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第30話_縁鎖の共鳴、蒼穹へ
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――黎明。
黒曜峰を覆う濃紺の影が、朝焼けに溶けはじめる頃。連合軍主力部隊は、風を切り裂くように尾根を駆けていた。
要塞攻略、決行の刻が来たのだ。
「前衛、伏せろ! 第二射くるぞ!」
咲耶の鋭い声が飛ぶと同時に、山頂から赤い閃光が放たれた。魂鋳炉が出力する“魔動投射弾”が空を裂き、岩場に着弾。爆風が地を抉り、兵たちが吹き飛ばされる。
だが、次の瞬間には知也の支援魔法が空を滑って包み込み、負傷者の転落を防いだ。
「包囲魔術陣、起動。範囲、五十メートル。……まだいける」
呟くような言葉と共に、知也の足元に織り込まれた魔方陣が光を放つ。
翔は、咲耶から渡された戦略図を開きながら、周囲の仲間を見渡した。
ブライセンは先陣を切り、斜面を滑るように登っていく。
琴音は味方の士気を高めるように声を張り上げ、笑いながら罵声を飛ばす。
志保は背後の野戦治療所で負傷兵の腕を取り、「大丈夫」とだけ囁いた。
その光景を見て、翔は大きく息を吸い込む。
――この“縁”を、ひとつに束ねる。今こそ、〈リンクフォージ〉の真価を問う時だ。
「翔、こっちは準備できた!」咲耶が駆け寄る。
「連合選抜、五大侯国からの精鋭、全部揃ったわ」
「……わかった」
翔は鍛冶槌を手にした。仲間たちの名を順に呟きながら、集めた縁の素材――彼らの想い、誓い、記憶、そしてこの戦場にいる全員の“願い”を火床へと注ぎ込む。
「すべての縁よ、共鳴せよ……」
高熱が舞い上がる。風が唸り、天を裂くような音が響く。
翔の槌が打ち下ろされるたびに、空が鳴いた。七人の仲間との絆が光の環となって鍛冶場に注ぎ込まれ、翔の腕と心に重なる。
――七の縁、そしてこの戦場のすべての絆。
翔のスキル〈リンクフォージ〉が限界を超えて、ついに“八重の共鳴”に至った。
翔が最後に振り下ろした一撃は、光と雷と風を纏い――
その中心から現れたのは、かつてない長大な戦槌。
「“群青連鎖ハルバード”――完成だ」
翔の手に握られた“群青連鎖ハルバード”は、まさに異形の戦槌だった。柄は七種の金属で編まれ、刃部は透き通る蒼の水晶と黒鉄の縁が絡み合う。刃の中心に灯った光は、仲間たちの記憶を宿す火種そのものだ。
咲耶が、それを見て頷いた。「翔、今のあんたなら、この戦場を貫ける。いって」
翔は深く頷くと、ハルバードを肩に担ぎ上げた。
「ブライセン、突破口を頼む」
「おうよ! 任せろ翔、道なら俺がぶち開ける!」
ブライセンが地を蹴った。疾風のごとく前線に躍り出る。敵の投射弾をものともせず、翔が鍛えた“潮切り鍔”を投げつけて前線の魔導砲を真っ二つに割った。
琴音がその背後で雄叫びを上げる。「みんな! ついてくるよ! ぶち破ろう、今日という日を!」
士気は一気に頂点に達した。
知也は支援陣を張り直し、魔術を絶え間なく供給する。志保は新たな傷兵に駆け寄りながら、静かに微笑む。「大丈夫、みんながいるから。縁は、あなたを絶対に置いていかない」
そして翔が、ハルバードを構えたまま一歩踏み出す。
「――行くぞ」
その声と同時に、“群青連鎖ハルバード”が唸りを上げた。刃が光の輪を描き、空に放たれる。連鎖する蒼い輝きが、要塞の前面を覆う魂鋳炉の障壁に突き刺さる。
──ガギィィィンッ!
凄まじい破砕音とともに、結界が一部砕け散った。連合軍の兵が歓声を上げる。
咲耶が叫ぶ。「翔、右側の動力炉が空いた! そこから突入して!」
翔は頷くと、駆けた。その後ろに、仲間たちが並走する。
そして、翔は振り返らずに呟いた。
「――縁を、鍛える。それが俺の戦い方だ」
黒曜峰要塞の動力炉前に、翔たちは辿り着いた。石壁に刻まれた呪刻は既に活性化しており、侵入を拒むように火花を散らす。
「知也!」翔が叫ぶ。
「展開する、三秒!」
知也の掌から魔力陣が放たれた。連携魔法《静圏転写陣》。敵の防壁魔術を一時的に“音”の領域に変換し、触れずに通り抜ける奇跡の術式だ。
翔は迷わず飛び込んだ。咲耶が横に走り、「内部構造は第三資料で確認済み! 左手側に魂鋳炉があるはず!」
要塞内部は薄暗く、熱と機械音が満ちていた。すでに敵兵の姿はなく、魂を練り上げる《鋳炉管》が赤く脈動している。
「ここが……教団が兵を生み出していた場所……」志保が呟いた。
咲耶が頷いた。「早く、停止させないと」
翔は目を閉じ、仲間たちの気配を束ねるように集中する。
「――リンクフォージ、起動」
魂鋳炉に向かい、翔は“群青連鎖ハルバード”を大きく振りかぶった。刃の縁が、咲耶の綿密な計画、知也の支援魔術、ブライセンの突撃、琴音の士気高揚、志保の看護、そしてクリスティーナが護る側面防衛……すべての“縁”を共鳴させる。
翔は叫ぶように振り下ろした。
「砕けろ、“魂を縛る鎖”!」
刃が魂鋳炉に叩き込まれる。瞬間、爆風のような魔力が逆流し、部屋全体が蒼白い閃光に包まれた。
音が、消えた。
翔は、ただ目の前の空間を見つめていた。
砕けた炉の断片。噴き出した魔力の残滓。そして、燃え尽きた魂の叫びが、ただ静かに、終わりを告げていた。
咲耶が息をのむ。「やった……止まった……!」
ブライセンが肩で息をしながら笑った。「へっ、さすがだぜ翔。あのハルバード、本物だったな」
翔は頷く。「ああ。みんなの力があったから、だ」
クリスティーナが静かに呟いた。「これで、奴らの“兵器”は終わり。次は……巫王、ね」
志保が微笑む。「うん。でもきっと、大丈夫。私たちの“縁”は、もうこんなに強いから」
翔は、ハルバードを見つめた。それはまだ、蒼く微かに脈動していた。
絆は、終わらない。どこまでも、続いていく。
黒曜峰を覆う濃紺の影が、朝焼けに溶けはじめる頃。連合軍主力部隊は、風を切り裂くように尾根を駆けていた。
要塞攻略、決行の刻が来たのだ。
「前衛、伏せろ! 第二射くるぞ!」
咲耶の鋭い声が飛ぶと同時に、山頂から赤い閃光が放たれた。魂鋳炉が出力する“魔動投射弾”が空を裂き、岩場に着弾。爆風が地を抉り、兵たちが吹き飛ばされる。
だが、次の瞬間には知也の支援魔法が空を滑って包み込み、負傷者の転落を防いだ。
「包囲魔術陣、起動。範囲、五十メートル。……まだいける」
呟くような言葉と共に、知也の足元に織り込まれた魔方陣が光を放つ。
翔は、咲耶から渡された戦略図を開きながら、周囲の仲間を見渡した。
ブライセンは先陣を切り、斜面を滑るように登っていく。
琴音は味方の士気を高めるように声を張り上げ、笑いながら罵声を飛ばす。
志保は背後の野戦治療所で負傷兵の腕を取り、「大丈夫」とだけ囁いた。
その光景を見て、翔は大きく息を吸い込む。
――この“縁”を、ひとつに束ねる。今こそ、〈リンクフォージ〉の真価を問う時だ。
「翔、こっちは準備できた!」咲耶が駆け寄る。
「連合選抜、五大侯国からの精鋭、全部揃ったわ」
「……わかった」
翔は鍛冶槌を手にした。仲間たちの名を順に呟きながら、集めた縁の素材――彼らの想い、誓い、記憶、そしてこの戦場にいる全員の“願い”を火床へと注ぎ込む。
「すべての縁よ、共鳴せよ……」
高熱が舞い上がる。風が唸り、天を裂くような音が響く。
翔の槌が打ち下ろされるたびに、空が鳴いた。七人の仲間との絆が光の環となって鍛冶場に注ぎ込まれ、翔の腕と心に重なる。
――七の縁、そしてこの戦場のすべての絆。
翔のスキル〈リンクフォージ〉が限界を超えて、ついに“八重の共鳴”に至った。
翔が最後に振り下ろした一撃は、光と雷と風を纏い――
その中心から現れたのは、かつてない長大な戦槌。
「“群青連鎖ハルバード”――完成だ」
翔の手に握られた“群青連鎖ハルバード”は、まさに異形の戦槌だった。柄は七種の金属で編まれ、刃部は透き通る蒼の水晶と黒鉄の縁が絡み合う。刃の中心に灯った光は、仲間たちの記憶を宿す火種そのものだ。
咲耶が、それを見て頷いた。「翔、今のあんたなら、この戦場を貫ける。いって」
翔は深く頷くと、ハルバードを肩に担ぎ上げた。
「ブライセン、突破口を頼む」
「おうよ! 任せろ翔、道なら俺がぶち開ける!」
ブライセンが地を蹴った。疾風のごとく前線に躍り出る。敵の投射弾をものともせず、翔が鍛えた“潮切り鍔”を投げつけて前線の魔導砲を真っ二つに割った。
琴音がその背後で雄叫びを上げる。「みんな! ついてくるよ! ぶち破ろう、今日という日を!」
士気は一気に頂点に達した。
知也は支援陣を張り直し、魔術を絶え間なく供給する。志保は新たな傷兵に駆け寄りながら、静かに微笑む。「大丈夫、みんながいるから。縁は、あなたを絶対に置いていかない」
そして翔が、ハルバードを構えたまま一歩踏み出す。
「――行くぞ」
その声と同時に、“群青連鎖ハルバード”が唸りを上げた。刃が光の輪を描き、空に放たれる。連鎖する蒼い輝きが、要塞の前面を覆う魂鋳炉の障壁に突き刺さる。
──ガギィィィンッ!
凄まじい破砕音とともに、結界が一部砕け散った。連合軍の兵が歓声を上げる。
咲耶が叫ぶ。「翔、右側の動力炉が空いた! そこから突入して!」
翔は頷くと、駆けた。その後ろに、仲間たちが並走する。
そして、翔は振り返らずに呟いた。
「――縁を、鍛える。それが俺の戦い方だ」
黒曜峰要塞の動力炉前に、翔たちは辿り着いた。石壁に刻まれた呪刻は既に活性化しており、侵入を拒むように火花を散らす。
「知也!」翔が叫ぶ。
「展開する、三秒!」
知也の掌から魔力陣が放たれた。連携魔法《静圏転写陣》。敵の防壁魔術を一時的に“音”の領域に変換し、触れずに通り抜ける奇跡の術式だ。
翔は迷わず飛び込んだ。咲耶が横に走り、「内部構造は第三資料で確認済み! 左手側に魂鋳炉があるはず!」
要塞内部は薄暗く、熱と機械音が満ちていた。すでに敵兵の姿はなく、魂を練り上げる《鋳炉管》が赤く脈動している。
「ここが……教団が兵を生み出していた場所……」志保が呟いた。
咲耶が頷いた。「早く、停止させないと」
翔は目を閉じ、仲間たちの気配を束ねるように集中する。
「――リンクフォージ、起動」
魂鋳炉に向かい、翔は“群青連鎖ハルバード”を大きく振りかぶった。刃の縁が、咲耶の綿密な計画、知也の支援魔術、ブライセンの突撃、琴音の士気高揚、志保の看護、そしてクリスティーナが護る側面防衛……すべての“縁”を共鳴させる。
翔は叫ぶように振り下ろした。
「砕けろ、“魂を縛る鎖”!」
刃が魂鋳炉に叩き込まれる。瞬間、爆風のような魔力が逆流し、部屋全体が蒼白い閃光に包まれた。
音が、消えた。
翔は、ただ目の前の空間を見つめていた。
砕けた炉の断片。噴き出した魔力の残滓。そして、燃え尽きた魂の叫びが、ただ静かに、終わりを告げていた。
咲耶が息をのむ。「やった……止まった……!」
ブライセンが肩で息をしながら笑った。「へっ、さすがだぜ翔。あのハルバード、本物だったな」
翔は頷く。「ああ。みんなの力があったから、だ」
クリスティーナが静かに呟いた。「これで、奴らの“兵器”は終わり。次は……巫王、ね」
志保が微笑む。「うん。でもきっと、大丈夫。私たちの“縁”は、もうこんなに強いから」
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