自由の宿エルファリア 栄光を求めて

乾為天女

文字の大きさ
25 / 146
【第五話:暗黒の迷路──洞窟の深部と新たな脅威】

シーン4:通路を覆う闇と小競り合い

しおりを挟む
 影の魔物を倒し、ひとまず安堵した岡村たちだったが、洞窟の奥から再び冷たい風が吹き込み、薄暗がりがさらに深まった。全員がその場に腰を下ろし、息を整えている。傷の手当てをする朗雄の腕からは、まだじわりと血がにじんでいた。銀次が持ってきた包帯をきつめに巻き直し、「大丈夫か?」と確認するが、朗雄は「このくらいどうってことねぇ」と不機嫌そうに答える。
 将臣が壁にもたれかかりながら、「氷の魔法が使えたのはいいけど、やっぱりまだコントロールがうまくいかない……」と呟いた。それを聞いて、岡村が「でも、ちゃんと役立ったじゃないか! あれがなかったら危なかったよ」と笑顔で励ますと、将臣は少し照れたように「そう、かな……」と小さく返す。
 銀次が「まだ気を抜くには早い。奥にまだ何かいるだろうし、この洞窟全体が異常だ」と冷静に警戒を促すと、基一が地図を広げて確認した。「次の分岐を右に行けば、円形の大部屋に出るはずだ。でも、道が崩れていたり罠があるかもしれない。」
「それじゃあ、俺が先頭で確認しながら行くよ」と岡村が手を挙げると、朗雄が「お前がやってどうすんだ。俺が行く」と強引に前に出た。それを見た孝征が「いやいや、罠探知なら俺の方が向いてるだろ?」と意見を出すが、朗雄は「チンタラやってたらまた襲われるぞ」と強気な態度を崩さない。
「落ち着けよ、朗雄。無茶をしてまた怪我するのがオチだ」と裕翔が宥めるが、朗雄は「俺にできることをやるだけだ」と引かない。銀次が間に入り、「いいか、焦って突っ込んでミスするのが一番まずいんだ。お前が前に出たい気持ちはわかるけど、ここは孝征に任せた方が確実だ」と諭した。
 朗雄は悔しそうに舌打ちし、「ああ、わかったよ」と不満を抑えた。その場の緊張感が少し和らぎ、孝征が前に立って進み始める。「罠があったらちゃんと教えるから、みんな少し距離を取ってくれよ」と声をかけ、ゆっくりと足を運ぶ。
 奥へ進むにつれ、壁から立ちこめる紫色の霧のようなものが視界を遮りはじめた。魔力が凝縮された瘴気のようで、触れると体力を奪われる恐れがある。将臣が「俺に浄化魔法はないけど、火の魔法である程度は散らせるかも…!」と試しに火球を放つと、霧が一瞬だけ消えかかるが、すぐにまた漂ってくる。
「これじゃ、キリがないな……」と矢野が苦々しい顔でつぶやき、孝征も「足元ワナスキャン」を連続使用して、霧の中に仕掛けられた罠がないかチェックするが、疲労が蓄積してきて精度が落ちつつある。
 そんな中、朗雄が苛立ちを募らせ、「何やってんだ、こっちが手間取ってる間にも敵が準備してるかもしれないだろ!」と声を荒げる。基一は「焦って奥へ突っ込めば、一気に全滅するかもしれない。そもそも、これだけの瘴気が発生してるなら強敵が待ち構えてる証拠だ」と冷静に反論する。
 徐々に口調がきつくなる二人の応酬に、岡村や銀次が必死になだめようとするが、緊張は拭えない。「やめようよ、俺たち同士でケンカしても意味ないって!」と岡村が声を上げると、朗雄は「ああ… わかってる」とため息をつく。
「悪いな。痛む腕とこの空気のせいで、イライラしてきちまってるんだ」と朗雄が本音を漏らし、基一も「こちらこそ言いすぎた。無理をさせてるのは分かってるんだ。少し休憩しよう」と妥協を見せる。
 ほんの短い休息を挟んで、孝征が「スキルを最低限まで温存したいから、罠の検知は要所だけにしたい。みんな、罠があっても敏感に気づいてくれよ」と冗談めかして言う。銀次は「あいよ、みんなでカバーしあおう」と微笑みを返す。
 瘴気が漂う通路の先に、再び分岐が見えてきた。基一が慎重に地図を確認し、「次は右だ。奥に続く大部屋があるはず」と指差す。その言葉に全員がうなずき、気を引き締めて進む。
「ここを突破すれば、きっと核心に近づけるはずだ」と岡村がつぶやき、将臣が「今度こそ、俺の魔法で役に立つんだ」と気合を入れる。朗雄も「俺だって、引き下がれねぇ」と剣を構え直した。
 チーム内に微かな結束が生まれつつも、その先に待つ脅威がいよいよ姿を現しはじめる──。シーン4[終]
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...