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第36話_外洋の勇、雨を裂く
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それは、容赦のない雨だった。
空は鈍く曇り、王都リオストの外縁地帯に荒れ狂う豪雨が降りしきる。地表を叩き、傘も意味を成さぬほどの風が地を削っていた。
「まるで、雨自体が敵みたいだな……」
濡れた髪をかき上げながら、ブライセンが呟く。彼は外洋仕込みの分厚いコートを羽織り、背に巨大な弯刀を抱えていた。
その足元に、水たまりの中に呪符が混じって浮かんでいるのを見て、翔が唸る。
「呪術だ。……天候そのものを制御して、視界も足も奪う作戦だな」
ブライセンは手にしていたタオルをぐしゃりと絞ると、豪快に笑った。
「なるほど、面白いじゃねぇか。だったら逆に、この雨をぶった切れば、敵の目論見も崩れるってわけだ!」
「……言うと思った」
翔は淡く笑みを漏らすと、リンクフォージの構えを取った。雨音が反響する中、彼の周囲に淡い光が立ち昇る。
「ブライセンとの“縁”、今こそ鍛える……!」
翔のスキル〈リンクフォージ〉が発動すると、ふたりの間に生まれた信頼、共闘の記憶、そして笑い合った時間が光の鎖となって形を成してゆく。
翔が打ち下ろした鍛造槌から、銀青の輝きが炸裂した。地面の呪符が震え、雷光のごとく一条の閃きが空へ走る。
「できた……! “縁結雷槌(えんけつらいつい)”!」
それは雷鳴を帯びた大槌であり、同時に呪いの霧を砕く閃電そのものだった。
「ブライセン、任せた!」
「おうとも!」
ブライセンは叫び、背の弯刀“潮切りの鍔”を構えた。雨を裂くために作られた翔の神器。それがいま、嵐の中で真の威力を発揮する。
暴風のなか、彼は走った。雷槌の轟きが地を揺らし、雨を貫く音が鳴り響く。
そして、ブライセンの叫びが、雷鳴を割って響いた。
「――おらぁッ! 空も海も、この剣で割ってきた! 雨ごときで止まってたまるかッ!」
それは、容赦のない雨だった。
空は鈍く曇り、王都リオストの外縁地帯に荒れ狂う豪雨が降りしきる。地表を叩き、傘も意味を成さぬほどの風が地を削っていた。
「まるで、雨自体が敵みたいだな……」
濡れた髪をかき上げながら、ブライセンが呟く。彼は外洋仕込みの分厚いコートを羽織り、背に巨大な弯刀を抱えていた。
その足元に、水たまりの中に呪符が混じって浮かんでいるのを見て、翔が唸る。
「呪術だ。……天候そのものを制御して、視界も足も奪う作戦だな」
ブライセンは手にしていたタオルをぐしゃりと絞ると、豪快に笑った。
「なるほど、面白いじゃねぇか。だったら逆に、この雨をぶった切れば、敵の目論見も崩れるってわけだ!」
「……言うと思った」
翔は淡く笑みを漏らすと、リンクフォージの構えを取った。雨音が反響する中、彼の周囲に淡い光が立ち昇る。
「ブライセンとの“縁”、今こそ鍛える……!」
翔のスキル〈リンクフォージ〉が発動すると、ふたりの間に生まれた信頼、共闘の記憶、そして笑い合った時間が光の鎖となって形を成してゆく。
翔が打ち下ろした鍛造槌から、銀青の輝きが炸裂した。地面の呪符が震え、雷光のごとく一条の閃きが空へ走る。
「できた……! “縁結雷槌(えんけつらいつい)”!」
それは雷鳴を帯びた大槌であり、同時に呪いの霧を砕く閃電そのものだった。
「ブライセン、任せた!」
「おうとも!」
ブライセンは叫び、背の弯刀“潮切りの鍔”を構えた。雨を裂くために作られた翔の神器。それがいま、嵐の中で真の威力を発揮する。
暴風のなか、彼は走った。雷槌の轟きが地を揺らし、雨を貫く音が鳴り響く。
そして、ブライセンの叫びが、雷鳴を割って響いた。
「――おらぁッ! 空も海も、この剣で割ってきた! 雨ごときで止まってたまるかッ!」
霧のような雨を縫うように、ブライセンの剣が踊る。風を切る音すら雷にかき消されるほど、彼の一撃は暴風と雨を裂いた。
“潮切りの鍔”が空間ごと水の膜を断ち、まるでそこだけ空が晴れたかのような道が生まれる。
その開かれた空間を目指して、翔と連合斥候部隊が突入した。
「右の尾根に、幻術の刻印塔がある! クリスティーナが言ってた場所と一致する!」
咲耶の通信術が翔の耳元に届く。防水符を貼った水晶伝話器を通じて、情報が細かく送られてくる。
「砲撃班、塔の基部を狙って!」
翔は雷槌を掲げた。咲耶と繋がる縁が輝き、空中に塔の座標が浮かび上がる。魔術地図と連携するサポートスキル“縁理図”がその威力を発揮した。
ブライセンは振り返りもせず叫んだ。
「塔は任せた! こっちはまだ何体か来やがるぜ!」
霧の中、黒装束の敵兵が次々と姿を現す。巫王配下の幻術兵たちだ。
その目は濁ったまま表情を持たず、ただ命じられた通りに進む。
「厄介だな。見た目は人間なのに……感情も意思も、削ぎ落とされた人形みたいだ」
翔は雷槌を横に振るい、縁の残滓を照らした。
“縁視”の力で、敵の繋がりがわずかに赤黒く見えた。
「幻術の発信源はまだ複数ある。ブライセン、あいつらの足を止められるか?」
「止める必要はねぇ。ぶっ飛ばしゃいいんだろ?」
彼は笑うと、わずかに躊躇いも見せず突っ込んだ。雨粒を弾き、剣は真っ直ぐ敵兵へ突き刺さる――かに見えた。
しかし、敵兵は霧のように掻き消えた。
「……本体じゃねぇってのか」
その瞬間、翔の縁視が光った。
「ブライセン、後ろ!」
咄嗟に反転した彼の剣が、背後の幻影を裂く。だが次の瞬間、両側からさらに三体が迫る。
翔は咄嗟に“縁結雷槌”を地面に叩きつけた。大地に雷が走り、敵の呪縛術式が爆ぜる。
「数で来るなら、まとめて砕くまでだ!」
ブライセンが再び大剣を構えた。今度は空を見上げると、咆哮する。
「――見せてやるよ、外洋の勇の本気を!」
ブライセンの大剣が天を貫いた瞬間、〈潮切りの鍔〉に刻まれた異国の紋様が光を放つ。霧が渦を巻き、彼の足元から風が吹き上がるように水流が逆流した。
「“荒潮の追風”――!」
それは彼の母国、外洋諸島に伝わる古技。信念を刃に宿したとき、剣が自然の力を引き出すという。
咆哮とともに、ブライセンは空を裂いた。
斜めに振るわれた剣が、まるで波を断つように霧を一刀両断する。
その軌跡が風の道を拓き、翔たちに視界を与えた。
「今だ!」
翔は駆けながら縁を選び取る。
“咲耶の策”――仲間の信頼――“この国を守りたいという想い”。
それらを縒り合わせ、雷槌の柄に打ち込んだ。
「リンクフォージ展開、〈縁結雷槌・双撃形態〉!」
槌の頭が二つに割れ、それぞれが別方向へ雷を走らせる。
一つは塔の基部へ、もう一つは幻術陣を刻んだ地面の中心へ。
雷光が地を這い、術式が崩壊する音が雨音に混じって響く。
霧が、裂けていく。
幻術が切れたのだ。敵兵たちの影が実体を取り戻し、混乱に揺らぐ。
「今だ、前線押し上げ!」
咲耶の命令が伝令陣を通じて全体へ届いた。
クリスティーナの狙撃が上空の敵魔導士を射抜き、琴音の“士気鼓舞の言葉”が背後から兵士たちを励ます。
戦線がじわじわと進む。
翔は立ち止まり、息を整えたブライセンに視線を送った。
「……ありがとう。君の一撃が、道を拓いた」
「礼はいらねぇさ、相棒の仕事だろ?」
ブライセンはにっと笑って、剣を肩に担ぐ。
「それに……雨を裂くってのは、男の浪漫だからな」
翔は吹き出しそうになるのを堪えた。
だが、その茶化しの裏にある“信じ抜く強さ”が、今の戦況を変えたのだ。
この戦いは、まだ前哨戦に過ぎない。
巫王配下の術者は散らばり、いずれ本陣が動く。けれども――。
「縁の力で、雨すら裂ける。だったら、この先もきっと進める」
握り直した雷槌の感触が、仲間との絆の証だった。
空は鈍く曇り、王都リオストの外縁地帯に荒れ狂う豪雨が降りしきる。地表を叩き、傘も意味を成さぬほどの風が地を削っていた。
「まるで、雨自体が敵みたいだな……」
濡れた髪をかき上げながら、ブライセンが呟く。彼は外洋仕込みの分厚いコートを羽織り、背に巨大な弯刀を抱えていた。
その足元に、水たまりの中に呪符が混じって浮かんでいるのを見て、翔が唸る。
「呪術だ。……天候そのものを制御して、視界も足も奪う作戦だな」
ブライセンは手にしていたタオルをぐしゃりと絞ると、豪快に笑った。
「なるほど、面白いじゃねぇか。だったら逆に、この雨をぶった切れば、敵の目論見も崩れるってわけだ!」
「……言うと思った」
翔は淡く笑みを漏らすと、リンクフォージの構えを取った。雨音が反響する中、彼の周囲に淡い光が立ち昇る。
「ブライセンとの“縁”、今こそ鍛える……!」
翔のスキル〈リンクフォージ〉が発動すると、ふたりの間に生まれた信頼、共闘の記憶、そして笑い合った時間が光の鎖となって形を成してゆく。
翔が打ち下ろした鍛造槌から、銀青の輝きが炸裂した。地面の呪符が震え、雷光のごとく一条の閃きが空へ走る。
「できた……! “縁結雷槌(えんけつらいつい)”!」
それは雷鳴を帯びた大槌であり、同時に呪いの霧を砕く閃電そのものだった。
「ブライセン、任せた!」
「おうとも!」
ブライセンは叫び、背の弯刀“潮切りの鍔”を構えた。雨を裂くために作られた翔の神器。それがいま、嵐の中で真の威力を発揮する。
暴風のなか、彼は走った。雷槌の轟きが地を揺らし、雨を貫く音が鳴り響く。
そして、ブライセンの叫びが、雷鳴を割って響いた。
「――おらぁッ! 空も海も、この剣で割ってきた! 雨ごときで止まってたまるかッ!」
それは、容赦のない雨だった。
空は鈍く曇り、王都リオストの外縁地帯に荒れ狂う豪雨が降りしきる。地表を叩き、傘も意味を成さぬほどの風が地を削っていた。
「まるで、雨自体が敵みたいだな……」
濡れた髪をかき上げながら、ブライセンが呟く。彼は外洋仕込みの分厚いコートを羽織り、背に巨大な弯刀を抱えていた。
その足元に、水たまりの中に呪符が混じって浮かんでいるのを見て、翔が唸る。
「呪術だ。……天候そのものを制御して、視界も足も奪う作戦だな」
ブライセンは手にしていたタオルをぐしゃりと絞ると、豪快に笑った。
「なるほど、面白いじゃねぇか。だったら逆に、この雨をぶった切れば、敵の目論見も崩れるってわけだ!」
「……言うと思った」
翔は淡く笑みを漏らすと、リンクフォージの構えを取った。雨音が反響する中、彼の周囲に淡い光が立ち昇る。
「ブライセンとの“縁”、今こそ鍛える……!」
翔のスキル〈リンクフォージ〉が発動すると、ふたりの間に生まれた信頼、共闘の記憶、そして笑い合った時間が光の鎖となって形を成してゆく。
翔が打ち下ろした鍛造槌から、銀青の輝きが炸裂した。地面の呪符が震え、雷光のごとく一条の閃きが空へ走る。
「できた……! “縁結雷槌(えんけつらいつい)”!」
それは雷鳴を帯びた大槌であり、同時に呪いの霧を砕く閃電そのものだった。
「ブライセン、任せた!」
「おうとも!」
ブライセンは叫び、背の弯刀“潮切りの鍔”を構えた。雨を裂くために作られた翔の神器。それがいま、嵐の中で真の威力を発揮する。
暴風のなか、彼は走った。雷槌の轟きが地を揺らし、雨を貫く音が鳴り響く。
そして、ブライセンの叫びが、雷鳴を割って響いた。
「――おらぁッ! 空も海も、この剣で割ってきた! 雨ごときで止まってたまるかッ!」
霧のような雨を縫うように、ブライセンの剣が踊る。風を切る音すら雷にかき消されるほど、彼の一撃は暴風と雨を裂いた。
“潮切りの鍔”が空間ごと水の膜を断ち、まるでそこだけ空が晴れたかのような道が生まれる。
その開かれた空間を目指して、翔と連合斥候部隊が突入した。
「右の尾根に、幻術の刻印塔がある! クリスティーナが言ってた場所と一致する!」
咲耶の通信術が翔の耳元に届く。防水符を貼った水晶伝話器を通じて、情報が細かく送られてくる。
「砲撃班、塔の基部を狙って!」
翔は雷槌を掲げた。咲耶と繋がる縁が輝き、空中に塔の座標が浮かび上がる。魔術地図と連携するサポートスキル“縁理図”がその威力を発揮した。
ブライセンは振り返りもせず叫んだ。
「塔は任せた! こっちはまだ何体か来やがるぜ!」
霧の中、黒装束の敵兵が次々と姿を現す。巫王配下の幻術兵たちだ。
その目は濁ったまま表情を持たず、ただ命じられた通りに進む。
「厄介だな。見た目は人間なのに……感情も意思も、削ぎ落とされた人形みたいだ」
翔は雷槌を横に振るい、縁の残滓を照らした。
“縁視”の力で、敵の繋がりがわずかに赤黒く見えた。
「幻術の発信源はまだ複数ある。ブライセン、あいつらの足を止められるか?」
「止める必要はねぇ。ぶっ飛ばしゃいいんだろ?」
彼は笑うと、わずかに躊躇いも見せず突っ込んだ。雨粒を弾き、剣は真っ直ぐ敵兵へ突き刺さる――かに見えた。
しかし、敵兵は霧のように掻き消えた。
「……本体じゃねぇってのか」
その瞬間、翔の縁視が光った。
「ブライセン、後ろ!」
咄嗟に反転した彼の剣が、背後の幻影を裂く。だが次の瞬間、両側からさらに三体が迫る。
翔は咄嗟に“縁結雷槌”を地面に叩きつけた。大地に雷が走り、敵の呪縛術式が爆ぜる。
「数で来るなら、まとめて砕くまでだ!」
ブライセンが再び大剣を構えた。今度は空を見上げると、咆哮する。
「――見せてやるよ、外洋の勇の本気を!」
ブライセンの大剣が天を貫いた瞬間、〈潮切りの鍔〉に刻まれた異国の紋様が光を放つ。霧が渦を巻き、彼の足元から風が吹き上がるように水流が逆流した。
「“荒潮の追風”――!」
それは彼の母国、外洋諸島に伝わる古技。信念を刃に宿したとき、剣が自然の力を引き出すという。
咆哮とともに、ブライセンは空を裂いた。
斜めに振るわれた剣が、まるで波を断つように霧を一刀両断する。
その軌跡が風の道を拓き、翔たちに視界を与えた。
「今だ!」
翔は駆けながら縁を選び取る。
“咲耶の策”――仲間の信頼――“この国を守りたいという想い”。
それらを縒り合わせ、雷槌の柄に打ち込んだ。
「リンクフォージ展開、〈縁結雷槌・双撃形態〉!」
槌の頭が二つに割れ、それぞれが別方向へ雷を走らせる。
一つは塔の基部へ、もう一つは幻術陣を刻んだ地面の中心へ。
雷光が地を這い、術式が崩壊する音が雨音に混じって響く。
霧が、裂けていく。
幻術が切れたのだ。敵兵たちの影が実体を取り戻し、混乱に揺らぐ。
「今だ、前線押し上げ!」
咲耶の命令が伝令陣を通じて全体へ届いた。
クリスティーナの狙撃が上空の敵魔導士を射抜き、琴音の“士気鼓舞の言葉”が背後から兵士たちを励ます。
戦線がじわじわと進む。
翔は立ち止まり、息を整えたブライセンに視線を送った。
「……ありがとう。君の一撃が、道を拓いた」
「礼はいらねぇさ、相棒の仕事だろ?」
ブライセンはにっと笑って、剣を肩に担ぐ。
「それに……雨を裂くってのは、男の浪漫だからな」
翔は吹き出しそうになるのを堪えた。
だが、その茶化しの裏にある“信じ抜く強さ”が、今の戦況を変えたのだ。
この戦いは、まだ前哨戦に過ぎない。
巫王配下の術者は散らばり、いずれ本陣が動く。けれども――。
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