にしか作れない最強の武器。
翔がそれを掲げると、背後の兵士たちが歓声を上げた。
「群青の旗だ……!」
「縁鎖の、連合の象徴だ!」
そして――翔は駆けた。
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