潮風高校“海辺研究会”へようこそ!拍手でつなぐ僕らの青春航路

乾為天女

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第九話「遅れてきた賞状、時間との闘い」

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 六月十二日、月曜日。朝の校舎。
 潮風高校の掲示板前に、人だかりができていた。
 「おおー、これすごいじゃん」「うちらの学校、優秀賞って初じゃない?」
 そんな声の中心に、ひときわ大きな歓声が弾けた。
「やったぁーーーー!!!」
 声の主は、もちろん――紗織だった。
 「市民科学コンテスト・高校生部門 優秀賞 潮風高校『海辺研究会』」
 白い文字で印刷されたA3の受賞報が、掲示板にぴたりと貼られている。
「え、まじで!? 本当に!? これウソじゃない!? 誰か背中つねって!」
「落ち着けって……」と、そばにいた悠介が笑った。
 紗織は両手を合わせて感極まりつつ、スマホで写真を撮りまくっていた。
「これ、絶対母に送るやつ! 冷蔵庫に貼られるやつ! わたし、今、祝われてるぅ~!」
 その声のボリュームに、近くの上級生がクスッと笑う。
 「朝から元気だな、あの子」
 けれど、その数時間後――。
「……やばいっ、やっばい!! 集合時間、完全に間違えたっ!」
 昼休み、体育館横の資料室前で、紗織は全力で走ってきた自分の息を整えていた。
 本日は、校内誌の編集部との合同ミーティング。コンテストの成果について、生徒代表として海辺研究会からヒアリングを受けるはずだった。
 が――紗織は12:45開始だと勘違いしていた。実際の開始時間は12:15。
 「もう終わってる……? みんな、もう帰っちゃった?」
 そう言いながら、ドアをおそるおそる開けると――
 中ではまだ、陽太・結月・絢香が残って、記事案の最終確認をしていた。
「……あ」
 紗織は息を呑む。
 結月がすぐに気づいて立ち上がった。
「遅刻です。でも、まだ出番は残ってます。タイムキープは任せますね」
「……え、いいの? 本当に?」
「次のセクション、機材トラブル時の対応記録。紗織さんが一番、記憶してるはずだから」
 陽太がにっこり笑った。
「補足だけ、お願いできる?」
「う、うん……ありがとう……っ」
 紗織は思わず、深く頭を下げた。
 ミーティング終了後。
 空の資料室で、一人残った紗織は、持っていた自作のスケジュール帳を開いた。
 中は、時間割と課題の締切でびっしりだ。
 でも、今日の欄には「12:45」と、はっきり書いてある。
「……わたしの時計って、まだどっかズレてるんだなぁ……」
 小さく、つぶやく。
 明るくふるまっても、内心ではわかっている。
 “時間に正確でありたい”という気持ちが、ずっと自分の中にあることを。
 彼女はカバンから新しいメモ帳を取り出した。
 1ページ目に、赤字で書き込む。
 《時間の誤読チェック → 3段階で確認する!》
 《①自分の予定帳 ②学校配布の週報 ③LINEグループログ》
 《遅刻=信用の損失。祝福のために“間に合う自分”になる》
 ページの端に、笑った顔のキャラシールを貼る。
 「よし、これ、守る。次こそ、ちゃんと“拍手される時間”に立つんだ」
 そう呟いた時の声は、小さかったけれど、いつもの元気とは少し違っていた。
 それは、誰かの評価ではなく――自分自身への約束だった。
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