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第七話「初めての成功、即興の拍手」
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五月二十二日、日曜日。午前十時。
湘南港の岸壁には、潮風が強く吹き抜けていた。
海辺研究会の七人は、白い検査バットを囲んでいた。真剣な顔で、小さなスポイトを手に持ち、海水からプランクトンを抽出している。
「……見えた、これ。回転してる。フラジェラ?」
「クロロフィル色素、確認。光合成型です」
「わー、ほんとにいたんだ……!」
顕微鏡の接眼レンズを覗き込むたびに、メンバーの声が小さく上がった。
前回までとは違い、この日は全員の動きに“役割”が明確に存在していた。
採水ボトルの管理は絢香、観測時間の管理は紗織、記録用紙と計測器の補助は裕之と豊、そして撮影とログ入力は結月。
計測のたびに、誰かが無言で手を差し出し、誰かが小声で数値を確認する。
特別な合図はない。ただ、自然と動きが重なっていた。
「よし。採水データ、4本目完了。pH、6.92。潮位安定中」
結月が報告すると、豊が「時刻、10:17。風速3.1。メモ完了」と短く返した。
そのとき。
陽太がポケットから、何やら紙の束を取り出した。
「はいはい、じゃあ、みんな手を止めて!」
「え、ちょっと待って今いいとこ……」
「いや、今だからやる!」
笑顔で割り込む陽太に、全員がいったん手を止めた。
彼が手にしていたのは、小さなA6サイズのカード。
一枚一枚に、それぞれの名前と、今日の貢献ポイントがマジックで書かれている。
「ここで、表彰式をやります!」
「またか……」と誰かがつぶやいたが、すでに笑いがこぼれている。
「まず、“記録精度で海と対話した賞”、裕之くん!」
無言で一歩出た裕之に、小さな拍手。
「“的確なタイムキーピングで潮を制した賞”、紗織さん!」
「やった……! しかも今のとこ、遅刻ゼロ!」
「“潮風と機材を調和させた賞”、絢香さん!」
「え、そういうのもあるんだ……」
「“スマホと目で瞬時に判断、二刀流記録賞”、結月さん!」
「二刀流って……べつにそんな大したこと……」
「“静寂のなかで最短回答、分析力賞”、豊くん!」
「……ありがと」
「“間違っても即修正、現場対応力賞”、悠介!」
「うっす、なんか照れるな」
「そして、全体統括&場の空気係、俺こと陽太は“勝手に司会賞”!」
さすがに全員が吹き出した。
その場に自然と拍手が起こる。
カメラも演出もない。紙もペンも手作り。だけど確かに、そこには「祝福」があった。
失敗しても、間違えても、やり直してもいい。
でも、その場にいた全員の動きがかみ合って、ひとつの成果にたどり着いた。
それは、初めての“チームとしての成功”だった。
潮の音が静かに流れるなか、陽太は最後に言った。
「僕たち、今日……初めて“全員で成功”できたよね」
誰も返事はしなかった。
でも、その静かな拍手が、何よりの答えだった。
湘南港の岸壁には、潮風が強く吹き抜けていた。
海辺研究会の七人は、白い検査バットを囲んでいた。真剣な顔で、小さなスポイトを手に持ち、海水からプランクトンを抽出している。
「……見えた、これ。回転してる。フラジェラ?」
「クロロフィル色素、確認。光合成型です」
「わー、ほんとにいたんだ……!」
顕微鏡の接眼レンズを覗き込むたびに、メンバーの声が小さく上がった。
前回までとは違い、この日は全員の動きに“役割”が明確に存在していた。
採水ボトルの管理は絢香、観測時間の管理は紗織、記録用紙と計測器の補助は裕之と豊、そして撮影とログ入力は結月。
計測のたびに、誰かが無言で手を差し出し、誰かが小声で数値を確認する。
特別な合図はない。ただ、自然と動きが重なっていた。
「よし。採水データ、4本目完了。pH、6.92。潮位安定中」
結月が報告すると、豊が「時刻、10:17。風速3.1。メモ完了」と短く返した。
そのとき。
陽太がポケットから、何やら紙の束を取り出した。
「はいはい、じゃあ、みんな手を止めて!」
「え、ちょっと待って今いいとこ……」
「いや、今だからやる!」
笑顔で割り込む陽太に、全員がいったん手を止めた。
彼が手にしていたのは、小さなA6サイズのカード。
一枚一枚に、それぞれの名前と、今日の貢献ポイントがマジックで書かれている。
「ここで、表彰式をやります!」
「またか……」と誰かがつぶやいたが、すでに笑いがこぼれている。
「まず、“記録精度で海と対話した賞”、裕之くん!」
無言で一歩出た裕之に、小さな拍手。
「“的確なタイムキーピングで潮を制した賞”、紗織さん!」
「やった……! しかも今のとこ、遅刻ゼロ!」
「“潮風と機材を調和させた賞”、絢香さん!」
「え、そういうのもあるんだ……」
「“スマホと目で瞬時に判断、二刀流記録賞”、結月さん!」
「二刀流って……べつにそんな大したこと……」
「“静寂のなかで最短回答、分析力賞”、豊くん!」
「……ありがと」
「“間違っても即修正、現場対応力賞”、悠介!」
「うっす、なんか照れるな」
「そして、全体統括&場の空気係、俺こと陽太は“勝手に司会賞”!」
さすがに全員が吹き出した。
その場に自然と拍手が起こる。
カメラも演出もない。紙もペンも手作り。だけど確かに、そこには「祝福」があった。
失敗しても、間違えても、やり直してもいい。
でも、その場にいた全員の動きがかみ合って、ひとつの成果にたどり着いた。
それは、初めての“チームとしての成功”だった。
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でも、その静かな拍手が、何よりの答えだった。
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